インドの祝日① インドの祝日システム解説

国民の祝日について-内閣府

ナマステ!西遊インディアです。

 

インドで生活する際、またインドを観光で周る際に事前に確認しておきたいのが、「祝日」です。役所はもちろん、祝日によっては一部観光地も閉まります。インドの祝日は、毎年日付が変わる移動祝日も多く、また州によって別途定まっている祝日もあり、一見非常に複雑です。

インドの祝日について、そのシステムをご紹介します。

 

インドの祝日システムの話へと進める前に、まずは、参考として日本の祝日のシステムを考えてみましょう。下の画像は、内閣府のウェブサイトより引用した現在の日本の祝日です。

 

 

国民の祝日について-内閣府
国民の祝日について-内閣府

 

日本の祝日はまず、日付が決まっている祝日と、年によって日付が変わる祝日の2つが存在します。

 

日付が決まっているものとしては、元旦(1/1)や憲法記念日(5/3)、文化の日(11/3)など祝日の大半がこれにあたります。日付が変わるものは、ハッピーマンデー制度によって「〇月の第〇月曜日」と指定されるものに加え、天体の運行に左右される春分の日・秋分の日がこれにあたります。

 

また、2019年から2020年、そして2021年は平成から令和への切り替えや東京オリンピック関連で祝日の移動が行われています。これは少しイレギュラーなものとなりますが、基本的には毎年上述したような祝日設定となります。

 

このように年によってある程度は祝日の日付が違う日本ですが、それでも祝日は日本全国どこへ行っても同じ日ですし、県によって、もしくは人によって祝日が異なっている、というような状況はありません。また、私たちもいつどんな祝日があるかということをだいたい理解して生活しています。

 

 

■インドの祝日システムの特徴

これに対し、インドの祝日システムは全く異なった性質を見せます。全州で共通している祝日もありますが、それに加えて州ごとに異なる祝日が設定されています。また、その中でも各個人によって選択できる祝日が設定されており、人によっても祝日が異なることになります。州によって・人によって祝日が異なる、というのがインドの祝日システムです。当然、違う州へ行けば違う祝日があり、また非常に多種多様な土地文化・宗教等が混在しているインドですので、インド人であっても聞いたことのない祝日、というものがたくさん存在しています。

 

これは、インドの多様な文化をそのまま反映した結果です。様々な民族・文化・宗教が入り混じって成立しているインドでは、国として統一した祝日を敷くことはせず、各地域・各文化・各宗教・そして各人に即した祝日を取得できるようなシステムが出来上がっています。

 

また、「〇月〇日」と日付を表す場合、基本的に現代の日本人は新暦(グレゴリオ暦)に則った考え方をします。しかし日本にも旧暦(江戸時代に制定された天保暦)が存在し、現代でも伝統行事の際には旧暦を基準にするように、日付(暦)の考え方は様々あり、インドでも地域・文化・宗教等によって異なる様々な暦が使われています。インド中央政府は公式な発表の際にはグレゴリオ暦を使用しますが、その際にインド国定暦であるサカ暦(Shaka Calender)や他の暦における日付を併記することも行われています。

 

2021年のデリーの全州共通の祝日画像出典-インド政府公式Web
2019年のデリーの全州共通の祝日画像出典-インド政府公式Web

 

上の画像は2019年のデリーでの祝日(の一部)です。中央左列はグレゴリオ暦で記載されていますが、その右側の列にはインド国定暦(サカ暦)が併記されています。また、グレゴリオ暦の4月17日からは表が分かれていますが、これはインド国定暦ではこの期間に暦の1940年から1941年に年が移ったことを示しています。

 

日本でも旧暦と現在の暦で日付がずれるように、インドでも各地の伝統の暦と現代のグレゴリオ暦との間に誤差が生じるため、私たちが普段使っているグレゴリオ暦で考えると、毎年開催の日付が変わっている祭りが多く存在します。日本では主に旧暦とグレゴリオ暦だけの対比となりますが、インドではその伝統の暦も地域によって様々あり、より祝日のスケジュールが複雑になっています。インド国内で売られているカレンダーの多くには、様々な暦での日付が記載されています。

 

グレゴリオ暦・ビクラム暦・インド国定暦サカ暦などの日付が併記されているインドの2006年のカレンダー ©-The-Trustees-of-the-British-Museum
グレゴリオ暦・ビクラム暦・インド国定暦サカ暦などの日付が併記されているインドの2006年のカレンダー ©-The-Trustees-of-the-British-Museum

 

■インドの祝日システムの内容

 

それでは実際に、インドの祝日システムの内容を見てみましょう。

 

インドでもグレゴリオ暦に当てはめると毎年日付が変わる祝日が多くあるため、ここでは今年2021年の祝日に関して記載していきます。まず初めに、基本的な特徴として、インドの祝日には2種類の祝日があります。

 

全州共通の休日:Gazetted Holidays

 

一つ目は「Gazetted Holidays(全国共通の祝日)」と呼ばれる、中央政府が定めた祝日です。これはインド全州で共通する休みとなり、今年は1年のうち14  日間が設定されています。

 

14日間のうち3日間は、インドの国民の祝日(National Holiday)である下記となります。また、インドの行政は中央政府の直轄であるデリーと、各州政府に分かれています。各州政府の「全国共通の祝日(Gazetted Holidays)」は14日間ですが、デリーに限っては更にデリー固有の休日が3日間あり、デリーの「全国共通の祝日」は計17日間となっています。

 

 


①1月26日 共和国記念日

1950年の共和国憲法発布を祝う日です。デリーをはじめ、各州で大規模なパレードが行われます。

②8月15日 独立記念日

1947年イギリスからの分離独立を祝う日。首相演説がデリーのラール・キラーで行われます。

③10月2日 マハトマ・ガンディー生誕日

インド独立の父であるマハトマ・ガンディーの誕生日。

 


 

ちなみに、新型コロナウイルスの影響で例年よりも縮小しての開催ではありましたが、今年2021年の1月26日にも共和国記念日の祭典が催されました。現地のテレビ局によって撮影された、デリーでのパレードの様子が公開されていましたので、こちらも是非ご覧下さい!

 

 

 

 

選択式の休日:Restricted Holidays

 

二つ目は「Restricted Holidays」と呼ばれる、選択式の祝日です。これは各州政府が設定した祝日のリストから3日間を選び、各人ごとに自由に祝日を取得できる、というシステムです(中央政府は2日間)。この祝日リストは州政府では選択肢として12日の祝日が挙げられています。

 

州政府ではリストに並ぶ祝日は12日間ですが、中央政府のリストには全部で34日の選択肢があります。州政府のリストと比べると、選択できる祝日の幅がとても多いことに気づきます。これは中央政府の職員や、デリー在住者には他州と比べて様々な出身地・宗教の人がいるということが背景にあり、また行政担当者の休日をある程度分散させるという狙いもあります。

 

 

複雑でわかりにくいように思えるインドの祝日システムですが、各地域や宗教の伝統行事に合わせて祝日を設定できるため、多種多様な文化・宗教を抱えるインド社会の多様性に即した仕組みとなっています。全国一律の祝日を強硬に設定するのではなく、各地の伝統をある程度尊重した、非常にインドらしい制度ではないでしょうか。

 

 

「インドの祝日」その②へ続きます。