バローチ族の村を訪ねて(ゴーラクヒル、シンド州)

シンド州とバロチスタン州の州境、ゴーラクヒルの山中で訪問したバローチ族の村(キャンプ)を訪問。

バローチ族はパキスタン、アフガニスタン、イランの3カ国に暮らしパキスタンでは総人口2億人の約4パーセントがバローチ族。50%がバロチスタン州に、40%シンド州に暮らしています。

言葉はイラン系のバローチ語。バローチ族は女性の衣装やアクセサリーの豪華さでも知られています。また、バローチ族の中で130~150の部族(氏族)に分かれており、今回であったのはブズダール(氏族)の人々でした。

 

バローチ族の人々は大変保守的です。バロチスタン州では写真撮影どころか村の訪問も困難ですが、シンド州に暮らすバローチの人々はゴーラクヒルに来るパキスタン人観光客を見慣れているせいか、外国人の私たちの訪問を<今のところ>受け入れてくれています。

 

ゴーラクヒルで3か所の村を訪問しましたが、いずれの村でも家長が迎えてくれ、自分の家と家族を紹介してくれました。家長以外の男性はふもとの畑に働きに出ていたり、放牧にでており、女性は村の周りで採取する植物の葉を使ってマットを作っていました。

 

ゴーラクヒルに近いJarra Buthi 村。ここに暮らして6世代目とご主人が言います。女性はマットを編み販売し、現金収入を得ます。1枚500ルピー。

 

美しい刺繍、バローチ族の民族衣装。

 

ゴーラクヒルの厳しい自然の中に暮らす、バローチ族。変わりゆくパキスタンで見た、昔ながらの暮らしを営む美しいバローチの村でした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Visit : Nov 2019, Gorakh Hill, Sindh

カテゴリ:ゴーラクヒル > ■シンド州
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収穫の季節に走る、ナショナルハイウェイ

11月、シンド州は小麦や雑穀の収穫の季節です。

 

カラチからナショナルハイウェイ・国道5号線をタッタへ向けて走っていると、満載のトラックがカラチへ向かって走っていきます。これらのトラックが積んでいるのは小麦の収穫の後に出た藁。カラチの家畜飼料会社へと向かっています。

 

道中、雑穀をトラックに積み上げている人たちと出会いました。

 

朝から15人の男性が9時間かけて積んでるとのこと、その重量は24トン。

 

積み上げ作業が終了し、働いていた人たちも荷の上へ。ゆっくりゆっくりとカラチへと走り始めました。収穫の季節のパキスタンらしい風景です。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Visit : Nov 2019, On N5 road from Karachi, Sindh

カテゴリ:インダスハイウェイ > ■シンド州 > ◇ パキスタンのトラック > ◇ パキスタン収穫の季節
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カシミールマーコールとガヒラートキャッスル1912 

カシミールマーコールの観察の際にハンターの知人に紹介されたホテルが、ガヒラートキャスルホテル1912 (Gahirat Catsle Hotel 1912) 。チトラール周辺には旧チトラル藩王国系列の宿がいくつかありますが、このガヒラートキャッスルは95,000ヘクタールものプライベートゲームリザーブを持ち、そこではおよそ700頭のカシミールマーコールが暮らしています。

 

朝、夕にはガヒラートキャッスルの近くからヒンドゥークシュ最高峰ティリチミール7,708m の姿を、開けたチトラール渓谷の先に完璧に望むことができます。

 

ガヒラートキャッスルの所有する、ガヒラート保護区  Gahirat Community Game Reserve (Gahirat Conservancy)。チトラール川に注ぐガヒラート川を遡った山岳地帯にあります。その植生はカシミールマーコールには理想的な環境で、また谷が狭いので私たちの観察にも適しているのです。

 

雌のカシミールマーコールがこちらを見ています。

 

2009年、現支配人がカシミールマーコールの保護を始めたとき、このゲームリザーブにはわずか60頭ほどのカシミールマーコールしかいませんでした。その後、トロフィーハンティングの規則にのっとり徹底した保護と違法ハンティングの取り締まりをすることで、2019年現在およそ700頭に増えたといいます。

ガヒラートコミュニティーゲームリザーブでのトロフィーハンティングは年に1頭と決められています。政府が提示する金額が1頭 USD100,000(およそ1,100万円)。これをハンティング事業者がオークションで落とし顧客に販売するというシステムです。この1頭のトロフィーハンティングのために9名のゲームキーパーが違法ハンティングの取り締まりを行っていました。この収益の大部分がコミュニティに還元されていくのです。

 

ガリア―トコミュニティゲームリザーブでは2000年からオフィシャルなトロフィーハンティングが始まり、2019年までに18個体の記録があります。そのトロフィーハンティングの対象となるのは角の長さが40インチ以上の年をとったものに限られます。

ホテルの居間に展示されているカシミールマーコールは現支配人のおじいさんにあたる方のトロフィーでその角は58インチ、世界で3番目に大きい角のカシミールマーコールのトロフィーです。

私はハンティングもトロフィーハンティングも反対ですが、この行動がカシミールマーコールの個体数を増やし、地元住民に保護の理解を促していることは、違法ハンティングが横行していた時よりずっといいのかな、と思います。

 

さて、ゲームリザーブから帰ってきたら待っているのがこのガヒラートキャッスル1912。建物に入るとヘリテージな逸品が迎えてくれます。

 

 

チトラール川に面したコテージ。ホテル自体が川沿いの果樹に囲まれた緑の中にあります。

 

ホオジロヒヨドリ Himalayan Bulbul のペア

 

そして、朝6時半・・・小鳥たちのさえずりが聞こえてきます。庭の真ん中に出て野鳥を観察する至福のひととき。45分の朝の観察で ホオジロヒヨドリ Himalayan Bulbul、シロミミヒヨドリ White-eared Bulbul、オオルリチョウ Blue-whistling Thrush、シジュウカラ Great Tit 、スズメ Eurasian tree sparrow、バンクハッカ Bank  Myna、ムナフガビチョウStreaked Laughingthrush などを観察することができました。

 

自然の中の滞在も素晴らしい、ガヒラートキャッスルです。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Visit :Oct 2019, Gahirat Catsle 1912 & Gahirat Community Game Reserve, Chitral,  Khyber Pakhtunkhwa

カテゴリ:■カイバル・パクトゥンクワ州 > チトラル > マーコール > ◇ パキスタンの野生動物
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デオサイ高原、夏のヒマラヤヒグマの親子

インドとの国境地帯にあるデオサイ高原はヒマラヤヒグマの生息地として知られています。

ただし、デオサイ高原に行けば見れるというものではなく、レンジャーと一緒に歩いてヒマラヤヒグマの暮らすエリアに行かなくてはなりません。また、長年ハンティングの対象であったこともあり非常に臆病ですぐに逃げていきます。さらに夏は観光客が多すぎてヒマラヤヒグマたちは谷の奥に行ってしまいます。そのためヒマラヤヒグマと出会うためにはずいぶんと歩かなくてはなりません。

 

デオサイ高原国立公園スタッフの間で「シャイターン」と呼ばれるグループの地域へ行って見ました。「シャイターン」は「サタン=悪魔」の意味ですが、このグループを「悪魔」と呼んでいるのではなく「いたずらっこ」のような意味なのだそうです。

 

標高4,000mほどのキャンプから少し高度をあげ無数の小川が流れる谷へ。

 

同行レンジャー氏が、「Bear!」と。三脚を立ててせいいっぱいのズームで撮影すると熊が2頭、親子です。お母さん熊がたって何かを見ています。

 

お母さん熊が見ていた方向にいたのは雄のヒマラヤヒグマです。親子グマはこの雄を避けて小川沿いの草の中を私たちのほうへ歩いてきました。

 

ラッキーなことに私たちは風下におり、クマに気づかれずにヒマラヤヒグマの観察としては比較的近い位置まで来ることができました。

 

あ、小熊に見つかってしまいました。見られてしまいました。なんてかわいいのでしょう。

 

お母さん熊が立ち上がってこちらを見ています。お母さん熊にも見られてしまいました。

 

ついに2頭で私たちを見ています。夢のようなアングルです。この後、2頭は歩いて離れていきました。

 

少し離れたところに現れた親子熊。このあと、2頭は草原でいろいろ見つけながら移動していきます。

 

親子が岩の上にのって不思議な行動をしていたので観察していると、別のメスのヒマラヤヒグマが現れ、その通過待ちでした。もう1頭のメスは完全にこの親の子のことはスルーでした。

 

その後の親子は・・・小熊がお花畑で少し寝たり、遊んだり。

 

そして丘を越えて見えない場所へと行ってしまいました。大変美しい光景でした。

 

Photo & Text :澤田真理子 Mariko SAWADA

Observation : Jul 2017, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan

Reference : Mr.Ghulman Raza – Deosai National Park, Yousaf Akhtar, (the late) Mr.Zahoor Salmi

※記事は2017年10月にupしたhttps://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?p=3967 を書き直したものです。

カテゴリ:■ギルギット・バルティスタン州 > ヒグマ > ◇ パキスタンの野生動物 > デオサイ高原
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オオハクセキレイ White-browed Wagtail(ソーン渓谷)

2020

ソーン渓谷のウチャリ湖で観察したオオハクセキレイ White-browed Wagtailです。ウチャリ湖は黒い水の塩湖で、湖岸では虫が大発生。湖の桟橋では人に慣れたオオハクセキレイが虫を追いかけていました。

オオハクセキレイは体長が21Cmとセキレイの中では一番大きい鳥です。インド亜大陸の固有種で、パキスタンではパンジャブ州北部の水辺に一年を通じて暮らします。

 

巣材を運ぶオオハクセキレイ。3月から10月の繁殖期には美しいさえずりを聞くことができます。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : end of March 2019, Uchhali Lake, Soon Valley, Punjab

Reference: Birds of Pakistan, Birds of the Indian Subcontinents (Helm Field Guides)

カテゴリ:ソーン渓谷 > ■パンジャブ州 > ソーン渓谷 > ◇ パキスタンの野鳥
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アオノドゴシキドリ Blue-throated barbet(マルガラヒル、イスラマバード)

イスラマバードのマルガラヒル(Margalla Hills)、トレイルNo.5 で観察したアオノドゴシキドリです。

 

アオノドゴシキドリはインド亜大陸から東南アジアにかけても森で見られるBarbetで、顔とのどが明るい青色をしています。体長23センチ。

 

パキスタンではマリー(Murree) 周辺の限られた場所で見られる野鳥です。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : End of OCT, Margalla Hills National Park – Trail No5, Islamabad

Reference : Helm Field Guide “Birds of Pakistan”

カテゴリ:マルガラヒル > ■イスラマバード首都圏 > ◇ パキスタンの野鳥
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カシミール・マーコールの親子(トゥーシ・シャシャ保護区)

チトラール周辺の山岳地帯では、希少なマーコールと出会うことができます。マーコールはパキスタンの国獣 National Animal of Pakistan であり、チトラール周辺で見られるのはカシミール・マーコール Kashimir Markhor。

マーコールはインド西部や中央アジアの山岳地帯にも生息しますが、一番の生息地はパキスタン。北部パキスタンではギルギット周辺でアストール・マーコール Astor Markhorが生息しています。

 

チトラールの町から少し離れた場所にあるトゥーシ・シャシャ保護区( Tooshi-Shasha conservancy ) では川の対岸に、本当に近い距離でマーコールを観察することができました。

夕方近くになると、マーコールの群れが川に水を飲みにやってきます。ここではたくさんのメスと子供たちを観察することができました。ではオスはどこに??

オスは1年のほとんどを高地で過ごし、12月の繁殖の季節になると降りてくるのだそうです。

 

マーコールが木登りして葉を食べています!

 

親子マーコールが後ろ足で立って葉を食べる、なんと可愛らしい光景!

 

しっかり食べて、これからやってくる厳しいを冬を越えなくてはなりません。1年目の冬を生き残れるかが勝負です。

 

この滞在中に、トゥーシ・シャシャ保護区に何頭のカシミール・マーコールがいるか調べることはできませんでしたが、すぐそばにあるチトラール・ゴル国立公園ではその数が増え2,500頭ほどはいるとのこと。

実際に、トゥーシ・シャシャ保護区でもチトラール・ゴル国立公園でもカシミール・マーコールと出会うことができました。次は立派な角のカシミール・マーコールと出会いたいものです。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : Oct 2019, Tooshi-Shasha Conservancy, Chitral, Khyber Pakhtunkhwa

 

 

 

カテゴリ:■カイバル・パクトゥンクワ州 > チトラル > マーコール > ◇ パキスタンの野生動物
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コチャバラオオルリ Rufous-bellied niltava (マルガラヒル、イスラマバード)

イスラマバードのマルガラヒル Trail No.5 で出会ったコチャバラオオルリRufous-bellied niltava です。

 

コチャバラオオルリは中国から東南アジア、南アジアの温帯林で見られる野鳥です。パキスタンではヒマラヤ山脈の南麓にあたるマリー(Murree)やカガン渓谷(Kaghan Valley)の1,800m~2,600m付近で見られ、冬は低い場所へ降りてきます。

 

土曜日、会社前の朝7時に行きましたが、すでに多くの人がトレイルを歩いていました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : End of OCT, Margalla Hills National Park – Trail.No.5, Islamabad

Reference : Helm Field Guides “Birds of Pakistan”

カテゴリ:マルガラヒル > ■イスラマバード首都圏 > ◇ パキスタンの野鳥
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ゴーラクヒル Gorakh Hill (シンド州)

シンド州で国内観光客に人気があるゴーラクヒル Gorakh Hill。N55、通称インダスハイウェイから西へキルタール山脈に入った場所にある、標高1,700mの高原です。バロチスタンとの州境にあり、途中の景色もバロチスタンと一緒で、道路沿いにキャンプを張って暮らす人々もバローチ族です。

ゴーラク Gorakhの名前はシヴァ神を信仰するヒンドゥ行者に由来するといいます。そう、シンド州はパキスタンのヒンドゥ教徒の94%が暮らす州なのです。

 

シンド州の平原から一気に標高を上げ、下には雲海が広がりました。4WDでないと来ることはできず、思いのほか時間がかかり、この日は夕焼けを見ることができませんでした。

 

あれだけの悪路にも関わらず、週末はカラチなど都市部からやってくるツーリストで大変賑わう場所です。私たちが訪問したのは平日だったため、数組のパキスタン人のグループがいただけですが、多い時には1000人を越えることもあるとか。暑いカラチやハイデラバードからやってきて、涼しい高原で夕日・朝日をながめ、夜はキャンプファイヤー・・・そういう旅が人気があるようです。

 

朝日を見にベナズィールビューポイントへ行ってみました。

 

夜明けのゴーラクヒルステーションからの景色。

 

高原の見晴らしのいい場所に、ヴィラ風の建物が作られていました。いずれはイスラマバード郊外のマリーのようになってしまうのでしょうか。キルタール山脈の雄大な景色を残してほしいと思いました。

 

ゴーラクヒルのビューポイントです。高原の切り立った崖の上に位置しています。

 

朝日の後の気持ちの良い朝食。シンド州とは思えない景色と出会えたゴーラクヒルの訪問でした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA *一部の写真はドローンによる撮影です。

Visit : Nov 2019,Gorakh Hill Station, Dadu, Sindh

 

カテゴリ:ゴーラクヒル > ■シンド州
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ヒンゴル国立公園・バロチスタンの泥火山世界-5

バロチスタン、ヒンゴル国立公園のチャンドラグプ泥火山です。

 

泥火山(でいかざん)とは地下深くの泥が地下水・ガスとともに地表に噴出し堆積したものです。「火山」とついていますが火山活動と必ずしも関係があるわけではありません。バロチスタンの沿岸部はアラビアプレートがユーラシアプレートに沈み込みんでいます。多くの場合、こういう場所では火山活動が活発なのですが、バロチスタンの場合は泥やガスが噴き出す「泥火山地帯」が出現しました。

 

チャンドラグプ泥火山は3つあり、資料によっては「チャンドラグプ1」、「チャンドラグプ2」、「チャンドラグプ3」と記述があるのですが、一番高いヒンドゥの巡礼地になっている泥火山が「チャンドラグプ1」というのは確かなようですが、残りの2つについてはどちらが2か3かわかりません。高い順番かな、と勝手に解釈しています。

 

ヒンゴル国立公園の泥火山についての記事:    

 

2番目に高い泥火山、「チャンドラグプ2」のクレーターです。前シーズンは活動がなく乾いていましたが、今年は泥が噴き出てクレーターにたまり始めていました。

 

「チャンドラグプ2」は傾斜が緩やかな泥火山で、泥の流れが作り出した景観が大変美しい泥火山です。

 

真上から見た「チャンドラグプ泥火山2」。泥の作り出した造形美。

 

「チャンドラグプ泥火山2」から望む夕日と、「チャンドラグプ泥火山1」。美しい夕焼けに恵まれた日でした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA *一部の写真はドローン撮影です。

Special Thanks :Yoko Kadonaga for photograph  from Crater edge

Visit : Nov 2019, Chandragup Mud Volcano、Hingol National Park , Makran Coast, Balochistan

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