チャンディーガル建築さんぽ① 世界遺産キャピトル・コンプレックス(前編)

チャンディーガルのシンボル「オープンハンド・モニュメント」

ナマステ!西遊インディアです。
前回、インド版新幹線Vande Bharat Expressの乗車体験レポートをアップしましたが、今回はその際に訪れたチャンディーガルの見どころスポットをご紹介します。
 
モダニズム建築の巨匠とよばれるル・コルビュジエ(Le Corbusier) が唯一、都市計画を実現したチャンディーガル。チャンディーガルの街自体の特徴や歴史をなぞりつつ、実際に訪れた体験を盛り込んで「建築さんぽ」をテーマに、複数回に分けて記事にしてみました。旅のご参考になればうれしいです。
 
さて1回目は、チャンディーガルがどんな場所なのか、そしてチャンディーガルを訪れるなら外せない!コルビュジエが設計した行政機関やモニュメントが集まる世界遺産「キャピトルコン・プレックス」の紹介です。
 
■もくじ
1. チャンディーガルってどんな街?
– 州ができた経緯
– 都市計画とル・コルビュジエ&ピエール・ジャンヌレ
– 人体になぞらえた街の構造
 
2. キャピトル・コンプレックス (前編)
– 高等裁判所
– オープンハンド・モニュメント

1. チャンディーガルってどんな街?

首都デリーから北へ約240km、ヒマラヤ山脈の麓に位置するチャンディーガル(Chandigarh)の街。建築や美術、コルビュジエに興味のある方は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。チャンディーガルはパンジャーブ州とハリヤナ州の両方の州都としての機能をもつ、ちょっと特殊な連邦直轄領です。チャンディーガルはなぜ、このような重要なポジションなのでしょうか。それには州として成立した歴史背景が大きく関わっています。


 
 
州ができた経緯
州の成立は第二次世界大戦後の1947年。イギリスによる植民地支配が終わると、英領インド帝国はヒンドゥー教徒が多数を占めるインドと、イスラム教徒が多数を占めるパキスタンに分割されました。
旧パンジャーブ州は新たに引かれた国境によって分けられ、かつて州都だったラホールはパキスタン側に編入されることに。インドにとっては行政の中心地を失うという、大きな損失でした。

英領インド時代のパンジャーブ州の地図(1909年) / Imperial Gazetteer of India, Hunter, William Wilson, Sir, (1840-1900), Cotton, James Sutherland, (1847-1918) ed. Burn, Richard, Sir, (1871-1947) joint ed. Meyer, William Stevenson, Sir, (1860-1922). joint ed. New edition, published under the authority of His Majesty’s secretary of state for India in council. Oxford, Clarendon Press, 1908-1931 [v. 1, 1909]

州政府は、州内にある都市から州都を選定しようとそれぞれ条件を洗い出しましたが、軍事面での脆弱性や飲料水の不足、アクセスの不便さ、インド側にやってくる多くの難民に対処できないことなど、いくつかの懸念があり適切な場所は見つからず。
そうしたなか、州の中心部にある、首都デリーに近い、十分な水の供給が可能、自然排水できる土地の勾配、肥沃な土壌に美しい自然、そして気候が穏やかであることなど、様々な条件に合致する現在のチャンディーガルの地が選ばれました。
ちなみにチャンディーガルの名前の由来は、もともとこの地の寺院に祀られている「チャンディー」という女神。チャンディーガルは「チャンディーの砦」という意味があります。
 
都市計画とル・コルビュジエ&ピエール・ジャンヌレ
初代首相ジャワハルラール・ネルーは、新たに独立したインドを経済的・文化的に印象づけるような一大プロジェクトの立ち上げを決定。ひとつの都市が一から建設されることとなりました。

ル・コルビュジエ(左)とピエール・ジャンヌレ(右) / Le Corbusier und Pierre Jeanneret in Chandigarh, zwischen 1950 und 1957

“伝統にとらわれない、新しい国家の信条のシンボル”として都市を新構築するビッグプロジェクト。この革新的かつ大規模な都市計画の依頼をはじめに受けたのは、アメリカ人建築家のアルバート・メイヤーとポーランド出身の共同設計者マシュー・ノヴィッキでした。しかしマスタープラン(街づくりの基本設計)を作成していた矢先、ノヴィッキが不慮の飛行機事故により他界。メイヤーは活動を中止することに。
その後釜にすわり計画を引き継いだのが、スイス出身のフランス人建築家ル・コルビュジエでした。そして計画の初期段階から参加し重要なパートナーであった、従兄弟のピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret)らの建築家とともに、都市計画を進めていきました。

チャンディーガルのマスタープラン(ル・コルビュジエ・センター/チャンディーガル)

 
人体になぞらえた街の構造
コルビュジエが主導して建設を進めたチャンディーガルの街。他の街との明らかな違いは、碁盤の目状につくられた近代的な都市構造です。
まず大きな視点で見てみると、チャンディーガルは街全体を人体になぞらえ、行政庁舎が集まるエリアを「頭」、交通網を「血流」、公園や緑地を「呼吸器」、商業の中心を「心臓」とし、人間の身体が機能するようにそれぞれの施設が配置されています。
 
そして、現代の都市計画において、自動車による移動が要だと考えたコルビュジエは、道路の用途をカテゴリ別に細分した「7V」というルールにもとづき交通網を整備しました。道路で分割された「セクター」とよばれる区画をつくり、その中に徒歩でアクセスできるマーケットやコミュニティ施設を内包させることで、それぞれのセクター内で住む・働く・レジャーといった生活を完結できるようにしました。また、セクターから徒歩10分圏内に学校を配置しています。
このように精巧に計画されたマスタープランは2段階に分けて実現され、人口50万人に対応できる都市が完成しました。巨匠ル・コルビュジエが構想した都市計画のうち、世界で唯一実現できたのがこのチャンディーガルです。
 
■ひとくちめも:7V(V7)とは
コルビュジエが考案した道路システム。道路を7つの異なるカテゴリ(V1:幹線道路、V2:主要な大通り、V3:セクターを囲む車道、V4:セクターの商店街、V5:セクター内を蛇行する経路、V6:生活道、V7:歩道)と、のちに追加されたV8:自転車道に分けて考えられたもの。Vは、フランス語で街路を意味するvoieの頭文字。コルビュジエが携わったボゴタ(コロンビア)の都市計画にも表れているといわれます。

2. キャピトル・コンプレックス Capitol Complex

チャンディーガルの都市のなかで「頭」にあたる、行政庁舎が集まるキャピトル・コンプレックス。一番北側のセクター1にあります。2016年に、日本の国立西洋美術館を含む17の建築作品とともに世界文化遺産に登録された「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」の構成遺産のひとつです。
 
キャピトル・コンプレックスは今も実際に使用されている行政区域なので、見学するには1日3回行われるミニツアー(10:00、12:00、15:00/英語、ヒンディー語)に参加する必要があります。ツアー開始時刻の前に、セクター1のツーリスト・インフォメーションの建物で受付。料金は無料ですが、パスポートなど顔写真つきの身分証明書を提示して許可をもらいます。

受付のオフィス
さっそく壁にレリーフを見つけました

高等裁判所 High Court
印象的な建物が多いキャピトル・コンプレックスのなかでも一際目をひくのが、カラフルな3本の柱をもつ高等裁判所。このエリアで一番最初に造られた建築物です。


幾何学模様のような窓のつくりに目がいきますが、注目したいのは機能性を重視した構造。ブリーズ・ソレイユ(日光を遮断する建築機能)の二重構造の屋根が傘のように建物を覆うことで、インドの強烈な日射しや雨季の大雨、強風にも対応できるよう設計されています。

ちなみに、高等裁判所は北西を向いているので、写真撮影の場合は午後が順光になります。

世界遺産登録される前は、前面に水がはられ水鏡のように反射していました

裁判官の方たち

オープンハンド・モニュメント Open Hand Monument
ル・コルビュジエの数あるオープン・ハンドの中で最も大きな作品。平和の象徴であるハトの姿にも見えます。金属部分の高さは14m、重さ約50tの鉄でできていますが、風がふくと向きが回転します。

オープンハンド・モニュメント
モニュメントの下は広場になっていて、演説などの際にコンクリートに反響して声がよく響くようになっています。

この開かれた手のモニュメントは「Open to give – Open to receive」という意味で、平和や和解、人々の団結を表し、新しいインドの信条に重なります。オープンハンドはチャンディーガルのシンボルとして、街なかの色々な場所でアイコンとして使用されているのを見かけます。
ちなみに、このモニュメントは資金不足のためコルビュジエの存命中には建てられず、亡くなった20年後にフランスの援助によってつくられたのだそうです。

オープンハンドの設計図(建築博物館/チャンディーガル)

街路樹が並び、歩道や自転車道が敷かれ、他の都市よりもお散歩しやすいチャンディーガル。
後編では、影の塔、行政庁舎、立法議会棟などをご紹介します。
 
※ミニツアー実施時間は2024年2月訪問時の情報です。ご訪問の際は最新の情報をご確認ください。

 
参考:チャンディーガル州政府公式サイト、「ル・コルビュジエによる「セクター」理論 ―「輝く都市」における都市理念の継承― 」(大野隆司/日本建築学会計画系論文集 第88巻 第808号, 2009-2017,2023年6月)
 
Photo & Text: Kondo

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インドの新幹線 Vande Bharat Expressに乗ってみた!

Photo by Harshul12345 – Vande Bharat Express on track around Mumbai.(2023) / CC BY 4.0

ナマステ!西遊インディアです。
今回は、インド版新幹線「Vande Bharat Express」(ヴァンディ・バーラト・エクスプレス)の乗車体験を記事にまとめてみました。

インドの新幹線 Vande Bharat Express

インド国鉄が運営する高速鉄道。モディ首相が就任した2014年から掲げる製造業振興の取り組み「Make in India」の一環として、2019年2月15日に、デリー~バラナシの区間で運転開始されました。

運用路線は2024年2月現在で41路線。今後も30路線近くの新設が計画されており、とくに、ムンバイとアーメダバードを結ぶ総延長508kmの路線は、日本の新幹線方式と同じ専用線方式(在来旅客鉄道と軌道を完全に分離するもの)で建設中です(2024年2月現在)。

海外で日本の新幹線方式が採用されるのは、2007年に開業した台湾(台灣高鐵)につづき、インドが2か国目。
デリーを走るメトロの建設にも、計画段階から日本が資金・技術面で支援しており、インドのインフラ整備には日本が大きく関わっています。

なかでもVande Bharat Expressはハード面だけでなく、サービス面でも日本の新幹線方式を取り入れているとのこと。「7分間の奇跡」として知られる日本の新幹線の清掃体制に着想を得た「14分間の奇跡」という取り組みで、ターミナル駅でスタッフが連携し、スピーディーかつ効率よく車内清掃を行っているそうです。

チャンディーガル~デリー区間に乗ってみました

今回乗車したチャンディーガル~デリーの区間は、4番目に運行開始されたNo. 22447 / 22448 New Delhi – Amb Andaura(ヒマーチャルプラデシュ)路線の一部。約270kmの距離を3時間ほどで走ります。休暇でチャンディーガル観光に行ってきたので、デリーへ戻る交通手段としてVande Bharat Expressを利用してみました。
※ちなみにインドでは、カメラによる駅や空港の撮影は防衛上の理由で原則禁止されています。インド鉄道省の規定(鉄道省Webサイト)では、旅行者が思い出にスマホで撮る程度であれば本来許可をとる必要はないとしていますが、現場の係員には問答無用で注意されたりトラブルになる可能性もあります。そのため、世界遺産など観光地化された鉄道以外の撮影は控えた方が無難です。文中の写真も係員さんに許可をもらい、一般の観光客として見られる場所だけをスマホで撮ったものです。
 
1.チケット
チケットは事前にインド国鉄(IRCTC)のWebサイトで予約購入します。
日時、区間、座席クラス、食事などのオプションを選択し、決済するとEチケットがメールで届くので、乗車当日はそれをプリントアウトするかスマホにPDFを保存して持参します。
座席は椅子席タイプのEC、CCの2種類。今回はせっかくなので、ちょっと良い席のECクラスに乗車してみました。ECクラスは、日本でいうところのグリーン車といった感じでしょうか。座席の写真は、後述の車内設備の部分に載せていますのでそちらをご覧ください。
 
2.乗車
現在、チャンディーガルの鉄道駅は再開発中。大きな駅でなくても、焦らず自分の列車がくるプラットホームがどこなのか確認できるよう、余裕をもって出発時刻の30分前には到着しておくと安心です。

チャンディーガル鉄道駅の西側入口

入ってすぐ左手に電光掲示板とエスカレーターがあります。電光掲示板に、列車番号、列車が駅に到着する見込み時刻、プラットホーム番号が表示されるので、確認してエスカレーターで上の階へ。プラットホームへの連絡橋に出るので、そこから自分の列車が来るホームへと降ります。
今回は、エスカレーターを上がってすぐ右のプラットホームNo.1。階段を降りてホームに行きます。構内ではホーム番号のアナウンスも流れていますが、基本はヒンディー語なので、聞き取りはなかなか難易度が高め…!なので、エスカレーターを上がる前に電光掲示板をチェックしていくのが確実です。
 
プラットホームの上部に設置されている小さな電光掲示板に、列車番号とコーチ番号が表示されるので、自分のコーチ番号の場所で列車を待ちます。今回は中央がCCクラス、階段を降りて右奥がECクラスのE1、E2コーチでした。
駅のホーム。天井についている赤い電光掲示板にコーチ番号が表示されます

チャンディーガル駅

今回の路線は、チャンディーガル駅 15:32発 – ニューデリー駅 18:25着。列車は15:30頃に到着しました。インドの鉄道は大幅に遅れることもあるなかで、ほぼ定刻どおりの到着にちょっぴり感動です!

到着したVande Bharat。かっこいいです!色合いもどこか日本の新幹線を思い出します

乗降口は各コーチの前後に一つずつ。席番号は車内の窓の上に書いてあります。頭上の荷物棚はあっという間に埋まるので、置きたい場合は頑張って早く乗りましょう!棚に置けなくてもECクラスは足元のスペースが広いので、機内持ち込みサイズのスーツケースくらいは問題なく置くことができます。

列車番号、コーチ番号、出発駅~行先が表示されます

窓の上にあるシート番号の表示
お水とフットレストもあります!

3.車内
ECクラスの座席配置は2席-2席、シートはベロアのような手触りのいい素材で、リクライニングできます。足元のスペースはゆったりしていて、通路も十分な幅があります。
CCクラスは3席-2席。進行方向に対して前向きと後ろ向きの席があり、足元と通路のスペースはECよりも少し狭め。シートの材質も違います。
ですが、両クラスともに空調完備・車内スタッフも配備されているので、荷物が多くなければ、CCクラスでも問題なく快適に過ごせそうです。

ECクラス

CCクラス

列車は駅に5~10分ほど停車した後、15:40頃に出発。
出発してから15分くらいすると、車両スタッフさんが席を巡回してチケットの確認にきます。名前を聞かれるだけの場合もありますが、念のためチケットをすぐに見せられるよう準備しておくと安心です。
 
その後しばらくすると車内食が配られました。食事は、チケットを予約する時にオプションで選択できます。メニューは時間帯や路線によって異なるようですが、今回はベジのメニューのみだったので、そちらを予約してみました。事前に予約をしていなくても、追加料金を払えば車内で購入できるようです。
ジュース、カチョリ、ナッツとスナック、チーズのサンドイッチ、お手拭きとサニタイザーも

チャイ用のお湯とカップは後から持ってきてくれます
プレートに敷かれた紙もVande Bharat仕様

トイレは各コーチとの連結部にあります。和式のようにしゃがむインド式と洋式があり、洋式には備え付けのトイレットペーパーがありました。
16:15頃、アンバラ・カント駅に停車。この路線では、終点のニューデリーまでに停車するのはこの1駅のみです。到着する少し前に、英語とヒンディー語でアナウンスが入ります。

洋式トイレ
アンバラ・カント駅

しばらく停車した後、駅を出発。この後はノンストップでひたすらデリーへと走ります。はじめは幹線道路沿いを走り、しばらくすると景色は郊外の住宅地に変わります。じょじょに田園地帯や、小さな寺院、ローカルなマーケットなどに移り代わり、車窓には素朴なインドの風景が映ります。

車内の温度は、空調が効きすぎて寒いということもなく快適でした。でも少し冷える感じはするので、カーディガンやパーカーなど羽織れるものを持参するのがおすすめです。
走行中の揺れは少なく、走行音も日本の新幹線とそこまで大きく変わらない印象です(楽しそうな家族のおしゃべり声が絶えないのは、日本と違ってインドらしいところです)。
 
4.終点のニューデリー駅に到着
列車は18:40頃、終点のニューデリー駅に到着。18:25着予定から約15分遅れですが、ほぼ定刻通りの到着です!乗車した2月の日没は18:30前だったので、到着する頃にはすっかり夜に。デリーに到着後、列車は折り返しで別の行先に変わりました。すぐに次の乗客が乗車してくるので、忘れ物のないよう速やかに列車を降ります。

ニューデリー駅

今回はじめてVande Bharatを利用してみて、その快適さとスケジュールの正確さには驚きでした!

日数が限られた旅行のなかで、比較的確実性が高い移動手段として、選択肢のひとつになると思います。
 
昔ながらの長距離寝台列車で移動する旅は情緒があって良いですが、発展いちじるしいインドの「今」を感じられるひとつの体験として、Vande Bharatを利用してみるのもおもしろいかもしれません。
 
Photo & Text: Kondo

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ②

ジャレビ店
アムリトサル街かどのミターイー店

ナマステ!西遊インディアです。
前回の記事では、“インド版定食”ともいえる❶ターリーと❷ミールスについてご紹介いたしました。

今回は、インドの庶民に愛されるB級グルメについてご紹介します。

❸ B級グルメ (ストリートフード&スイーツ)

B級グルメを「安価で、贅沢でなく、庶民的でありながら、気軽に食べられる料理」と定義するなら、インドはまさにB級グルメの宝庫!
インドに来たら、ぜひ一度は庶民の味である屋台料理やスイーツにトライしていただきたいもの。
ここでは紹介しきれないほどたくさんの種類がありますが、今回は、街かどで食べられるスナックやミターイー(スイーツ)といった甘いおやつなど、ストリートフードを中心に10個に絞ってピックアップしてみました。
 

パニプリ1. パニプリ PANIPURI पानीपूरी

ピンポン玉のように揚げた生地に穴を開け、ジャガイモなどの具と甘酸っぱいスープを入れて一口でパクリ。定番のストリートスナック。

ワダ2. ワダ VADA वड़ा

ティファン(南インドの軽食)の定番。ペースト状にしたウラド豆とスパイスを混ぜて、ドーナツ状に揚げたもの。豆腐のように素朴な風味があり、どこか懐かしい味。

ジャレービー

3. ジャレービー JALEBI जलेबी

小麦粉でつくったゆるい生地をひも状にして熱した油に落として、くるくると渦巻きの形に揚げます。かりんとうのような雰囲気ですが、シロップに浸かっているので甘さは強烈!

ドーサ

4. ドーサ DOSA डोसा

今やインド全土で人気の南インドを代表するティファン。ロール型、三角形、ガレットのように四角いものなど形は色々。ピリ辛のポテトをくるんだもの(マサラドーサ)からココナッツ味まで、具のバリエーションも多彩です。

ポハ

5. ポハ POHA पोहा

ライスフレークを水でもどして、ターメリックなどのスパイスで味付けした料理。ピーナッツやタマネギを入れることもあります。スナック麺をかけるとジャンクなテイストに。レモンをかけてさっぱりといただきます。

グラブジャムン

6. グラブジャムン GULAB JAMUN गुलाब जामुन

“世界一甘いお菓子”といわれるインドの定番ミターイー。小麦粉・砂糖・濃縮乳でつくった生地を揚げて、カルダモンで香りづけしたシロップに浸します。噛むとシロップがじわっと染み出てきて、口の中に広がります。

バナナチップス

7. バナナチップス BANANA CHIPS केले के चिप्स

南インドで出会うバナナチップス。ココナッツ油で揚げた、塩味とほのかに甘みがある素朴な味。サクサクした軽い食感でいくらでも食べてしまいそう!インドらしくマサラ味もあります。

焼き芋

8. 焼き芋 SWEET POTATO शकरकंद

冬に北インドで見かける焼き芋の屋台。注文すると、お芋の皮を剥いてダイス状にざくざくと切り、マサラとレモンをさっとかけてくれます。

ウッタパム

9. ウッタパム UTTAPAM उत्तपम

南インド風お好み焼き。生地はドーサに似ていますが、こちらはホットケーキのように厚みがあり、タマネギやトマトなどの具を入れます。ココナッツとトマトのチャトニと一緒に。

マワ

10. マワ MAVA मावा 

水牛の多いグジャラート地方のミターイー。大鍋でミルクと砂糖を煮詰めると飴色になり、砕いたお米のような質感に。味はキャラメルそのものといった感じで、ひと口食べると甘みと香ばしさが広がります!

北インド、南インドの大きなくくりではまとめきれないほど、多彩な味わいのあるインド料理。もちろん地域のみならず、文化やコミュニティ、季節によっても異なります。来るたび違う表情を見せてくれるインドを、ぜひ「食」の面からも、新しい発見とともに楽しんでみてください!
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ①

インドのグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが“インド版定食”のターリーもしくはミールスと、街を歩けば必ず目にする屋台のストリートフードではないでしょうか。
それぞれ地域やコミュニティによってたくさんのバラエティがありますが、今回は大きく
❶ ターリー(北インド)
❷ ミールス(南インド)
❸ B級グルメ(ストリートフード&スイーツ)
の3つに分けてご紹介します。

❶ ターリー Thali(北インド)

大皿に数種類のカレーやおかず、主食のお米やチャパティが盛られます。本来「ターリー」という言葉は「銀の大皿」を意味しますが、トレーに盛られた料理のことも指します。季節や土地柄で料理の内容が変わり、例えばグジャラートのものは「グジャラーティー・ターリー」のように、地域の名前を付けて呼ばれます。
様々なおかずが付くのは、アーユルヴェーダの6つの味覚(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に基づくもの。多様な食材を使って6つの味覚すべてを一度の食事でとることで、栄養のバランスが整うと考えられています。
 

ターリー(北インド)
北インドのターリー(一例)

・ライス:日本と同じく、インドの大部分の地域で主食として食べられます。北から南まで、湿度、温度差、日照時間など気候の異なる地域で、様々な栽培方法で作られます。香り・色・形が異なり、種類はなんと100種類以上あるとか。
 
・ロティ(パン):小麦粉を練って薄く焼いたチャパティが一般的。タワという鉄製のフライパンで毎日家庭で焼かれます。手間のかかるナンは日常的に家庭で食べられることはなく、レストランやお祝いの席で食べられます。
 
・パパド:薄焼きせんべいのようなスナック。そのまま食べてもよし、割ってライスにかけてもよし。
 
・サブジ(野菜のドライカレー):じゃがいもなどの野菜をスパイスで炒めた汁気のないおかず。
 
・野菜のカレー:ナスやカリフラワー、グリンピースなどを具材にしたカレー。パニール(インド版カッテージチーズ)が入ることも。ベジタリアンが多いインドでは、野菜を使ったカレーの種類が豊富。主軸として具材に使われる野菜は1~2種類で、料理名にその野菜の名前が使われます。
 
・肉のカレー:ノンベジタリアンメニューの場合は、チキンやマトンを使ったカレーも。
 
・サラダ:キュウリやスライスしたタマネギ。塩とレモン汁、コショウを軽くかけて。
 
・ダヒ(ヨーグルト):口の中がリセットされるだけでなく、混ぜて食べる“味変”の楽しみも。キュウリやタマネギを加えてライタにすることも。
 
食べる順番は人それぞれお好みですが、主食がロティとライスの両方があるときは、ロティから先に食べることが多いようです。たとえば、ロティでそれぞれのカレーを味わったら、ライスにはマイルドな野菜カレーをかけて、次は辛味のあるお肉のカレーを少しかけて味変して、サラダで口の中を一旦リセット。今度はサブジで野菜の食感を味わって…など、自分なりに食事を楽しめるのもターリーのいいところ。
また、メニューは基本的に、様々な地域の料理を組み合わせることはなく、同一地域内の料理を組み合わせます。旅先でターリーを食べれば、その土地の味・おいしさを一度に知ることができるともいえます。

一口メモ:「カレー」は何語?
「ソース」を意味するタミル語の「カリ」に由来するといわれています。かつてイギリス人が英語にとり入れ、スパイスを使った料理全般を「カレー」と呼ぶようになったのだそう。

❷ ミールス Meals(南インド)

南インドではミールスと呼ばれます。ココナッツをよく使うため、北に比べると味付けはマイルド。基本的には野菜や果物を具材にしたベジタリアン料理で、おかずは、豆と野菜を煮たサンバルなどのカレーや炒めもの、すっぱくて辛いラッサム(汁物)など。カレーリーフの香りや胡椒の爽やかな辛味も特徴です。米どころの南では、主食は小麦より米がメイン。清浄で殺菌効果もあると考えられているバナナの葉に盛り付けられます。「カトリ」という小さなボウルにカレーやおかずを入れ、それらを大皿に載せて提供されることも。
 

ミールス(南インド)
南インドのミールス(一例)

・ライス、ロティ、パパド
 
・ラッサム:トマトやタマリンドなどを煮た、すっぱくて辛いスープ。
 
・サンバル:豆と野菜を煮て作ったマイルドなカレー。
 
・ポリヤル:マスタードなどのスパイスで味付けした野菜炒め。
 
・ピックル:インドの辛い漬け物。青マンゴーやニンジンなどの野菜で作ります。
 
・チャツネ:料理を引き立たせる薬味。ココナッツやトマト、ミントのものがよく出てきます。
 
・アチャール:パイナップルやマンゴーで作られた、辛くてすっぱい付け合わせ。
 
揚げ物にもココナッツオイルを使うので、北インドの料理に比べてさっぱりとしているのが特徴。海沿いでは、カニやエビ、魚もよく食べられます。
ちなみに、料理は最初からたくさん盛られるのではなく、おかわりしていく形式。揚げものやラッサム、甘いものが出されるタイミングなどは、州やコミュニティの食習慣、集まりのグレードによってさまざま異なります。ですが、いずれの場合でも、食欲が湧くよう、よりおいしく、体に良い順番で提供することを軸に考えられています。

一口メモ:地域によって違う!ターリーいろいろ

  • グジャラーティー・ターリーグジャラート
    ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
  • パンジャービー・ターリーパンジャーブ
    バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
  • ベンガル・ターリーベンガル
    イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。
グジャラーティー・ターリー
グジャラート
ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
パンジャービー・ターリー
パンジャーブ
バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
ベンガル・ターリー
ベンガル
イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。

 
南インド料理は人気があり、今やほぼインド全域といってもいいくらいに南インド料理を提供するレストランがあります。とくにデリーにはさまざまな地域料理のレストランがあるので、気軽にトライすることもできます。
ぜひ一度、その土地の味覚がワンプレートに集結したターリー、ミールスを味わってみてください。
 
次回は、ストリートフードやスイーツを中心に、B級グルメについてご紹介します。
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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ウダイプル① 美しき湖と白亜の宮殿タージレイクパレス

ナマステ!!西遊インディアの橋本です。
今回は、ラージャスターン州の街・ウダイプルをご紹介します。

 

青く美しいピチョラー湖と周囲の乾いた山々、湖に浮かぶ豪華な宮殿。他のラージャスターン州の街とはちょっと異なる雰囲気のウダイプル。最後までムガル帝国に対して独立を守り通した誇り高き古都でもあります。

 

ウダイプルは市内の観光に加え、郊外にもかなり見ごたえのある城塞跡等あり、1泊2日でかなり楽しめます。
また、インド有数のホテルである「レイクパレス」があり、こちらのホテルでの宿泊を目的に訪れる方も少なくありません。

 

夕刻のレイクパレス (www.tajhotels.com/taj-lake-palace-udaipur/より)

 

ウダイプルは、ラージャスターン州の南側に位置しています。デリーから飛行機で約1時間30分のフライト、その後空港から車で約30分でウダイプル市内に到着します。街の中心にはピチョラー湖が広がり、その周辺には王宮・シティパレスや、寺院、ホテル等白い建物が並びその景観の美しさから「ホワイト・シティ」と称されています(雰囲気が似ていることから「東洋のヴェネチア」とも言われています)。

 

街の中心にあるピチョラ―湖は、16世紀に造られた人造湖です。ムガル帝国の攻撃を受けてチットールガルを追われたウダイ・シン2世が、現在のウダイプルの地に移住。ウダイ・シン2世の名から「ウダイプル」と名付け街を築き、水の確保のために川をせき止め湖を造りました。非常に高性能な水利システムがとられており、ピチョラ―湖の横にファテ・サーガル湖もつなげて築くことで、隣の湖と相互に水量を調節できるようになっています。

 

ピチョラ―湖遠景。湖の周りほとんどは山に囲まれおり落ち着いた雰囲気
シティ・パレス
ピチョラ―湖・湖畔に並ぶ建物は白色で統一されています

 

▮レイクパレスに宿泊
ウダイプルは、ピチョラ―湖に浮かぶ白亜の宮殿です。もともとは、1746年にマハーラーナの離宮として建てられました。その後1963年にウダイプル初の高級ホテルとして改装されました。1983年に公開された「007 オクトパシー」の舞台にもなった有名な宮殿ホテルです。

 

真っ白!なレイクパレス

レイクパレス行のボート乗り場は、湖畔のシティパレスの近くにありますが、ここからボートに乗ることができるのはホテル宿泊者のみ! 赤い絨毯が敷かれた発着所でボートを待つ間、特別感を味わえるとともに期待が高まります!

 

赤い絨毯の敷かれた船着き場

宿泊者専用のボートに乗っている間、ボートのスタッフがホテル周辺の説明をしてくれます。ホテルの船着場に到着すると、大きな日傘を持ったドアマンと真っ赤なサリーを着たホテルのスタッフが出迎えてくれます。ホテル入口では屋上から赤いバラの花びらが舞い降りてきました。

パレス内部は、さすがマハラジャの宮殿を改装したホテルだけあって、造りが大変豪華で、中庭も湖の上とは思えない程の美しさでした。

 

ホテルでは、ホテル主催のプログラムが用意されており、時間が合えば参加できます。夕方、湖を巡るサンセットクルーズなどおすすめです! ロイヤルファミリーが住んでいるというシティ・パレス、ジョグマンディル宮殿やその他宮殿ホテルを眺めながら優雅なひとときを過ごすことができます。

 

美しい中庭
Palace Room Lake View
Grand Royal Suite (www.tajhotels.com/taj-lake-palace-udaipur/より)
Luxury Room Lake View (www.tajhotels.com/taj-lake-palace-udaipur/より)

全てのサービスは文句なしで、お食事もインド料理だけでなく、コンチネンタル料理もお楽しみいただけます。今回宿泊したお部屋は窓からシティ・パレスを眺望できました。特に夜のライトアップされたシティ・パレスはとても美しかったです。

 

都市の喧騒を離れ、優雅にのんびりとマハラジャ気分を味わいたい方、レイクパレスでのご宿泊はいかがでしょうか。大変お勧めです。

 

パレスでの食事一例(www.tajhotels.com/taj-lake-palace-udaipur/より)

 

ウダイプル訪問は年中おすすめできますが、乾期の終わりごろ(4-5月頃)に訪れる場合、ピチョラ―湖の水が結構干上がってしまっていることがあるので、要事前確認です。また、5~9月末頃は、観光オフシーズンのため、通常料金よりかなりお安くご宿泊いただけます!!

 

 

 

ウダイプルその②に続きます。
②市内観光へ! 古都ウダイプルと奥地に佇む圧倒的存在感のジャイナ教寺院

 

カテゴリ:■インド北部 , インドのホテル , インドの街紹介 , ウダイプル , ラージャスターン州
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