初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【後編】

Report by 戸塚学 / 2022年6月11日~16日

 

6月14日(火) 4日目 曇りのち晴れ

曇りなのか、霧なのか微妙な天気だが時間通りシャチをメインに観察する船に乗船しました。出航すると案内役のスタッフのアナウンスで「ミンククジラを探しに行きます」という事でその海域に移動します。確かにミンククジラは出るのですが相変わらず「背びれがちょっぴり」見えるだけですぐ隠れてしまう。シャチのようにゆっくりと堪能させてくれないのがとても歯がゆい。その後は船3艘でシャチを探しますが見つかりません・・・。

ハシボソミズナギドリの大群も見つからず、まばらにウトウとフルマカモメが飛んでいるだけで久々の「知床海上砂漠」を味わう羽目に。とはいえ生き物相手だから仕方がないことです。時間になったので船が帰港しようと走り出すと、どこからともなくフルマカモメの大群が、船が巻き上げる波に乗るようについてきました!大慌てで2階にいる参加者を呼びに行きしっかりと撮影をしてもらうことができました!こんなことは初めてで私自身が興奮をしてしまった!

フルマカモメ
フルマカモメ

午後はすっきりと晴れたので知床峠にギンザンマシコを狙いに行きました。最近あまり出てないような噂を聞いていたので「出るだけでもラッキーかな」と思って、余裕をぶっこいて絶景の中でみなさんとおしゃべりしながらお弁当を食べていると、ドライバーさんが私を呼ぶ?「戸塚さん、これマシコ?」と指さす先に・・・ハイマツの茂みに真赤なオスが、それも超近い!すぐにみんなを呼ぶが、撮れる場所は1ヶ所のみ。ワタワタしてるうちに上に移動。これまた近いが胸から上しか見えない。そうこうするうち離れた場所へ移動して、ハイマツのてっぺんでしばらくとまってくれたが、ハイマツの下に落下したのちそれっきり消えてしまった・・・残念。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

15時30分に切り上げ、帰り際に羅臼ビジターセンター寄ってから宿へ。昨日同様、夕食まで休憩をしました。夕食後はシマフクロウ・リベンジ撮影会。昨日同様に19時50分ごろ1羽が出現。20時50分ごろ1羽が来たのち、知らぬ間にもう1羽が来ていてペアでの撮影もできた。そしてこれまた昨日同様23時まで出現なしで終了となりました。

シマフクロウ
シマフクロウ
シマフクロウ
シマフクロウ

6月15日(水) 5日目

6時50分いきなり電話で起こされると、今日乗るシャチクルーズ船の会社だった。「今日は沖合の波が高いので欠航となりました」と言われ、唖然とする。快晴の超いい天気なのに・・・まぁ仕方ない。朝食時にみなさんに事情を説明して、ギンザンマシコ・リベンジ撮影会に切り替えました。昨日見た場所を重点的に探しますが見当たりません。ぶらぶらしながら探していると少し離れたところにカメラマンの群れが?しばしそこに集まるカメラマンの皆さんと同じ方向を見ていると・・・赤いオスが出た!すぐに参加者を呼びに行き、そこで待機。その後は結局、私が見た位置よりも近くには出なかったが4、5回出てくれたので、撮影結果は微妙だが、その赤い姿はしっかりと確認ができたでしょう。

一旦みなさんから離れるので説明をして、私だけ電話の電波が繋がるピンポイントへ移動しました。待っているのは午後のクマ・クルーズの船長からの連絡です。15分も待ったころ船長から電話がかかり「出るよ」の言葉に大急ぎで下山してお弁当を買い、車内で食べながら指定された港へ向かいました。

小舟でのクルーズなのでクマが出れば結構近くまで寄ることができので、初めに出た若いクマはかなり近くで撮影ができました。その後も次々とクマたちに出会うことができ、岬の先端では1頭の子連れのクマと2頭の子連れのクマも撮ることができました。それにしてもみなさんには岬の先端なんて滅多に来ることなんてできないので、これも超ラッキーなんだよと説明をする。

ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ

岬まで来てしまったため、ちょっと時間も押してしまったので帰りは速度を上げて港に向かいます。なのでクマがいても寄ることはないかなと思っていましたが、途中で船長が「2頭いる」と若い2頭の兄弟と思われるクマを見つけ、撮影をさせてくれました。この日出会えたクマは合計9頭と、私的には過去最高の遭遇率でした。ちょっぴり時間をオーバーしてしまったが、船長の計らいで有意義なクルーズになりました。

ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ
ヒグマ

今日の宿は斜里なので、移動にちょっと時間がかかるためどこにも寄らず帰るつもりが、出発してすぐに仔キツネを見つけてしまったので・・・撮影会開始。これがまた愛嬌のある個体で外に出て撮影しても逃げないし、一人遊びやポージングまでしてくれるので撮影時間が長くなるのは致し方なく、仔キツネが番屋の床下に消えるまでみなさんしっかりと楽しんでいただきました。

キタキツネ
キタキツネ

ドライバーさんから内陸の根北峠と知床峠どちらで行きますか?と聞かれたので天気もいいし、夕景がきれいな知床峠経由でお願いした。クマにもちょっぴり期待しましたが遭遇もなく、ほぼ時間通り無事宿に到着しました。

6月16日(木) 6日目 小雨のち晴れ

とうとう最終日、雨が降っていましたが、出発と同時に小雨になり止みました。小清水原生花園で小鳥を狙う前に、道路の反対側の湯沸湖湖畔に放牧してある馬たちがいるので、そちらを撮影してもらうことにしました。野生動物ではないのですぐ撮影を切り上げるかなと思ったのですが、結構みなさん必死に撮影しているので堪能するまで楽しんでもらいました。小鳥たちは気温が低いせいかあまり出てきません。しかし気温が上がりだすと、あちこちから虫の鳴き声のようなマキノセンニュウのさえずりが聞こえだします。センニュウ類はシマセンニュウ以外は「声はすれども姿は見えず」でストレスが溜まります。(笑)今年は寒いせいか花の咲きも遅くイマイチでしだが、それでもクロユリは見ることができました。

クロユリ
クロユリ

10時を過ぎたので、このツアーの最終ポイントへ移動します。ここでは湖畔の道を散策しながら生き物を探します。カワセミ、コチドリ、キバシリを確認撮影できたのは良かった。キツツキ類にも期待しましたが、時間的に厳しい(早朝が一番出る確率が高い)せいもあり、期待したクマゲラ・コアカゲラは見られずに残念でした。雨も上がり晴れてくると暑いくらいです。空港で荷物のパッキングもいいのですが、晴れているし広い駐車場でのんびりとパッキングしてもらうことにしました。荷物を積み込み、予定時間ぴったりに空港へピックアップをして無事終了となりました。そして私だけ中標津空港へ送ってもらうことになっていたので、車で走り出すと雨が降りはじめました!悪い天気ながらそれなりに今回の参加者の皆さんは当たりを引いていることを実感することになりました。
参加されたみなさま、5泊6日という長い時間本当にお疲れさまでした!

オオジュリン
オオジュリン
ノゴマ
ノゴマ
ノビタキ
ノビタキ
アマツバメ
アマツバメ

撮れた鳥
ウミウ・ヒメウ・チシマウガラス・アオサギ・フルマカモメ・ハシボソミズナギドリ・タンチョウ・カッコウ・アマツバメ・コチドリ・オオジシギ・オオセグロカモメ・ウミガラス・ケイマフリ・ウトウ・エトピリカ・ツノメドリ・オジロワシ・シマフクロウ・キバシリ・アカゲラ・ハシブトガラ・シジュウカラ・シマセンニュウ・コヨシキリ・コムクドリ・ノゴマ・ノビタキ・ハクセキレイ・カワラヒワ・ベニマシコ・ギンザンマシコ・アオジ・オオジュリン・コムクドリ

見れた鳥
ヒドリガモ・マガモ・スズガモ・ツツドリ・ウミネコ・トウゾクカモメ・トビ・カワセミ・クマゲラ(食痕)・モズ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ヤマガラ・ヒバリ・ツバメ・イワツバメ・ヒヨドリ・シロハラゴジュウカラ・ムクドリ・スズメ・キセキレイ・ウソ・ホオアカ・カワアイサ・キジバト・ツツドリ

声を聞けた鳥
コマドリ・アカハラ・トラツグミ・ホトトギス・ウグイス・エゾムシクイ・センダイムシクイ・マキノセンニュウ・エゾセンニュウ・オオヨシキリ・キビタキ

他の生き物
ヒグマ(撮)・ラッコ(撮)・ミンククジラ(撮)・エゾシカ(撮)・エゾタヌキ・キタキツネ(撮)・シマリス・ネズミ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

初夏のみちのく山形 海から山まで -目指せ100種!-

Report by 簗川堅治 / 2022年6月9日~12日

 

山形県を一周し、初夏の鳥たちをできるだけ多く楽しむツアーです。結果としては雨も降らなかったことが幸いし、104種を確認することができました。

 

1日目。出発はガイドの簗川の地元・天童市です。まずは「こんな所で?」という場所でコチドリを観察。ヒバリが鳴き、ノスリが電柱に止まっています。

続いては神社へ。沼のほとりで朝をとるヨシゴイ、飛び交うコムクドリ、そして「キーキーキー」と鳴くチゴハヤブサを確認。次の目的地に移動中にオナガをゲット。

ヨシゴイ
ヨシゴイ
チゴハヤブサ
チゴハヤブサ

今度は違う神社で巣立って大きくなったフクロウを観察。かわいい!また移動して、こちらでも巣立って大きくなったバンの兄弟を観察。

フクロウ
フクロウ

今度は猛禽類を観察しに行く途中で、越夏中のキンクロハジロをゲットし、山間部へ到着です。猛禽類の定点です。しばらくしてノジコを観察、サシバが登場し、オシドリが通過。残念ながら、イヌワシ、クマタカは出ませんでした。

ノジコ
ノジコ

次の場所に移動中にハリオアマツバメとアマツバメなどを追加し、この日、最後の場所でトラフズクを観察しました。

トラフズク
トラフズク

2日目。早朝探鳥でアカショウビン、キバシリ、そしてオオアカゲラを狙います。しかし、それどころか、他の鳥もあまり鳴いておらず閑古鳥状態。結局、キバシリとアカショウビンは声のみ、オオアカゲラはそれらしい声は聞こえましたが確認まで至らず。他、ノジコやコサメビタキ、コガラ、ニュウナイスズメなどを確認して朝食の時間となりました。

山頂
山頂

朝食後は山間部で猛禽類を探すも時間帯が早かったせいもあり収穫はなし。河原ではカワガラスやオシドリを確認しました。

続いては、ちょっと難関のコジュリンとオオジュリン、そしてアリスイに挑戦。見づらかったものの、コジュリン、オオジュリンは確認できました。アリスイは声すらせず。他、コヨシキリやホオアカ、そして居残りのオオハクチョウを観察しました。

コヨシキリ
コヨシキリ

お昼を挟んで、シロチドリ探しです。いるはいるものの、遠すぎて陽炎ゆらゆらの中での観察でした。キアシシギは思わぬ収穫です。

続いて、ミサゴの巣を離れた場所から観察しようとしたところ、真上につがいが登場!ラッキーでした。

ミサゴ
ミサゴ

今度は、これまた難関のチゴモズです。しかし、けっこうあっさりと登場。オオタカも確認できました。おまけはイスカでした。

チゴモズ
チゴモズ

なかなか順調なので、ササゴイに挑戦。しかし、現れてくれませんでした。それでもカッコウやノスリ、そして小鳥を追いかけるオオタカの姿が観察できした。

この日最後はコアジサシを探しました。ところが今年はひと月前に100羽ほどいた群れが全くいなくなり、残念な結果になりました。それでも愛想の良いシロチドリで楽しいひとときを過ごしました。

シロチドリ
シロチドリ

3日目。まずは山形県唯一のカンムリカイツブリの繁殖地へ。無事見られ、マガモも追加。しかし、他はパッとしなかったため、山へ移動し、巣材をくわえたイカルや巣立ったエナガなどを観察しました。

イカル
イカル
カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ

朝食後は移動途中でハヤブサの親子と観察し、その後、コシアカツバメをじっくりと観察し、山間部へ。ここでまたクマタカを待つも現れず。移動中にクロサギを探すも、これまた現れず。

コシアカツバメ
コシアカツバメ

一旦、新潟県に入り、再び山形県内へ入り、ブッポウソウを待ちます。無事、観察できました。クマタカも期待しましたが、今度も現れず。

ブッポウソウ
ブッポウソウ

移動して湿地帯でケリを探しましたが、これも外しました。しかし、チョウゲンボウと山形県ではもっとも見づらい鳥のひとつ、セッカを確認。

この日の最後は、急きょ予定を早め亜高山帯へ。翌日が雨予報だったためです。高山帯では、きれいなウソが間近で見られたり、ホシガラス、メボソムシクイなどを追加確認しました。

4日目。雨予報でしたが、結果としては降らずに済みました。ラッキーです。早朝、ビンズイ、ルリビタキなどで楽しみ、朝食後は㊙の鳥を観察。

ルリビタキ
ルリビタキ

解散の時間も迫ってくる中、市街地の公園でアオバズクやチゴハヤブサを観察して、すべての行程を終え、最後は山形名物「冷たい肉そば」でお腹も満腹にして解散しました。

アオバズク
アオバズク

せわしない日程でしたが、たくさんの鳥を観察することができました。ありがとうございました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)
アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )
アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)
カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)
サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【後編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

ツアー3日目

島の朝はゆっくりです。この時期の日の出は6時半頃。朝食を7時にとって出発です。宿の前が小・中学校なので朝食までの30分を利用して散歩がてら久部良バリまでを往復するプチ朝探へ。途中、学校脇の電線に止まっている3羽のカラムクドリが見られました。

カラムクドリ(撮影:早川弘美さま)

島での探鳥は各所にあるポイントを丹念に回るスタイルです。平地では歩きながら探鳥をしたいところですが、今年は予想を上回る暑さで、島の人が「これまでで一番暑い」というほどです。なので灼然の炎天下を延々と歩くのは諦めて、ここという場所を効果的に歩きました。今日こそは皆さん一番のリクエスト、セジロタヒバリとハイイロオウチュウを狙います。

島ではツメナガセキレイが一番目につきます。次に多いのは留鳥組のシロガシラ。次いでヒヨドリやアカモズとなります。島のヒヨドリはタイワンヒヨドリという亜種、アカモズはシマアカモズという亜種なのがいかにも与那国的です。

シロガシラ
タイワンヒヨドリ
シマアカモズ

比川ではいつもの顔ぶれに、ハマシギとジシギ類が加わっていました。顔つきや羽衣などからチュウジシギと思われましたが念のために尾羽も確認しOK。与那国岳に向かう林道を歩いていると蝶の姿が目に付きます。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ベニモンアゲハ、ミカドアゲハなどが沢山飛んでいて、一時は蝶の撮影会に。ここではエゾビタキ、コサメビタキ、オオルリなどのヒタキ類やブッポウソウもチラホラと現れました。ブッポウソウは昨日よりも増えていて5羽以上はいましたが、どれも今年生まれの幼鳥でした。

チュウジシギ(撮影:早川弘美さま)
エゾビタキ(撮影:伊原やよいさま)
オオルリ雄若鳥(撮影:早川弘美さま)

今日のお昼はピクニックランチ。といっても売店で買ったパンなどですが、自然の中で食べるのはなぜか違って美味しいのです。遠くの梢に止まるブッポウソウを見ながらお昼のひと時を過ごしました。

与那国島ならではのシュモクザメを模った手作りパン

午後からは目標の2種に絞って探鳥を進めることに。両種のいそうな場所を狙ってこまめに探していると、いました!セジロタヒバリです。地面で餌を採っていると、すぐにキセキレイがやってきて飛ばされてしまいます。炎天下の中、粘り強く待ち続け、ようやくじっくりと観察できました。カメラの方も無事シャッターに収めることが出来て喜んでおられました。

セジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

次はハイイロオウチュウを求めて探します。島で一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(オオバアコウ)の場所でオオルリ、エゾビタキ、サメビタキ、コムシクイ、南牧場でマミジロタヒバリ、久部良ミトゥではヨシゴイなどを見ながらお目当てのものを探します。と林縁から飛び出す1羽の鳥が。ハイイロオウチュウです。まずは飛ばさないように遠目から観察していると盛んにフライキャッチして虫を食べています。そのうち向こうから飛んできて近くの電線に止まりました。皆さんここぞとばかりのシャッターチャンスです。プロミナー組はドアップで観察。わずかの時間ですが本種を堪能することが出来て皆さん大満足の様子でした。

ハイイロオウチュウ(岡本圭祐さま)
コムシクイ(撮影:早川弘美さま)
島一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(撮影:門永洋子さま)

宿に帰る前に立ち寄った久部良漁港でクロハラアジサシを観察し、3日目の探鳥を終了しました。夕食後に鳥合わせと皆さんからの質問を受ける形でちょっとした識別講座を行い、本日56種の確認となりました。

クロハラアジサシ(撮影:伊原やよいさま)

ツアー4日目

今朝も久部良バリまでの散策で始まり、アカガシラサギやツメナガセキレイなどを観察。今日の朝食は洋食で皆さん嬉しい様子。まずは北牧場を覗きます。牧場へ向かう小道を歩いていると、ちょうど朝イチの飛行機が来る時間です。滑走路の端で待機していると、晴天をバックに頭上をかすめて着陸するシーンが見られとても感激しました。牧場内はツメナガセキレイが多く、ムナグロも沢山います。マミジロタヒバリを見つけ観察していると「ツグミみたいなのがいます」の声。見ると胸がよだれかけ状に赤く、腹の白い鳥が。すぐに飛びましたが上面は綺麗なスレート色でした。ノドアカツグミの雄です。その後、飛去した方向を捜索しましたが出会いは一瞬の出来事でした。

マミジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

祖納のゴミ捨場跡地をチェックしたあと、東へ車を走らせ鳥を探します。丹念に電線をチェックしていると再びハイイロオウチュウを発見。昨日とは場所も違い、体色にも違いがあるので別個体です。ここでも良い感じの距離で観察ができました。島を半周回る形で鳥を探し、途中の小さな貯水池ではカイツブリ、セイタカシギ、コアオアシシギ、チュウジシギなどを確認。ヒバリシギは冬羽に換羽しているのがいて幼羽との違いをゆっくり観察できました。

コアオアシシギ

昼食と少しの休憩を挟んで探鳥の再開です。比川でアカガシラサギをゆっくり観察したあと、山へ向かいます。遊歩道で鳥を探している時にお客さんの一人がヨナグニサンの繭を発見。当たり前ですがアヤミハビル館で見たものそのものです。よくもまあこんなのを見つけたものだと皆さん感心しきりでした。その後、ラッキーなことにヨナグニカラスバトが飛ぶところが見られました。

ヨナグニサンの繭
アオムネスジタマムシ(撮影:門永洋子さま)
アオミオカタニシ(撮影:門永洋子さま)

山を離れ、平地へと移動し、各所のポイントを回りましたが、昨日のセジロタヒバリの姿は既になく、新しい種にも出会わず顔ぶれは同じでした。夕方の久部良ミトゥは塒入り前のシロガシラがうるさく騒いでいます。セイタカシギは8羽に増えていて、クロハラアジサシの小群が上空を舞っています。近くのさとうきび畑でキガシラセキレイを探していると黒く大きなものが林に飛び込んだとのこと。「オオコウモリかもしれませんよ」と話しているとお客さんが木にぶら下がっているのを見つけられたところで本日の探鳥は終了となりました。夕食後に鳥合わせと今日もプチ識別講座を。実際の音源を聞きながら、見た目での識別が難しい種などの識別を学びました。本日の確認種は60種でした。この3日間、リュウキュウコノハズクの声を聞こうと真っ暗な中を久部良ミトゥ近くまで歩いてみましたが、結局声は聞けませんでした。新しく建った自衛隊の施設が影響しているのかもしれませんね。

宿の夕食

ツアー5日日

いよいよ今日が最終日です。朝の散歩探鳥ではチュウシャクシギ、ケリ(昔は南西諸島では珍しかったが最近は時々記録されます)、ムナグロをゆっくり観察。夕日の見える丘では海上からセジロタヒバリ5羽の群れが鳴きながら飛来し、島内へ飛んでいきました。

今日は昼前のフライトなので探鳥の時間はそれほどありません。皆さんのリクエストから北牧場と森林公園を小1時間ほど探鳥することに。北牧場ではマミジロタヒバリ、ハヤブサなどをじっくり見て、森林公園ではアカヒゲの囀りを聞くことが出来ました。公園近くの林内でオオゴマダラとリュウキュウアサギマダラが鈴なりになっている木があり、皆さん感動しておられました。

ハヤブサ(撮影:早川弘美さま)
オオゴマダラの群れ

終了時に東の外れでベニバトの情報が舞い込みましたが、時間切れのため残念でした。空港で搭乗手続きを済ませたあとで鳥合わせを行い、5日間のバードウォッチングの旅が終了となりました。

今回はずっと晴天続きで鳥影が薄く、毎日30度超えの猛暑の中での探鳥になりました。また、水のある水田が無いなど環境的に厳しいこともありましたが、終わってみれば出現種は91種とまずまずの結果でした。お目当てのハイイロオウチュウとセジロタヒバリをじっくりと観察・撮影を出来たのは何よりで、色々と厳しい条件下でもやはり与那国島は珍鳥の渡る交差点なのだと思わせてくれるツアーでした。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

渡り鳥の楽園・秋の飛島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2021年10月22日~24日

 

定期船とびしまは検査のため、代船のきららの初運航日でのスタートとなった22日、無事、出航しました。

まずは、昨日確認され、今朝もいたハイイロオウチュウを狙いました。本来は南の鳥で、中国南部などに生息しています。飛島では2017年の秋以来、2度目の記録のド珍鳥です。しかし、なかなか出てきません。約一時間待ちましたが、現れないので引き上げることとしました。抜けてしまったか?

するとちょうど、すぐ近くでコノドジロムシクイがいることがわかり、草地や樹上で採餌する珍鳥・コノドジロムシクイをじっくり見ることができました。

今度は階段を上がり、「3の畑」へ行きました。今年は島中の柿の実が夏に落ちてしまい、ほとんどなっていません。柿の実がなっていれば色々な鳥が訪れ楽しめるのですが、それも叶いません。わずかに残された柿の実にメジロがきていました。他、畑ではミヤマホオジロ、カシラダカ、ジョウビタキなどを見ることができました。北へ進み、鳥海荘の畑の脇の畑でもわずかに残った柿の実にシロハラやツグミが来ていました。

今度は山グラウンドでニシオジロビタキ情報が出てきましたので向かいます。トイレ休憩を兼ねて、山グラウンドでニシオジロビタキを探すことしばし。独特の「ディッ…ディッ…」という声とともに、ニシオジロビタキの登場です。♀型のようです。地上30cm程度を鳴きながら移動し、餌を探していました。

ヘリポに移動しましたが、芳しくありませんでしたので、校庭に向おうとしたところに、開始時に見られなかったハイイロオウチュウが出ていると情報が入りました。校庭をパスして、急ぎ、現場に向かいました。歩くこと約15分。いました!ド珍鳥・ハイイロオウチュウです。電線に止まっては飛び立つのを繰り返しています。フライング・キャッチをして飛んでいる虫を捕っているようです。全身灰色で目の周りが白く、愛嬌のある顔をしています。長い尾の先端が二股に分かれ、外側に反っているところはオウチュウ類の特徴です。ハイイロオウチュウのお陰で、いい一日の終わりにすることができました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の富士山奥庭で亜高山帯の野鳥観察

Report by 吉成才丈 / 2021年8月21日~22日

真夏の暑さとは無縁の富士山五合目・奥庭ですが、直前の天気予報は雨…。少しでも好転することを願いつつ、新宿のバスターミナルを出発しました。途中、富士山の姿が見えてきてほっとしましたが、やはり厚い雲が気になります。今回は1泊2日の短い行程なので、できるだけよい条件で..と富士山に祈りながら向かいました。

車窓の富士山
車窓の富士山

昼すぎに奥庭荘に到着すると天気は曇りで、時折、陽も差し始めるという好条件。標高も2,200m近くあるので気温も20度ほどと涼しく、下界とは異なり快適そのものです。

奥庭荘
奥庭荘

なぜこの奥庭荘を訪ねたかというと、ここには高山では貴重な水場があり、亜高山帯の鳥たちが水を飲んだり水浴びに来る様子が間近で観察できるのです。間近で、ですよ!

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

さっそく観察・撮影のスタンバイをすると、ルリビタキやウソ、ホシガラスが水場にやってきてくれました。

ルリビタキ(幼鳥)
ルリビタキ(幼鳥)
ウソ(オス)
ウソ(オス)
ホシガラス
ホシガラス

すこし慣れてくると、皆さんも鳥たちの行動パターンが分かるようになり、水場の前後にとまる木や岩にとまる姿も撮れるようになります。

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

そして翌日の午前中も天気はもち、昼頃まで亜高山帯の鳥たちを楽しむことができました。

奥庭の魅力は、夏の暑い時期に亜高山帯の鳥たちが間近で楽しめること。
水場だけならほぼ歩かず、片道約300mの散策路を歩くと景色や野鳥、高山植物などが楽しめ、自分のペースで自由に観察・撮影ができること。体力に自信のない方もOKです。そして雲がかからなければ、夕方には赤く染まる富士山が間近に見えることなど。今回は雲がかかって赤富士は見られませんでしたが、鳴声をたよりにキクイタダキやメボソムシクイを撮影された方もいました。

 

暑さと鳥の端境期で出かける場所も少ないこの時期には、標高が高くて快適な奥庭は最適な鳥見スポットです。来年は、赤く染まる迫力ある富士山もぜひ..。

目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません
目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

4日目は旭岳に向かう前に紋別のオムサロ原生花園に向かいます。オムサロ原生花園では前日撮影が難しかったシマセンニュウやコヨシキリが見られ皆さん楽しまれました。帰る直前には車の横に綺麗なベニマシコのオスが現れ、センダイハギの黄色い前ボケとのコラボレーションで撮影できました。旭岳に向かう途中にはエゾライチョウを探しましたが、残念ながら今回は見られませんでした。

シマセンニュウ
シマセンニュウ
コヨシキリ
コヨシキリ

ベニマシコ昼からはガイドさんと合流し旭岳でギンザンマシコ探しです。残雪の上を歩きながら歩いていくと、カヤクグリやビンズイがあちこちで囀りを響かせています。この時期にはない残雪の上を歩き少々苦労しましたが、観察ポイントに到着し早速ギンザンマシコを探していきますが全く出る気配がありません。16時を過ぎ見られたのはカヤクグリとノゴマとルリビタキ、そしてウソのみです。今日は見られないかなと諦めの気持ちが出てきた頃、ちらっとだけ遠くにギンザンマシコのメスが出てきましたが、すぐにハイマツに隠れてしまいその後見ることはできませんでした。生存確認はできたので、なんとか明日は見つけたいものです。

 

5日目は新型コロナウイルスの影響で早朝ロープウェイは運行しておらず、朝はホテルの周辺でバードウォッチングです。コガラやヒガラ、コルリなどの囀りを聴きながら森に入ります。途中キビタキの声が近くで聞こえ、ダケカンバを見ると綺麗なオスの成鳥がいました。大きく動かずにいてくれたおかげで、皆さんじっくりと観察できたようです。その後帰りの道中では普段あまり姿を見ることがないウグイスを観察することもできました。

ウグイス
ウグイス

9時からは再度旭岳に登りギンザンマシコ探しです。カヤクグリが目の前のハイマツにとまり楽しませてくれましたが、なかなかギンザンマシコは現れず段々と終わりの時間が気になりだします。

カヤクグリ
カヤクグリ

ふと形に違和感を覚えた遠くのハイマツを双眼鏡で覗くとギンザンマシコのオスが!慌てて皆さんと場所を共有し2枚だけ確認写真を撮ると、スッとハイマツから降り、その後は姿を現すことはありませんでした。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

その後終了の時間までギンザンマシコを探している間は、少し離れた看板の上で囀るノゴマを見つけ、静かに寄るとファインダーに入り切らないほど目の前で美声を聞かせてくれました。

ノゴマ
ノゴマ

時間となり下山し、次は十勝岳に移動です。途中北海道を代表するコンビニ、セイコーマートで昼食を買い、到着後綺麗な山を眺めながらピクニック気分でお昼ごはんです。食後は氷河期の生き残りであるナキウサギを探しに行きます。ポイントに到着し、静かに待つとピチッというナキウサギの鳴き声が!途中にはシマリスがそばを通過してくれ、可愛い姿を見せてくれ、ナキウサギもこの流れで見れるかなと期待が高まりましたが、残念ながら今回は出会えませんでした。

シマリス
シマリス

6日目は旭岳からサロベツ原野へ移動です。最初は幌延ビジターセンターのある通称下サロベツでバードウォッチングです。ツメナガセキレイがしきりに姿を見せ、遠くにはチュウヒの姿が見えていました。サロベツ原生花園では今年はシマアオジの姿が確認されておらず、残念ながら出会うことはできませんでしたが、ノビタキやアリスイなどに出会い楽しませてくれました。ホテルでは夕食後窓を開けると付近から「キョキョキョキョ……」とヨタカの声が。その他にもオオジシギやヤマシギなど贅沢な自然のBGMを聞きながら就寝です。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ

7日目はツアー最終日です。この日はサロベツ湿原を代表する野鳥ひとつであるアカエリカイツブリを探します。早朝はご希望の方のみで周辺にバードウォッチングです。朝靄の美しい牧草地を見ながら、キャンプ場と沼を散策です。キャンプ場では車から降りるとアカハラの囀りが聞こえ、見上げるとトドマツの梢にシルエットで姿を確認することができました。歩いているとアカゲラが子育てをしており、盛んにヒナが餌をねだり鳴いています。これには親も大忙しで1分おきに餌を運びてんやわんやです。沼では遠くに浮かぶ2羽の鳥が。確認するとアカエリカイツブリ抱卵の準備をしています。朝食後最後のバードウォッチングに出かけ、アカエリカイツブリの距離の近い個体を探します。複数の沼を探すもなかなか見られず、以前繁殖を確認した沼を最後の望みに覗くと、ペアは確認できませんでしたが、アカエリカイツブリの夏羽が見られました。

アカエリカイツブリ
アカエリカイツブリ

今回のツアーでは草原の小鳥から高山の鳥まで様々なものを観察でき、移動は長かったですが有意義な時間を過ごされたのではないでしょうか。この時期は特に草原性鳥類の子育てが見られるのが最大の魅力です。来年もこの時期に行えれば幸いですので是非また北海道の小鳥達に会いにお越し下さい。ツアーにご参加された皆様お疲れさまでした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

前日までの予報はすべて雨、ツアー3日目に関しては特に大雨予報という先月のツアーに引き続き天候に不安を覚えていましたが、なんと今回は最初から晴れ間が見える天候に恵まれた状態でツアーがスタートです。

ノビタキ
ノビタキ

中標津空港で合流後、早速野付半島へ向かいます。野付半島ではセンダイハギやエゾカンゾウなどの初夏の花が咲き、色鮮やかな風景が広がります。
野付半島の海浜草原ではノビタキがせっせと雛に餌を運び大忙しです。海沿いではオジロワシが佇み、付近のキタキツネの親子やウミウなどの水鳥を狙っています。
野付半島の名物のひとつでもあるエゾシカも道中オスの群れが見られ、皆さん大興奮でした。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島のあとは西遊旅行が運営する羅臼町のゲストハウス、知床サライに向かいます。チェックインし夕食を食べたあと、夜はシマフクロウの観察です。この時期のシマフクロウは雛が巣立ちを迎え、親は餌運びに大忙しなはず……と密かな期待を胸に到着すると、昨日までは全然見られていないと観察場所のスタッフの方から伺い、テンションダウンです。
それでも20時頃に出るかもしれないとのことで、準備をすると、なんとすぐにシマフクロウのオスが出現!全員が不意をつかれ慌てて撮影と観察をします。

オスのシマフクロウ
シマフクロウのオス

見られたー!と喜んでいると、15分後くらい経つとまたオスが現れました。そしてその直後影が動いた?と思うとなんとメスも登場です!この場所のメスはほとんどこの場所に姿は現さず、最後に2羽で見られたのは1月に10秒ほどとのことで、全く予期していなかったペアでの登場に全員が大興奮です!2時間ほどずっとこの場所から離れず、飛んで離れたときにそそくさとこの場所を離れ、いきなり内容の濃い1日目が終了です。

ペアのシマフクロウ
ペアのシマフクロウ

2日目は午前、午後と観光船に乗り海鳥とシャチ探しです。出航してすぐにシャチ発見です。1グループだけではなく、どの方向を向いてもシャチのグループがいます!全体で50頭ほどを観察でき、スパイホップも見せてくれました。

シャチ
シャチ

シャチの周りにはフルマカモメやハシボソミズナギドリの群れもおり、目の前を通り抜け、シャチを見ればいいのか海鳥を見ればいいのかわからない贅沢な状態が終始続きました。

フルマカモメ
フルマカモメ

午後にはフルマカモメが1箇所にかたまりなにかを食べています。写真で確認すると食べているのはオキアミなどの動物性プランクトンのようです。羅臼では毎年フルマカモメを観察できますが、この日は特に多く、珍しい場面を見ることができました。帰りにはオオセグロカモメが堤防の上で巣材を咥えていたり、巣の上で抱卵していたりと、この時期ならではの生態も見られました。

フルマカモメの群れ
フルマカモメの群れ

3日目からは羅臼を離れ、オホーツク海沿岸を北上し私の地元紋別を目指します。知床峠では今回の最大目的のひとつであるギンザンマシコを探す予定でしたが濃霧のため視界がなく、旭岳に期待を託し早々に撤退です。小清水原生花園ではエゾキスゲが見頃を迎え、鳥の姿はあまり見えませんでしたが道路脇で草を喰む馬の姿などを楽しみました。ワッカ原生花園ではノゴマがエゾノシシウドの上にとまり綺麗な声で囀ってくれたり、花の上にいる虫を狩る瞬間を見れたりと、少し歩いただけでしたが様々な鳥たちが楽しませてくれました。

オオジュリン
オオジュリン

シブノツナイ湖ではノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、シマセンニュウ、コヨシキリがそこかしこで見られ、さらに何度も花の上にとまってくれる大サービス!

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
ノビタキの親子
ノビタキの親子

皆さん見るものが多すぎて前に進みません。この次にコムケ湖も見る予定でしたが、コムケ湖は湖畔にあるワタスゲの群落を観察し、ホテルに向かい終了です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!