(C)2023 Magnolia Mae/ Office Shirous
コットンテール
監督: パトリック・ディキンソン
出演: リリー・フランキー、木村多江、高梨臨 ほか
日本公開:2024年
ウサギに導かれ、イギリス・湖水地方 ウィンダミア湖へ
兼三郎は妻・明子の葬式でしばらく疎遠となっていた一人息子の慧(トシ)とその妻さつき、孫のエミに久しぶりに会う。酒に酔い、だらしない態度をとる喪主の兼三郎に、トシは苛立ちつつも気にかけていた。
明子の遺言状には、明子が子どもの頃に好きだった「ピーターラビット」の発祥地であり、夫婦で行きたいと思っていたイギリスのウィンダミア湖に散骨して欲しいという内容が描かれていた。
兼三郎とトシ一家は、明子の願いをかなえるため、イギリス北部の湖水地方にあるウィンダミア湖へ旅立つ。
「断捨離」という言葉が一般的になり久しいですが、一言でいうと本作は「人生を整理する」という話です。そう言うのは簡単ですが、もちろん頭の中の整理というのは決して簡単なものではありません。
部屋の整理だったら業者に外注したり、便利グッズのようなものを使うこともできるのに・・・と思うところですが、頭の中の整理にもやはり「とっかかり」や「便利用具」のようなものがあるというのが本作の切り口です。しかもそれは意外と小さいことだったりします。『コットンテール』におけるそれは、「ウサギ」です。
コットンテール<cottontail>=「灰色・褐色の被毛と下側が白い尾を持つ小型ウサギ」。rabbitという単語の発音が日本人には難しい。「灰」という色。湖水地方・ウィンダミア湖とピーターラビットの関係。これらを日本在住経験のあるイギリス人監督は、劇中の人間模様と絶妙に絡ませていきます。
僕は学生時代にイギリスに留学して個人的に縁がある(遺灰をウィンダミア湖やイギリスにまいてほしいとまでは思わないですが)ので、イギリス人と日本人の「似ているところ」と「似ていないところ」の描きわけに、とても好感を持った作品でした。
イギリスというのは比較的日本人が親しみある国だとは思うのですが、距離としては約1万km以上離れています。行くのもダイレクトで約12時間かかり一苦労です。
主人公の兼三郎にとって「ただただ遠い国」が「近くて遠い国」になる。そんな物語とも言えるかもしれません。
『コットンテール』は3/1(金)より新宿ピカデリーほか全国劇場にて公開中。そのほか詳細は公式ホームページをご確認ください。