渡り鳥の交差点・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2023年3月28日~31日

春の琉球らしく、ぐずついた天気の中、条件付きで飛んだ飛行機は無事到着しました。まずはムクドリ類を求めて比川へ。しかし、見当たらなかったので、とりあえず昼食をとりました。その後、雨が上がっている隙に集落内を歩き、ムクドリ類を探していたら、コホオアカやクロウタドリが現れました!比較的じっくりと観察。

 

クロウタドリ

今度は久部良へ移動し、ムクドリ類を発見!100羽ほどのギンムクドリにカラムクドリ数羽、ホシムクドリ2羽が混じっていました。中学校のグランドではマミジロタヒバリ、亜種ホオジロハクセキレイの姿がありました。

 

ムクドリ類の群れ

次は祖納へ。小学校のグランドでヤツガシラを発見!樹上休んで、その後、地面で採餌する姿を観察撮影しました。大盛り上がりです!近すぎて車外には出られなかったので、座席を替わりながら撮影大会となりました。

 

ヤツガシラ

田んぼではハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、亜種タイワンハクセキレイ、そして亜種シベリアハクセキレイがいました。ツバメチドリもいました。

 

 

亜種シベリアハクセキレイ
ツバメチドリ

この日の最後は、オオノスリとアカツクシガモを待ちましたが、現れず。明日に持ち越しです。

2日目。夜明け前に出発し、林道へ。狙いのオオクイナ、リュウキュウコノハズクの声はしなかったものの、車中からヤマシギ1羽とミゾゴイ2羽をじっくりと観察できました。その後、アカツクシガモ3羽とオオノスリ1羽も何とか見れました。

 

ヤマシギ
ミゾゴイ

朝食後は東崎に行き、多数のツメナガセキレイとムネアカタヒバリ1羽を観察しました。

 

亜種ツメナガセキレイの群れ

その後、祖納の集落を歩くも、インドハッカを見た程度。昨日、ヤツガシラを見た場所にも行きましたが、お留守。なかなかぱっとしません。

昼食を挟んで、比川へ行き、集落を歩きました。耕作放棄地にコホオアカが5羽以上いて、チュウジシギらしいジシギも観察しました。狙いのムクドリ類は、今日も現れず。ただ、最後にヤツガシラが飛び立ち、後ろ姿のみ見れました。

今度は祖納の田んぼで主にハクセキレイの各亜種を観察し、この日も亜種シベリアハクセキレイが1羽、亜種タイワンハクセキレイが2羽、亜種ホオジロハクセキレイが複数いました。そして、オジロトウネンの姿も。

 

オジロトウネン

最後は違う田んぼで土砂降りの雨の中、アメリカウズラシギの夏羽を見て、この日を終えました。

 

アメリカウズラシギ夏羽

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の小笠原でゆったり探鳥入門

Report by 吉成才丈 / 2022年9月2日~7日

 

<1日目>
竹芝桟橋を出港したおがさわら丸が横須賀沖にさしかかると、オオミズナギドリが増えはじめました。そして外洋にでるとアナドリも出始め、本格的に海鳥観察をスタートしました。

おがさわら丸デッキでの観察
おがさわら丸デッキでの観察

初日はオオミズナギドリが中心で、アナドリやシロハラトウゾクカモメ、アカアシカツオドリなども出現しましたが、遠い個体が多かったため、じっくり見られたのはオオミズナギドリだけだったかと思います。海鳥を覚えるには、まずオオミズナギドリをじっくり見ることが大事です。

2日目は、オオミズナギドリがほぼ見られなくなる替わりにオナガミズナギドリが出てきますので、初日は基本種をばっちりご覧いただきました。

オオミズナギドリ
オオミズナギドリ

 

<2日目>
日の出の少し前にデッキの扉が開き、薄暗い時間帯から観察を開始しました。まだ暗く、撮影できない時間帯にアオツラカツオドリが出現。

夜明け
夜明け

その後はオナガミズナギドリやアナドリ、カツオドリに交じり、オガサワラミズナギドリやオガサワラヒメミズナギドリ、ハグシロハラミズナギドリなども出現しましたが、肉眼で識別できる距離ではなく、写真判定でようやくわかる程度でした。

オガサワラミズナギドリ
オガサワラミズナギドリ

父島に着くと、ははじま丸に乗り継ぎ、海鳥観察を再スタートしました。ははじま丸はおがさわら丸より小さいため海鳥までの距離も近く、双眼鏡で識別できる距離でオナガミズナギドリやアナドリを観察。

オナガミズナギドリ
オナガミズナギドリ

ちょっとレアなクビワオオシロハラミズナギドリも観察し、母島が近づくと、恒例のカツオドリ祭りが始まりました。

クビワオオシロハラミズナギドリ
クビワオオシロハラミズナギドリ

カツオドリは、船に驚いて海面近くに出てきたトビウオを狙って船と並走するのですが、冗談ではなく、本当に触れそうな近さまで接近してくれます。そして、トビウオを見つけたカツオドリは降下して海面に飛び込むのですが、いつ訪れるかわからないシャッターチャンスを待ち、皆さんは並走するカツオドリをファインダーで追い続けました。

トビウオを探すカツオドリ
トビウオを探すカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ
トビウオを狙ったカツオドリ

母島の港に着くと、迎えに来ていたそれぞれの宿にチェックイン。一息ついたのちに専用車に迎えに来てもらい、この日は港周辺のポイントを軽く巡り、ハハジマメグロやメジロなどを観察しました。ハハジマメグロは集落にもいますが、鳴声がわかると比較的簡単に探せます。

世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ (森久美子様 撮影)
世界で母島周辺にのみ生息するハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)
ゲットウの花に来たメジロ(森久美子様 撮影)

<3日目>
まずは日の出頃に出発し、朝食前の朝探で畑周辺をチェックしました。狙いは、早朝の時間帯に出会うことが多いオガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトでしたが、カワラヒワは声のみ、カラスバトは飛翔が見られたのはお1人だけでした。朝食後には、母島の自然や植物のレクチャーを受けながら北港方面に移動。午後は沢沿いやダム周辺を探鳥し、渡ってきていたオオバンなども観察しました。そしてグランドでは、ヤツガシラを発見。母島でヤツガシラに出会うとは思いませんでしたが、この鳥は何度であっても興奮しますね。

ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)
ヤツガシラ(森久美子様 撮影)

しかし、それ以上に興奮したのがオガサワラノスリとの出会いでした。いつもなら簡単に、それも比較的近い距離で出会えるのですが、今回は遠くを飛翔する1羽が確認されただけでした。ところが、オガサワラノスリとの出会いを熱望されていた方が、電柱にとまる個体を発見。慎重に近づいてもらうと、予想外の至近距離で観察することができました。

オガサワラノスリ
オガサワラノスリ

<4日目>
今日は午後の便で父島に戻る予定でしたが、まさかのははじま丸欠航が決まり、母島にもう1日滞在することになりました。早朝は昨日に続き、オガサワラカワラヒワとアカガシラカラスバトを狙いました。カワラヒワは気配もありませんでしたが、参加者のお1人が、林内でカラスバトらしき鳥2羽を目撃。慎重に林内をのぞき込むと、アカガシラカラスバト2羽が樹上にとまっていました。朝の林内なので薄暗かったのですが、比較的見やすい父島での鳥見ができない今回は、これが唯一のチャンスになる可能性が高かったため、頑張って撮影頂きました。

アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト

朝食後には南崎の林内やグランドを、昼食後には畑や港などを訪ね、ゆっくり島内を巡りました。

ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)
ハハジマメグロ(森久美子様 撮影)

<5日目>
今日はおがさわら丸の出航日でしたが、ははじま丸は予定通り、昼12時の出航が決まりひと安心..。早朝は最後のカワラヒワ狙いで出かけましたが、やはり出会うことができませんでした。朝食後のわずかな時間はハハジマメグロやヤツガシラを堪能しましたが、最後の最後で、なかなか姿を見せなかったハシナガウグイスが姿を見せてくれました。何度か丸見えになる状態ででてきたので、皆さんもバッチリ撮影できたと思います。

ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)
ハシナガウグイス(森久美子様 撮影)

ははじま丸では、往きと同じくアナドリやオナガミズナギドリなどが近くを飛びましたが、きれいなアカアシカツオドリも船と並走してくれました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ

父島到着後はおがさわら丸に乗り込み、小笠原海域での最後の海鳥観察に臨みました。恒例のお見送り後には、オナガミズナギドリやアナドリ、クロアジサシなども姿を見せて見送ってくれました。

恒例のお見送り
恒例のお見送り

<6日目>
最終日も日の出の少し前にデッキが解放され、薄暗いうちからスタンバイしました。明るくなると、遠くに青ヶ島が見えてきました。

クビワオオシロハラミズナギドリやカワリシロハラミズナギドリなども遠くに飛ぶなか、オオミズナギドリの数が徐々に増えてきました。オナガミズナギドリがオオミズナギドリに変わることで帰ってきたことを実感していると、アカアシカツオドリの集団が近づいてきました。白い個体や暗色タイプの成鳥、若鳥など、いろいろなタイプの個体が入り混じっており、合計で8羽くらいいたようです。ここまで様々な個体が入り混じる群れに出会ったことはなく、興味深い出会いでした。

アカアシカツオドリの集団
アカアシカツオドリの集団

船の北上に伴い、八丈島や御蔵島、三宅島、大島が見えてきました。大島沖を過ぎるころには浮上した潜水艦が目の前を横切り、東京湾に入るころに一旦、ご挨拶をして解散しました。観光客の多くは母島を訪ねることはありませんが、逆に言えば、母島はたくさんの自然で溢れており、固有種のハハジマメグロやオガサワラカワラヒワなどの希少な種が生息しています。

 

今回は、想定外のははじま丸欠航で母島に3泊することになりましたが、母島を隅々まで巡ることができ、貴重な体験ができたと思います。

 

(観察種数45種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

渡り鳥の楽園・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

飛行機は20分遅れで与那国島に到着しました。春の琉球らしく(?)ぐずついた天気の中、スタート。まずは、好調のムクドリ類を抑えに久部良集落へ。到着早々、強風の中、バライロムクドリ成鳥を見ることができました。与那国島でもなかなか成鳥は見られません。しかし、ちょっと見ただけで飛んでいき、周囲を探すも見つからず。小休止を兼ねて久部良ミトへ。すると今度はヤツガシラが飛び出し、全員で観察。アマサギやシロガシラも複数いました。

ヤツガシラ(撮影:簗川)
ヤツガシラ

続いて祖納へ。集落を歩き回るも、小雨が降ってきたので退散。インドハッカを見た程度でした。田んぼでは、複数のタカブシギ、コチドリ、アマサギなどを見て、比川へと向かいました。

比川ではセイタカシギやシラサギ類の群れなどを見て、久部良へ戻りました。

セイタカシギ(撮影:簗川)
セイタカシギ

雨も上がったので集落を歩いて、バライロムクドリを探しました。ほどなく、ムクドリの群れにいるバライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを発見し、時間を掛けてじっくりと楽しみました。

ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)
ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)

バライロムクドリの分布の西端が、今、世界中で心配されているウクライナの南東部、一躍有名になったマリウポリ辺りです。ロシアの侵攻で逃げてきたのか?と冗談にならない思いが巡りました。

バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)
バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)

2日目。夜明け前に出発して、祖納へ向かう林道を走りました。独特の「ファッ、ファッ……ファッ、ファッ……」というオオクイナの声を聞くことができました。道路に降りていたヤマシギも何度か飛びました。ヒヨドリの亜種タイワンヒヨドリやメジロの亜種リュウキュウメジロが鳴き始め、騒がしくなってきたところで祖納到着です。

 

まずは田んぼを見ました。早速、ツバメチドリを発見。疲れていたのか、じっとしています。何とも言えない独特の顔。コチドリ、タカブシギもいました。ムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイが飛んできました。

ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)
ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)

朝食後、久部良集落と久部良バリを回りました。久部良バリでムナグロの群れとツメナガセキレイを見て、集落ではムクドリの群れにバライロムクドリ、カラムクドリも発見。まだいてくれたようです。

ムナグロ(撮影:浅井賢治様)
ムナグロ(撮影:浅井賢治様)

また、やたら人馴れしているアカモズの亜種シマアカモズをじっくりと観察しました。

アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)
アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)

港でハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、そして亜種タイワンハクセキレイを見ていたら、いつの間にかヤツガシラがいました!大人気のヤツガシラ、みなさん、気分も高まります。しきりに地面をつついて採餌しています。ウグイスの亜種チョウセンウグイスはさえずりのみでしたが、聞くことができました。その後は久部良ミトへ移動し、アカガシラサギ夏羽も見ることができました。

アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)
アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)

祖納へ行く途中、水の張った田んぼでは、たくさんのセイタカシギ、タカブシギに混じって、ツルシギとオジロトウネンがいました。川の藪ではコムシクイの地鳴きが聞こえていました。

セイタカシギ(撮影:上山功夫様)
セイタカシギ(撮影:上山功夫様)

再び祖納です。オウチュウ情報があった場所でしばらく探しましたが、出会えず。タイワンハクセキレイ、ホオジロハクセキレイ、チョウゲンボウ、インドハッカなどで楽しみました。田んぼへ移動し、オジロトウネンを観察したあと、オウチュウ発見!全員で堪能することができました。お気に入りの場所からフライング・キャッチを繰り返して虫を捕っていました。

オウチュウ(撮影:上山功夫様)
オウチュウ(撮影:上山功夫様)

続いて東崎。マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリがいましたが、じっくり見る前に飛ばれてしまい、残念。比川に行く途中、ヤツガシラ情報の場所に行くものの、こちらは出会えず。

 

比川では、普段はあまりよく見られないシロハラクイナを見ることができました。森林公園で休憩し、最後は観光で日本最西端の西崎へ行き、この日を終えました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!