世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

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ウルグアイ

世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

 

El Pepe, Una Vida Suprema

監督: エミール・クストリッツァ
出演: ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキーほか
日本公開:2020年

2020.6.24

ホセ・ムヒカ 元ウルグアイ大統領に学ぶ「足るを知る」精神

南米ウルグアイの第40代大統領で、質素な暮らしぶりから「世界で最も貧しい大統領」とも称されたホセ・ムヒカを捉えたドキュメンタリー。

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収入の大半を貧しい人々のために寄付し、質素でありながらも心豊かな暮らしを実践してきたムヒカ元大統領。

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国民のより良い生活のために自己犠牲をいとわず、予想外の政策を打ち出す彼の姿に、「世界でただ1人腐敗していない政治家だ」と直感したクストリッツァ監督(『アンダーグラウンド』などバルカン半島の歴史やジプシーの生き方に焦点をあてた作品を多くつくってきた監督)は、2014年から撮影を開始。大統領の任期が満了する瞬間までをカメラに収めた。

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極貧家庭に育ち、左翼ゲリラとして権力と戦い、13年に及ぶ勾留生活を経て、国民に愛されたムヒカ元大統領の波乱万丈な人生を追う・・・

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旅の映画、そしてどちらかというとフィクション映画を多く監督(ときには自ら出演)してきたクストリッツァ監督は、ムヒカ元大統領の人生を旅になぞらえています。

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「大統領に必要なのは、大きな心と小さな財布だけでいい」など数々の名言をまじえたムヒカ元大統領のスピーチは、経済・効率性優先の社会に違和感を感じている人々の心をとらえていきましたが、本作には目の前にあるものが「あること」の素晴らしさをただただシンプルに享受した上で日々を生きていく、ムヒカ元大統領の素朴な姿がおさめられています。

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こんな名言も、映画冒頭で登場します。

「13年拘留されていたから慎ましくいられる、悪は時に善になるし善は悪になりうる」

この善悪の二項対立に対する考え方のように、ムヒカ元大統領は「日常と非日常」を、単なる二項対立ではない独特な考え方でとらえています。

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旅に出ることは、一般的には非日常的な体験を求めた行動であると考えられているかと思います。「日常→非日常(旅)→日常」と日常に戻ってくると、いつもの日常がどことなく違うものに変容しているというような考え方です。

一方で、ムヒカ元大統領は連綿と続く「非日常」を生きていることが本作で明らかになります。「非日常A→非日常B→非日常C…」という感じでひたすら旅的な時間が続いているがゆえに、日常を支配する経済・効率性にはとらわれないということです。

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ジプシー音楽を多く映画に取り入れてきたクストリッツァ監督は、タンゴを口ずさむムヒカ元大統領を敏感にとらえ、ムヒカ元大統領の慎ましい姿勢を映し出します。踊ることは日々のリズムを感じ取る一番の手段で、踊る(踊れる)喜びだけでじゅうぶんに人生が満たされるのでしょう。

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「足るを知る」心を学べる『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』は、全国順次ロードショーに加えて、2020年9月1日まで複数メディアににて期間限定 デジタル配信中。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。