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アイム・スティル・ヒア
監督: ウォルター・サレス
出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロほか
日本公開:2025年
1970年代ブラジル、夫の「長き不在」を必死で埋める妻の抵抗
1971年ブラジルのリオデジャネイロ。軍事独裁政権に批判的だった元下院議員のルーベンス・パイバが、供述を求められて政府に連行され、そのまま行方不明となる。
残された妻のエウニセは、5人の子どもを抱えながら夫が戻ってくることを信じて待つが、やがて彼女自身も拘束され、政権を批判する人物の告発を強要される。
釈放された後、エウニセは軍事政権による横暴を暴くため、また夫の失踪の真相を求め、不屈の人生を送る。
旅行パンフレットの見出し写真1枚だけで、「行ってみたい!」と旅に導かれることがあるかと思います。同様に、内容はともかく予告編の雰囲気だけで、ポスターだけで、見出し写真1枚で惹かれる映画というのがあると思います。本作はまぎれもなくそのタイプの作品です。
「1970年代のブラジルの話」と聞いて即座に「お〜それは観たい!」となる日本人はなかなかいないのではないでしょうか(そうでもなかったらすみません)。というのも、ブラジル移民などのゆかりはあるとはいえ、ブラジルというのは日本からはとてもとても遠い国で、描かれている時代が1970年代となるととてもイメージしにくいだろうと思うからです。
しかし、本作の写真を観たときに僕はとても惹かれるものがありました。それはテクスチャといいますか、映画の「手触り感」です。
実際本編を観てみると、様々な時代考証がされていることが、ほのかな懐かしさに包まれて伝わります。現代のブラジルで撮ったとは思えないほど、人々が着ているもの、振る舞い、行き交う車、家具などまで徹底されています。おそらくポルトガル語の喋り方なども徹底されているでしょう。
なぜそこまで徹底されているのか? それは監督・脚本家・制作陣たちの個人的な思いや記憶によるものだと思います。この時代の、この家族を、この主人公を描くことが自分たちにとって大切だと信じたチームの素晴らしい仕事だと感じました。
「最も個人的なことが、最もクリエイティブなことである」という映画監督マーティン・スコセッシの言葉でがありますが、題名にI(アイ)と入っている通り、とても個人的な思いが、一つの「時代」を大胆に映し出している作品です。『アイム・スティル・ヒア』は8月8日より新宿武蔵野館ほか全国公開中。詳細は公式HPをご確認ください。