テルアビブ・オン・ファイア

8f3bfc7583fb2866(C)Samsa Film – TS Productions – Lama Films – Films From There – Artemis Productions C623

イスラエル

テルアビブ・オン・ファイア

 

Tel Aviv on Fire

監督:サメフ・ゾアビ
出演:カイス・ナシェフ、ヤニブ・ビトンほか
日本公開:2019年

2019.10.23

「イスラエル-パレスチナ問題」をネタに、思いっきり笑う

舞台はイスラエルとパレスチナ自治区。エルサレム在住のパレスチナ人青年・サラームは、第3次中東戦争が勃発した1967年を舞台にした人気メロドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の制作現場で、脚本家を夢見ながらインターンとして働いている。撮影所はパレスチナ自治区・ラマッラーにあり、サラームはエルサレムの自宅から毎日軍の検問所を経て通勤する。

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ある日、ひょんな失言からサラームは検問所の主任・アッシの部屋に連行される。アッシの妻が『テルアビブ・オン・ファイア』の大ファンだということで事なきを得て、さらに図らずも脚本のリサーチができたサラームは、製作現場の修羅場で打開策となるアイデアを提案したことを認められ、脚本家の道を歩むチャンスを手にする。

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パレスチナ問題、シオニズム、中東戦争、ユダヤとアラブ・・・・・・日本人にとってはなかなか触れる機会がなく、理解を深めにくい事柄かもしれません。本作はもちろんそういった知識があっても楽しめますが、むしろ知識がないほうが楽しめるかもしれない稀有な作品です。言い換えると、理解が浅めのほうが、劇中のコメディ要素が強調されるように演出の計算がなされているということです。

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たとえば、エルサレム在住のサラームはパレスチナ自治区のスタジオで行われる撮影現場に、ヘブライ語の言語指導で現場に入っています。なぜ、そのような仕事が必要になるのか。なぜ、撮影所に行くために検問所を通る必要があるのか。なぜ、特定の演出が「ユダヤ的」「アラブ的」だと争点になるのか。こうした点について、作中で説明が皆無なわけではありませんが、アラブ料理・フムスなど文化的な要素を駆使しながら、説明しすぎない絶妙なバランスでコメディが展開されていきます。日本の観客の多くは「分かりすぎていると感じられない笑い」を感じることになるでしょう。

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こうしたスタンスには本作の製作経緯が関係しているかもしれません。製作国にはルクセンブルク・フランス・ベルギーという3カ国がイスラエル以外に名を連ねています。つまり、「外からの視点」が大いに反映されている作品であるということです。

エルサレムの歴史的な街並みや観光名所は作中にほぼ登場せず、スタジオ内(おそらくイスラエルではない場所で撮られたのでしょう)を中心に物事が進行していきます。検問所ももちろんセットでの撮影です。「撮れない」「映せない」という製作当時は制限だったかもしれない条件が、観客の想像力を誘発する演出に変身していて、結果的に、「想像上のイスラエル・パレスチナ」という、誰も行けない場所を脳内で旅することができる作品となっています。

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『テルアビブ・オン・ファイア』は11月22日(金)より新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー。詳細は公式ホームページをご覧ください。

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