ベ・ラ・ミ 気になるあなた

中国

ベ・ラ・ミ 気になるあなた

 

監督:ゲン・ジュン
出演:シュー・ガン、ジャン・ジーヨン 他
日本公開:2025年

2025.10.8

知られざる中国・黒龍江省のオフビートドラマ

中国最北東の黒龍江省の最北東にある田舎町・鶴岡。あるカフェで二人の男が出会う。

彼らは街をぶらつき、サウナに籠り、求め合い、真実の愛に近づいていく・・・

日本から意外と近く手軽に行ける黒龍江省。省都・ハルビンまでのフライトをサッと調べてみたところ、航空券はひと桁万円でさほど高くなく、直行便だと3時間強で着きます。

ロシアにも近く、エキゾチックな町並みが特徴的。そしてとにかく「寒そう!!」というイメージがあります。氷祭りの写真はいつ見てもダイナミックで、日本の東北・北陸・北海道のかたもびっくりな光景かと思います。

しかし、あまり黒龍江省を旅した人の話を聞いたことがありません。ひとりだけ、ハルビンに留学していた友人がいるので、いつも会うとハルビンや黒竜江の話を聞いてしまいます。

近いのになぜあまり日本人にゆかりが無いのかはわかりませんが、そんなポジショニングがゆえに、「黒竜江の映画」と聞いただけで読者の皆さんも本作に興味がわくのではないでしょうか。

監督は黒龍江省の鶴岡で約20年映画を撮り続けてきたといいます。日本では奈良生まれの河瀨直美監督がそうですが、故郷で多くの作品を撮るタイプの監督は少なからずいます(ちなみに、僕はいまだに出身地・東京で作品を撮ったことがありません)。

町を知り尽くした監督が映す町の物語は、きわめてローカルなはずですが、普遍的なものに変身します。

モーパッサンの古典的名作「ベラミ」(※「美しき友」の意)を下敷きに、本人たちは退屈そうだけれども可笑しく愉快な光景が、時折流れるアルゼンチン・タンゴの旋律とともにゆったりと展開されます。

監督のインスピレーションとなったのは、コロナ禍だっといいます。未曾有の孤独。それでもつづく権力による支配。なおさら逃げたくなる旧来的価値観による抑圧・・・・・・同性愛を描いた本作は自国では上映禁止となっています。しかし、グツグツと煮えたぎる怒りをただ不機嫌に投げつけるのではなく、荒涼とした黒竜江の風土へ打ち水するように淡々と散らしていくタッチは世界中で好評を得ています。

どことなく北欧映画の雰囲気も想起させるユニークな一作11月15日(土)よりユーロスペースほか全国順次上映。その他詳細は公式HPでご確認ください。