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小笠原ツアー特集小笠原の野鳥

小笠原の海鳥

小笠原諸島の島々や岩礁は多くの海鳥たちの繁殖地になっています。絶滅危惧種に指定されているアホウドリをはじめ、ミズナギドリの仲間のオナガミズナギドリやアナドリ、カツオドリなど、これまでに20種もの海鳥の繁殖が確認されています(※東京都観光局)。人が持ち込んだヤギが野生化したことによる環境の変化や、ネコやクマネズミなどの哺乳動物により捕食、漁業による混獲や海洋汚染のため、これらの海鳥が減少してしまっているため、現在ではさまざまな保全活動が行われています。
春・秋の渡りの時期になると、多くの海鳥たちが太平洋上を飛び、おがさわら丸の船上からも観察することができ、父島に到着するまでの間もバードウォッチングを楽しむことができます。

アホウドリ

アホウドリ
種名 アホウドリ
英名 Short-tailed albatross
学名 Phoebastria albatrus
分類 ミズナギドリ目アホウドリ科
体長 翼開長210〜230cm
体重 4~5kg
分布 北太平洋
アホウドリ
昭和の終わりごろに、聟島列島で撮影されたアホウドリの写真(現在は上陸できません)
昭和の終わりごろに、聟島列島で撮影されたアホウドリの写真(現在は上陸できません)
昭和の終わりごろに、聟島列島で撮影されたアホウドリの写真(現在は上陸できません)
昭和の終わりごろに、聟島列島で撮影されたアホウドリの写真(現在は上陸できません)

アホウドリは翼を広げると2mを超え、日本で見られる最大級の海鳥です。冬~春の繁殖期を除き、夏はベーリング海やアラスカ湾・アリューシャン列島周辺の海上で生活しています。日本での繁殖は、小笠原と本州の中間にある伊豆鳥島や尖閣諸島で確認されています。かつては伊豆鳥島に無数に生息していましたが、良質な羽毛を採取できることから明治期に乱獲され、戦後には一時絶滅宣言も出されました。その後の調査で再発見され、保護活動として小笠原聟島に新たな繁殖地を作るプロジェクトが実施されました。 成鳥は全体的に白い部分が多く、首から頭にかけて黄色、嘴は薄いピンク色で先端だけが薄い青色をしています。大きな翼は長距離を飛ぶには最適ですが、発着陸はいささか不格好になります。

絶海の孤島で繁殖し外敵がいないため、警戒心がとても薄く簡単に捕まえることができたため、アホウドリという残念な名前を付けられてしまいました。アホウドリは巣立ちから5~7年後に繁殖をはじめ、一年に一回、一つの卵を産みます。一度つがいになると、生涯を添い遂げます。寿命は長く、50歳まで生きた記録も残っています。小笠原の聟島では、早いものだと10月末ころには南下してきて、子育てをして5月頃にまた北の海へと旅立ちます。
※これまで同じ種と考えられていた伊豆鳥島と尖閣諸島のアホウドリは、遺伝的・生態的な違いがあることから、2020年11月に別種であると解明されました。(山階鳥類研究所発表)

クロアシアホウドリ

クロアシアホウドリ
種名 クロアシアホウドリ
英名 Black-footed albatross
学名 Phoebastria nigripes
分類 ミズナギドリ目アホウドリ科
体長 翼開長190〜210cm
体重 2~4kg
分布 北太平洋
聟島の繁殖地のクロアシアホウドリ
聟島の繁殖地のクロアシアホウドリ
聟島の繁殖地のクロアシアホウドリ
聟島の繁殖地のクロアシアホウドリ
クロアシアホウドリ
クロアシアホウドリ
聟島列島を飛ぶクロアシアホウドリ

その名の通り体も足も黒褐色で、アホウドリより一回り小さく、目の周りと嘴の付け根が白いのが特徴です。鳥島、聟島列島、硫黄島などで繁殖し、船上から島の斜面に営巣している様子を遠望することができます。

黒い体で識別は容易にみえますが、アホウドリの若い個体に似ているので注意が必要です。嘴の大きさや色に注意してみましょう。 アホウドリ同様、夏季はアラスカ湾やアリューシャン列島周辺に渡ります。

コアホウドリ

コアホウドリ
種名 コアホウドリ
英名 Laysan Albatross
学名 Phoebastria immutabilis
分類 ミズナギドリ目アホウドリ科
体長 翼開長195〜200cm
体重 2~3kg
分布 北太平洋
コアホウドリ
聟島の繁殖地を飛ぶコアホウドリ

アホウドリより一回り小さく、羽の上面は一面黒褐色、目の周りも隈取したように黒く特徴的です。おがさわら丸航路や聟島列島周辺で、飛翔している様子を見ることができます。世界最長寿のコアホウドリがアメリカ・ミッドウェー島にいます。ウィズダムと名付けられたメスのコアホウドリは、2019年時点で68歳とされ、毎年1つの卵を産み続けています。

アホウドリ、クロアシアホウドリと同様に夏になるとはるかアリューシャン列島付近の海へ行き、冬から春に繁殖のために戻ってきます。

帰ってきたアホウドリ 聟島列島への再導入プロジェクト

鳥島・尖閣諸島で繁殖しているアホウドリですが、火山島である鳥島はひとたび噴火してしまうとその繁殖地が失われてしまう恐れがあります。また尖閣は政治地的理由により保全活動ができないため、両島以外の第三の繁殖地を作るプロジェクトが、山階鳥類研究所により実施されました。その候補に選ばれたのが、かつて繁殖していた小笠原の聟島列島です。2000年頃からこの海域でアホウドリが観測されていたこと、近縁種のクロアシアホウドリとコアホウドリが繁殖していることも、アホウドリの繁殖を後押しするだろうと見込まれました。アホウドリを聟島へ呼びよせるために、これまで鳥島で実施されていたデコイ(模型)や鳴き声を流す装置などを設置するほか、繁殖のために生まれた島へ戻ってくるというアホウドリの習性(刷り込み)を活かし、鳥島で生まれた雛を聟島へ運んで人工飼育し、聟島から飛び立たせるという世界にも例を見ないプロジェクトが行われました。2008年から2012年までの5年間に移送した70羽のうち69羽が巣立ち、初移送の3年後(2011年)に初めてアホウドリが聟島に帰ってきました。2012年にはカップルが誕生し、翌年から毎年卵を産みましたが残念ながら孵化するに至りませんでした。2016年、ついに雛が生まれ無事に巣立つことができました。小笠原諸島においては、80年振りにアホウドリの雛が誕生する快挙となりました。新たな繁殖地の形成の貴重な第一歩となりました。

オナガミズナギドリ

オナガミズナギドリ
種名 オナガミズナギドリ
英名 Wedge-tailed Shearwater
学名 Puffinus pacificus
分類 ミズナギドリ目ミズナギドリ科
体長 翼開長100cm前後
体重 300g
分布 インド洋、太平洋
父島周辺の海上を飛ぶオナガミズナギドリ
穴を掘ったり岩の隙間に巣を作ります
父島周辺の海上を飛ぶオナガミズナギドリ
父島周辺の海上を飛ぶオナガミズナギドリ
父島周辺の海上を飛ぶオナガミズナギドリ

小笠原諸島の島々で繁殖するオナガミズナギドリ。暗色型と淡色型がありますが、小笠原で観察されるのは淡色型です。日本名の通り尾が長く、英名のWedge-tailedは「くさび型の尾」を意味しています。オナガミズナギドリは太平洋・インド洋の熱帯から亜熱帯地域に分布し、日本では小笠原諸島のみで繁殖が確認されており、聟島列島から火山島列島(硫黄島列島)まで広範囲にわたって繁殖しています。

オナガミズナギドリは岩の隙間や土に穴を掘って営巣します。そのため、母島の南崎ではノネコによる被害で一時消滅寸前にまでなりましたが、ノネコを排除したことにより、いまでは数も回復してきています。4~5月の春に営巣・産卵します。11~12月半ばまでに雛が巣立ち、次の繁殖まで南の海上で過ごします。

アナドリ

アナドリ
種名 アナドリ
英名 Bulwer's Petrel
学名 Bulweria bulwerii
分類 ミズナギドリ目ミズナギドリ科
体長 翼開長60~70cm
体重 100g
分布 インド洋、大西洋、太平洋
父島周辺の海上を飛ぶアナドリ
父島周辺の海上を飛ぶアナドリ
父島周辺の海上を飛ぶアナドリ

父島列島の南島や東島などで繁殖しています。小笠原では5月~11月頃まで観察され、オナガミズナギドリ同様に、岩の合間や草地に穴を掘って営巣します。繁殖期でも陸に上がるのは夜だけで明け方には海にでてしまうため、陸上での観察はほとんどできませんが、南島の散策道に所々開いた穴の中に、雛を見かけることがあります。

北大西洋と北太平洋南西部に分布し、小笠原の南島、西之島、硫黄列島や八重山列島の仲ノ神島、海外ではハワイ諸島、アゾレス諸島などで繁殖しています。

カツオドリ

カツオドリ
種名 カツオドリ
英名 Brown Booby
学名 Sula leucogaster
分類 カツオドリ目カツオドリ科
体長 翼開長130~150cm
体重 1kg
分布 インド洋、南大西洋、太平洋西部および中東部、カリブ海
カツオドリ(上がオス、下がメス)
トビウオを狙うカツオドリ(おがさわら丸より)
トビウオを狙うカツオドリ(おがさわら丸より)
南島で繁殖するカツオドリ
南島のカツオドリ幼鳥
カツオドリ
カツオドリの雛(南島)

カツオドリは小笠原で一番親しみやすい海鳥です。竹芝桟橋を出港したおがさわら丸は、一夜明けて聟島列島に近づくと、並行して飛ぶカツオドリ達が歓迎してくれます。船に驚いて海上に飛び出てくるトビウオなどを狙っています。

デッキから目が合うほど間近に飛んでおり、時折海にダイブしてトビウオを捕食する姿も観察することができます。腹と羽の下面が白く、翼は黒く縁取られ背中と首は黒く覆われています。嘴は薄い黄色で、顔を覆うマスクのようで、目元が青いのが雄です。

小笠原の陸鳥

小笠原は陸地と繋がったことがない海洋島のため、陸鳥の数はあまり多くありませんが、確認されている15種のうち6種が固有種・固有亜種です。過去にはオガサワラマシコ、オガサワラガビチョウ、オガサワラカラスバト、ムコジマメグロなどの固有種・固有亜種も生息していましたが絶滅してしまいました。長距離を渡ってきた鳥たちは島に順応すると移動性が低下して定住します。他の種との交流がないため、独自の進化をとげて固有種になります。また、これまで同じ種類と考えられていた鳥が、小笠原群島と火山列島では飛来してきた起源が異なるなど、新たな研究が進んでおり、絶海の孤島で起こる生物の進化の様子を知るうえで貴重な存在となっています。

アカガシラカラスバト

アカガシラカラスバト
種名 カラスバト
(亜種名) (アカガシラカラスバト)
英名 Japanese Wood Pigeon
学名 Columba janthina nitens
分類 ハト目ハト科
体長 全長約40cm
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト

小笠原固有亜種で、父島、母島など島間の移動も行い広い行動範囲を持ち、広葉樹の暗い林内を好みます。名前の通り頭部に赤みを帯び、首から背中にかけて玉虫色に綺麗に輝きます。「アカポッポ」の愛称で親しまれており、幼鳥は体が黒く「クロポッポ」と呼ばれています。野生化したノネコによる捕食被害やクマネズミとの餌資源の競合により、40羽程度まで減少してしまい絶滅危惧種に指定されました。

2003年、中央山の東側に、害獣の侵入を防ぐフェンスで覆われたサンクチュアリを設営し、保護活動に取り組んでいます。今では推定600羽程度まで回復したといわれています(2016年時点)。熟して地面に落ちた木の実を好むため、夏の非繁殖期は、運が良ければ木々の根本や道端でも見かけることができます。森歩きの際には、エサを探してカサカサと歩く音や、牛のような低い鳴き声に耳を澄ましてみてはいかがでしょうか。

ハハジマメグロ

ハハジマメグロ
種名 メグロ
(亜種名) (ハハジマメグロ)
英名 Bonin white-eye
学名 Apalopteron familiare hahasima
分類 スズメ目メジロ科
体長 全長約14cm
ハハジマメグロ
ハハジマメグロ
ハハジマメグロ

メジロより一回り体が大きく、黄色い体に目の周りに黒い三角模様があります。母島列島のなかでも母島、妹島、向島にしか生息していない日本の固有種で、世界中でここにしかいない貴重な小鳥です。近縁はサイパンのオウゴンメジロと考えられています。

樹上や地表など様々な場所で餌を探し、警戒心が薄いために、林道や集落でも間近に見られることがあります。母島へ訪れたら是非会いたい鳥です。

オガサワラカワラヒワ

オガサワラカワラヒワ
種名 カワラヒワ
(亜種名) (オガサワラカワラヒワ)
英名 Ogasawara Greenfinch
学名 Chloris sinica kittlitzi
分類 スズメ目アトリ科
体長 全長約15cm
オガサワラカワラヒワ

オガサワラカワラヒワは、カワラヒワの小笠原諸島固有の亜種と考えられてきましたが、DNAの分析により106万年前には分岐している別種という研究結果が2020年に発表され、日本の固有種が1種増えるという嬉しいニュースとなりました。通常カワラヒワは草の種を食べますが、オガサワラカワラヒワは木の種も食べるため、長い年月をかけて嘴が大きく進化しました。

乾燥した低木林のある場所で主に観察され、かつては母島の集落でも見ることができました。母島列島の無人島(向島、姉島、妹島、姪島、平島)と南硫黄島でしか繁殖しておらず、近年はネズミなどの外来種による被害で個体数が減少し絶滅の恐れがあります。

アカアシカツオドリ
Red-footed Booby

名前の通り、真っ赤な足をしています。2017年に南硫黄島での繁殖が確認され、硫黄島クルーズで狙いたい鳥です。ファッションブランドCHUMSのロゴマークにもなっています。

カツオドリ目カツオドリ科
アカアシカツオドリ
Sula sula
アオツラカツオドリ
Masked Booby

西之島で繁殖が確認されていましたが、2020年の噴火後の状況が心配されています。硫黄島クルーズや、おが丸航行中も極稀にみられることがあります。

カツオドリ目カツオドリ科
アオツラカツオドリ
Sula dactylatra
オーストンウミツバメ
Sooty storm-petrel

父島列島の東島、巽島、聟島列島北之島で繁殖が確認されている小さな海鳥です。12月~6月の繁殖期以外の、夏の間の行動はまだよく分かっていません。

ミズナギドリ目ウミツバメ科
オーストンウミツバメ
Oceanodroma tristrami
クロアジサシ
Brown Noddy

小笠原諸島や硫黄列島など、熱帯や亜熱帯の島で繁殖しています。小笠原より北ではほとんど見ることができないため、硫黄島クルーズで期待したい鳥です。

チドリ目カモメ科
クロアジサシ(亜種名:クロアジサシ)
Anous stolidus pileatus
オガサワラノスリ
Eastern Buzzard

小笠原の固有亜種で、唯一の猛禽類です。陸上の動物の食物連鎖の頂点にいますが、小笠原全体で60羽程度とされており、絶滅危惧種に指定されています。

タカ目タカ科
ノスリ(亜種名:オガサワラノスリ)
Buteo buteo toyoshimai
オガサワラヒヨドリ
Brown-eared Bulbul

小笠原固有亜種で、本州のヒヨドリよりも褐色の色味が濃いのが特徴です。また、硫黄島などの火山列島にはハシブトヒヨドリという全く別の亜種も存在します。

スズメ目ヒヨドリ科
ヒヨドリ(亜種名:オガサワラヒヨドリ)
Hypsipetes amaurotis squamiceps
イソヒヨドリ
Blue Rock Thrush

全国の海辺で見られますが、小笠原固では街中によくいる馴染み深い鳥です。オスは瑠璃色でお腹がオレンジの綺麗な配色をしていてよく目立ちます。

スズメ目ヒタキ科
イソヒヨドリ(亜種名:イソヒヨドリ)
Monticola solitarius
ハシナガウグイス
Japanese Bush Warbler

小笠原固有亜種で、小笠原のほぼ全域に生息します。ウグイスに比べやや小型で嘴が長く赤みがかっています。森歩きの際によく鳴き声を耳にし、近くに飛んでくることもあります。

スズメ目ウグイス科
ウグイス(亜種名:ハシナガウグイス)
Cettia diphone diphone
トラツグミ
White’s Thrush

あまり遠くへは飛ばず、林内の地上でよく見かける鳥です。黄色と黒のマダラ模様が名前の由来です。戦後に入った外来種とされています。

スズメ目ヒタキ科
トラツグミ(亜種名:トラツグミ)
Zoothera dauma aurea
ムナグロ
Pacific Golden Plover

夏の間シベリアやアラスカで繁殖し、冬に東南アジアやオーストラリアに渡りますが、小笠原で越冬する個体もおり、夏冬両方の羽が混じっているのが見られます。

チドリ目チドリ科
ムナグロ
Pluvialis fulva

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