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ジャッリカットゥ 牛の怒り

08d82edcec37e216配給:ダゲレオ出版

(C)2019 Jallikattu

インド

ジャッリカットゥ 牛の怒り

Jallikattu

監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
出演:アントニ・バルギース、チャンバン・ビノード・ジョーズほか
日本公開:2021年

2021.5.19

追いつ追われつ―暴れ牛が描く 南インド村社会のエスノグラフィー

南インド・ケララ州にある小さな村で巨大な水牛が逃げ出し、人々はパニックになる。町の男たちは、泥にまみれ罵り合いながら牛を追いかけ回す。牛の存在は巨大な台風のように村社会を吹き荒らし、権力構造や矛盾を暴き出していく・・・

SABUMON FACING THE CAMERA Jallikattu / Lijo Jose Pellissery

「旅と映画」でご紹介している映画にオススメでないものはないですが、本作は特に特に観ていただきたい一作です。なぜかというと、僕がプログラマーとして関わってきたアジアフォーカス福岡国際映画祭(残念ながら昨年度で30年の歴史に幕を下ろしました)で「この作品だけは絶対したい!」という熱量をもって推薦した作品だからです。ついついこの作品について話すと、劇中の迫力が乗り移って熱がこもってしまうのですが、なるべく冷静にご紹介します。

まずは背景知識です。タイトルの「ジャッリカットゥ」という怪獣のような名前は、南インドのタミル・ナードゥ州で行われてきた牛追い競技の名称です。2000年代に入って動物愛護の観点から開催の妥当性が議論されてきました。

そんな現実世界から映画のフィクショナルな世界に引っ越しした水牛とむさ苦しい男たち約1000人は、思う存分追いかけ合いを繰り広げます。10分以上1ショット(カットを切らない)でつづく大迫力のチェイスや、数十人(しかも大半がアマチュア)がものすごい剣幕で罵り叫び合うシーンは、映画制作者でなくても「一体どうやって撮影しただろう」と疑問に思うこと請け合いです。

本作をオランダ・ロッテルダム映画祭で鑑賞した際は英語字幕バージョンでした。英語字幕を読むのはかなり慣れているのですが、本作のスピードについていけず、途中から字幕はちらっと見る程度にして映画のリズムに没入しました。ですが、(もちろん何を言っているか分かるに越したことはないですが)鑑賞後に内容理解が欠けているとは感じず、「巨大台風が過ぎ去りつつある空をボーッと見つめる、飛来物満載・湿度ムンムンの深い水たまり」のような心地になりました。

下部にリンクでご紹介している西遊旅行のツアーで訪れるケララ州の秘祭も、実際のジャッリカットゥもそうですが、大人数が集まる祭りや催しを堂々と行えるのは、世界中どの場所においてもしばらく先になることでしょう。そして、1000人の男たちが牛を追いかけ回す映画の撮影も、同じくらいの期間、撮影困難になります。

この2020年代においてとても貴重(ちなみに本国インドでのリリースはコロナ前の2019年です)で、あたかも西遊旅行の秘祭ツアーに訪れたかのような気分を味わえる『ジャッリカットゥ 牛の怒り』は、7/17(土)よりシアター・イメージフォーラム他でロードショー。その他詳細は公式HPをご確認ください。

ケララ北部の秘祭を撮る テイヤムの神と女神たち
知られざる南インドへ

秘祭テイヤムが行われるカヌールとバダカラの都市を訪問し、4日間に渡りたっぷりと祭りを見学。ヒンドゥーの神々と古代からの土着の宗教が相まった、インドの他地域とは異なる独自の文化をご覧いただきます。また、祭りの合間には郊外の村も訪問します。

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ケララ

44の河をもつ、緑豊かな「楽園」のイメージの土地です。 紀元前3世紀頃からすでにこの地では交易が盛んに行われており、エジプト、フェニキア、中国、バビロニアなどの地方からの人々で賑わいを見せ ていました。その後、大航海時代の1498年にポルトガル人が訪れ拠点を築き、続いてオランダ、イギリス、フランスからも相次いで上陸し、象 牙、チーク材、香辛料などを求めてヨーロッパ人の交易が開始されました。1956年、ケララ州はトラヴァンコール藩王国、コーチン藩王国な どのマラヤーラム語圏をもとに成立しました。 ケララは非常に緑が多く、車窓からは常にヤシ、バナナ、ゴムなどが植樹されているのを見ることができます。また、識字率がほぼ100%と高いことも特徴です。