インドネシアは言わずと知れた多民族国家で、複数の宗教が入り混じり独特の文化が形成されてきました。歴史、自然、文化とその魅力は多岐に渡りますが、その中でも世界遺産の仏教遺跡と、神秘的なパワースポットを中心とした弊社企画「天国の門ランプヤン寺院と世界遺産ボロブドゥール」の見どころをお届けします。
まずはジャワ島の遺跡群の見どころをご紹介。
プランバナン寺院
碑文によると建立は856年。マタラム王国のピカタン王によって造られたと言われ、マタラム王国の王家の先祖を祀る霊廟だったとも考えられています。ヒンドゥー教の寺院ですが、ピカタン王の妻は仏教国シャイレーンドラ王朝の王女だったため、蓮の花のモチーフなど仏教建築の影響も見られます。このことから9世紀当時、ヒンドゥー教と仏教は対立せず共存していたことが分かります。マタラム王国は10世紀頃には消滅してしまい、それ以降、忘れ去られたプランバナン寺院は火山灰に埋もれて風化してしまいました。その後、700年近くが過ぎた1733年(ボロブドゥール遺跡の発見の80年ほど前)にオランダ人の探検家によってこの遺跡群が発見され、敷地では現在も発掘、修復作業が進められています。境内は222㎡、6つの堂と234の小祠堂があり、さらにその外側に390㎡の外苑があります。中央で一番高いのが主堂のシヴァ聖堂で、その両脇にブラフマー聖堂とヴィシュヌ聖堂。三堂の前にはそれぞれ対面に各神々の乗り物となる守護神のお堂が配置されています。この神様と乗り物を対面で置く様式は南インドのマハーバリプラムの石窟寺院などからの伝播とも言われ、ヒンドゥー寺院の根幹となっていく様式となっていきました。
今だ修復作業が進むプランバナン寺院
ボロブドゥール遺跡
ボロブドゥールが建設されたのは8世紀後半~9世紀中ごろの約75年かけて。発見された碑文によればシャイレーンドラ王朝のダルマトゥンガ王(在位775以前~782)、サングラーマナンジャ王(在位782~812)、サマラトゥンガ王(在位812~832)の三代の王の時代です。目的は霊廟という説が有力ですが、単純に霊廟だけではなく、参拝者に精神的な救いを得られるようにも建設されていることがうかがえ、そのような意味合いをもつ建築物は他国でもあまり見られない特徴的なポイントです。ボロブドゥールは自然の丘に盛り土をし、その上に安山岩のブロックを積んで造られています。全体の高さは42m。最下層の一辺が120m。参拝者たちが参拝することで精神的な安らぎを得るには、仏の教えを授けることが最善と考えられる為、ボロブドゥール自体が仏教の宇宙観を示す、曼荼羅的な意味合いを持っていると言われます。(真上からみると、遺跡全体が曼荼羅の様相を成している)
ボロブドゥールは大きく「基壇」「方形壇」「円壇」の3段で形成されていますが、それぞれが仏教界である「欲界」「色界」「無色界」に相当しています。例えば最も下層にある欲界の壇には、嫉妬や噂話に翻弄される人々の不穏な表情が描かれており、そのレリーフの表情ひとつひとつが興味深いものになっています。また、お釈迦様の出生~涅槃までの一生や、お釈迦様の前世のお話(ジャータカといいます)を描いた壇もあり、その緻密さには圧倒されます。ボロブドゥール遺跡にお越しの際は、ぜひお釈迦様の一生を学んでからいらしてください。面白さが倍増します。
不穏な表情の欲界のレリーフ
仏伝図が描かれた回廊と仏坐像
世界最高級のコーヒー「コピ・ルアク」
ジャワ島で有名なのがコーヒー。複数の種類がありフレーバーも多様ですが、「世界一高価なコーヒー」といわれるコピ・ルアクの生産も盛んです。コピはインドネシア語でコーヒー、ルアクはマレージャコウネコのことで、コピ・ルアクはなんとコーヒー豆を食べたジャコウネコの排泄物から取るもの!ジャコウネコの腸内で豆が発酵されることにより独特のまろやかな風味が生み出されます。腸内酵素の働きでカフェイン含有量も減り、成分としても飲みやすくなるそうです。もちろんお店では、キレイに精製されたものを販売していますのでご安心を。日本の喫茶店で飲むと一杯2,000円近くかかることもあるコピ・ルアクですが、現地なら日本で買うよりもかなり安くお買い求めいただけます。
コーヒー豆を食べるジャコウネコ
続いて国内線でバリ島へ移動します。リゾート地としても世界中から人気のバリ島ですが、このツアーでは文化の街ウブドを中心とした寺院観光などをお楽しみいただきます。ウブトはガムラン音楽、バリ舞踊、バリ絵画など、芸術の村として有名です。地名の由来は薬草(現地語でウバド:Ubad)が訛ったもので、美しい水、空気とともに心身に栄養をもたらすというような意味合いを表すと言われています。
タマン・アユン寺院
17世紀、バリ島にはいくつもの王国があり、その中のムングウィ王国を守る鎮護寺として1637年に建立されました。「美しい庭」という意味を持ち「アユン」というのは歴代のムングウィ王が名乗った名前です。残念ながらムングウィ王国は、隣国との戦いに敗れ、国土は2つに分断、のちに消滅してしまいました。しかし、その後もムングウィ村の人たちはかつて栄えた王国を誇りにし、敗戦で荒廃したこの寺院も1937年に改修され、今も大切な憩いの場、祈りの場となっています。「バリ州の文化的景観」のひとつとして世界遺産にも指定されているこの寺院は、バリ島にある数多くの寺院の中でバリ・ヒンドゥー教の総本山・ブサキ寺院についで2番目に大きな寺院です。
神様が住むといわれる11重の塔(メル)
ランプヤン寺院
ランプは”光”、ヤンは”神様”、バリ・ヒンドゥー教の神「ヒャン・グニ・ジャヤ」を意味し、ランプヤン寺院はこの神の光やエネルギーが満ちている場所と考えられています。またその壮大な眺めから、天空の寺院という別名をもちます。セラヤの丘(ランプヤン山)にあり、建立された年代ははっきりわかりませんが(11世紀にはすでに存在していたとのこと)、バリ・ヒンドゥー教の9大寺院の1つで、実は7つの寺院から構成されています。信仰深い地元の人の中には、長時間かけてランプヤン山を登山して、その全ての寺院を巡礼する人もいます。最も有名なのが、アグン山を正面にして建てられた大きな割れ門。写真映えするので、インスタグラムなどが大好きな若者もこぞって写真を撮りにくるスポットです。割れ門は一般的に「良い考えだけを持って入り、悪いものは門の外へ出す」という意味が含まれていますが、ここでは「山を切り開いて神様の元に行く」という事も表しているそうです。
アグン山を正面にした天空の門
インスタ映えスポットとして人気上昇中
さらに、芸術の街ウブドでぜひ見ていただきたいものが、民族舞踊です。インドネシアには多数の舞踊があり、ウブドでは毎晩そこかしこで様々な演目が披露されています。今回のツアーではその中の「ケチャックダンス」を鑑賞しました。
腰布1枚で踊り歌う男性たち
ケチャックダンス
ケチャックダンスはモンキー・ダンスとも呼ばれる男声合唱劇(現在では女性の団体もあります)。松明の火を囲んで腰巻をつけた大勢の男性たちが輪になり、「チャッチャッ」と猿の鳴き声を元とした特徴的な掛け声を複雑なリズムで合唱します。原型はバリ島で古くから行われていた、神のお告げを聞くための降霊術のような儀式と言われており、トランス状態の人間が躍るための合唱だそうです。徐々に盛り上がり興奮状態になっていく合唱は、聞いている私たちをもその神秘的な世界に引き込みます。
ほとんどの演目では、このケチャックダンスはラーマーヤナの舞踏劇と共に披露され、ラーマーヤナの物語を民衆に広める役割も担いました。
ラーマーヤナ物語の舞踏
ご紹介したポイント以外にも、美味しくバラエティに富んだお食事や、連泊するこだわりのホテルなども当ツアーの魅力です。
ココナッツなどの葉を器にしたインドネシアプレート
パンダンという植物で色づけた緑色のお菓子はインドネシアでポピュラーなものです
リゾートでのんびり来るのももちろんいいのですが、ガイドさんのお話を聞きながら、遺跡や寺院をじっくり見学できるのはツアーならでは。様々な文化が入り混じる、歴史と神秘にあふれたジャワ島とバリ島にぜひお越しください。