グジャラートの魅力【3】 テキスタイルの聖地 ブジ、バンニエリア

手工芸がお好きな方にもグジャラートはお勧めの場所です。

特に、西部のブジには様々な工房があり、今も技術が受け継がれています。

〈富の象徴として発展した手工芸〉

グジャラート州は南をアラビア海に接し、いにしえから西アジアとの交易の重要な拠点となってきました。藩王や貴族、そして貿易で富を蓄えた商人たちは、自分の権力を誇示するために多くの職人を雇い、金に糸目をつけずに豪華な手工芸品を作らせました。このようなパトロンたちの金銭的支援のもとで発達した手工芸のひとつが「モチ刺繍」です。 モチ刺繍とはシルクやサテンの生地にアリと呼ばれる鈎針と絹糸で細かなチェーンステッチを施すもので、イスラム美術から影響をうけた幾何学模様や花、果物などがデザインされています。

 

「ローガンペイント」と呼ばれるオイルペインティングもまた、パトロンの支援の元、発展した手書き更紗の一種です。赤、青、緑などに染めたヒマ油を手のひらの上で混ぜ、ガム状になったものを針の先端につけて、布の上に下書きなしで描いていきます。

 

モチーフは「生命の木」や「花」「ペイズリー」など。半分描いたあとで布を二つに折ることでイン クが移り、シンメトリーのデザインが完成します。この技術はシリアを起源とし、イラン、アフガニスタン、パキスタンをへてインドに伝わったと言われています。

 

1947年にインドが英国から独立し、藩王制が解体されると、パトロンたちは財力を失い、多くのモチ刺繍やローガンペイントの職人たちも職を失いました。ローガンペイトはとても手間がかかること、高度な技術を要すること、またもともと高級品ではなく、最近では安い刺繍糸も手に入りやすいことから、後継者も少なく、現在、数家族の みがこの技術を後世に伝えています。

 

バンニエリアと呼ばれる地域には小さな工房が複数あります。

のんびりと村散策をしながら工房巡りをしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。

ベル工房は成型から焼いて、音の調整をして完成するまで30分程で見学できます。

 

木工細工は、固めた色粉を木材にあて、木材を回転させることで熱を発生させ、色粉をとかし、塗り付けていきます。その後、木片を当ててなめらかにし、オイルを塗り、違う色を乗せていく作業を繰り返します。同じ工程で木製のボタンを作っている方もいますよ。

次回はアジュラク、絞り染めなどの手工芸をご紹介します。

 

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魅力満載 グジャラート【2】 世界遺産 ドーラビーラと大カッチ -Great Rann of Kutch-

数回に分けてグジャラートの魅力をご紹介しています。

前回はグジャラート州内にある3つの世界遺産をご紹介してきました。

4つの世界遺産のうち、一番新しく登録されたのが、こちらのドーラビーラ遺跡です。

■ドーラビーラ遺跡

2021年7月に世界遺産に登録されたばかりの遺跡です。

カッチ湿原に浮かぶカディール島にあるインダス文明の都市遺跡で、1967年に発見され、1989年から現在に至るまで発掘作業が続けられています。紀元前3000年には既に村は形成され、約1500年の間に渡って人々が住み続けました。 この地域は非常に乾燥しており、その対策として造られた用水路や貯水池の形成技術の高さが注目されています。

遥か5000年も前に、高度な技術を駆使した下水施設などが整い、当時の生活水準の高さをうかがうことができます。パキスタン南部のモヘンジョダロやハラッパといった都市が衰退した後も、グジャラート地方では交易が盛んに行われ、繁栄し続けました。グジャラートは重要な交易品・カーネリアン紅玉髄の産地であり、ビーズなどの加工品を遠くアラビア海まで輸出していたといいます。当時最先端の技術を誇った、古代の国際都市です。

アーメダバード南方に位置するロータル遺跡とセットでの見学がお勧めですが、2つの遺跡の場所は離れているので、一1日で両方周るのは難しいです。

 

■ロータル遺跡

史跡に興味がある方には是非ともセットで訪れていただきたいのが、ロータル遺跡。

1954年に発見されたインダス文明の都市遺跡です。「ロータル」とはグジャラーティ語で「死の塚」を意味し、「モヘンジョダロ」のシンド語と同じ意味です。街路が整然と配置され、排水システムが整い、几帳面に積まれたレンガの建造物等が見つかっています。

ロータル遺跡、ドック跡
井戸跡

■カッチ湿地

大カッチはグジャラート州からパキスタンのシンド州に及ぶ広大な塩性の湿地です。広大なカッチ大湿地とカッチ小湿地を合わせてカッチ湿地と呼んでいます。カッチは「亀」を意味するカチボという言葉からつけられた地名で、海抜15mの平坦な大地が広がるカッチ湿原は雨季には泥地が海水で覆われ、海水が引けて乾季になると、アラビア海から吹きつける強風などのため後に塩分が残ります。

カッチの塩原は冬になると乾燥し、一面の白い大地と化します。その光景がインド人ツーリストの間で大変な人気となり、テント村も出現するようになりました。「ホワイト・ラン」を見渡すビュー・ポイント、塩の平原をお楽しみいただけます。

 

・小カッチ湿原 Little Rann of Kutch

野生動物保護区ここでは国際保護動物のアジアノロバが見ることができます。非常に臆病な動物なので、近付くと等間隔を保ちながら逃げていきます。 他にもフラミンゴの営巣地があり渡り鳥も観察されます。 この周辺にはラバリ族やアヒール族、バハルワード族などグジャラートらしい村の光景、放牧の景色を見ることができます。

 

次回はグジャラートの最西端、大カッチからも近い手工芸の町ブジをご紹介します。

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魅力満載グジャラート【1】世界遺産 チャーンパーネール・パーヴァーガド遺跡公園とアーメダバード旧市街

現在4つの世界遺産をもつ西インドグジャラート州。

インド独立の父として知られるマハトマ・ガンディーの出身地、最近ではモディ首相の出身地としても有名ですが、手仕事、近代建築、食文化、階段井戸と沢山の魅力あふれる州でもあります。

 

これから数回に分けて、グジャラートの魅力あふれるスポットをご紹介していきます。

まずはグジャラート内にある世界遺産をご紹介。

 

■チャーンパーネール・パーヴァーガド遺跡公園

グジャラート州の中では一番早く2004年に世界遺産に登録されました。

銅器時代の遺跡に始まり8~14世紀の要塞、宮殿、宗教建築物、居住区域、農地、取水設備などが点在しています。公園内のパーヴァーガド丘の頂上に位置するカーリーカマタ寺院は重要な聖地とみなされており、いまも多くの巡礼者が訪れるスポットです。

遺産はムガル帝国支配以前の都市として、唯一完全な姿を保つことで知られています。

公園内 ジャーミーモスク
EK-MINAL KI MASJID

公園内にはヘリカルの階段井戸もありますよ。

 

ヘリカルの階段井戸

 

■女王の階段井戸 ラニ・キ・ヴァヴ

グジャラート州、ラジャスタン州には多くの芸術的な階段井戸が残っていますが、その中でも外せないのが、パリタナ郊外にあるラニ・キ・ヴァヴです。2014年に世界遺産に登録されました。

グジャラート最古の階段井戸で、その壁面は800を越えるヒンドゥーの神々の像で覆われています。特にヴィシュヌ神の化身のレリーフの美しさ、精巧さには素晴らしいものがあります。

詳しくは、こちらでもご紹介しています。

世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸

 

■アーメダバード旧市街

アーメダバードという地名は、1411年この場所を治めたグジャラートのスルターン、であったアーメド・シャー一1世により建設され、彼の名に因んで名付けられました。旧市街は2017年に世界遺産に登録されています。スワミ・ナラヤン寺院からジャマー・マスジッド、ポルと呼ばれる集合住宅を眺めながらシディ・サイヤド・モスクまでのんびり見学しながら2時間弱ほどで歩いて観光ができます。

歩くと2時間弱のコース。土日よりも平日の方が賑やかなので、ローカルな雰囲気を味わいたい方は是非平日に訪れてみてください。

《ジャマー・マスジッド(金曜モスク)》

1423年にアーメド・シャーによって建てられたアーメダバード最大のモスク。 15の異なる高さのドームを260本もの柱で支えています。ヒンドゥー教やジャイナ教の寺院の建材を使用しているため、柱には蓮や金剛杵の彫刻が残っています。

 

《シディ・サイヤド・モスク》

16世紀後半に創建された、モスクで旧市街を囲むかつての城壁の一部になっています。「生命の樹」と呼ばれる美しい透かし彫りの窓が有名です。

 

《ガンジー・アシュラム (サーバルマティー・アシュラム)》

ガンジー(本名:モーハンダース・カラムチャンド・ガンジー)は「マハトマ・ガンジー」という名で知られていますが、「マハトマ」とはインドの詩聖タゴールがガンジーに贈った称号で「偉大なる魂」を意味します。そのガンジーが活動の拠点とした場所です。 現在は彼が寝起きをした非常に質素な家に、実際に使った糸を紡ぐ車や台所が展示されており、また、併設されている小さな博物館には生前彼が受け取った手紙や写真、生涯の記録等が展示されています。 1930年3月12日に、カンベイ湾までの「塩の行進」のスタート地点となった場所です。

※少し離れているので、ここも見学するならリキシャを使って周遊するのがお勧めです。

 

次回は最近世界遺産に登録されたばかりのドーラビーラとカッチ湿原をご紹介します。

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インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ

ナマステ!西遊インディアです。

 

全5回に渡ってお送りする、「インドの階段井戸特集」、これまでグジャラート州の階段井戸をご紹介してきましたが、4回目の今回はラジャスタン州の階段井戸で「インド最大規模の階段井戸」として広く知られる「チャンド・バオリ」をご紹介します。

 

インドの階段井戸①階段井戸とは?
インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸
インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ
インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ
インドの階段井戸⑤デリーの階段井戸 アグラーセン・キ・バオリ

 

チャンド・バオリ全景
チャンド・バオリ全景

 

チャンド・バオリは、ラジャスタン州のジャイプールから約90㎞東、アバネリ村という小さな村に残されています。ちょうどジャイプールとアグラへ向かう途中にあたるため、ジャイプール・アグラの観光日程にも組み込みやすい階段井戸です。アバネリ村は小さな村ですが、チャンド・バオリの見学のために多くの観光客が訪れるようになっています。


チャンド・バオリは縦横約40m四方、深さ約30m。地面をピラミッドを逆さにしたような形に掘られており、その壁面にびっしりと階段が設置されています。単純な敷地の規模ではグジャラート州のラニ・キ・ヴァヴやアダラジ・ヴァヴの方が大きいのですが、水面までを一気に見渡す巨大な井戸は非常に見ごたえがあり、インド最大の階段井戸と呼ばれる所以です。

 

チャンド・バオリ全景。右上の人のサイズから、井戸の巨大さがわかります。
チャンド・バオリ全景。右上の人のサイズから、井戸の巨大さがわかります。

 

深さ約30mの壁面は全部で13の階層に分けられており、それぞれの階をつなぐ階段が斜面一面にめぐらされています。階段や斜面には豪奢な彫刻はありませんが、幾何学図形のように繰り返す階段構造は、太陽の光と影のコントラストでシンプルかつミニマムな美しさを感じさせます。階段の総数は全部で3500を数えるそうです。

 

幾何学的な文様のように配された階段群
幾何学的な文様のように配された階段群

 

チャンド・バオリの階段群
チャンド・バオリの階段群。実際には非常に急な壁のような斜面です。

井戸は東西南北に沿って正方形に作られており、北側の面には王族が利用した宮殿が設置されています。他の階段井戸と同様に、井戸の下部では夏の時期は地表面よりも6度程度低い気温が保たれ、王族の避暑地として利用されていました。

 

 

チャンド・バオリは、8~9世紀にこの地域を支配していたチャンド王によって建設されました。このチャンド・バオリのすぐ隣にはヒンドゥー教の幸福と喜びの女神:ハルシャット・マタを祀る寺院があり、階段井戸もその女神に捧げるものとして建設されたものです。ハルシャット・マタ寺院は現在でも巡礼地として多くの巡礼者が訪れており、チャンド・バオリで沐浴をしたのちに寺院で祈りを捧げているそうです。また、ここでは雨水の利用や宗教的な利用の他に、雨量を調べて水税の徴収の計算のために利用されたとも考えられています。

 

隣接するハルシャット・マタ寺院
隣接するハルシャット・マタ寺院

 

ハルシャット・マタ寺院はもともとはシヴァ派・シャクティ派の寺院であったとみられ、寺院内ではマヒシャスーラという水牛のアスラ(悪魔)を殺すドゥルガー(シヴァ神の妻:パールヴァティの化身とされる女神)の高さ1.5メートルの像が出土しています。イスラム勢力の侵入以降に大きく破壊されたため、現在は寺院内にあった彫刻類はジャイプールやアンベールの博物館に移されています。チャンド・バオリの回廊部分にも、この寺院から出土した彫刻が展示されています。

 

水牛のアスラを殺すドゥルガー神のレリーフ(ハルシャット・マタ寺院出土品)
水牛のアスラを殺すドゥルガー神のレリーフ(ハルシャット・マタ寺院出土品)

 

現在は地下の階段部分とは別に、地上部分に井戸を囲むような回廊が設置されていますが、こちらは18世紀ごろ、ムガル帝国の時代に増設された部分です。現在はチャンド・バオリやハルシャット・マタ寺院などから出土した彫刻が置かれるギャラリーとして利用されています。

 

回廊部分に安置されたレリーフ。イスラム統治時代に頭部が破壊されています。
回廊部分に安置されたレリーフ。イスラム統治時代に頭部が破壊されています。

 

チャンド・バオリは雨季の雨水を貯めるだけではなく、地下水を利用できる井戸だったため、イギリス人が入植して井戸や上水道が整備されるまで、1000年近くの長きにわたって実用的な生活用水として利用されてきました。井戸への転落が相次いだということで現在は階段部分には立ち入り禁止になっていますが、それでも十分に巨大な階段井戸の迫力と美しさを味わうことができるスポットです。

 

チャンド・バオリ南西側の壁面と地上部の回廊部分
チャンド・バオリ南西側の壁面と地上部の回廊部分

 

独特の造形の美しさから映画のロケ地としても利用され、『The FALL落下の王国』(2006)でロケ地に利用されたことで話題になりました。また、『ダークナイト ライジング』(2012)でもチャンド・バオリをイメージしたセットで撮影が行われています。

 

 

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インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ

ナマステ!西遊インディアです。

 

全5回に渡ってお送りする、「インドの階段井戸特集」、3回目の今回は、「世界で最も美しい」と謳われる、グジャラート州の階段井戸「アダラジ・ヴァヴ」、そして近郊のダーダ・ハリの階段井戸をご紹介します。

 

インドの階段井戸①階段井戸とは?
インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸
インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ
インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ
インドの階段井戸⑤デリーの階段井戸 アグラーセン・キ・バオリ

 

「最も美しい」と形容されるアダラジ・ヴァヴ
「最も美しい」と形容されるアダラジ・ヴァヴ

 

アダラジ・ヴァヴ(Adaraj Vav)は前回ご紹介したラニ・キ・ヴァヴから車で2時間ほど、グジャラート州の中心都市であるアーメダバードの近郊に位置しています。アーメダバード空港からは車で30分程度。

 

地上から見たアダラジ・ヴァヴ
地上から見たアダラジ・ヴァヴ

 

俯瞰すると北側が長く伸びる十字構造になっており、十字の中心点に向かって東西・南の三方向から階段で内部に入る構造になっています。グジャラート州には数多くの階段井戸がありますが、3つの入り口を持つ構造はこのアダラジ・ヴァヴ特有のものです。南北方向の奥行きは70m、東西の幅25m、深さは30m以上。地下に5層の構造があり、各階層に踊り場のようなスペースが設定され、美しいレリーフや彫像が並んでいます。

 

アダラジ・ヴァヴのレリーフ
アダラジ・ヴァヴのレリーフ
アダラジ・ヴァヴのレリーフ
アダラジ・ヴァヴのレリーフ

このアダラジ・ヴァヴの最大の特徴は、イスラム教様式の草花文様を基本としながら、ヒンドゥー教・ジャイナ教様式の動物像や人物像が同時に混在している点です。このような独特の装飾が生まれた背景には、アダラジ・ヴァヴの建設に纏わる伝説があります。

 

ヒンドゥー教様式の人物像
ヒンドゥー教様式の人物像

 

15世紀末、この地はヒンドゥー教国のヴカラ朝の支配下にありました。ヴカラ朝は国土が小さく水資源を雨に大きく依存しており、当時の王ヴァイ・シンは水不足の解消のために井戸の建設を開始していました。しかしこの頃、グジャラートのイスラム系勢力のスルタン、モハメド・ベグム(ムハンマド・シャー1世)によりヴカラ朝は制圧され、ヴァイ・シン王も殺されてしまいます。

 

このヴァイ・シン王の妻:ルダ王妃は大変美しいことで知られていましたが、夫の死を深く悲しみ、サティ(ヒンドゥー教で伝統的に行われた、未亡人が夫の後を追って自死する風習)を行うことを望みました。占領者であるモハメド・ベグムはそれを阻止し、王妃に結婚を申し入れます。ルダ王妃は、亡き夫の建設していた階段井戸を完成させるという条件で結婚を承諾します。

 

アダラジ・ヴァヴ内部
アダラジ・ヴァヴ内部

 

王妃の美しさに夢中になっていたモハメド・ベグムは、あちこちから集めた大工たちに階段井戸の完成を急がせます。そのために、アダラジ・ヴァヴは途中までヒンドゥー教・ジャイナ教様式で建築され、その後イスラム様式の意匠が追加されるという、他に類を見ないスタイルで建築された貴重な階段井戸となったのでした。

 

アダラジ・ヴァヴが完成すると、モハメド・ベグムは改めてルダ王妃に結婚を申し入れました。井戸の完成という目的を達成したルダ王妃は、聖者たちが清めた井戸の水で沐浴し、その後この井戸に飛び込んで自ら命を絶ったのでした。

 

アダラジ・ヴァヴ
井戸の底から見上げたアダラジ・ヴァヴ

 

アダラジ・ヴァヴは別名「ルダの階段井戸」とも呼ばれ、井戸の最深部にはその建設の概要と共に、ルダ王妃の美しさがサンスクリット語で碑文につづられています。

 

 

宮殿のような美しさと形容されるアダラジ・ヴァヴの完成後、モハメド・ベグムは井戸を建設した6人の石工に「この井戸と同じくらい美しい井戸を作ることができるか」と尋ねます。石工たちは「王の命とあればもっと素晴らしい井戸を作ることができる」と応えますが、王はこのアダラジ・ヴァヴを唯一無二のものとするため、この6人の石工を処刑してしまいました。彼らは井戸のすぐそばに設けられた6基の墓に葬られています。

 

 

 

 

また、アーメダバード市内には同じくモハメド・ベグムの治世で作られたもうひとつの井戸ダーダ・ハリの階段井戸も残されています。こちらはモハメド・ベグムの乳母:ダーダ・ハリによって建設された、地下7層構造の大規模な階段井戸。アダラジ・ヴァヴより一回り小さいものの、観光客も少なく、階段井戸の静謐な雰囲気をより感じられる場所です。

 

ダーダ・ハリの階段井戸
ダーダ・ハリの階段井戸

 

最下部から見上げたダーダ・ハリの階段井戸
最下部から見上げたダーダ・ハリの階段井戸

 

井戸に隣接して残されたダーダ・ハリの墓所
井戸に隣接して、ダーダ・ハリの墓所も遺されています。

 

 

 

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インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸

ナマステ!西遊インディアです。

 

全5回に渡ってお送りする、「インドの階段井戸特集」、2回目の今回は、世界遺産にも登録されているグジャラート州の階段井戸「ラニ・キ・ヴァヴ」についてご紹介します。

 

インドの階段井戸①階段井戸とは?
インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸
インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ
インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ
インドの階段井戸⑤デリーの階段井戸 アグラーセン・キ・バオリ

 

 

ラニ・キ・ヴァヴ内部全景
ラニ・キ・ヴァヴ内部全景

 

ラニ・キ・ヴァヴ(Rani ki Vav)は、グジャラーティー語で「女王の井戸」を意味します。インド北西部、パタンの町のサラスヴァティ川の川岸に築かれた地下7階建ての巨大な階段井戸です。1050年に建造された、グジャラート州最古の階段井戸であり、その希少性や建築技術・彫刻群の完成度の高さから2014年に世界遺産へ登録されています。

 

 

 

 

地上から見たラニ・キ・ヴァヴ(西→東)
地上から見たラニ・キ・ヴァヴ(西→東)

階段井戸全体の構造は西から東へ潜り込むように広がっており、東西方向の奥行き64m、南北の幅20m。最も西に位置する実際の井戸の竪穴部分は、地表面から30mの深さがあります。全体で7層構造をとっています。

 

ラニ・キ・ヴァヴ断面図
ラニ・キ・ヴァヴ断面図(出典:福田眞人 | インドの水保存法としての階段井戸 | (2001)言語文化論集 23(1) 134
地上から見たラニ・キ・ヴァヴ(東→西)
地上から見たラニ・キ・ヴァヴ(東→西)

 

ラニ・キ・ヴァヴの巨大さ、壮麗さを目にするとお分かり頂けるように、階段井戸は寺院としての側面も持っています。一般的な寺院が地上から上へ向かって建造されるのとは対照的に、ラニ・キ・ヴァヴでは地下方向へ向かって寺院が展開し、最深部には竜王の上に横たわったヴィシュヌの神像が配されています。この最深部のヴィシュヌ像は、春分と秋分の日にのみ太陽の光が差し込むようになっており、建造当時の精巧な建設計画と、建設にかける情熱を感じます。

 

竜王に横たわるヴィシュヌ
竜王に横たわるヴィシュヌ

 

階段井戸の内部には主要な彫刻だけで500以上、副次的な彫刻でも1000以上の彫刻があり、ヴィシュヌの10の化身(アヴァターラ)や、ラーマーヤナ、マハーバーラタの物語に関係する神々の彫刻が施されています。また近郊のパタンの町は当時のチャウルキヤ朝(ソーランキー朝)の王都であり、このパタンの伝統のテキスタイルであるパトラ織りのモチーフにも通じる格子状や幾何学図形のレリーフも各所に点在しています。

 

ヴィシュヌの3番目の化身、猪頭の神:ヴァラーハの像
ヴィシュヌの3番目の化身、猪頭の神:ヴァラーハの像

 

ガネーシャ像
ガネーシャ像

 

格子状のモチーフのレリーフ
格子状のモチーフのレリーフ

 

「Rani」はグジャラーティー語で女王・王妃・王女等を意味する言葉であり、ラニ・キ・ヴァヴはその名の通り女王によって建設されています。ラージプート王朝の一つであるチャウルキヤ(ソーランキー)朝の王:ビーマ1世(在位1022年~1064年)の死後、遺された王妃ウダヤマティとその子カルナによって、王を偲んで建設されました。

 

ラニ・キ・ヴァヴ回廊
ラニ・キ・ヴァヴ回廊

 

そしてこのラニ・キ・ヴァヴの最大の特徴は、その保存状態にあります。ラニ・キ・ヴァヴは本来は風化しやすい砂岩を利用して建設されていますが、13世紀にサラスヴァティ川の氾濫によって泥と土に覆われたため、その後発掘までのあいだ泥土によって風化から保護され、素晴らしい彫刻群が状態良く残されたのです。

 

1955年当時 発掘途中のラニ・キ・ヴァヴ
1955年当時 発掘途中のラニ・キ・ヴァヴ©Archaeological Survey of India

 

井戸は1890年代、イギリスの考古学者ジェームズ・バージェスによって発見され、その後1940年代に本格的な発掘調査でラニ・キ・ヴァヴの存在が明らかになりました。1986年にはインド考古学調査団による大規模調査と修復作業が行われ、この際にこのラニ・キ・ヴァヴの建造者であるウダヤマティの像も出土しています。

 

グジャラート州では水と結びついた女神信仰が盛んであったため、このラニ・キ・ヴァヴ以外にも王族や貴族の女性が建設した階段井戸が多く残っています。次回は同じくグジャラート州に存在し、「最も美しい階段井戸」と謳われるアダラジ・ヴァヴ(Adalaj Vav)をご紹介します。

 

 

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インドの階段井戸①階段井戸とは?

ナマステ!西遊インディアです。

 

今回から全5回に渡り、「インドの階段井戸」について特集してご紹介していきます。

 

ラニ・キ・ヴァヴ内部全景
世界遺産にも登録された「女王の階段井戸」グジャラート州のラニ・キ・ヴァヴ

 

インドの階段井戸①階段井戸とは?
インドの階段井戸②世界遺産 ラニ・キ・ヴァヴ – 女王の階段井戸
インドの階段井戸③「最も美しい階段井戸」アダラジ・ヴァヴ
インドの階段井戸④「インド最大の階段井戸」チャンド・バオリ
インドの階段井戸⑤デリーの階段井戸 アグラーセン・キ・バオリ

 

「階段井戸」とは、英語では「step well」と訳され、その通り水面まで通じる階段が設置された井戸を指します。日本でイメージする井戸というと、縄と桶、もしくはポンプで水を引き上げる光景が目に浮かびますが、インドの階段井戸では地面を掘り下げ、階段で水面にアクセスできるようになっています。井戸を指す言葉は、ヴァヴ(vav, グジャラーティー語)やバオリ(Baoli, ヒンディー語)などが使われます。

 

インドの平野部に広く分布していますが、特に水資源の乏しい西インドの乾燥地帯、グジャラート州やラジャスタン州のものは大規模なものが多く残っており有名です。中でもグジャラート州は総数130基を超える井戸が発見されており、どれだけ井戸が重要視されていたかがわかります。

 

アダラジ・ヴァヴ
「最も美しい階段井戸」と形容されるグジャラート州のアダラジ・ヴァヴ

 

階段井戸は主に雨季の雨を貯める人工的な溜池ですが、地下の水源にアクセスするために作られているものもあります。日が差さない地下の構造物であること、また岩にしみ込んだ水の気化熱で気温が下がることにより、階段井戸の奥部では地上より6~7度程度も気温が下がります。そのため、階段井戸は夏の間の王宮、避暑地としても利用されていました。

 

チャンド・バオリ全景
王宮部分のファサードが印象的なラジャスタン州のチャンド・バオリ

 

実際に巨大な階段井戸を見ると、井戸というにはあまりにも壮麗な姿だと感じられます。もともとは純粋に水利用のために作られた井戸ですが、さきほど述べたように夏の間の王宮として利用されたのに加え、階段井戸が宗教性を伴うものとして発展したことも大きく関係します。これは、命の源である水を扱う場所である井戸が神聖視され、神々に捧げる寺院として豪奢な彫刻が施されたためです。宗教性を持った階段井戸は、神々に祈りを捧げる沐浴場としても利用されていました。

 

また巨大な井戸は、為政者の権威を示すものでもありました。より大きく、より壮麗な階段井戸はその製作者である王や国の力を示すものとなり、各地で巨大な階段井戸が建設されました。そういった意味でも、寺院や王宮と共通しています。

 

ヘリカルの階段井戸
ヘリカルの階段井戸。1485年、グジャラートのイスラム王朝:グジャラート・スルタン朝のマフムード・シャー1世によって建造。ヒンドゥー教国の階段井戸とは異なり、シンプルで装飾の無い階段井戸です。

 

階段井戸は古くは紀元前3000年までさかのぼり、隣国パキスタンのモヘンジョ・ダロ遺跡でも階段井戸の前身となると考えられるレンガ造りの井戸が見つかっています。遺跡全域では大小合わせて700以上の井戸跡が検出されており、インドの階段井戸のルーツはモヘンジョ・ダロに起源をもつという説もあります。

 

モヘンジョ・ダロのレンガ積みの井戸跡
モヘンジョ・ダロのレンガ積みの井戸跡

 

モヘンジョダロの井戸跡。上層部の井戸を掘り下げて時代を遡ると煙突の様に見えます。
モヘンジョ・ダロの井戸跡。上層部の井戸を掘り下げて時代を遡ると煙突の様に見えます。

 

現在は実際にこの階段井戸の水を生活用水として利用することはほとんどありませんが、イギリス人の入植前のインドでは貴重な水資源の源でした。イギリス人の入植後、近代化に伴って井戸水は清潔でないという理由で利用が廃止され、ポンプや上下水道の設備が整えられ、階段井戸は徐々に前時代の遺物となっていきました。

 

階段井戸で洗濯をする女性。今でも階段井戸が利用される場所も残っています。(ガンダの階段井戸、デリー)
階段井戸で洗濯をする女性。今でも階段井戸が利用される場所も残っています。(ガンダの階段井戸、デリー)

 

現在では一部の階段井戸は遺跡として保護され、あるいは観光地として整備されていますが、多くの井戸は放置され徐々に風化が進んでいます。また、大規模な階段井戸は崩壊や落下の危険があるということで封鎖されている場所もあり、文化財・歴史的な遺跡としての階段井戸の保護が問題になっています。独特のひんやりした空気や薄暗さから、中には心霊スポットとして有名になっている階段井戸も…。

 

 

以上、簡単にインドの階段井戸についてご紹介しました。次回からは、実際のインド各地の階段井戸を4回に分けてご紹介していきます。

 

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季節限定のフラワースポット マハラシュトラ州のカース高原

インドでフラワーウォッチングというと、高山植物をご紹介することが多いのですが、もっと気軽にお花を楽しめる場所があります。

しかも、季節限定のお花畑!

場所はマハラシュトラ州(州都はムンバイです)のカース高原。

カース高地はムンバイに近い、サタラの町近くにある高原です。2012年にユネスコの世界自然遺産になり注目を集めた場所で、生物多様性ホットスポットのひとつとされています。

地質的には南アメリカのギアナ高地に近い、古い地層が水によって削られたテーブルマウンテンです。テーブルの上はモンスーンの大量の雨に洗われ、栄養分が異常に少ない状態です。雨季には、水を通さない硬い岩盤の地層があり、小さな湿原が出現、乾季には非常に乾燥します。このため、木が生えることができずに草地となり、雨期~雨期明け(9月中~下旬)にお花畑となります。

標高は約1200m、1000ha/の広さ(東京ドーム約213個分)のですが、歩くことができるエリアは限られています。

多くの固有種があり固有種を含む850種もの植物が知られています。特異な科、属の植物は多くありませんが、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の植物や、日本には近縁種のないツユクサ科の植物、キク科キオン属が見られます。

 

 

■バルサミナ・ツリフネソウ(Inpatiens balsamina)  ※ホウセンカ

 

■オポシティフォリア・ツリフネソウ(Inpatiens oppositifolia)

■ヒルスタ・シバネム(Smithia hirsuta)マメ科シバネム属

※通称ミッキーマウスソウ

 

■ツベロサ・アラゲツユクサ(Cyanotis tuberosa)ツユクサ科

 

■ボンベイエンシス・キオンSenecio bombyensis ※キオン属

 

■デカネンシス・ミズネコノオ(Pogostemon deccanensis)

ショウガの花(Hitchenia-caulina)

■murdannia lanuginose murudanniaツユクサ科イボクサ属

※カース高原の固有種

 

■ゲセネリオイデス・ストライガ(Striga gesnerioides)ハマウツボ科の寄生植物

 

■プルプラセンス・ミミカキグサ(Utricularia purpurascens)

ムンバイからもバスで簡単にアクセスできる、季節限定のフラワーウォッチング。公園ではないエリアですが、拠点となる町・サタラ近くには「トーセガの滝」と呼ばれる滝があり、その周辺も同じような植生で、お花が咲いています。カース高原は観察をしていると、監視員の人が花を踏まないように、ピーピーと笛で注意してくるので、こちらの方が観察がゆっくり楽しめるかもしれません。

↓ ↓ デカネンシス・ミズネコノオの群生 ↓ ↓

 

あまりメジャーではありませんが、季節限定の美しいツリフネソウの群生を見に、是非訪れてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

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アジャンタとエローラ インド2大石窟寺院群を行く! ⑤

ナマステ! 西遊インディアです。

エローラ石窟寺院群について、前回は第1~12窟の仏教窟を紹介しました。

今回はエローラの目玉!カイラーサナータ寺院をはじめとするヒンドゥー教窟、ジャイナ教窟についてご紹介します。

 

Ajanta-Ellora
エローラ 第16窟 カイラーサナータ寺院 正面出口

やはりエローラといえば第16窟のカイラーサナータ寺院。こちらの見学にじっくり時間を割きたい方が多いと思います。

 

エローラ石窟寺院群は第13~29窟がヒンドゥー教窟です。開窟年代は、6~9世紀で、インドで仏教の勢いが減退していくなか、代わってヒンドゥー教が勢力を増してきた頃です。

ヒンドゥー教窟は全部で17窟ありますが、仏教窟と違って特徴的なのが全てがチャイティヤ窟(僧院)であることです。仏教窟のように、僧房は併設されておりません。

 

それではエローラの最大の見どころ・第16窟のご紹介です。カイラサナータはヒンドゥー教の破壊の神であるシヴァの寺院であり、シヴァの住まいとして考えられているカイラス山の姿を現しています。間口46m・奥行80m・高さ34mの巨大な寺院は全て岩体を掘り下げて作られており、世界最大の石彫建築です。その完成には1世紀以上の歳月が費やされたと考えられています。当時のインド人の寿命が30~35歳であったことを踏まえると、何世代にも渡る一大事業であったことが分かります。巨大な寺院そのものの迫力に加え、随所に施された神々の彫刻はまさに圧巻です。

 

 

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エローラ 第16窟 カイラーサナータ寺院 横から眺める
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エローラ 第16窟 ラクシュミー像
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エローラ 第16窟 ドゥルガー神

門を入るとまず正面にヴィシュヌの妻ラクシュミー。2頭の像が左右から水をかける「ガジャーラクシュミー」という吉祥をあらわす姿です。右手にはシヴァの妻パールヴァティの化身で力の象徴であるドゥルガー、左手にはシヴァの息子ガネーシャの彫像が私たちを迎え入れます。ちなみにガネーシャは物事の始まりを司る神でもあり、多くの寺院で門番として入り口に描かれています。現代でもお店やホテルの入り口にガネーシャ像を置いている場面を見たことのある方もいるのではないでしょうか。

 

ガネーシャ像
16窟 ガネーシャ像

寺院の外壁、またそれを取り囲む回廊にも様々な神話や、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」のインド二大叙事詩のシーンが丁寧に彫刻されています。寺院本体に施された彫像は本来は彩色されていたものもあり、一部にその基層となる漆喰が残されてるのも見ることができます。

 

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エローラ 16窟 細かく施された浮彫はマハーバーラタのシーンを表す
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16窟 ラーマーヤナの浮彫り
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16窟 本殿外部
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16窟 本殿を支える象たち

 

寺院内部、手前にはシヴァの乗り物である牡牛・ナンディーのための寺院(ナンディー堂)があります。そしてその奥に位置するのが本殿です。
本尊には、本尊であるシヴァリンガが安置されています。リンガは男性の象徴であり、同様に女性の象徴であるヨーニの上に置かれ、お香や乳、香油などが捧げられています。現在では観光地として世界的に人気のある寺院ですが、ここでは多くの敬虔な巡礼者たちが祈りを捧げています。

 

本殿のシヴァリンガ
16窟 本尊のシヴァリンガ

カイラーサナータ寺院の内部見学が終わりましたら、寺院横の小道より坂を上がり、カイラーサナータ寺院が見下ろせるポイントまで移動することをおすすめします(※雨期は、通行不可となっていますのでご注意ください。また、2019年冬現在、後ろまで回り込むルートは閉鎖されています)。
上から見下ろすと、カイラーサナータ寺院のその大きさを改めて実感するとともに、掘り出した石の途方もない量に言葉を失います。

 

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16窟を上から見下ろす
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16窟 僧院の天井にも美しい浮彫が施されています

 

第16窟・カイラーサナータ寺院は、その大きさ、内部の造りの精巧さ、浮彫彫刻の美しさ等、全てのポイントにおいて現代では再現不可能な、まさに偉業と呼べるにふさわしいものではないでしょうか。

 

最後に、ジャイナ教石窟群の紹介です。
エコバスに乗って5分程移動すると、ジャイナ教の寺院が見えてきます。ジャイナ教寺院群は一番北側にあり、ヒンドゥー教窟とは約1キロ程離れています。開屈は9世紀頃で、当時この地を治めていた王がジャイナ教を保護していたため、ジャイナ教の寺院も造られることになりました。

 

Ajanta-Ellora
ジャイナ教石窟群 遠景

 

インド全国的にジャイナ教寺院は僅かしかなく、エローラの寺院は貴重な資料となっています。ジャイナ教と聞くと不殺・不所持をはじめ簡素な生活を思い浮かべますが、そのイメージを一変させるような精緻できらびやかな内部装飾には驚かされます。それまでの仏教、ヒンドゥー教窟と比べて最も装飾が細かく美しい石窟です。

 

ジャイナ教ではその24代にわたる修行者の像が信仰の対象となっています。ヒンドゥー教の神々と比べ動きが少なく、直立したままの聖者像が多いです。また、ジャイナ教の教えである「無所有」を象徴する裸体で表現されています。

 

 

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エローラ 第32窟 正面入り口
第32窟のジャイナ教寺院
エローラ 第32窟 ジャイナ教寺院
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第32窟 柱の透かし彫りがなんとも豪華な印象

 

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第32窟 獅子に乗る女神像

 

 

アジャンタとエローラの石窟寺院を数回に渡って紹介してきました。アジャンタとエローラは、インドの宝です! ぜひ訪問して、実物をご覧になっていただきたいと思います。

 

このシリーズの冒頭で書きました通り、アジャンタ、エローラ有するデカン高原にはこのような素晴らしい石窟がまだまだありますので、またの機会に紹介したいと思います。

 

 

 

 

Text  by    Hashimoto,  Okada
Photo  by Saiyu Travel

 

 

 

 

カテゴリ:マハーラーシュトラ州 , アジャンタ・エローラ , インドの世界遺産 , オーランガバード , ■インド西部
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アジャンタとエローラ インド2大石窟寺院群を行く! ④

ナマステ!!
インドの宝、アジャンタ・エローラを紹介するシリーズ、その④です。

過去のご紹介記事はこちら!
アジャンタ・エローラ①
アジャンタ・エローラ②
アジャンタ・エローラ③

 

■エローラ石窟

カイラサナータ寺院
エローラ石窟 第16窟 カイラサナータ寺院

 

オーランガバードから30Kmほど離れたところにある小さな村のひとつエローラ村。ここに世界的に有名な石窟寺院群が残っており、エローラ石窟といわれています。
エローラには、全部で34の石窟があり、6世紀から10世紀の間に造られました。仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の3つの宗教の寺院や僧院・僧坊などから構成されています。

 

1~12窟    :仏教寺院。石窟寺院群の南端
13~29窟 :ヒンドゥー教寺院。中央に位置する
30~34窟 :ジャイナ教寺院。北端

 

30~34窟のみ少し離れた場所に位置しておりますが、基本的には全ての石窟は近接している上に作られた時期も重なっています。当時インドではお互いの宗教に対して非常に寛容であったことが分かります。

 

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エローラ石窟 第1-6窟 遠景

まずは、仏教窟からご紹介します。仏教窟は全部で12窟あり、第10窟以外は全て僧院(ヴィハーラ)窟です。

 

石窟群の最南端に位置する第1窟は、僧院というよりは穀物や食料を貯蔵していた場所と考えられています。

 

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エローラ 第1窟 仏教窟 入口
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エローラ 第2窟 仏教窟 入口

第2窟も僧院址です。内部の回廊には多くの仏像が並んでおり、柱の装飾も細かく施されています。

第3-4窟は未完成です。エローラ石窟寺院の仏教パートは7-8世紀ごろの、インドでの仏教が衰退へと向かっている時期の開窟であったこともあり、未完成であったり作業途中である部分も多いです。

 

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エローラ 第5窟 僧院址

7世紀に開窟された第5窟は、奥行き53.28m、幅36.63mと非常に広く、エローラでも最大の室内面積をもつ僧院です。巨大な柱には、かつては美しい装飾画が施されていたといいます。この僧院址は、かつては講堂、僧侶たちの食事場所、そして宗教的な儀式の際に使われていました。

 

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エローラ 第7-8窟 仏教窟

 

第10窟は仏教のチャイティヤ(礼拝堂)建築の最高峰とも呼ばれ、ストゥーパを覆うように配置された仏像や細かい内部装飾が特徴です。2階建てですが吹き抜けの様になっています。造りは外観だけではなく音響効果も考えられており、祈りの声が深く響き渡る様に設計されています。

ガイドと一緒に訪問した際はガイドにお経の一説を詠むようリクエストしてみてください。声の響き方にきっと驚かれると思います!

 

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エローラ 第10窟 仏教窟
第10窟のストゥーパと仏陀
エローラ石窟 第10窟 本尊は、ストゥーパに仏陀が取り込まれているかたち
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エローラ 第10窟 入口正面 バルコニーから中の仏塔を見おろすことができます
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エローラ 第11窟 仏教窟

第11窟は僧院址で、なんと3階建てです。1~2階は僧房、3階は講堂として作られています。石窟の開削は上部から始まるため、通常の建築とは逆方向に、上から下へ向かって作業が進んでいきます。講堂と僧院という性格の違いはあるものの、開窟資金や資源の豊富だった初期に作業が行われた上階は精密に作られ、下の階へ行くにつれて装飾が減りシンプルな造りになっており、その変遷は見ていて面白いです。

第12窟も第11窟と同じ3階建ての造りの僧院址です。こちらは、全体的に非常にシンプルな造りとなっています。

 

 

エローラ石窟寺院群ですが、その入り口のほとんどが西側を向いています。そのため、エローラ訪問は日差しが内部まで差し込む午後の訪問がおすすめです(エローラ石窟はアジャンタとは異なり内部に照明は設置されていません)。ただ、酷暑期の訪問だと午後2-3時頃は一番暑い時間帯…。観光中の体力を考えて午前中の涼しい時間帯の訪問でもいいかもしれません。

 

 

次回の記事ではエローラの目玉・ヒンドゥー教窟をご紹介します!

 

 

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