夏の小笠原でゆったり探鳥入門

Report by 吉成才丈 / 2022年9月2日~7日

 

<1日目>
竹芝桟橋を出港したおがさわら丸が横須賀沖にさしかかると、オオミズナギドリが増えはじめました。そして外洋にでるとアナドリも出始め、本格的に海鳥観察をスタートしました。

おがさわら丸デッキでの観察
おがさわら丸デッキでの観察

初日はオオミズナギドリが中心で、アナドリやシロハラトウゾクカモメ、アカアシカツオドリなども出現しましたが、遠い個体が多かったため、じっくり見られたのはオオミズナギドリだけだったかと思います。海鳥を覚えるには、まずオオミズナギドリをじっくり見ることが大事です。

2日目は、オオミズナギドリがほぼ見られなくなる替わりにオナガミズナギドリが出てきますので、初日は基本種をばっちりご覧いただきました。

オオミズナギドリ
オオミズナギドリ

 

<2日目>
日の出の少し前にデッキの扉が開き、薄暗い時間帯から観察を開始しました。まだ暗く、撮影できない時間帯にアオツラカツオドリが出現。

夜明け
夜明け

その後はオナガミズナギドリやアナドリ、カツオドリに交じり、オガサワラミズナギドリやオガサワラヒメミズナギドリ、ハグシロハラミズナギドリなども出現しましたが、肉眼で識別できる距離ではなく、写真判定でようやくわかる程度でした。

オガサワラミズナギドリ
オガサワラミズナギドリ

父島に着くと、ははじま丸に乗り継ぎ、海鳥観察を再スタートしました。ははじま丸はおがさわら丸より小さいため海鳥までの距離も近く、双眼鏡で識別できる距離でオナガミズナギドリやアナドリを観察。

オナガミズナギドリ
オナガミズナギドリ

ちょっとレアなクビワオオシロハラミズナギドリも観察し、母島が近づくと、恒例のカツオドリ祭りが始まりました。

クビワオオシロハラミズナギドリ
クビワオオシロハラミズナギドリ

カツオドリは、船に驚いて海面近くに出てきたトビウオを狙って船と並走するのですが、冗談ではなく、本当に触れそうな近さまで接近してくれます。そして、トビウオを見つけたカツオドリは降下して海面に飛び込むのですが、いつ訪れるかわからないシャッターチャンスを待ち、皆さんは並走するカツオドリをファインダーで追い続けました。

トビウオを探すカツオドリ
トビウオを探すカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ

母島の港に着くと、迎えに来ていたそれぞれの宿にチェックイン。一息ついたのちに専用車に迎えに来てもらい、この日は港周辺のポイントを軽く巡り、ハハジマメグロやメジロなどを観察しました。ハハジマメグロは集落にもいますが、鳴声がわかると比較的簡単に探せます。

世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ (森久美子様 撮影)
世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)

<3日目>
まずは日の出頃に出発し、朝食前の朝探で畑周辺をチェックしました。狙いは、早朝の時間帯に出会うことが多いオガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトでしたが、カワラヒワは声のみ、カラスバトは飛翔が見られたのはお1人だけでした。朝食後には、母島の自然や植物のレクチャーを受けながら北港方面に移動。午後は沢沿いやダム周辺を探鳥し、渡ってきていたオオバンなども観察しました。そしてグランドでは、ヤツガシラを発見。母島でヤツガシラに出会うとは思いませんでしたが、この鳥は何度であっても興奮しますね。

ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)

しかし、それ以上に興奮したのがオガサワラノスリとの出会いでした。いつもなら簡単に、それも比較的近い距離で出会えるのですが、今回は遠くを飛翔する1羽が確認されただけでした。ところが、オガサワラノスリとの出会いを熱望されていた方が、電柱にとまる個体を発見。慎重に近づいてもらうと、予想外の至近距離で観察することができました。

オガサワラノスリ
オガサワラノスリ

<4日目>
今日は午後の便で父島に戻る予定でしたが、まさかのははじま丸欠航が決まり、母島にもう1日滞在することになりました。早朝は昨日に続き、オガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトを狙いました。カワラヒワは気配もありませんでしたが、参加者のお1人が、林内でカラスバトらしき鳥2羽を目撃。慎重に林内をのぞき込むと、アカガシラカラスバト2羽が樹上にとまっていました。朝の林内なので薄暗かったのですが、比較的見やすい父島での鳥見ができない今回は、これが唯一のチャンスになる可能性が高かったため、頑張って撮影頂きました。

アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト

朝食後には南崎の林内やグランドを、昼食後には畑や港などを訪ね、ゆっくり島内を巡りました。

ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)

<5日目>
今日はおがさわら丸の出航日でしたが、ははじま丸は予定通り、昼12時の出航が決まりひと安心..。早朝は最後のカワラヒワ狙いで出かけましたが、やはり出会うことができませんでした。朝食後のわずかな時間はハハジマメグロやヤツガシラを堪能しましたが、最後の最後で、なかなか姿を見せなかったハシナガウグイスが姿を見せてくれました。何度か丸見えになる状態ででてきたので、皆さんもバッチリ撮影できたと思います。

ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)
ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)

ははじま丸では、往きと同じくアナドリやオナガミズナギドリなどが近くを飛びましたが、きれいなアカアシカツオドリも船と並走してくれました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ

父島到着後はおがさわら丸に乗り込み、小笠原海域での最後の海鳥観察に臨みました。恒例のお見送り後には、オナガミズナギドリやアナドリ、クロアジサシなども姿を見せて見送ってくれました。

恒例のお見送り
恒例のお見送り

<6日目>
最終日も日の出の少し前にデッキが解放され、薄暗いうちからスタンバイしました。明るくなると、遠くに青ヶ島が見えてきました。

クビワオオシロハラミズナギドリやカワリシロハラミズナギドリなども遠くに飛ぶなか、オオミズナギドリの数が徐々に増えてきました。オナガミズナギドリがオオミズナギドリに変わることで帰ってきたことを実感していると、アカアシカツオドリの集団が近づいてきました。白い個体や暗色タイプの成鳥、若鳥など、いろいろなタイプの個体が入り混じっており、合計で8羽くらいいたようです。ここまで様々な個体が入り混じる群れに出会ったことはなく、興味深い出会いでした。

アカアシカツオドリの集団
アカアシカツオドリの集団

船の北上に伴い、八丈島や御蔵島、三宅島、大島が見えてきました。大島沖を過ぎるころには浮上した潜水艦が目の前を横切り、東京湾に入るころに一旦、ご挨拶をして解散しました。観光客の多くは母島を訪ねることはありませんが、逆に言えば、母島はたくさんの自然で溢れており、固有種のハハジマメグロやオガサワラカワラヒワなどの希少な種が生息しています。

 

今回は、想定外のははじま丸欠航で母島に3泊することになりましたが、母島を隅々まで巡ることができ、貴重な体験ができたと思います。

 

(観察種数45種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の富士山・奥庭の野鳥と大磯海岸でのアオバト観察

Report by 吉成才丈 / 2022年8月22日~24日

<1日目>

途中から乗車する方を除き、新宿のバスターミナルに集合。ここから乗り換えなしで、標高約2,300mの富士山五合目まで行かれるのは本当に便利です。

予定より少し遅れて奥庭荘に着き、先着組に様子を聞くと、「この日の午前中はウソが1回出ただけ..」という不安な返答。

奥庭荘の水場
奥庭荘の水場

たしかに、昼食を済ませてじっと待っても、小鳥たちは出てきてくれません。

雨が多いことも影響しているのだろうと思ってさらに待つと、夕方になってようやく、ルリビタキやウソ、キクイタダキなどが出てきてくれました。
頂いた写真はどれもどアップですが、被写体までの近さが感じられますよね。

ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ルリビタキ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)
ウソ(冨安市子様撮影)

奥庭荘は山小屋なので夜間の消灯も早いのですが、早めの夕食後には、ガスの中で赤く染まる富士山も見られました。

ちなみに、奥庭荘の夕食は山小屋にしては豪華でウナギもついており、皆さん驚かれていました。

夕方の富士山山頂付近
夕方の富士山山頂付近

<2日目>

昨夜は時折強い雨が降ったものの、未明には雲がない時間帯もあったようで、素晴らしい星空の写真を撮られていた方がいて驚かされました。

夜明けの富士山の風景も美しく、これだけでも来る価値があると思います。

夜明けの富士山
夜明けの富士山

昨日は水場への飛来が少なくハラハラしましたが、この日は朝からルリビタキやウソ、メボソムシクイ、ヒガラなどがコンスタントに出てくれました。

メボソムシクイ(冨安市子様撮影)
メボソムシクイ(冨安市子様撮影)

光線状態もよく、シャッターチャンスも多かったと思いますが、平地では見慣れないウソの幼鳥はかわいかったですね。

ウソの幼鳥
ウソの幼鳥

そして、水場には降りてきませんでしたが、ホシガラスは近くのカラマツなどにとまってくれました。

ホシガラス(冨安市子様撮影)
ホシガラス(冨安市子様撮影)

奥庭荘の水場はすぐ目の前にあり、最短のポジションだと10mを切るほどの近さなので、観察は双眼鏡でも十分楽しめ、撮影は大砲レンズでなくても大丈夫です。

また奥庭荘の良さは、自分のペースで鳥見や撮影が楽しめる点にもあり、近くの散策路で景色や植物を見ながら鳥を探したり、奥庭荘で頼めるコーヒーを飲みながら座敷で鳥を見ることもできます。

なかには2階の室内から窓を開けて見下ろす方もおり、銘々に亜高山の鳥を楽しんでいただきました。

翌日のアオバト観察に備え、昼食後には大磯方面へ移動しました。

<3日目>

大磯・照ヶ崎海岸のアオバトは早朝からの飛来が多いため早めに現着したものの、すでに10名以上のカメラマンがスタンバイしていました。

アオバトは数羽から30羽ほどの群れがコンスタントに飛来し、磯におりては海水を飲む行動が観察されました。

アオバトの群れ
アオバトの群れ
アオバト
アオバト
海水を飲みに降りたアオバト
海水を飲みに降りたアオバト

しかし、この日はハヤブサ幼鳥が頻繁にアオバトを狙って群れに突っ込み、アオバトも落ち着いて海水を飲んでいられませんでした。

ハヤブサは若く、狩りも未熟なため、なかなかアオバトを捕らえることができません。おかげで(?)、緊迫の狩りの様子を何度も見ることができました。

やっとアオバトを捕らえたと思ったら、その後、海上に獲物を落としてしまいました…

獲物を捕らえたハヤブサ
獲物を捕らえたハヤブサ

アオバト以外にもクロサギやカワセミが出たり、ミサゴが海に飛び込んだりで、あっという間に時間が過ぎていきました。

トビ(冨安市子様撮影)
トビ(冨安市子様撮影)
ミサゴ
ミサゴ
クロサギ(冨安市子様撮影)
クロサギ(冨安市子様撮影)

暑さもあり、アオバトの飛来も少なくなるので早めに切り上げて解散しましたが、皆さん、チェックアウトしていなかった部屋に戻り、シャワーを浴びてお帰りになられたと思います。

大磯のアオバトは早朝の時間帯がよいので奥庭荘と組み合わせてみましたが、環境にも鳥にも変化があり、バラエティに富んだ鳥見ができたと思います。

また、ほぼ歩かずに自分のペースで楽しめるので、のんびり楽しみたい方には最適だと感じました。

(観察種数29種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

渡り鳥の楽園・春の飛島

Report by 簗川堅治 / 2022年5月14日~16日

 

日本海側の離島は、渡りの時期は鳥、鳥、鳥…色々な鳥が所せましとあちこちで見られるのが特徴です。はてさて、今春は……?

 

1日目。一足早く島に入っていたガイドの簗川ですが、なんて言うことでしょう!島に鳥がいません。珍鳥どころか、普通種もいない有様。本当にほとんどいません。原因は晴天続きなことが考えられます。鳥が島に降りるのは、理屈上は天気が悪い時です。大海原を渡っている時に天気が崩れると、緊急避難的に島に降ります。逆に天気がいいと、島には降りませんし、島にいたものは飛び立っていきます。

 

そんな中でのスタートとなりました。何もいない島内をただただ歩くだけの時間が過ぎていきました。ようやく法木でミヤマホオジロ♂とキビタキ♀を見ました。

ミヤマホオジロ
ミヤマホオジロ(撮影・日下部様)

ヘリポートではチゴハヤブサがあっという間に通り過ぎ、サンショウクイが林縁に出てきました。

サンショウクイ
サンショウクイ

鼻戸崎では夕方恒例のアマツバメの乱舞が観察できました。

アマツバメ
アマツバメ(撮影・大林様)

校庭にも寄りました。ここも鳥がいませんでしたが、桜の木の下に鳥影がありました。アカハラです。

アカハラ
アカハラ(撮影・日下部様)
校庭での探鳥
校庭での探鳥

すると今度は冬鳥のジョウビタキ♂の登場です。

ジョウビタキ
ジョウビタキ(撮影・日下部様)

まだいるとは驚きです。帰り道では中村集落でムギマキのさえずりが聞こえてきましたが、姿は見えず。コシアカツバメの声がすると思ったら、上空を飛ぶ姿を確認しました。手前の電線にコシアカツバメがいて、ツバメと並んでいました。

コシアカツバメ
コシアカツバメ(撮影・大林様)

2日目。早朝、カラスバト狙いで定点です。いつもは30分も待っていれば現れて、そこそこじっくりと見られるのですが、ついてない時はついてないらしく、現れてくれませんでした。続いて校庭へと向かいました。今日もジョウビタキがいました。オオルリのさえずりが聞こえてきたので、辺りを見渡すと、いました。

オオルリ
オオルリ

緑に青がきれいです。続いて「ツィー」と小声で飛び出してきたのはマミチャジナイです。

マミチャジナイ
マミチャジナイ(撮影・日下部様)

さて、この日は1便欠航です。朝食後、ウミネコのコロニーを観察し、孵ったばかりのヒナを確認。

ウミネコのコロニー
ウミネコのコロニー(撮影・日下部様)

お隣の崖には、常連のハヤブサが登場。そのうがパンパンに膨れています。

ハヤブサ
ハヤブサ(撮影・日下部様)

鳥は相変わらずしないので、観光がてらに柏木山に登り、御積島を眺めました。

白瀬沢ダムでは、昼食をとりながらセンダイムシクイとオオルリなどが少し観察できました。マミジロのさえずりも聞こえました。

センダイムシクイ
センダイムシクイ(撮影・大林様)

四谷ダムも鳥影はなく、林道を進んで八幡崎へ。すると、2の畑でアカモズの亜種カラアカモズが出たとの情報が入り、戻って再び2の畑へ。島中のバードウォッチャーが集まったかのように人だかりが!探すことしばし、いました、いました、カラアカモズ!

やや遠いものの、いい所に止まっては地面に降りて、餌をとることを繰り返しています。ようやく鳥を見た感が出てきました(笑)

亜種カラアカモズ
亜種カラアカモズ(撮影・日下部様)

3日目、最終日です。今日も鳥はいません。昨日同様、ウミネコのコロニーとハヤブサを観察。

ウミネコの親子
ウミネコの親子(撮影・大林様)
ハヤブサ
ハヤブサ(撮影・大林様)

風もなく天気もいいので、一路、荒崎へ向かいました。御積島を眺めつつ、名物のカンムリウミスズメを探します。ベタ凪なので好都合です。すると、200m程度は離れているものの、6羽のカンムリウミスズメを確認!うち3羽は少し手前にいます。これはラッキーです。御積島とカンムリウミスズメを見ながら昼食をとり、今回のツアーを終えました。

カンムリウミスズメ
カンムリウミスズメ(撮影・大林様)

 

天気が良すぎて生憎、鳥はいませんでしたが、これも離島の宿命です。次回はきっといい鳥に出会えることを期待しながら、解散しました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

鳥取・八東ふるさとの森でアカショウビンを撮る【2本目】

Report by 戸塚学 / 2022年7月11日~13日


<1日目>

天気は予報に反して晴れ。空港でお客様をピックアップし、そのまま現地へ。到着早々、オジサンが呼ぶので行ってみるとコノハズクがいた!前回の組が帰った後に巣箱が見つかったようで・・・あと1日早ければと思ってしまいました。みなさんを連れて現地の説明をして廻ります。その時に先ほどのコノハズクを高台から探すと、枝越しに確認!場所を教えて撮影を楽しんでもらいました。

昼間のコノハズク

続いてアオバズクがいるポイントへ移動します。アオバズクがいる場所を教えると、こちもみなさん必死に撮影をされています。以前ならここでシャッターシャワーが響き渡るのですが、ミラーレスカメラが多いので静か静か(笑)

アオバズク

さて本題のアカショウビンです。昨日2時間出ていた場所へ行き、待ちますが・・・出ない。しかしオオルリが低い場所へ降りてきてくれたことが唯一の救いだったかな?17時になったのでタイムアップ。夕食のために移動しました。

オオルリ

夕食は焼肉です。地場産の野菜と牛・豚・鹿の三種盛。とてもおいしく頂きました。夜はアオバズク組とコノハズク組に分かれて撮影を楽しみました。コノハズク初体験の方の興奮はこちらにも伝わります。アオバズク組ははじめ2名だったので、もう近くで出まくり、飛びまくり、留まりまくりでとても満足されていました。途中からは一般の宿泊者もアオバズクの方に移動をしたためコノハズクの撮影者が減ります。こうなるとやはりプレッシャーが減ったせいか、出が良くなりペアどまりまで撮れてしまいました。22時に小雨がぱらついたのでみなさん切り上げてバンガローへ戻った30分後すごい豪雨になり、ぎりぎりセーフでした!

コノハズクのペアどまり

<2日目>

4時30分いつもなら名物館長の「おはよ~~~」が森に響き渡るのですが、さすがに雨が降っているせいか鳥たちのさえずりはお休みのようです。早朝撮影は誰も出ていなかったようなので朝食をとりました。食べ終わると雨が止んで陽が差し出したのでアカショウビンのポイントへ。しかし出ません・・・。鳴き声もしません・・・。

ブナの森

お昼になったので鹿カツカレーのランチをいただき、休憩をしているとスタッフの方が「アカショウビンが鳴いてるよ」と教えに来てくれたので外へ出てみると鳴いてる!その方向を見ていると・・・何かがこちらに飛んできた。そして頭上を通過した際に黒いシルエットの頭がロケット!アカショウビンだった。これは出るかもと雨の中、建物の庇の下で待つが・・・出ない。出ないまま夕食の時間です。今晩は酒米で作った特性パエリア!おいしく頂いた後は夜の撮影です。昨日とは逆にアオバズク組とコノハズク組が入れ替わって撮影開始。しかし・・・雨が止まないどころか時々土砂降り。傘をさしての撮影はなかなか夜間という事もあって厳しい。それでも22時までみなさん頑張って撮影をされていました。

左:鹿カツカレー 右:特性パエリア

<3日目>

4時40分・・・遠くでアカショウビンの鳴き声が聞こえたと思ったら、バンガローの近くで、大音量で鳴き声が響き渡る!はっきり言ってやかましい(笑)トイレに行くとどうやらアカショウビンは鳴き交わしているようで、まるで合いの手を入れるようにトラツグミの「ヒ~~~~」が聞こえてくる。「これはみんな朝が早いな」と思いながらもうひと眠り。

5時30分にアカショウビンのポイントへ行くと参加者が4名のみ。どうやら一般の方はこの雨で撮影は諦めたようでした。その後に2名の参加者が加わり私たちのグループで貸し切り状態だというのにアカショウビンは出ません。7時になったので朝食を食べに一時中断。

朝食の時に荷物をまとめていただき管理棟へ預け、朝食後も雨の中10時まで粘りますが・・・ダメだった!野鳥ではないのだが、ここのマスコット的存在のアナグマ「はじめちゃん」はこの3日間行方不明。会いたがっていた参加者はがっかりしていたが仕方がないですね。11時に迎えのバスが来たので乗り込み、みなさん無事に駅と空港で解散となりました。
天気予報が当たらない、コノハズクが出たのにアカショウビンは大きな声と飛び去るシルエットだけだったが、それでもみなさん楽しんでいただけたようでなによりでした。

アカショウビン(別日)

撮れた鳥
コノハズク・アオバズク・オオルリ
観られた鳥・さえずり
キビタキ・トラツグミ・キセキレイ・カケス・オオアカゲラ・クロツグミ・ミソサザイ・ジュウイチ・アオバト

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【後編】

Report by 戸塚学 / 2022年6月11日~16日

 

6月14日(火) 4日目 曇りのち晴れ

曇りなのか、霧なのか微妙な天気だが時間通りシャチをメインに観察する船に乗船しました。出航すると案内役のスタッフのアナウンスで「ミンククジラを探しに行きます」という事でその海域に移動します。確かにミンククジラは出るのですが相変わらず「背びれがちょっぴり」見えるだけですぐ隠れてしまう。シャチのようにゆっくりと堪能させてくれないのがとても歯がゆい。その後は船3艘でシャチを探しますが見つかりません・・・。

ハシボソミズナギドリの大群も見つからず、まばらにウトウとフルマカモメが飛んでいるだけで久々の「知床海上砂漠」を味わう羽目に。とはいえ生き物相手だから仕方がないことです。時間になったので船が帰港しようと走り出すと、どこからともなくフルマカモメの大群が、船が巻き上げる波に乗るようについてきました!大慌てで2階にいる参加者を呼びに行きしっかりと撮影をしてもらうことができました!こんなことは初めてで私自身が興奮をしてしまった!

フルマカモメ
フルマカモメ

午後はすっきりと晴れたので知床峠にギンザンマシコを狙いに行きました。最近あまり出てないような噂を聞いていたので「出るだけでもラッキーかな」と思って、余裕をぶっこいて絶景の中でみなさんとおしゃべりしながらお弁当を食べていると、ドライバーさんが私を呼ぶ?「戸塚さん、これマシコ?」と指さす先に・・・ハイマツの茂みに真赤なオスが、それも超近い!すぐにみんなを呼ぶが、撮れる場所は1ヶ所のみ。ワタワタしてるうちに上に移動。これまた近いが胸から上しか見えない。そうこうするうち離れた場所へ移動して、ハイマツのてっぺんでしばらくとまってくれたが、ハイマツの下に落下したのちそれっきり消えてしまった・・・残念。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

15時30分に切り上げ、帰り際に羅臼ビジターセンター寄ってから宿へ。昨日同様、夕食まで休憩をしました。夕食後はシマフクロウ・リベンジ撮影会。昨日同様に19時50分ごろ1羽が出現。20時50分ごろ1羽が来たのち、知らぬ間にもう1羽が来ていてペアでの撮影もできた。そしてこれまた昨日同様23時まで出現なしで終了となりました。

シマフクロウ
シマフクロウ

シマフクロウ
シマフクロウ

6月15日(水) 5日目

6時50分いきなり電話で起こされると、今日乗るシャチクルーズ船の会社だった。「今日は沖合の波が高いので欠航となりました」と言われ、唖然とする。快晴の超いい天気なのに・・・まぁ仕方ない。朝食時にみなさんに事情を説明して、ギンザンマシコ・リベンジ撮影会に切り替えました。昨日見た場所を重点的に探しますが見当たりません。ぶらぶらしながら探していると少し離れたところにカメラマンの群れが?しばしそこに集まるカメラマンの皆さんと同じ方向を見ていると・・・赤いオスが出た!すぐに参加者を呼びに行き、そこで待機。その後は結局、私が見た位置よりも近くには出なかったが4、5回出てくれたので、撮影結果は微妙だが、その赤い姿はしっかりと確認ができたでしょう。

一旦みなさんから離れるので説明をして、私だけ電話の電波が繋がるピンポイントへ移動しました。待っているのは午後のクマ・クルーズの船長からの連絡です。15分も待ったころ船長から電話がかかり「出るよ」の言葉に大急ぎで下山してお弁当を買い、車内で食べながら指定された港へ向かいました。

小舟でのクルーズなのでクマが出れば結構近くまで寄ることができので、初めに出た若いクマはかなり近くで撮影ができました。その後も次々とクマたちに出会うことができ、岬の先端では1頭の子連れのクマと2頭の子連れのクマも撮ることができました。それにしてもみなさんには岬の先端なんて滅多に来ることなんてできないので、これも超ラッキーなんだよと説明をする。

ヒグマ
ヒグマ

ヒグマ
ヒグマ

岬まで来てしまったため、ちょっと時間も押してしまったので帰りは速度を上げて港に向かいます。なのでクマがいても寄ることはないかなと思っていましたが、途中で船長が「2頭いる」と若い2頭の兄弟と思われるクマを見つけ、撮影をさせてくれました。この日出会えたクマは合計9頭と、私的には過去最高の遭遇率でした。ちょっぴり時間をオーバーしてしまったが、船長の計らいで有意義なクルーズになりました。

ヒグマ
ヒグマ

ヒグマ
ヒグマ

ヒグマ
ヒグマ

今日の宿は斜里なので、移動にちょっと時間がかかるためどこにも寄らず帰るつもりが、出発してすぐに仔キツネを見つけてしまったので・・・撮影会開始。これがまた愛嬌のある個体で外に出て撮影しても逃げないし、一人遊びやポージングまでしてくれるので撮影時間が長くなるのは致し方なく、仔キツネが番屋の床下に消えるまでみなさんしっかりと楽しんでいただきました。

キタキツネ
キタキツネ

ドライバーさんから内陸の根北峠と知床峠どちらで行きますか?と聞かれたので天気もいいし、夕景がきれいな知床峠経由でお願いした。クマにもちょっぴり期待しましたが遭遇もなく、ほぼ時間通り無事宿に到着しました。

6月16日(木) 6日目 小雨のち晴れ

とうとう最終日、雨が降っていましたが、出発と同時に小雨になり止みました。小清水原生花園で小鳥を狙う前に、道路の反対側の湯沸湖湖畔に放牧してある馬たちがいるので、そちらを撮影してもらうことにしました。野生動物ではないのですぐ撮影を切り上げるかなと思ったのですが、結構みなさん必死に撮影しているので堪能するまで楽しんでもらいました。小鳥たちは気温が低いせいかあまり出てきません。しかし気温が上がりだすと、あちこちから虫の鳴き声のようなマキノセンニュウのさえずりが聞こえだします。センニュウ類はシマセンニュウ以外は「声はすれども姿は見えず」でストレスが溜まります。(笑)今年は寒いせいか花の咲きも遅くイマイチでしだが、それでもクロユリは見ることができました。

クロユリ
クロユリ

10時を過ぎたので、このツアーの最終ポイントへ移動します。ここでは湖畔の道を散策しながら生き物を探します。カワセミ、コチドリ、キバシリを確認撮影できたのは良かった。キツツキ類にも期待しましたが、時間的に厳しい(早朝が一番出る確率が高い)せいもあり、期待したクマゲラ・コアカゲラは見られずに残念でした。雨も上がり晴れてくると暑いくらいです。空港で荷物のパッキングもいいのですが、晴れているし広い駐車場でのんびりとパッキングしてもらうことにしました。荷物を積み込み、予定時間ぴったりに空港へピックアップをして無事終了となりました。そして私だけ中標津空港へ送ってもらうことになっていたので、車で走り出すと雨が降りはじめました!悪い天気ながらそれなりに今回の参加者の皆さんは当たりを引いていることを実感することになりました。
参加されたみなさま、5泊6日という長い時間本当にお疲れさまでした!

オオジュリン
オオジュリン

ノゴマ
ノゴマ

ノビタキ
ノビタキ

アマツバメ
アマツバメ


撮れた鳥
ウミウ・ヒメウ・チシマウガラス・アオサギ・フルマカモメ・ハシボソミズナギドリ・タンチョウ・カッコウ・アマツバメ・コチドリ・オオジシギ・オオセグロカモメ・ウミガラス・ケイマフリ・ウトウ・エトピリカ・ツノメドリ・オジロワシ・シマフクロウ・キバシリ・アカゲラ・ハシブトガラ・シジュウカラ・シマセンニュウ・コヨシキリ・コムクドリ・ノゴマ・ノビタキ・ハクセキレイ・カワラヒワ・ベニマシコ・ギンザンマシコ・アオジ・オオジュリン・コムクドリ

見れた鳥
ヒドリガモ・マガモ・スズガモ・ツツドリ・ウミネコ・トウゾクカモメ・トビ・カワセミ・クマゲラ(食痕)・モズ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ヤマガラ・ヒバリ・ツバメ・イワツバメ・ヒヨドリ・シロハラゴジュウカラ・ムクドリ・スズメ・キセキレイ・ウソ・ホオアカ・カワアイサ・キジバト・ツツドリ

声を聞けた鳥
コマドリ・アカハラ・トラツグミ・ホトトギス・ウグイス・エゾムシクイ・センダイムシクイ・マキノセンニュウ・エゾセンニュウ・オオヨシキリ・キビタキ

他の生き物
ヒグマ(撮)・ラッコ(撮)・ミンククジラ(撮)・エゾシカ(撮)・エゾタヌキ・キタキツネ(撮)・シマリス・ネズミ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

初夏のみちのく山形 海から山まで -目指せ100種!-

Report by 簗川堅治 / 2022年6月9日~12日

 

山形県を一周し、初夏の鳥たちをできるだけ多く楽しむツアーです。結果としては雨も降らなかったことが幸いし、104種を確認することができました。

 

1日目。出発はガイドの簗川の地元・天童市です。まずは「こんな所で?」という場所でコチドリを観察。ヒバリが鳴き、ノスリが電柱に止まっています。

続いては神社へ。沼のほとりで朝をとるヨシゴイ、飛び交うコムクドリ、そして「キーキーキー」と鳴くチゴハヤブサを確認。次の目的地に移動中にオナガをゲット。

ヨシゴイ
ヨシゴイ

チゴハヤブサ
チゴハヤブサ

今度は違う神社で巣立って大きくなったフクロウを観察。かわいい!また移動して、こちらでも巣立って大きくなったバンの兄弟を観察。

フクロウ
フクロウ

今度は猛禽類を観察しに行く途中で、越夏中のキンクロハジロをゲットし、山間部へ到着です。猛禽類の定点です。しばらくしてノジコを観察、サシバが登場し、オシドリが通過。残念ながら、イヌワシ、クマタカは出ませんでした。

ノジコ
ノジコ

次の場所に移動中にハリオアマツバメとアマツバメなどを追加し、この日、最後の場所でトラフズクを観察しました。

トラフズク
トラフズク

2日目。早朝探鳥でアカショウビン、キバシリ、そしてオオアカゲラを狙います。しかし、それどころか、他の鳥もあまり鳴いておらず閑古鳥状態。結局、キバシリとアカショウビンは声のみ、オオアカゲラはそれらしい声は聞こえましたが確認まで至らず。他、ノジコやコサメビタキ、コガラ、ニュウナイスズメなどを確認して朝食の時間となりました。

山頂
山頂

朝食後は山間部で猛禽類を探すも時間帯が早かったせいもあり収穫はなし。河原ではカワガラスやオシドリを確認しました。

続いては、ちょっと難関のコジュリンとオオジュリン、そしてアリスイに挑戦。見づらかったものの、コジュリン、オオジュリンは確認できました。アリスイは声すらせず。他、コヨシキリやホオアカ、そして居残りのオオハクチョウを観察しました。

コヨシキリ
コヨシキリ

お昼を挟んで、シロチドリ探しです。いるはいるものの、遠すぎて陽炎ゆらゆらの中での観察でした。キアシシギは思わぬ収穫です。

続いて、ミサゴの巣を離れた場所から観察しようとしたところ、真上につがいが登場!ラッキーでした。

ミサゴ
ミサゴ

今度は、これまた難関のチゴモズです。しかし、けっこうあっさりと登場。オオタカも確認できました。おまけはイスカでした。

チゴモズ
チゴモズ

なかなか順調なので、ササゴイに挑戦。しかし、現れてくれませんでした。それでもカッコウやノスリ、そして小鳥を追いかけるオオタカの姿が観察できした。

この日最後はコアジサシを探しました。ところが今年はひと月前に100羽ほどいた群れが全くいなくなり、残念な結果になりました。それでも愛想の良いシロチドリで楽しいひとときを過ごしました。

シロチドリ
シロチドリ

3日目。まずは山形県唯一のカンムリカイツブリの繁殖地へ。無事見られ、マガモも追加。しかし、他はパッとしなかったため、山へ移動し、巣材をくわえたイカルや巣立ったエナガなどを観察しました。

イカル
イカル

カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ

朝食後は移動途中でハヤブサの親子と観察し、その後、コシアカツバメをじっくりと観察し、山間部へ。ここでまたクマタカを待つも現れず。移動中にクロサギを探すも、これまた現れず。

コシアカツバメ
コシアカツバメ

一旦、新潟県に入り、再び山形県内へ入り、ブッポウソウを待ちます。無事、観察できました。クマタカも期待しましたが、今度も現れず。

ブッポウソウ
ブッポウソウ

移動して湿地帯でケリを探しましたが、これも外しました。しかし、チョウゲンボウと山形県ではもっとも見づらい鳥のひとつ、セッカを確認。

この日の最後は、急きょ予定を早め亜高山帯へ。翌日が雨予報だったためです。高山帯では、きれいなウソが間近で見られたり、ホシガラス、メボソムシクイなどを追加確認しました。

4日目。雨予報でしたが、結果としては降らずに済みました。ラッキーです。早朝、ビンズイ、ルリビタキなどで楽しみ、朝食後は㊙の鳥を観察。

ルリビタキ
ルリビタキ

解散の時間も迫ってくる中、市街地の公園でアオバズクやチゴハヤブサを観察して、すべての行程を終え、最後は山形名物「冷たい肉そば」でお腹も満腹にして解散しました。

アオバズク
アオバズク

せわしない日程でしたが、たくさんの鳥を観察することができました。ありがとうございました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)

カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)

サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【後編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

ツアー3日目

島の朝はゆっくりです。この時期の日の出は6時半頃。朝食を7時にとって出発です。宿の前が小・中学校なので朝食までの30分を利用して散歩がてら久部良バリまでを往復するプチ朝探へ。途中、学校脇の電線に止まっている3羽のカラムクドリが見られました。

カラムクドリ(撮影:早川弘美さま)

島での探鳥は各所にあるポイントを丹念に回るスタイルです。平地では歩きながら探鳥をしたいところですが、今年は予想を上回る暑さで、島の人が「これまでで一番暑い」というほどです。なので灼然の炎天下を延々と歩くのは諦めて、ここという場所を効果的に歩きました。今日こそは皆さん一番のリクエスト、セジロタヒバリとハイイロオウチュウを狙います。

島ではツメナガセキレイが一番目につきます。次に多いのは留鳥組のシロガシラ。次いでヒヨドリやアカモズとなります。島のヒヨドリはタイワンヒヨドリという亜種、アカモズはシマアカモズという亜種なのがいかにも与那国的です。

シロガシラ

タイワンヒヨドリ

シマアカモズ

比川ではいつもの顔ぶれに、ハマシギとジシギ類が加わっていました。顔つきや羽衣などからチュウジシギと思われましたが念のために尾羽も確認しOK。与那国岳に向かう林道を歩いていると蝶の姿が目に付きます。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ベニモンアゲハ、ミカドアゲハなどが沢山飛んでいて、一時は蝶の撮影会に。ここではエゾビタキ、コサメビタキ、オオルリなどのヒタキ類やブッポウソウもチラホラと現れました。ブッポウソウは昨日よりも増えていて5羽以上はいましたが、どれも今年生まれの幼鳥でした。

チュウジシギ(撮影:早川弘美さま)

エゾビタキ(撮影:伊原やよいさま)

オオルリ雄若鳥(撮影:早川弘美さま)

今日のお昼はピクニックランチ。といっても売店で買ったパンなどですが、自然の中で食べるのはなぜか違って美味しいのです。遠くの梢に止まるブッポウソウを見ながらお昼のひと時を過ごしました。

与那国島ならではのシュモクザメを模った手作りパン

午後からは目標の2種に絞って探鳥を進めることに。両種のいそうな場所を狙ってこまめに探していると、いました!セジロタヒバリです。地面で餌を採っていると、すぐにキセキレイがやってきて飛ばされてしまいます。炎天下の中、粘り強く待ち続け、ようやくじっくりと観察できました。カメラの方も無事シャッターに収めることが出来て喜んでおられました。

セジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

次はハイイロオウチュウを求めて探します。島で一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(オオバアコウ)の場所でオオルリ、エゾビタキ、サメビタキ、コムシクイ、南牧場でマミジロタヒバリ、久部良ミトゥではヨシゴイなどを見ながらお目当てのものを探します。と林縁から飛び出す1羽の鳥が。ハイイロオウチュウです。まずは飛ばさないように遠目から観察していると盛んにフライキャッチして虫を食べています。そのうち向こうから飛んできて近くの電線に止まりました。皆さんここぞとばかりのシャッターチャンスです。プロミナー組はドアップで観察。わずかの時間ですが本種を堪能することが出来て皆さん大満足の様子でした。

ハイイロオウチュウ(岡本圭祐さま)

コムシクイ(撮影:早川弘美さま)

島一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(撮影:門永洋子さま)

宿に帰る前に立ち寄った久部良漁港でクロハラアジサシを観察し、3日目の探鳥を終了しました。夕食後に鳥合わせと皆さんからの質問を受ける形でちょっとした識別講座を行い、本日56種の確認となりました。

クロハラアジサシ(撮影:伊原やよいさま)

ツアー4日目

今朝も久部良バリまでの散策で始まり、アカガシラサギやツメナガセキレイなどを観察。今日の朝食は洋食で皆さん嬉しい様子。まずは北牧場を覗きます。牧場へ向かう小道を歩いていると、ちょうど朝イチの飛行機が来る時間です。滑走路の端で待機していると、晴天をバックに頭上をかすめて着陸するシーンが見られとても感激しました。牧場内はツメナガセキレイが多く、ムナグロも沢山います。マミジロタヒバリを見つけ観察していると「ツグミみたいなのがいます」の声。見ると胸がよだれかけ状に赤く、腹の白い鳥が。すぐに飛びましたが上面は綺麗なスレート色でした。ノドアカツグミの雄です。その後、飛去した方向を捜索しましたが出会いは一瞬の出来事でした。

マミジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

祖納のゴミ捨場跡地をチェックしたあと、東へ車を走らせ鳥を探します。丹念に電線をチェックしていると再びハイイロオウチュウを発見。昨日とは場所も違い、体色にも違いがあるので別個体です。ここでも良い感じの距離で観察ができました。島を半周回る形で鳥を探し、途中の小さな貯水池ではカイツブリ、セイタカシギ、コアオアシシギ、チュウジシギなどを確認。ヒバリシギは冬羽に換羽しているのがいて幼羽との違いをゆっくり観察できました。

コアオアシシギ

昼食と少しの休憩を挟んで探鳥の再開です。比川でアカガシラサギをゆっくり観察したあと、山へ向かいます。遊歩道で鳥を探している時にお客さんの一人がヨナグニサンの繭を発見。当たり前ですがアヤミハビル館で見たものそのものです。よくもまあこんなのを見つけたものだと皆さん感心しきりでした。その後、ラッキーなことにヨナグニカラスバトが飛ぶところが見られました。

ヨナグニサンの繭

アオムネスジタマムシ(撮影:門永洋子さま)

アオミオカタニシ(撮影:門永洋子さま)

山を離れ、平地へと移動し、各所のポイントを回りましたが、昨日のセジロタヒバリの姿は既になく、新しい種にも出会わず顔ぶれは同じでした。夕方の久部良ミトゥは塒入り前のシロガシラがうるさく騒いでいます。セイタカシギは8羽に増えていて、クロハラアジサシの小群が上空を舞っています。近くのさとうきび畑でキガシラセキレイを探していると黒く大きなものが林に飛び込んだとのこと。「オオコウモリかもしれませんよ」と話しているとお客さんが木にぶら下がっているのを見つけられたところで本日の探鳥は終了となりました。夕食後に鳥合わせと今日もプチ識別講座を。実際の音源を聞きながら、見た目での識別が難しい種などの識別を学びました。本日の確認種は60種でした。この3日間、リュウキュウコノハズクの声を聞こうと真っ暗な中を久部良ミトゥ近くまで歩いてみましたが、結局声は聞けませんでした。新しく建った自衛隊の施設が影響しているのかもしれませんね。

宿の夕食

ツアー5日日

いよいよ今日が最終日です。朝の散歩探鳥ではチュウシャクシギ、ケリ(昔は南西諸島では珍しかったが最近は時々記録されます)、ムナグロをゆっくり観察。夕日の見える丘では海上からセジロタヒバリ5羽の群れが鳴きながら飛来し、島内へ飛んでいきました。

今日は昼前のフライトなので探鳥の時間はそれほどありません。皆さんのリクエストから北牧場と森林公園を小1時間ほど探鳥することに。北牧場ではマミジロタヒバリ、ハヤブサなどをじっくり見て、森林公園ではアカヒゲの囀りを聞くことが出来ました。公園近くの林内でオオゴマダラとリュウキュウアサギマダラが鈴なりになっている木があり、皆さん感動しておられました。

ハヤブサ(撮影:早川弘美さま)

オオゴマダラの群れ

終了時に東の外れでベニバトの情報が舞い込みましたが、時間切れのため残念でした。空港で搭乗手続きを済ませたあとで鳥合わせを行い、5日間のバードウォッチングの旅が終了となりました。

今回はずっと晴天続きで鳥影が薄く、毎日30度超えの猛暑の中での探鳥になりました。また、水のある水田が無いなど環境的に厳しいこともありましたが、終わってみれば出現種は91種とまずまずの結果でした。お目当てのハイイロオウチュウとセジロタヒバリをじっくりと観察・撮影を出来たのは何よりで、色々と厳しい条件下でもやはり与那国島は珍鳥の渡る交差点なのだと思わせてくれるツアーでした。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。