秘境ツアーのパイオニア 西遊旅行 / SINCE 1973

西アフリカ最高峰 カメルーン山登頂

  • カメルーン

2012.01.01 update

カメルーン山の頂へ
カメルーン山の頂へ

アフリカ大陸で最も大きな火山を歩く

西アフリカ最高峰カメルーン山は、カメルーンの西海岸の北に位置しており、ナイジェリア東部とカメルーン西部との間に発達した火山列の中にあります。日本であまり知られていませんが、アフリカ大陸で最も大きい火山の1つでもあります。変化に富んだルートを行く3日間かけての周遊トレッキングは、まだ訪れる登山者も少なく、秘境の山に来たことを感じさせてくれます。

カメルーン山は4,095mとマレーシアの最高峰キナバル山とほぼ同じ標高ですが、1日に1,800mの登りがありとてもハードです。しかし、変化に富んだアフリカの大自然に触れ、「西アフリカの最高峰」を登頂することは、大きな満足感と達成感を味わうことができます。

一部地熱で温かい溶岩の上を行く
一部地熱で温かい溶岩の上を行く
サバンナ地帯に咲く花々
サバンナ地帯に咲く花々

登山1日目 ドゥアラ → 登山事務所 → 第2ハット

カメルーンの玄関口ドゥアラから車で走る事1時間半。登山の拠点となるブエアの登山事務所に到着です。 ここで入山手続きを行い、ポーターに荷物を振り分け、いよいよ出発です。
1日目は第2ハット(2,852m)を目指します。序盤はプランテーションの中を歩き、第1ハットまではジャングルの中を歩きます。第1ハットからは少し急な斜面を登りきると、「イファ・サムトゥ」という半分石、半分人間の山の神に生贄を毎年捧げる岩があり、ここで安全登山の祈願をしました。2,000mを越えると背の高い草地になり、傾斜が少しきつくなります。ハットが見え「やっと到着か!」と思いましたが、まだまだ到着しません。2,276mにある中間小屋です。

ポーターに荷物を預けて出発!
ポーターに荷物を預けて出発!
序盤はプランテーションの中を歩きます
序盤はプランテーションの中を歩きます
チロレバのキャンプ地
安全祈願のお祈り

登山2日目 第2ハット → 3,785mの山小屋 → 登頂 → マンススプリング

2日目は、いよいよカメルーン山登頂に向けて出発です。サバンナの急斜面を登ると最後の小屋(3,785m)があり、ここからは溶岩質の岩場になります。4,000mを超えるとようやく山頂が顔を出します。山頂周辺には2000年に噴火した火口から蒸気が噴き上がり、山頂に近づくにつれ、海からの冷たい風が熱帯雨林を通ってむき出しの山頂に吹き上げてきます。第2ハットを出発して約4時間半で山頂へ。山頂からはアフリカの広大な風景が360度広がり、日本から約13,000km離れたカメルーン山に登頂した事を実感します。

サバンナの急斜面
サバンナの急斜面
カメルーン山の頂を目指す
カメルーン山の頂を目指す
山頂のプレート
山頂のプレート

登山3日目 マンズスプリング → 下山 → 登頂証明書授与

復路は往路と違うルートを下山しカメルーン山を周遊します。3600m付近まで、溶岩の砂状の道を一気に下りますが、景色は往路よりダイナミックになります。溶岩のゴツゴツした場所や丘を越えると、1999年に噴火した火口が現れ、硫黄臭く、地熱で辺りが温かくなります。キリマンジャロやケニア山などのアフリカの山とは違う景観の中を歩き、最後のキャンプ地であるマンススプリングに向かいました。

1999年に噴火した火口
1999年に噴火した火口
背丈ほどもある長草の中を歩く
背丈ほどもある長草の中を歩く
登頂証明書
登頂証明書

西アフリカの文化にふれる

登山後の観光も充実しています。カメルーン西部で最も大きな王宮があるバフットを訪れ、王宮の見学や仮面舞踊の見学など、西アフリカの文化を肌で感じていただけます。
西アフリカ最高峰を登頂し、カメルーンの伝統と文化にふれる事ができる11日間の旅に一緒にでかけてみませんか。

ティカル王族の王宮
ティカル王族の王宮
仮面舞踊を見学
仮面舞踊を見学

関連ツアー

エチオピア最高峰ラスダシャン(4,620m)登頂

西アフリカ最高峰カメルーン山とマネングーバ山登頂

<改訂版>サバンナ・砂地・ジャングルと変化に富んだ自然の中を歩く。アフリカ大陸で最も大きな火山カメルーン山を2泊3日で登頂、新たにマネングーバ山も登頂する改訂版。

多様な表情を見せる大自然
パタゴニア周遊トレッキング

  • アルゼンチン
  • チリ

2011.12.01 update

パタゴニアの魅力は何と言っても多様な表情を見せる大自然です。南極・グリーンランドに次いで第3位の規模を誇る真っ青な氷河、氷河によって削り創られた奇岩峰、そして11月下旬より一斉に咲き始める初夏の花々がトレッキングをより楽しませてくれます。

フィッツロイを目指す
フィッツロイを目指す

トーレス・デル・パイネ

まず訪れるのがチリ側のパイネ国立公園。ここには主な岩峰群が3つあります。このコースではパイネ国立公園の「THE “W”」といわれる湖畔のメインルートを2泊3日かけて東から西へ歩きました。まず初めにピストンで訪れたのは、国立公園の東に位置するトーレス・デル・パイネ。樹林帯を抜けると石がごろごろしている登りが始まります。氷河湖への最後の坂を上り終えると目の前には聳え立つ3本の岩峰、そして眼下にエメラルドグリーンの氷河湖が広がります。この山を目の前にした時の感激は期待を上回るものでした。岩峰の麓にはまだ溶け残った氷河が固まっています。ここで昼食とし、たっぷりと写真撮影などを楽しんでいただきました。

氷河湖手前のの急登を登る
氷河湖手前のの急登を登る
聳え立つトーレス・デル・パイネの岩峰、眼下には氷河湖
聳え立つトーレス・デル・パイネの岩峰、眼下には氷河湖

クエルノス・デル・パイネ

トレッキング二日目はノルデンフェールド湖畔沿いになだらかな道のりをクエルノス小屋へ歩きます。辺りには真っ赤なノトロといわれる花が咲き乱れ、足元には沢山の種類の花々がトレッキングをより楽しませてくれます。しばらく歩くとクエルノス・デル・パイネの岩峰が徐々に姿を現します。そしてクエルノスの見える山小屋に宿泊。山小屋から湖畔までは歩いて10分ほどの距離。最高の立地にある、こじんまりとした清潔な山小屋です。

ノトロの咲き乱れる湖畔のルートを行く
ノトロの咲き乱れる湖畔のルートを行く
ロッジとクエルノス・デル・パイネ
ロッジとクエルノス・デル・パイネ
ロッジ近くよりノルデンフェールド湖
ロッジ近くよりノルデンフェールド湖
アネモネ
アネモネ
ノトロの花
ノトロの花
アツモリ草
アツモリ草

パイネ・グランデ

トレッキング三日目。いよいよパイネ国立公園の最高峰、パイネ・グランデを展望できるグランデ小屋へと向かいます。 準備を整えていざ出発。しばらくすると前方にグランデが見え始めます。そしてフランセス渓谷に足を踏み入れ「“W”」の真ん中の入りこんでいる谷間のルートへと入っていきます。近づくにつれてグランデの氷河もまじまじと眺めることができます。

その後はペオエ湖畔を尾根道などの気持ちのいいトレイルを歩き、この国立公園内で一番大きなグランデ小屋へ。カフェテリアでコーヒーを飲みながらゆっくりとグランデの雄姿を満喫しました。

準備を整えて出発
準備を整えて出発
前方にパイネ・グランデを捉えつつフランセス渓谷へ
前方にパイネ・グランデを捉えつつフランセス渓谷へ
パイネ・グランデの氷河
パイネ・グランデの氷河

ペリト・モレノ氷上ハイキング

チリのパイネ国立公園でトレッキングの後、国境を越えてアルゼンチンのカラファテへ。ここではカラファテからほど近くにある有名なペリト・モレノ氷河をハイキング&見学します。パタゴニアの氷河はすっきりと透き通るような青い氷河です。今回はなんと雪に見舞われましたが、「一日の中に四季がある」と言われるパタゴニアの自然を感じたハイキングでもありました。アイゼンを装着して起伏のある氷上を約1時間ほど歩いて周ると、クレバスの中に広がる真っ青な世界や氷上を流れる小さな小川を見る事もでき、氷河の生きた姿を間近で感じる体験です。そして最後には参加者全員オンザロックで乾杯!

真っ青な氷河の壁
真っ青な氷河の壁
氷河の氷のオンザロックで乾杯!
氷河の氷のオンザロックで乾杯!

セロ・トーレ

カラファテよりさらに北上しチャルテンへ。ここではチャルテンを基点として二つの名峰を訪れるトレッキングが待っています。初めに訪れたのがセロ・トーレ。天気も良くさっそく登り始めから様々な初夏の花が出迎えてくれました。セロ・トーレはクライマーが夢見て止まない山でもあります。その鋭いピークは強風が吹き、登頂をより一層厳しいものにしています。セロ・トーレを目の前に眺めることのできる氷河湖の湖畔で昼食としました。

初夏を彩るパタゴニアの花々
初夏を彩るパタゴニアの花々
セロ・トーレ
セロ・トーレ

フィッツロイ大展望トレッキング

レンガという、この地域独特の木が生い茂る樹林帯の中を歩いて行きます。木漏れ日を浴びながらのトレッキングは非常に気持ちが良いです。最初のフィッツロイの展望地、カプリ湖からは湖面に映るフィッツロイを展望、その後視界が開けフィッツロイのまさに「聳え立つ姿」を前方に眺めながら徐々に近づいていきます。そして最後の急な坂道へ。ジグザグに続くガレ場の急登を登り終えると、フィッツロイ山群の全貌が姿を現します。世界中のクライマーの憧れの岩壁が目の前にそそり立ちます。麓の真っ青な氷河湖もとても印象的です。 パタゴニアの自然は鮮やかで、ダイナミックで、常に訪れた人に驚きと感動を与えてくれます。

ウェルタス川が流れる渓谷を展望
ウェルタス川が流れる渓谷を展望
カプリ湖からフィッツロイ
カプリ湖からフィッツロイ
ガレ場の急登
ガレ場の急登
氷河湖とフィッツロイ
氷河湖とフィッツロイ
フィッツロイがすぐ目の前に聳え立つ
フィッツロイがすぐ目の前に聳え立つ

関連ツアー

エチオピア最高峰ラスダシャン(4,620m)登頂

究極のパタゴニアトレッキング パイネWサーキットとフィッツロイ山群大展望

パイネやフィッツロイの名峰群と美しい蒼き氷河ペリト・モレノを訪問。パイネ国立公園の人気トレイル「Wサーキット」を完全踏破。 世界中のクライマー憧れの名峰フィッツロイ山群でのトレッキングも網羅。

カラコルム5,000m峰登頂と二大氷河

  • パキスタン

2011.11.08 update

豪快なカラコルムの高峰群に囲まれている、パキスタンのラシュファリピーク(5,098m)に登頂してまいりました。

マルビティン(7,458m)とスマイヤー氷河
マルビティン(7,458m)とスマイヤー氷河

北部パキスタンの桃源郷フンザから
ホーパル村へ

北部パキスタンの桃源郷フンザよりジープで美しい山々の間を走り抜けること、2時間。
トレッキングの出発地のホーパル村に到着しました。
ちょうど杏子の収穫の時期が終わり、村の民家の屋根には杏子を乾燥するため乾してあり、屋根はオレンジ色に輝いていました。そして道中からはゴールデンピークも見え始め、これからのトレッキングに心が躍ります。

トレッキングに出発

私たちの荷物を運搬してくれるポーターたちと合流し、トレッキングに出発します。
4泊5日と短い期間ですが、総勢30名以上のスタッフが同行してくれました。パキスタントレッキングは、ネパールのように途中にロッジや茶店などはありませんのでダイニングキッチンや食料品などを全て運ぶことになります。
宿泊地に到着すると、全てスタッフにてキャンプの準備を行います。トレッカーも少ないため、どこのキャンプ地も私たちだけの貸切状態でした。スタッフの献身的なサポートに助けられながら標高を上げていきます。

ラシュファリピーク

ラシュファリピークの手前には美しいラシュレイクという湖があります。その美しさは、ピーク登頂の前の緊張感をほぐしてくれました。ラシュレイクを過ぎると、心拍数が上がっていくのをひしひしと感じながらやっとの思いでピークに達しました。

山頂からはカラコルムの7,000m級の山々の展望が360度広がります。間近にはマルビティン、スパンティーク、西方にはフンザの名峰ウルタルⅠ、Ⅱ、レディーフィンガーが聳え、北方にはトリボールやカンジュートサルなどのヒスパー山群の連なりを望むことができます。 これだけ短いアプローチで大パノラマが楽しめるルートは世界でもあまり例がありません。

ラシュファリ・レイクとウルタル峰
ラシュファリ・レイクとウルタル峰
ラシュファリ・ピークの山頂のケルン
ラシュファリ・ピークの山頂のケルン
トリボールなどヒスパー山群
トリボールなどヒスパー山群

登頂を終え

登頂を終え標高の下がった場所へ降りると、太陽の暖かさを感じます。 復路は、往路とは異なるルートを歩き、氷河も横断します。最後の宿泊地ハムダールのキャンプでは、遊牧民の人々とのふれあいを楽しみ、夜はスタッフたちと最後の晩餐を楽しみました。 夕方のハムダールでは、ゴールデンピークが夕焼けで黄金に輝いていました。

黄金に輝くゴールデンピーク
黄金に輝くゴールデンピーク
氷河に面した大展望地、ハムダールキャンプ
氷河に面した大展望地、ハムダールキャンプ
これだけ短いアプローチで5,000m峰に登ることができるのは、世界広しといえどそう多くはありません。
山頂からは6,000m~7,000m峰の名峰群など、360度の大展望が広がります。豪快な山岳景観、大氷河の展望が揃ったこのコースこそ、最もカラコルムの魅力が凝縮されているといえるでしょう。 また、初めての5,000m峰挑戦や氷河初体験にもぴったりのコースですので是非、今年はカラコルム大展望を満喫してみて下さい。

関連ツアー

K2大展望・バルトロ氷河トレッキング

カラコルム5,000m峰登頂と二大氷河トレッキング

360度の大展望地ラシュファリ・ピーク登頂!大迫力の氷河横断トレッキング。
豪快なカラコルムの高峰群に囲まれながら、5,098mの頂を目指す。
真っ白な氷河上を歩く、初めての氷河横断トレッキング。

アジャンタ・エローラ 西インド世界遺産紀行

  • インド

2011.09.01 update

インド最大の都市ムンバイを擁する「西インド」。この地には、インドが誇る珠玉の遺産が多く残されています。
怪しいまでに美しい膨大な仏教壁画、世界最大の彫刻芸術、仏塔を覆う精緻を極めた彫刻美、密林に潜む知られざる石窟、
そして1万5千年間に渡る岩絵が残る太古の岩窟…。それはインド美術の源流をたどる旅と言えるでしょう。
悠久の歴史、人々の力、篤き信仰…今もそのエネルギーを全身で感じる、圧巻の遺跡巡りへご案内します。

アジャンタ石窟
第26窟に横たわる全長7.27mに及ぶ涅槃仏(アジャンタ石窟)

二大石窟巡りの拠点 ― オウランガバードでの滞在

旅のハイライトとなるアジャンタ・エローラの二大石窟巡りは、観光拠点となるオウランガバードでの3連泊で過ごします。
それぞれの見学に1日たっぷりと時間を取り、世界遺産を”堪能”。ゆったり過ごせるのはもちろん、遺跡見学を楽しむためだけの身軽な格好で出かけられるのも魅力です。また、オウランガバード市内ではバザール見学やミニタージと呼ばれる霊廟など、ちょっとした観光も。ムガル帝国の6代皇帝の名にちなんで付けられたこの町、実は「ヒムロー」という織物の生産地としても有名。
金糸を使った美しい織り柄が特徴で、中にはアジャンタ石窟の壁画のデザインがあしらわられているものも。
ご希望の方がいればのご案内ですが、このツアーの隠れた楽しみのひとつです。

  • ミニタージと呼ばれる霊廟「ビービーカマクバラ」
    ミニタージと呼ばれる霊廟「ビービーカマクバラ」
  • バザールの様子
    町のバザールを散策

1000年もの間、人々に忘れさられていた膨大な壁画 ― アジャンタ石窟

デカン高原の北西部、渓谷に沿った馬蹄型の岩山におよそ600mに渡って残る大小30の石窟寺院。その内部は、極彩色の仏教壁画や彫刻で埋め尽くされています。
ハイライトは第1窟、インド美術の最高傑作と名高い「蓮華手菩薩」。飛鳥時代の日本美術に影響を与えたと言われています。薄暗い岩壁に浮かび上がるしなやかに曲げられた身体と半眼の表情は1500年以上の月日が経った今なお妖艶な美しさをはなっています。この他、第17窟には「六牙白象本生」「大猿本生」などの代表的なジャータカが比較的良い状態で残っています。また、第26窟には全長7.27mに及ぶインド最大級の涅槃仏が横たわっており、もう一つの見どころと言えるでしょう。この石窟寺院群は、二期にわたって造営されています。紀元前1~1世紀までの前期窟と5世紀中から7世紀までの後期窟。2つの石窟は混在していますが、簡素な造りの前期窟に対し、後期窟は内部の列柱やヴォールト天井の装飾も豪華。ストゥーパ自体が信仰の対象であった前期と違い、後期ではストゥーパ正面に仏像が表わされるようになり、仏教の変容を伺い知ることができます。この違いを意識しつつ見学するのも楽しみ方のひとつ。 壁画の内容は主に仏伝とジャータカ。 テンペラ画で描かれており、その方法は壁面に粘土や牛糞を混ぜて塗り石灰を重ねて下地とし、その上に顔料をのせたもの。後期に描かれたものが多く6~7世紀に世俗の絵師によって描かれたとのことです。
アジャンタ石窟
後期のチャイティヤ窟。ストゥーパの前に仏陀が表されるようになる
アジャンタ石窟
「蓮華手菩薩」身体を首、胴、腿の3つに曲げた描き方(トリバンガ)で描かれ、華麗な宝冠を被っている。

この石窟は、紀元前1世紀頃に仏教僧たちが雨季の雨を避けて修行が続けることができるよう、岩盤の中に祈りと修行の場を作ったことに始まります。しかし、8世紀頃インド仏教の衰退と共に忘れ去られ、1819年、トラ狩りに来たイギリス人士官が偶然発見するまでの1000年以上もの間、密林の中でひっそりと眠ることとなりました。1983年、インドの世界遺産登録第一号となったのち、見学のための道路も整備され、思う存分その芸術を楽しむことができるようになっています。

はみだしコラム「ジャータカ(本生物語)」

仏陀が前世において自己犠牲などの善行を積む話。 仏陀はシッダールタとして生まれる以前、その姿は白い象や猿、水牛や時には人間であったりしたとされている。

 

3つの宗教建築が混在する巨大石窟群 ― エローラ石窟

古代三大宗教の石窟寺院が一同に会する世界で唯一の場所―それがエローラ石窟でしょう。6~10世紀にかけて開窟された、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の石窟が互いに破壊し合うことなく、南北2Kmに及んで集結。最大の見どころは、デカンの岩山を上から堀り進んだ「世界最大の彫刻芸術」と称される、カイラーサナータ寺院。第16窟にあたるこのヒンドゥー教寺院の圧倒的な存在感には声を上げずにいられません。ノミとツチだけで堀り進められ作業は1世紀近くの年月を要したとのことです。シヴァが棲む聖山「カイラス山」を表したとされる巨大寺院はその建築技術だけではなく、一面に彫られた躍動感溢れるヒンドゥーの神々にも目を奪われます。本殿の下部には「世界を支える象」と呼ばれる象が一周して彫られており、その重さに首にシワがよっているという芸の細かさ。この寺院、お勧めの見方は寺院裏手の岩山を登り、上から全体像を眺めること。デカン高原の雄大な景色をバックに望む巨大な彫刻は、圧倒的な迫力を誇ります。掘り進んだ職人たちに思いを馳せ、この景色を眺めていると違う時間が流れていくようです。 第1~12窟は仏教窟でほとんどが僧院窟です。ヒンドゥー教のダイナミックさを後にして訪れると、そのシンプルな造りに静謐なたたずまいを感じることができます。ジャイナ教窟は第30~34窟で、ヒンドゥー教と違い像に動きはないのですが装飾が華やかなことが特徴です。この3つの宗教のそれぞれの魅力が凝縮された寺院群、どんなに時間があっても見飽きることはありません。
玄武岩を掘り下げた造られたカイラーサナータ寺院
20万トンもの玄武岩を掘り下げて造られたカイラーサナータ寺院
「世界を支える象」カイラサナータ寺院の本殿を数十頭の像が支えている
岩壁に並ぶ仏教窟。雨季には滝がかかる

はみだしコラム「石窟の種類」

インド各地には多くの石窟寺院が残ります。それらは、修行中の僧侶達が寝泊まり、居住する僧院窟「ヴィハーラ」とストゥーパを祭る礼拝窟「チャイティヤ」の2種類の窟で構成されています

 

サンチー仏塔
「樹下ヤクシー像」樹木は発展と繁栄の象徴あり、樹木に住む女の精霊をヤクシーと呼ぶ。ヴェーダ以前からの民間信仰に発するが、仏教やジャイナ教の説話にもよく登場する

精緻を究めた石の絵本 ― サンチー仏塔

高さ100m程の丘の上に、大小3つのストゥーパをはじめとする、アショカ王の時代からグプタ朝期までの各時代の仏教遺跡が残っています。インドの古代初期仏教美術はストゥーパを中心に展開されましたが、その多くは原型を留めていません。そんな中、原始仏教美術を今に残す貴重な仏塔がこのサンチー仏塔です。
私的、このツアー最大の見どころはサンチー遺跡・大ストゥーパ第1塔を囲む塔門(トラナ)の彫刻美です。
東西南北の4つの塔門(トラナ)は無仏像時代の仏教説話の彫刻で埋め尽くされており、その密度と完成度の高さには息を呑みます。最大の特徴は、仏陀を仏陀の姿で表さない無仏像時代の作品であるということ。仏像が作られるようになる以前のものなので、仏陀の姿は菩提樹や法輪といったシンボルで表現されています。その内容は、ジャータカに比べ仏伝図が圧倒的に多いです。画面ごとに様々なストーリーが描かれ、その精緻な彫刻美は見事。また、仏陀の生涯を少し勉強していけば私達でもレリーフを読み解ことができるという点も魅力です。
これは古代仏教芸術の究極の形であり、仏教を教え説く「石の絵本」であったのです。 東門の梁を支える美しい天女の像は、民間信仰に根付いたヤクシー像。インド美術固有の官能美を漂わせ、原始仏教美術の代表的レリーフとして扱われています。他にも様々な動物や、聖なる生き物、神々が登場し、私達の興味を掻き立てます。

はみだしコラム「無仏像時代」

仏像が世に登場するのは、1世紀頃。それ以前、仏教美術に仏像は存在せず。仏陀の姿は法輪や聖樹、宝傘、宝座など仏陀を象徴するレリーフを用いて表現されており、視覚的表現よりも観念的表象を求めた初期仏教の精神性が伺える。

サンチー仏塔
仏陀の出城の場面。宮殿を出発し(画面左端)、森に入り出家する(画面右端)までのシーンを表し、仏陀の存在を宝傘が示している。
くり返し宝傘と馬を描くことで、場面が進行していることを1つ面で表現している
  • サンチー仏塔
    左:サルナートでの初転法輪の場面。法輪で仏陀を表現し、アショカ王をはじめとする王たちが説法を聞いている
    右:天界にいる母に説法をされたあと、地上に降下する仏陀。三本の階段の道が設けられ、上と下に表された聖樹が仏陀を示し、上から下へ降りた様子を表現している
  • サンチー仏塔
    第1塔北門の裏面。
    上段:六牙象を含む象たちが聖樹に蓮華を捧げている
    中段:悪魔たち(左)と聖樹へ礼拝する王族
    下段:ヴェッサンタラ本生物語

知られざる遺産の魅力 ― 西遊旅行ならではの西インド

西遊旅行では西インドに残る隠れた見どころにもご案内。意外な魅力に取りつかれる方も少なくありません。

ピタルコーラ ― 密林に隠れたもう1つの石窟

オウランガバード郊外で大通りを離れ、山道を進むとそこにはもう一つの石窟群が。アジャンタ石窟の前期窟と同時期に造営されたとされる全部で13の石窟が渓谷に広がっています。窟の多くのファザードは崩壊してしまっていますが、孔雀石を顔料とする青緑の彩色が鮮やかに残る壁画や、象の彫刻が並ぶテラスが残っています。この秘密の石窟を訪れるには、雨季には川を渡り、滝の前を通過するなど、ちょっとした探検家気分を味わえるのも魅力です。

ビーマベトカ ― 100を超す古代岩壁画が残る

ボパールの南約46kmの丘の上にある世界遺産の岩絵群。最古のもので12000年程前の石器時代から紀元後に至るまでの数百に及ぶ岩絵が残されています。およそ15000年間という長きに渡って人間が住み続けたことにより、ここには人間の進化と共に変化していく、壁画の内容・技術を一度に見ることができるという魅力があります。実際に、初期のものは「牛の群れ」や「弓矢を使って狩りをする姿」、紀元後のものは「騎馬での戦闘の様子」や「象に乗り戦う者の姿」など、その変遷を一つの場所で確認することができます。

  • ピタルコーラ遺跡
    列柱に色鮮やかな壁画が残るピタルコーラ遺跡。発見当時は柱の三分の一は土に埋もれていた
  • ビーマベトカ
    馬に乗り槍や弓矢を使って狩りを行っている様子。人間の体が棒状から三角形を組み合わせた形で描かれるようになる

日本の約9倍の面積を持つ広大なインド亜大陸。何度行ってもインドの旅は終わりません。
今度は、西インドならではの魅力を感じにでかけてみませんか。
そこには、当時のエネルギーを今に伝える遺産の数々が私達を待っています。

関連ツアーのご紹介

アジャンタ・エローラ 西インド世界遺産紀行

二大石窟とサンチー仏塔、インドが誇る珠玉の世界遺産巡り。仏教美術、太古の壁画、近代建築、計6つの世界遺産を訪問。オーランガバードで3連泊、アジャンタ、エローラ石窟をじっくり見学。

ガンジス源流氷河トレッキング

  • インド

2011.09.01 update

トレッキングの始まりはヒンドゥー教四大聖地の一つ、ガンゴトリ(3,048m)です。

ガンゴトリ氷河横断
ガンゴトリ氷河横断

トレッキングの始まり

ガンゴトリ(3,048m)はデリーからは車で2泊3日かかります。ここからバギラティ川という川沿いを歩いて行きます。
しばらく歩くと前方にはスダルシャン、バギラティ山群の白い雪山が姿を現し始めます。比較的なだらかな道のりが続きますが、標高も高いのでゆっくりと焦らずに上ります

ガンジス川の最初の一滴の始まるところ「ゴウムク」

チルバサからボジバサまでは山腹を緩やかに登っていくことになります。ボジバサが近づくと同時にバギラティ山群が迫力を増し、シブリンの頭もわずかに見え始めます。
ここまで来ると辺りの風景は灌木帯となり、高所まで歩いてきたことを実感します。さらにゆるやかなに歩いて行くとやがてガンゴトリ氷河の末端部が見え始めました。
それこそが、ガンジス川(バギラティ川は下流でガンジス川と名前を変える)の最初の一滴の始まるところ、「ゴウムク」です。ガンジス川はジヴァ神が自分の長い髪の毛に天の川だったガンガー女神を伝わらせて受け止め、ゆっくりと地上に下ろしたところから始まると言い伝えられています。
そんな聖なるゴウムクにはトレッカーだけではなく、ヒンドゥー教の巡礼者も数多く訪れています。崩れ落ちた氷の塊が浮かぶ川の中で、巡礼者達が沐浴する姿も眺めることが出来ました。

タボバンへ

更に標高を上げ、タボバン(4,463m)へ。
いよいよガンゴトリ氷河横断です。アップダウンのある自然の造り出した氷上を、列をつくって歩いて行きます。パックリと口をあけるクレバスを横目に、慎重に横断を続けます。
横断が終わると目の前にはタボバンへ続く急登が待ち受けています。この急登を登りきれば、そこは終着地点のシブリン・ベースキャンプのタボバンです。

最後の一歩で急登を登り切り、視線を空へ移すと、インドのマッターホルンと讃えられ、インドでは聖山と崇められている名峰、シブリンが迎えてくれました。ここで朝に夕に刻々と変化するシブリンを楽しみました。

また、ここにはサドゥーと言われる修行僧も住んでおり、様々な修業に励んでいました。このような標高の高い場所に住み、冬は雪で閉ざされてしまう場所で生活する彼らと接することはとても貴重な体験となりました。

ガンゴトリからチルバサへ
ガンゴトリからチルバサへ
ゴウムクに聳え立つガンゴトリ氷河の末端
ゴウムクに聳え立つガンゴトリ氷河の末端
朝日を浴びる聖山シブリン
朝日を浴びる聖山シブリン
「言葉を発しない」という修行を続けるサドゥーとの筆談の様子
「言葉を発しない」という修行を続けるサドゥーとの筆談の様子

関連ツアー

ガンジス源流氷河トレッキング

ガンジス源流氷河トレッキング

ガンジス最奥の聖地、仙境シブリンベースキャンプに泊まり、「インドのマッターホルン」怪峰シブリンを仰ぎ見る。「ガンジス最初の一滴」が流れ出る最源流部のゴウムクも訪問。

PAGE TOP