クマゲラの棲む利尻島・礼文島とサロベツ湿原【前編】

Report by 今堀魁人 / 2023年5月14日~18日

1日目

初日は稚内空港からスタートです。最初は空港そばのメグマ沼へ。観察していると夏の北海道を代表する鳥のひとつ、ノビタキとツメナガセキレイがお出迎えしてくれました。少し距離はありましたが、幸先の良いスタートです。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ

サロベツ湿原に向かうと、寒さと風の影響かほとんど鳥の姿は見えず。入り口でベニマシコのメスがヤナギを啄んでいる姿を全員で観察し、声は聞こえど姿を探す難しさを体感できました。

ベニマシコ(メス)
ベニマシコ(メス)

その後移動中には酪農家の家の脇からチュウヒが突然出現!
きっとこの近くで繁殖しているオスのチュウヒでしょう。ここ近年急激に数を減らしているチュウヒ。無事に子育てできることを願うばかりです。

チュウヒ(オス)
チュウヒ(オス)

夕方は兜沼へ。駐車場そばではカケスが姿を見せてくれました。北海道は本州の亜種カケスと違い、亜種ミヤマカケスで可愛い顔をしていることもあり、人気の野鳥です。なかなかうまく姿を見せず少し苦労しましたが、無事皆さん観察できたようです。

ミヤマカケス
ミヤマカケス

さて移動しようと思ったら今度は地面を歩く鳥が。なんとヤマシギです!ここでは初めての出会い。いてもおかしくない環境ですが、夕方で人の出入りも少なかったためかペアで行動し、最後まで比較的近くで観察・撮影させてくれました。

ヤマシギ
ヤマシギ

 

2日目

本日はこのツアーのメインとなるクマゲラを求めてフェリーで利尻島へ。航路では鳥の影が薄く、序盤にシロエリオオハムと遠くにウトウがチラホラと飛ぶだけ。

シロエリオオハム
シロエリオオハム

着岸直前には利尻では必ず見られるウミウのコロニーを見ながらいざ入島!ガイドさんの車に乗せてもらい、ポイントへと移動します。

ウミウコロニー
ウミウコロニー

ポイントへ歩いて到着し、息を潜め待っていると目的のクマゲラが穴から顔を出しました。前頭部が黒いためメスのようです。

クマゲラメス
クマゲラメス

この時期は抱卵中のため、最小限の影響で住むよう配慮しながらの撮影です。基本クマゲラは1時間半から2時間の感覚で抱卵交代を行っており、2時間待てばオスが帰ってくるだろうと待っていましたが2時間経っても現れず。そのうち雨も降り出しますが一向に声も気配もしません。これ以上待つのは人間も限界でかつクマゲラにも影響を与えてしまうということで今日は撤退です。

クマゲラメス
クマゲラ(メス)

途中目の前をうろちょろしてくれたヒガラが一時待ち時間を楽しませてくれましたが、クマゲラの全身見る機会は明日にお預けとなりました。

ヒガラ
ヒガラ

 

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【前編】

Report by 戸塚学 / 2023年6月17日~22日

全体的にはこの時期天気があまり良くない根室地域では奇跡的に好天に恵まれた条件となりました。私としてシマフクロウ・ギンザンマシコ・シャチ・ラッコ・ヒグマ・エトピリカの順番で難易度が上がるのですが、逆になってしまい予想外の展開となりました。

6月17日(土) 1日目

飛行機の到着が少し遅くなったのですぐに専用車に乗って霧多布岬を目指します。前日までは1週間毎日霧、霧雨の天気だったのですがみなさんの到着とともに晴れになっていました。移動途中牧場に中にタンチョウがいたので撮影をしていただきました。霧多布に近づくにつれ徐々に霧が濃くなりラッコがいるポイントでは視界がなくなってしまいましたが、霧の中からラッコの赤ちゃんの泣く声がするのでその周辺を探すとようやく発見することができました。しかし霧に包まれているのではっきりと観察することがきず残念でした。宿に向かう途中にタンチョウを探しますが残念ながら見つけることができませんでした。宿の前で夕陽を狙っていると、もの凄い数のヌカカに襲われながらも素晴らしい夕陽を堪能しました。

牧場で観察したタンチョウ
牧場で観察したタンチョウ
風連湖の美しい夕日
風連湖の美しい夕日

6月18日(日) 2日目

天気は最高で予定通り早朝観察&撮影を楽しみます。ハイド(観察小屋)近くでコヨシキリがさえずっているので、ハイドに入り窓を開けるとめっちゃ近い!逃げないのでしっかりと撮影を堪能できました。またオジロワシのペアが近くで飛翔したり、とまってくれたりとサービス満点の早朝となりました。

コヨシキリ
コヨシキリ
オジロワシのペア
オジロワシのペア

落石ネイチャークルーズはやや波は高いが出航という事で海へ出ますが、波よりもうねりがあり鳥たちを探すのも苦労します。そんな中でガイドさんが飛び回るエトピリカを成鳥見つけてくれたので撮影していると・・・着水!ゆっくり近づいてゆくと、なんとエトピリカからこちらに近づいて来るではありませんか!おまけに海上に漂う枝などを巣材として集めていることに集中しているので、こちらはほぼ無視。おかげでみなさんしっかりと撮影をすることができました。光もいいし近いしこんなことはないよと私が一人で興奮して熱くしゃべくっていました。

枝を集めるエトピリカ
枝を集めるエトピリカ
エトピリカ
エトピリカ

近くにいるはずの10数頭を超えるラッコの群れは波が高くて見つけられませんでしたが、若い2頭は何とか撮影ができたと思います。下船後は道の駅でランチをするのですが、根室名物という事で「エスカロップ」をみんなで食べました。

若い2頭のラッコ
若い2頭のラッコ

午後はどうするかをみなさんに聞くと「霧多布のラッコはもういい」という事で、走古丹でキタキツネの子ぎつねとタンチョウの親子を探すことになりました。残念ながら大人のキタキツネはちょくちょく見られるのですが、下見で見つけた巣穴の4頭の子ぎつねには出会う事はできませんでした。タンチョウの親子ははじめ見つけられませんでしたが、さすが熟練のバードウォッチャーでもあるドライバーさんが見つけてくれて何とか撮影をすることもできました。

タンチョウの親子
タンチョウの親子

時間があれば野付半島にも行く予定でしたが明日は野付半島での観察と撮影にしっかり時間をかけることができるので、この日は早めに切り上げて宿の向かいにある温泉を楽しんでいただきました。

6月19日(月) 3日目

予定より1時間遅く出発して、コンビニで朝食を買い込んで野付半島に向かいましたが・・・天気は晴れているのですが、風が強く寒い=小鳥の出現率が下がるのでターゲットをエゾシカに切り替えて群れを見つけては車を停めて撮影を楽しみます。

エゾシカ
エゾシカ
エゾシカ
エゾシカ

10時を過ぎたところで気温も上がり風も弱まったので花と小鳥を歩きながら撮影を進めます。ここで電話が鳴り尾岱沼の外洋クルーズが波が高いために欠航という電話でした。風は弱まったと思ったのですが、どうやら位置的に風が弱くなっていただけで全体的には風は弱まっていなかったようでした。予定を一気に変更してまず、標津の町までランチを食べに行きました。その後は今日から泊まる宿へ電話をして早めにチェックインすることを伝えました。時間はたっぷりあるので下見で見つけたショウドウツバメのコロニーでみなさん撮影を楽しみました。

ショウドウツバメのコロニー
ショウドウツバメのコロニー

羅臼に移動して早めに宿へ入り休憩。そして夕食をとり、18時30分シマフクロウを狙いに行きました。1度でも出れば23時、出なければ0時まで粘ることにして頑張りましたが、結局1度も出ることが無く引き上げると10分後に出たらしい!悔しい。

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【前編】

Report by 戸塚学 / 2022年6月11日~16日

 

6月11日(土) 1日目 曇りのち雨

集合時間にみなさん間に合ったので専用車に乗り、雨が降る前に霧多布に向かいました。出発時は曇りだったのですが、目的地に近づくにつれて雨が降り出します。霧多布岬は霧の中で視界がききません。当然ラッコの親子の姿を見ることも不可能なので残念ですが宿に向かう事にしました。途中オジロワシがテトラポットにとまっていましたが、写真的にイマイチだったので停まらずに通過させてもらうことにした。移動途中にタンチョウがいる場所を通過するので、いないかなと探していると廃校になった小学校にいました。車外に出ると逃げてしまうので、車内から撮影をしてもらいました。この日は雨が止まなかったのでここで終了となりました。

 

6月12日(日) 2日目 曇りのち大雨

晴れていれば4時30分や5時からスタートしたいところですが、曇っていて暗かったので6時から宿の前で撮影開始です。タンチョウのペアが風連湖にいたのでセンダイハギの黄色の花を前ボケに入れて撮ってもらったり、草むらでさえずる小鳥をさがして撮影しました。

センダイハギの黄色の花を前ボケに入れて撮影
センダイハギの黄色の花を前ボケに入れて撮影
風連湖にいたペアのタンチョウ
風連湖にいたペアのタンチョウ

朝食後に車へ荷物を積み込んでいると道路の対岸に真赤なベニマシコのオスが出たので、居合わせたみなさんは撮影を楽しまれたのですが、遅れた2名が撮影できなかったのが悔しかった。

オスのベニマシコ
オスのベニマシコ

落石港へ向かう途中に立派な木にとまるオジロワシのペアがいたので、ゆっくり静かに近づくが全く逃げる気配がないので、橋の上からがっちりと撮影することができました。

オジロワシ
オジロワシ

落石クルーズは少し波が心配でしたが無事出航することができました。初めはウトウがちらほら出ますが、波があるので船が揺れる、揺れる!そのため撮影の難しいこと。

ウトウ
ウトウ

ふと上を見上げるとずんぐりむっくりの鳥が飛んできました。(ずんぐりむっくり・ウトウよりも高い場所を飛ぶ???)気が付きましたが咄嗟で声が出ません!「エトピリカ!」と叫ぶと幸か不幸かあまりにも近くを飛んでいたのでみなさんが見上げた時にはすでに後ろ姿を見送るだけになってしまったが、ここ数年数を減らしているので観られただけでも超・ラッキーという事になります。

エトピリカ
エトピリカ

その後はガイドさんが若いツノメドリを見つけてくれて何とか撮影もできました。今年はチシマウガラスが多く見られるというのでその岩場へ。揺れる船上からの撮影はなかなか難しいですが、しっかり撮れたとのではと思う。参加者の皆さんはピンと来てないようだったので説明をしっかりしておく。この鳥は滅多に見られないし、夏羽なんて超レアなんだよと(笑)

ツノメドリ
ツノメドリ
チシマウガラス
チシマウガラス

その後はラッコがいる岩場へ行くと、まず親子が見られました。自分的にはこれでラッコはOKだったのですが、その後に海藻に身体を巻き付けた10数頭のラッコの群れに遭遇!これはまるでカリフォルニアじゃないか!こんなことは初めてで私自身が興奮をしてしまいました。

海藻に身体を巻き付けたラッコ
海藻に身体を巻き付けたラッコ
10数頭のラッコの群れに遭遇!
10数頭のラッコの群れに遭遇!

周辺ではケイマフリがちらほら出てくれたので撮影もできたと思います。港に入る手前でトウゾクカモメが出現。撮影はできなかったと思いますが、本来ならば沖合にいる鳥なので港近くで見られただけでもラッキーです。

ケイマフリ
ケイマフリ

本当にラッキーだったのはこの後かもしれません。船から降りて車に乗った瞬間から雨が降り出しました。結局、宿に入るまでこれが降り続けることになるとは。宿に戻る途中にある、走古丹、野付半島を雨の中で生き物を探しますが、結果はパッとしません。それでも走古丹でエゾタヌキを見られたことは個人的にラッキーでした。何しろ溜めフンは見たことがあったのですが、生きてる姿は初めてだったからです。宿に到着後は、宿の向かいにある天然温泉へ希望者だけ入浴をしてもらい楽しんでいただきました。

6月13日(月) 3日目 雨のち曇り

雨が降ってなければ5時出発の予定でしたが、雨が降っていたので6時出発に変更しました。野付半島ではシカの食害で一番撮影がしやすい場所の草が減ってしまい、小鳥たちが巣造りができないため数が激減しているようでさっぱり!それでも何とか花が咲いている別ポイントで歩きながら撮影をしてもらいましたが、気温が低いので小鳥たちが花に上がってきません。気温が低いのでエサの虫が地面近くにいるためです。それでもカッコウだけは周囲を飛び回ってくれるのでこの場所はまだ多くの小鳥たちが繁殖していることがわかりました。しかしここで小鳥たちのアップが撮れないのが悔しい限りです。

エゾシカ
エゾシカ
カッコウ
カッコウ

2時間もするとみなさん寒さで疲労困憊している様子なので一旦トドワラのネイチャーセンターで休憩をしてもらうことにした。到着と同時に私の電話が鳴る。嫌な予感がする。やはり尾岱沼のクルーズだ。「本日は波が高いので船は出ない」と伝えられる。困った!野付もダメ、船もダメ、天気もダメの八方塞がりの中、急遽地元の知人にこの周辺でいいポイントはないかとメールで聞くと近くにある公園を教えてもらった。合わせて翌日予約してあるシマフクロウが撮影できる宿にも電話をして今日、空きがあれば入れるかと聞くと大丈夫という事で、ほっとする。今日の船は乗れないがシマフクロウのチャンスが1回増えたことを伝えるとみなさんの表情が穏やかになった。

休憩後は知人に教えてもらった公園へ行き撮影を楽しむ。草原・湿地・森林と狭いながらに多様な環境があることでいろんな鳥たちを楽しむことができました。園内にはクマが出るようで公園事務所でクマ鈴を借りて散策します。クマ本体には出くわさなかったが「うんち」を観察することができました。夜も撮影があるので早めに宿に入り夕食まで各自での休憩にしました。宿は西遊旅行社の所有の宿「知床サライ」です。夕食は羅臼と思えないほどの手の込んだおしゃれな料理で、夜の撮影が無ければもっとエンジョイができたのではとちょっぴり残念な気分になってしまいました。

シマフクロウは、今年はヒナが2羽いてひんぱんにエサを捕りに来るという事で、ペアでの出現が19時50分、20時50分と続いたがその後は出現が無く、予定どおり23時に終了としました。(出なかった場合は12時まで粘る予定でした)

獲物を捕らえたシマフクロウ
獲物を捕らえたシマフクロウ
シマフクロウ
シマフクロウ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員