大雪山・旭岳のギンザンマシコと海鳥の聖域・天売島
<前編>

Report by 戸塚学 / 2025年6月13日~17日

個人的にはどちらも何度か足を運んでいる場所ですが、西遊のツアーでは初めてとなります。時期的に旭岳の宿が山開きに合わせてオープンさせるという事で、2日間宿が旭川市内という事になり本来予定をしていた山麓周辺の撮影ができなかったことが残念だった。天売島はピーカンの晴れとはいかなかったのですが2日目に奇跡的出来事が続き大変喜んでいただけたのではないかと思いました。

1日目 晴れ

旭川空港での集合に飛行機がかなり遅れた事と宿が旭川市内名なのでそのまま宿入りしました。

2日目 旭岳 晴れ

旭川市内からの出発のためロープウェイの始発に乗れず、8時30分の便で姿見駅へ。今年は少ないとはいえ残雪の残る斜面をおっちらえっちら歩いて行きます。第一展望台に向かう途中に鳥のさえずりが?ふと見上げるとオスのギンザンマシコがハイマツの上に!しかし撮影する前に飛ばれてしまった。まず第一展望台に上がり周囲の場所の説明をしたのちギンザンマシコ狙いのカメラマンで賑わう第三展望台へ向かいます。どうやら朝1番でこの場所の近い場所でゆっくりと撮影ができたらしい・・・悔しい。その後も何度か飛んだり、ハイマツの上にとまるもすぐに飛び去ったりなどしてなかなか撮影をさせてはくれない。途中でカヤクグリやノゴマが撮影はできたものの本命はさっぱり。

カヤクグリ

参加者の1人が、第二展望台に行ってみる!と歩き出した。彼女があと少しで到着という時です、なんと目の前の岩にギンザンマシコのメス2羽がとまったのです。こちらからは逆光&遠い!しかし彼女からは順光&近い!「「しっかり撮って!」と声をかけてしっかり撮ってもらいました。その後、持ってきた携行食を食べながら待ちますが・・・時計は14時を回ります。ダメかなと諦めかけた時とうとうその時は来ました。ハイマツのてっぺんに真赤なオスがとまりました。時間としては3分あったか無いかですが、動かないのでしっかりと撮影ができました!

ギンザンマシコ

15時45分のロープウェイで下山をしたのですが、あれっきりギンザンマシコは出なかったので超ラッキーでした。ホテルへ戻りサービスで付いてきたグラス生ビールで祝杯を挙げました!

3日目 旭川―羽幌―天売島 晴れ

旭川から予定よりも早く羽幌港に到着したので、周辺で撮影を試みますが天気がいい事と時間的に鳥たちが少なく撮影ができません。一旦ろうそく岩まで戻りウミウを撮影しようとしますが・・・陽炎がひどくてダメでした。それではと食事に向かいましたがどこも高い!特にお客様の所望のうに丼がどこも5000円!結局ホテルのレストランで普通の味と値段の食事となりました。天売航路では思ったほど海鳥たちには出会う事ができずウトウ、ケイマフリ、ウミウ、2度ほど出てくれたウミスズメを撮ることができなかったのが悔しい。

ウミウ

天売島に着いてそのまま西遊の宿、天売マフレへ。この日は18時から赤岩展望台で帰巣するウトウの撮影のため早めの食事をする予定。その前に宿周辺で鳥を撮影します。天売島にはノゴマとコムクドリが多いのでまずは撮影できてよかった。一番の収穫は巣立ち間もないアカゲラを撮れたことでしょう。

 

17時から食事をして出発します。天売島ではウミネコが繁殖する場所が海岸にあり道路周辺にも広がるため道路がウミネコで埋め尽くされてしまう。今年はまだヒナの数が少なくてよかったがここがヒナで溢れるとどかして車で通行するのが超大変!

ウミネコのヒナ
ウミネコ

そこを抜けると展望台までの上り坂を登り展望台です。今年はオオイタドリの丈が高く戻って来るウトウが見つけにくい。合わせて予定をしていた時間よりも1時間遅く戻ってきたので暗くなってしまい思ったような撮影ができませんでした。参加者からも「この撮影は私たちには難しい」と言われますが私自身も超苦戦しているのだから当然です。暗くなってからは色づく空をバックに帰巣するウトウを狙いますが・・・いつもより数が少ない。現地ガイドの話によると今年はエサの魚が少ないのでほとんどの親鳥たちがエサを持ち帰れない&時間が遅いとのことでした。そのあとはライトアップされたウトウを撮影するのですが一般観光客も多いので思うように撮影ができずみなさん結構ストレスを感じていらっしゃった。ここからの帰りは鳥たちを車で轢かないためにガイドの車に着いて帰路につきました。

ウトウ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡りの季節 天売島 バードウォッチング三昧

Report by 今堀魁人 / 2025年5月3日~6日

 

1日目

初日は15時頃に天売港で集合しツアースタート!、、、のはずが、まさかの船が欠航!いきなり翌日振替を余儀なくされ、波乱のツアースタートとなりました。

 

2日目

翌日は無事に船の運航が決まり、10時頃天売島に到着しました。到着後は1日分の遅れを取り戻すべく、早速島内を巡ります。島を回ると、あちこちでのゴマの囀りが聞こえ、天売島らしさ全開です。

ノゴマ

ウミネコの繁殖地である黒崎海岸では、卵を抱くのが下手な母カモメも。無事に成功することを祈りましょう。

母カモメ

そしてアリスイなどを見ていると、午後の最後にオオルリの大群が!ここまでのオオルリの群れは珍しく。その中には離島らしい亜種チョウセンオオルリの姿も!そして夜にはウトウの帰巣を見に出かけます。真横を掠める帰巣シーンは圧巻です。明日はどんな鳥に出会えるでしょう?

オオルリ

 

3日目

3日目の早朝はケイマフリを探しに赤岩展望台へ。目の前の岩でまったりとするケイマフリやこちらに向かって飛んでくる姿が見られました。

ケイマフリ

ケイマフリ

そしてこの天売島のみ国内で繁殖しているウミガラスも!午前中、そして夕方には再度森の中で小鳥探し。ムギマキが一気に入りましたが、昨日あんなにいたオオルリは消え、日毎に鳥たちが渡っているということを実感できましたね。

ムギマキ

そして夜は変わらずウトウの撮影に出かけましたね。前日の経験を生かし、いい写真やいい場面を見ることはできたでしょうか?

魚を運ぶウトウ

明日は最終日です。予報は良くないですが、なんとか海鳥クルーズに乗れますように!

 

4日目

あっという間の最終日ですが、今日も風が強く、残念ながら海鳥クルーズの乗船は叶わず。気を取り直して赤岩展望台で最後のケイマフリとウミガラス観察です。たくさんのウミガラスやまったりとしたケイマフリを観察できましたね。ツアー終了後に土橋様から連絡があり発覚しましたが、6時18分になんとカツオドリが飛んでいました!これは北海道初記録でかつ、かなり貴重な記録となるでしょう。赤丸の部分にカツオドリが飛んでおりましたので、ぜひ確認してみてください!

カツオドリが!

そして宿に帰ると最後の最後にヤツガシラ!の声が。

ヤツガシラ

本当に最後まで何が出るかわかりませんね。夕方にまた戻って来てくれ、姿を確認することができました。本当に毎日ドキドキワクワクできるのが離島の魅力です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

仙台湾でたっぷり海鳥観察 2本目

Report by 田野井博之 / 2025年1月28日~31日

●1日目

この日は西寄りの強風によりチャーター船は欠航となりました。そこで、南三陸町の志津川湾へコクガンを見に行くことにしました。志津川湾はコクガンの餌となる海草のアマモが豊富なため、毎年たくさんのコクガンが越冬しています。

ポイントに到着すると、すぐに40羽ほどのコクガンを見つけました。漁港のスロープでアマモを食べています。同じ場所にはイカルチドリとイソシギの姿もありました。漁港の堤防から海上を見ると、さらに100羽超のコクガンのほか、ハジロカイツブリやワシカモメなども見られました。

アマモを食べるコクガン
 

 

午後は県内北部のシジュウカラガンの群れが見られているエリアへ。なかなか群れが見つからず時間はかかりましたが、オオハクチョウやコハクチョウと共に採餌する160羽ほどの群れを見つけ観察することができました。

最後に仙台市近郊のカモ類が越冬する沼に立ち寄り、オナガガモやホシハジロなどのカモ類を観察しました。今冬はカモ類が少ないためちょっと寂しい様子でした。雨の止み間もなくなってきたため、この日の観察を早めに終えました。

 

 

●2日目

この日は朝のうちだけ強風が収まる予報となったため、船長と相談して早朝から出船することにしました。

夜明けとともに出港し、ウミスズメ類を探します。アカエリカイツブリやクロガモを観察しつつしばらく進んでいくと、風波の合間に見え隠れするマダラウミスズメを1羽見つけました!この個体はすぐに飛び立ってしまいましたが、降り立った先へ行ってみると別の1羽が一緒にいて、2羽の姿をじっくりと見ることができました。

マダラウミスズメはその後も1~2羽で海面に浮く姿があり、計7羽を見ることができました。複数のマダラウミスズメが見られた一方で、21日発のツアーと同様に、ウミスズメは例年よりもかなり少なめでした。

今回のツアーのメインターゲットの1つ、マダラウミスズメ
ビロードキンクロ

 

今回は強風を避けるため岸沿いを航行したため、アビ類はアビ1種のみが見られました。警戒心が強いため浮いている姿を近距離で観察する機会は少ないですが、飛翔するアビは船の近くを通過する様子を何度か見ることができました。

クロガモやビロードキンクロなどの海ガモ類は、21日発ツアーと同様に、例年よりも少ない結果となりました。両種とも警戒心が強いため浮いている姿を近距離で観察する機会は少ないですが、何度か小群に接近して比較的近くから観察することができました。

航海中は幸いにも風はそれほど強くならず、気づけば約7時間を船上で過ごしていました。14時前に帰港し、この日の観察を終えました。

 

 

●3日目

この日は再び西寄りの風が強まり、暴風警報が発令されました。残念ながらチャーター船は欠航のため、県北のガン類を見に行くことにしました。

まずはカリガネを探すことに。毎年越冬しているエリアを訪れ、採餌する30羽ほどの群れを観察することができました。このカリガネはマガンと一緒にいたため、体の大きさや嘴の形など、特徴を比較しながら見ることができました。

採餌するカリガネ
 

続いてはハクガンを探すことに。かなり遠方へ採餌に行く日もあり、また、最近は日中に見つけることが難しいと聞いていたものの、あっさりと70羽ほどの群れが見つかりました。そして、この群れにはアオハクガン(ハクガンの青色型)も1羽混じっていました!ハクガンの渡来数の増加とともにアオハクガンの記録も増えてきていますが、まだまだ個体数も少なく観察は容易ではないので、とても嬉しい発見でした。

ハクガンの群れ(中央やや右寄りにアオハクガンが混じる)

 

最後は蕪栗沼で1時間ほど探鳥しました。この冬はカモ類が少ないため沼の水鳥はやや寂しい状況でしたが、オオヒシクイやチュウヒ、そして毎年越冬しているヘラサギを見ることができました。特にヘラサギはその独特な採餌方法を見ることができました。

強風に悩まされた今回のツアーでしたが、無事にチャーター船を出して海鳥を観察することができ、また、駆け足ではありましたが宮城県の水鳥を見て頂くことができました。

3日間、大変お疲れさまでした!

この記事を書いた人

田野井博之 たのい ひろゆき
1985年生まれ。小学生の時に野鳥の観察を始める。東北地方を中心に鳥類調査に携わりつつ、関心のある海鳥やシギ・チドリ類、チュウヒなどを見るため全国各地へ。特に海鳥の識別や生態に強い興味を持ち、国内外を問わず観察を続けている。

仙台湾でたっぷり海鳥観察 1本目

Report by 田野井博之 / 2025年1月21日~23日

冬の仙台としてはとても珍しく、ツアー期間中は温かく海況も穏やかで、予定していた3日間全てで出船することができました。海況は日々異なるため、航行コースは状況に併せて選定し、海鳥を探しました。3日間の主な結果は以下のとおりです。

 

<ウミスズメ類>

本ツアーの中でも一番の目的となるマダラウミスズメは、1日目に計25羽、2日目に計16羽、3日目に計7羽を見ることができました!主に1~2羽で見られ、6羽の小群も確認しました。
本種の国内における渡来数は大きく減少しているものの、仙台湾では現在も継続して越冬しています。その個体数も、この10年ほどに限った中では減少している傾向はありません。仙台湾は間違いなく重要な越冬地の1つと言えるでしょう。一方で、ここ数年は黒潮の接近などによる海水温度の上昇とそれに伴う魚種の変化が確認されているため、今後の本種の生息状況の動向が気になるところです。

2羽のマダラウミスズメ
休息するウミスズメの群れ
ウトウ

ウミスズメは数羽~十数羽の小群が見られました。仙台湾では、海水温度の高い冬は個体数が少ない傾向にあり、平年比で4℃ほど海水温度が高い今冬は、例年より少ない結果となりました。

ウトウは1~3羽、時に5~6羽ほどの小群が見られました。ほとんどの個体は顔の白い飾り羽のある生殖羽になっていました。

 

<アビ類>

3日間を通じてアビ、シロエリオオハム、オオハムの3種類が見られました。
アビは主に岸沿いに多く、シロエリオオハムとオオハムは沖合側に多い傾向があります。餌場は日変化が大きく、観察される個体数は日によって大きく異なります。今回のツアーでは、1日目はシロエリオオハムが多く、2日目はオオハム、3日目はアビが多い結果となりました。

アビ

 

<カイツブリ類>
3日間を通じてアカエリカイツブリ、カンムリカイツブリ、ハジロカイツブリの3種類が見られました。また、ミミカイツブリが見られた日もありました。

 

<海ガモ類>
3日間を通じてスズガモ、ビロードキンクロ、クロガモ、ウミアイサが見られました。ウミスズメと同様に、仙台湾では海水温度の高い冬は海ガモ類が少ない傾向にあり、今冬も例年より少ない結果となりました。

飛び立つビロードキンクロ

 

<カモメ類>

ミツユビカモメ、ユリカモメ、ウミネコ、カモメ、オオセグロカモメの計5種類が見られました。ミツユビカモメは沖合を好むカモメ類ですが、海況や餌の状況によって仙台湾の奥部へ入ってくることがあります。今回は沖合がやや時化ていた1日目に、数十羽の群れを見ることができました。

 
ミツユビカモメ・ウミネコ(左から1羽目と2羽目)・カモメ(右から1羽目)
 

<トウゾクカモメ類>

1日目にトウゾクカモメ1羽が見られましたが、残念ながら遠くを飛翔したのみで、じっくりと観察することはできませんでした。

 

 

これほど海況の安定した3日間は私自身も初めての経験でした。
3日間、長時間の乗船・観察、大変お疲れ様でした。

 

この記事を書いた人

田野井博之 たのい ひろゆき
1985年生まれ。小学生の時に野鳥の観察を始める。東北地方を中心に鳥類調査に携わりつつ、関心のある海鳥やシギ・チドリ類、チュウヒなどを見るため全国各地へ。特に海鳥の識別や生態に強い興味を持ち、国内外を問わず観察を続けている。

初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【前編】

Report by 戸塚学 / 2024年6月17日~22日

前半の根室地域では奇跡的な晴れが続き、後半も雨の予報が曇りになり結果的には1日中雨待機をすることなく、ほぼ予定通りに進めることができました。今年はシャチがものすごい当たり年で、2日ともたくさんの群れに当たり観察と撮影を楽しみました。昨年は繁殖をしていなかったシマフクロウも今年は繁殖をしてくれたおかげで2日とも観察と撮影ができました。

アマツバメ

 

初日 

中標津空港で飛行機の到着を待っていると突然の大雨が!すぐ止んではまた降るを数回繰り返しちょっぴり不安になる。時間通りみなさんが到着したので専用車に乗って霧多布岬を目指すと?どんどん空が明るくなり、到着をするとすでに青空が広がっています。下見の時はラッコたちが遠くて心配をしましたが、(以前ドローンで追いかけまわした輩がいて近くに来なくなってしまったとのことだった。)この日は南風が強かったせいもありラッコたちが崖下にいてくれて助かりました。子供も俯瞰なのでしっかりと確認できるし、撮影もできました!

ラッコ
オオセグロカモメ

根室の宿に向かう道中はタンチョウが見られる海岸沿いの牧場を流しながら探しますが、遠くに白い点で見られるペア以外には見つけることができませんでした、残念。宿に着いて周辺でオジロワシやタンチョウを探しますが見当たりません。それよりも困ったことが発生!あれほど霧多布岬では強風だったのにここは無風で温かい・・・となるとヌカカが大量にまとわりつきます。参加者のみなさんにはとにかく肌の露出を控えてもらうようにお願いしました。食後は美しい夕陽が沈むのを食堂の窓から眺めて終了となりました。そう、ヌカカがすごくて外に出られなかったのです。

 

2日目 

予定では有志だけで早朝5時から撮影を予定していましたが、宿のオーナーから「最近宿の近くにクマが出るから気をつけてね。」と言われたので急遽1時間遅くして6時からにしました。結構風が強く、今日のクルーズは中止にならないかを心配しながらの撮影になりました。電話がかかって来なければ催行なので胸の携帯が気になって仕方ありません。そんな私の思いと裏腹に意外と小鳥たちの出が良く、ノビタキ・カッコウ・ツツドリ・シマセンニュウ・コヨシキリが出てくれます。

ノビタキのペア

 

声はすれども姿の見えないエゾセンニュウとマキノセンニュウは相変わらず腹立たしい存在です。一つ悔しかったのがベニマシコのペアが出たのですが場所が悪い&遠かった!みなさんにはもっと近くで、もっとしっかり見ていただきたかったのだ。7時に食事をして8時45分の出発時間まで自由行動にしました。宿前でオジロワシのペアが近くを飛んでくれたり、エゾシカが風連湖を渡る姿も撮影ができました。

ベニマシコ
オジロワシ
エゾシカ

ドキドキだった落石クルーズは、風は強めですが予定通り満載での出航となりました。しかし波というか、うねりが結構あり撮影には厳しい状況です。できるだけ1/2000秒以上、AFフレームは中央+面で捉えるものに設定をしてもらいます。また波と波の間に鳥が入ってしまったら一旦AFを止めて再び姿が見えた時にAFでピントを合せて高速連写をするように伝えました。またシャッターを切る前から記録をできる機能があるカメラはその設定にしてもらいました。出航してすぐにウトウが出ますが、すぐ潜る!のが腹立たしい、もう少し波が穏やかならしっかりと撮れるのにとストレスが溜まります。

島に近づくとウトウと入れ替わるようにケイマフリが増えて来ます。波に翻弄されながらもみなさん必死に撮影します。赤い足が特徴なので飛び立つ時海面を走る姿を狙って~!叫ぶのが精いっぱい。あとはみなさんの腕に期待です。

ウトウ
ケイマフリ

 

そして後ろ姿で気がつかなかったが、波の上にぷかぷかと漂っている鳥がいた。ウトウとばかり思いこんでいたら・・・近づくとエトピリカの若鳥とわかり船上は大興奮!ミラーレス機ばかりなので音はしないのですが、みなさん相当シャッターを切ってるはずです。(笑)

エトピリカの若鳥

その後はエトピリカがよく見られるポイントで待っていますが見当たりません。そんな時遠くに白い物体が?双眼鏡で見ると見えない?揺れる船上でその周辺を双眼鏡でガン見していると再び波の上に白い物体!間違いなくエトピリカの成鳥です。船を向けようとすると飛び立ち、周囲を飛び回った後に着水しました。すぐにでも行きたい気持ちを抑えて、少し時間を置いてから向かうと、かなり近くまで寄ることができました。もう船上は静かなる炎が立ち上っているのが見えるくらいです(笑)

エトピリカ飛び立ち

そろそろみなさん十分撮影ができたでしょうと船長が船を方向転換させようとした時です。向こうから近づいてくれたのか?それとも引き波で寄せられたのか?かなり近くでまで寄ってきます。最後は水面を走り飛び立つところまで撮れました。いやぁ~良かった!その後はラッコの群れとアザラシを観察して、もう一つの目玉のチシマウガラスの繁殖場所へ。こちらは繁殖に影響が出るといけないので短時間だけでしたが、しっかりと撮影することができました!

ラッコ
チシマウガラス

下船後は食事に向かいましたが、意外にも私たちが来る前にお客さんが多く入ってしまったせいで注文から料理が出て来るまでに時間がかかってしまった。これは想定外でした。料理はおいしかったのですが、後のスケジュールを考えるとちょっとドキドキ。そのくせここは絶品のソフトクリームがあるのでそれは外せない。みなさんにも勧めると全員購入してしっかりと濃厚な味を堪能されていました。予定していた1ヵ所は下見ではあまり良くなかったので、時間をかけるのはどうかと考えパスしました。移動途中に途中タンチョウのペアがいい場所にいたので車から降りてしっかりと撮影してもらいました。

タンチョウのペア

野付半島に入る前にショウドウツバメのコロニーを見られるポイントで30分だけ撮影をしてもらいました。野付半島に入りますが時間的に小鳥はあまり姿が見られません。大型の生き物を探すことにします。野付半島のナラワラ近くでキタキツネの親子がいたので狙いましたが、手前の草が邪魔で難しい!時間も押してきたので先端部分に向けタンチョウを探しますが見当たりません・・・仕方がないのでエゾシカの群れを探しますが・・・これまた大きな群れが見当たらない。ふと海上方面から大きな鳥の群れが飛んできた?なんと7羽のタンチョウが私たちのいる場所の奥に降り立ちました。距離もあるので車から降りてセンダイハギの黄色のお花が入る場所へ移動して撮影をしてもらいました。そこから双眼鏡で見回してもやはりエゾシカの群れが確認できなかったため引き返すことにしました。途中コムクドリが水浴びや水飲みをするポイントで待つ事にしたのですが、電線にとまっていたコムクドリが水を飲まずに電線から林の中に消えて行ってしまった。ねぐら入りのようです。こうなったらもう一度キタキツネの親子のリベンジです。しかしなかなかいいシーンを撮ることができず終了となりました。

 

3日目 

5時にコンビニで朝食を買って野付半島へ向かいます。今回のメインは草原性の小鳥たち。下見では出まくりで簡単に撮れたコヨシキリが遠い!シマセンニュウとノビタキはしっかりと撮影もできた。カッコウは、声はすれども姿は見えず、こちらは残念。やはり早朝は定点をすると撮影がしやすい。

シマセンニュウ

その後、移動をしてキタキツネポイントに行きますが見つけられませんので先に向かいます。ナラワラに霧が出ているとアオサギがいるだけでも雰囲気のある写真が撮れるのに・・・見当たりません、残念。コムクドリの水場はやはり今年も漁師さんが網を洗うためにポンプ車を入れていて撮影ができなくなっていた、これまた残念。昨日タンチョウが7羽いた場所は1羽だけ。いつもはこの周辺のセンダイハギのお花畑にたむろしているエゾシカたちがいない。エゾシカたちを探しながら先端方向(竜神岬灯台)をゆっくりと生き物を探しながら進めると、エゾシカの親子がいたので車内から撮影をしてもらう。十分撮影ができたようなので竜神埼灯台の駐車場へ車を停める。ここのトイレが生きていればいいなぁと思って扉を開けると使えるようなのでトイレ休憩にしました。ここからは遊歩道を歩いて撮影です。まずここで見てもらいたかったのは10年以上使っていると思われるオジロワシの巣です。かなり遠いのにその存在感はハンパない!

その後少しずつ移動を繰り返しながら定点をすることにしました。タンチョウのペアやアオサギの群れを撮影しているとシマセンニュウ・ノビタキ・オオジュリン・オオジシギ・シマセンニュウも撮影できました。

エゾセンニュウ

移動をしてきたエゾシカの群れを撮っているとカッコウが3羽で喧嘩をしているのか?飛び回ってくれたおかげで飛翔姿を撮影することができました。その後はネイチャーセンターで30分休憩したのち生き物探しをして撮影を楽しみ、11時にコンビニでお弁当を買って尾岱沼へ向かいます。時間が早いので昨日のリベンジを兼ねてショウドウツバメを狙っていると?何かムシクイがいる?どうやら近くで巣を造っているようでヒナにエサをせっせと運んでいます。エゾムシクイかなぁと悩んでいる時にさえずってくれて一件落着。その後は案内所で各自お弁当を食べていただき13時からのクルーズを開始します。過去2回波が高くて中止になっていたため私自身も初体験です。期待はアビ類とカマイルカです。しかし天気はいいのですが、生き物が出ない。外洋に近づくとウトウやハシボソミズナギドリがちらほら出るくらい。どうにかこうにかミツユビカモメが飛翔しているのを見つけ撮影ができました。しかし外洋に出ても生き物が全然見つかりません。国後島近くまで(国境線)行きますが・・・ダメです。最後は野付半島に船をつけてお散歩時間を作ってくれましたが・・・。港に戻る時にようやく1頭のゴマフアザラシが出てくれたのが慰めか・・・。その後は羅臼を目指します。

ゴマフアザラシ

17時30分に食事をはじめ、19時にシマフクロウの撮影に出ます。参加者の2名は「今日はゆっくりしたい」という事でこの日は私を含め4名で現場に向かいました。20時過ぎにオスが鳴き出し期待が高まると30分後メスが来て3尾魚を食べてからヒナに与えるため1尾をくわえて飛び去りました。まだオスが来ていないので待っていると・・・来てくれたのですが、暗い場所に降りてオショロコマを捕らえると足に持って行ってしまいました。約30分後再びオスが来たのですがこれまた暗い場所でオショロコマを獲って飛び去ってしまいました。「参加者から撮れたから終わっていいよ」と言われたので1時間早い22時に終了となりました。

シマフクロウのメス

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原

Report by 今堀魁人 / 2024年5月18日~22日

1日目

初日13時に稚内空港を出発しツアースタートです!
最初は空港すぐそばのメグマ沼へ。風が強く、なかなか鳥が出てきてくれない中、到着直後にはオジロワシが目の前を飛んでくれました。風に逆らい、ゆっくりと止まっているかのように飛んでくれたのでじっくり見ることができました。ノビタキも一瞬出てきてくれました。

オジロワシ
オジロワシ

ノビタキ
ノビタキ

その後はサロベツ湿原に移動です。木道を歩いてもなかなか鳥が見られませんでしたが、道中ちらっとだけツメナガセキレイの姿が!この道北を代表する夏鳥の一種です。次の兜沼へ行く道すがらアカエリカイツブリの繁殖地へ。遠かったですが、近年激減しているこの鳥を見ることができ一安心しました。

アカエリカイツブリ
アカエリカイツブリ

兜沼では最初から最後までツツドリが遊んでくれました。なかなか見えないところに止まるので右に行ったり左に行ったりと隙間を探しての観察でした。

ツツドリ
ツツドリ

 

2日目

翌日は航路探鳥からスタートです。航路ではウトウがパラパラとあまり多くの鳥は飛びませんでしたが、序盤にはトドが泳いでいたり、後半には上空をチュウシャクシギの群れが渡っていきました!シギチドリが海を超えロシアへ渡る姿を見られるのは稚内航路ならではですので、ここから数千キロ離れた繁殖地へ向かう貴重な姿だったかと思います。

チュウシャクシギの群れ
チュウシャクシギの群れ

到着後はお昼を食べ、ガイドの渡辺さんと共にメインのクマゲラを見にいきます。ポイントに到着し、じっと待っていると、巣穴からメスの顔が!そろそろ来るかな?と期待して待ちますが、そこから1時間半が経過。まだか?と足のしびれの限界を感じながら待っていると遠くからクマゲラの声が! 近くまで帰ってきてくれましたが、警戒したのか巣のある木にはオスは止まらず、痺れを切らして先にメスが飛んで行ってしまいました。

巣穴から顔を出したクマゲラのメス
巣穴から顔を出したクマゲラのメス

帰りはコマドリ探し。藪の中にちらっと見えましたね。

コマドリ
コマドリ

3日目

早朝の公園観察からスタートです。鳥を探しましたが寒さのせいか動きがあまりなく、なかなか多くの鳥は見られませんでした。午前中には再度別の巣でクマゲラを観察です。到着早々クマゲラの声が聞こえ、見ていると20分で抱卵交代に来てくれました。しかし抱卵中のオスが出ず、入っているにも関わらず巣に潜るというハプニングもありました。

クマゲラ
クマゲラ

その後は雨模様の中利尻島を一周。近距離でアカエリヒレアシシギやイスカに出会うことができました。特にイスカは本当に逃げず、貴重な瞬間でした。

アカエリヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギ

イスカ
イスカ

夕方には再度コマドリの撮影チャレンジ。あそこ!ここ!一瞬でなかなか難しいですね。

コマドリ
コマドリ

4日目

再度利尻の森のバードウォッチングからスタートです。まずはコマドリ再チャレンジ!2時間ほど待っていると、ここに出るよーと伝えていたソングスポットに出てきてくれ、ほっと一安心しました。

コマドリ
コマドリ

午前はクマゲラ再チャレンジ。今回はやっと放卵交代の2ショットを見ることができました。そして森を回るとガイドの渡辺さんと友達のクマゲラが登場!近距離でその姿を見せてくれました。

クマゲラのツーショット
クマゲラのツーショット

午後にはフェリーで利尻島から礼文島へ。礼文島ではさまざまな小鳥を狙いますが、草刈り中だったりと中々姿が見えません。久種湖ではアカモズを撮影できました。そして森の中のポイントへ行くとなんとコウライウグイスが!全員にしっかり見せることができず悔しいですが、こんな鳥が見られるのが離島の魅力です。明日は最終日です!

コウライウグイス
コウライウグイス

5日目

ついに最終日です。早朝は希望者のみでコウライウグイスを再チャレンジ!見つけたい!と頑張りましたが、強風のせいもあり見つけることは叶わず。なかなか難しいですね。
帰りの船はこの強風のせいで道中大きく揺れる可能性が高い上、波が高すぎて鳥が見られないため船内で寝ながらの移動。私は潮風でビシャビシャ、鼻血で鼻を赤くしながら外で観察しましたが、観察できたのは遥か遠くを飛ぶ合計4羽のハシボソミズナギドリと思われるミズナギドリ類、ウトウが3羽、そして爆風にゴミのように飛ばされながら必死に短時間船へ退避したカラフトムシクイのみでした。こんな人も恐れる天気の中たった数グラムの小さな鳥が海を渡っていると考えるとロマンがあります。

強風に煽られるカラフトムシクイ
強風に煽られるカラフトムシクイ

カラフトムシクイ
退避中のカラフトムシクイ

今回は少し渡りの鳥は少なかったかもしれませんが、一発逆転の鳥がいつ現れるか分からないという離島のポテンシャルは少し感じていただけたかなと思います。ぜひまた来年お越しください!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

宮城県で冬鳥を楽しむ!
伊豆沼・蕪栗沼の水鳥と仙台湾の海鳥

Report by 田野井博之 / 2024年1月17日~20日

1日目
暖冬の影響で雪もなく、暖かい晴天の中でのスタートです。
ガン類のねぐら入りを観察するまで少し時間がありましたので、まずはカリガネを探すことにしました。毎年カリガネが越冬しているエリアへ行くと、すぐに家族と思われる群れを発見。晴天のおかげで、カリガネの特徴でもある金色のアイリングがとても綺麗でした。

田んぼで休むカリガネ

その後はガン類のねぐら入りを観察するために伊豆沼へ。観察ポイントに着いて周辺のマガンの群れをチェックすると、ハクガンが4羽混ざっていました。次第に暗くなり、16時30分を過ぎると次第にマガンの群れが沼へと戻り始め、日没後の17時頃にピークを迎えました。着水する際にヒラヒラと高度を下げる落雁と呼ばれる光景があまり見られなかったのは少し残念でしたが、無数のマガンが鳴きながら頭上を通過する光景は何度見ても壮観です!次々と帰ってくるマガンを見ていると、100羽を超すハクガンの群れも帰ってきました。マガンが湖面で鳴き交わす様子を見つつ、この日の観察を終えました。


2日目
夜明け前にホテルを出発し、ガン類のねぐら立ちを観察するために伊豆沼へ向かいました。曇天のため朝焼けの中での飛び立ちという光景には恵まれませんでしたが、ゴォーという音を立てて飛び立つマガンの群れに圧倒されます。

マガンのねぐら立ち


朝食後は昨日に続いてカリガネのいるエリアへ。この日もすんなりとカリガネが見つかり、前日よりも近い距離でじっくり観察することができました。

続いてはハクガンを探すことに。すると、こちらもあっさりと80羽ほどの群れが見つかりました。よく見ると、アオハクガン(ハクガンの青色型)も2羽混じっていました!ハクガンの渡来数の増加とともにアオハクガンの記録も増えてきていますが、まだまだ個体数も少なく観察も容易ではないので、とても嬉しい発見でした。

ハクガンとマガン
ハクガンに混じるアオハクガン(中央)

 

午後は蕪栗沼へ。堤防を歩きながら鳥を探します。沼にはオオハクチョウやヒシクイ、オナガガモのほか、毎年越冬しているヘラサギと宮城県では珍しいクロツラヘラサギも見られました。ヨシ原ではベニマシコやオオジュリンの鳴き声、そして低空を飛ぶチュウヒも見られました。

この日の最後は毎年シジュウカラガンの群れが見られているエリアへ。こちらも着いてすぐに80羽ほどの群れが見つかり、マガンとともに採餌する様子を観察することができました。

シジュウカラガン


3日目
当初の予定ではチャーター船で海鳥を見る予定でしたが、強風予報のため急遽予定を変更し、南三陸町の志津川湾へコクガンを見に行くことにしました。志津川湾はコクガンの餌となる海草のアマモが豊富なため、毎年たくさんのコクガンが越冬しています。
ポイントに到着すると、すぐに15羽ほどのコクガンを見つけました。ひたすらアマモを食べています。また、オオバンが食べるアマモのおこぼれをいただく労働寄生という行動もあちらこちらで見られました。海上を見ると、さらに200羽ほどのコクガン、ウミアイサやミミカイツブリ、ワシカモメなどが見られました。

コクガン

皆さんにコクガンを満足するまで観察していただいた後は、仙台近郊のカモ類が飛来する沼へ向かいました。今冬は暖冬の影響もあり越冬するカモ類は例年より少なめでしたが、マガモやオナガガモ、コハクチョウの群れのほか、ミコアイサやトモエガモを見ることができました。

 

ミコアイサ
トモエガモ

 

4日目
この日はツアーのメインでもあるチャーター船からの海鳥観察です!前日の強風も収まり、晴天の中での出港となりました。
まずは毎年ウミスズメやアビ類が見られるエリアに到着すると、この日もウトウやウミスズメの小さな群れ、アビ、アカエリカイツブリなどが見られました。そして、とても驚いたことにウミバトが出現!宮城県では何度か記録がありますが、仙台湾の奥部では初めての記録かもしれません。

ウトウ
ウミバト

ゆっくりと船を進めていくと、今度はアビ類の数百羽の群れが海面に浮いていました。ほとんどはシロエリオオハムでしたが、オオハムやアビ、そしてミツユビカモメも混じっていました。

オオハムの群れ(アビとシロエリオオハムも混じる)

その後もウミスズメやアカエリカイツブリ、アビ類を見ながら移動し、出港から3時間を過ぎたころ、ついにマダラウミスズメを2羽見つけました!この2羽は潜水して探餌していましたが、どんどん移動していき見えなくなりました。そこで、見えなくなった方へ船を進めていくと、次々とマダラウミスズメが出現!最終的には20羽をカウントしました。私の過去の観察では、1回の乗船で2羽か3羽が見られれば上出来という出現状況でしたので、これほどの数が見られるとは思いもしませんでした。仙台湾がマダラウミスズメにとって重要な越冬地であるということを改めて認識しました。

マダラウミスズメ

マダラウミスズメが予想外に多く見られた一方で、暖冬による影響からかクロガモやビロードキンクロなどの海ガモ類は例年よりもかなり少なめでした。

ビロードキンクロ

その後はウミスズメやカンムリカイツブリなどを見ながら帰路につき、無事にツアー終了となりました。4日間、大変お疲れさまでした。

 

この記事を書いた人

田野井博之 たのい ひろゆき
1985年生まれ。小学生の時に野鳥の観察を始める。東北地方を中心に鳥類調査に携わりつつ、関心のある海鳥やシギ・チドリ類、チュウヒなどを見るため全国各地へ。特に海鳥の識別や生態に強い興味を持ち、国内外を問わず観察を続けている。

初夏の道東ワイルドライフフォトスペシャル【後編】

Report by 戸塚学 / 2023年6月17日~22日

6月20日(火) 4日目

今日も天気はいいです!早めに朝食を食べて相泊港まで移動します。ここからはヒグマウォッチングツアーです。初めに見つけたヒグマは遠くてパス。2回目に見つけたクマは待っていると海岸まで出てくれたので撮影をすることができました。船長が「別のクマを探そう」と岬近くに行くと・・・一目7頭のヒグマです!そのうちの1頭が2頭のこどもを連れていたので9頭のヒグマを見渡すことができました。まずは親子を狙います。昆布の茂った海は光の関係で緑色に染まりとてもきれいなので意識して撮影をしてもらいます。

ヒグマ
ヒグマ

ヒグマの親子
ヒグマの親子

次は兄弟だと思うと船長が言う2頭のクマを狙います。大きな石をひっくり返すと「ごとん!」という音がこちらまで聞こえる近さはライブ感たっぷりです。その後も帰る途中にクマが出てくれるたびに船長が近づいてくれるのですが、午後の船の時間もあるので寄らずに戻ってもらいました。

下船後はすぐ羅臼港へ向けて移動します。途中港近くのコンビニでお弁当を買ってもらいギリギリで乗船ができました。岸近くはさほど波に翻弄されることが無かったのですが、沖に出ると結構なうねりが激しくシャチを狙うのに苦労しました。残念なのはこの日のシャチの群れはあまり船と遊んでくれないのでチャンスが少なかった。それでも初シャチのお客様は喜んでおられました。

シャチ
シャチ

残念なのはうねりが強いので予定より早めに終了となったので道の駅で買い物をしてもらいます。この夜もシマフクロウを狙ったのですが、残念ながら出ませんでした。シマフクロウがメインならば朝まで粘ってもいいのですが、他のスケジュールもあるので仕方がありません。

6月21日(水) 5日目

この日も快晴です!風も弱く絶好なコンディション。早めに並び全員で船の前の部分でスタンバイします。参加者のみなさんはわかっていないようなので、とにかく海からの風景を撮ってね!携帯で動画も撮ってね!と言います。じつはこのコンディションは年に数回しかないくらいなのです。船のガイドさんも「今月はこの風景は初めてです!」と言っています。さてこの日は海鳥たちが比較的多く、ハシボソミズナギドリ、ハイイロミズナギドリ、フルマカモメが船の近くを飛んで行きます。時折ずんぐりむっくりなウトウも見られました。

ハシボソミズナギドリ
ハシボソミズナギドリ

ずんぐりむっくりなウトウ
ずんぐりむっくりなウトウ

フルマカモメ
フルマカモメ

驚いたのはクロアシアホウドリが近くで撮影ができたこととアホウドリの幼鳥も近くで撮影できたのですが、少し遠目に発見したアホウドリの成鳥に寄ってもらいたかったのですが、シャチが遠くで出ているという事で船長はそちらを優先します。仕方がない、私たちのメンバーもやはりシャチは撮りたいはずだから。しかしシャチは日露中間線よりもロシア側で手も足も出せません・・・運が良ければアホウドリの成鳥のところに行くかなと期待したが、たぶん飛んで行ってしまったのか見つけられませんでした。

アホウドリ幼鳥
アホウドリ幼鳥

遠くにいたアホウドリ成鳥
遠くにいたアホウドリ成鳥

港に戻る間も生き物を探します。運よくイシイルカが出てくれたのでみなさん必死に撮影をされていました。下船後はお弁当を買っていただき知床峠でギンザンマシコを狙いますが・・・出ません。そのうち飽きてしまったようで「もう原生花園に移動したい」という要望も出ましたが「14時までがんばろう!」と説得しました。結局時間までにギンザンマシコは出ませんでしたが、ウソ、ビンズイは見ることができました。時間になったので原生花園に移動してノビタキ、ホオアカを撮っていただきホテルに向かいました。夕食はホテルについていないので今回の旅の成果に居酒屋で祝杯をあげました。

ノビタキ♂
ノビタキ♂

ノビタキ♀
ノビタキ♀

6月22日(木) 6日目

朝は朝食の関係で8時に出発します。小清水原生花園でノビタキ、ホオアカの撮影をしていただきながら放牧している馬や乱舞するエゾシロチョウ、動物ではありませんがエゾスカシユリやエゾキスゲ、ハマナスなどのお花を撮影していただきました。網走湖湖畔での野鳥撮影よりも風景を撮りたいというリクエストで空港に送迎するまでしっかりと風景撮影を楽しんでいただき無事解散となりました。5泊6日と長丁場ではありましたが、終わってみればあっという間でした。みなさまお疲れさまでした!

ホオアカ
ホオアカ


撮れた鳥
アホウドリ・クロアシアホウドリ・ハシボソミズナギドリ・フルマカモメ・アオサギ・タンチョウ・カッコウ・アマツバメ・オオジシギ・ミツユビカモメ・オオセグロカモメ・ウミネコ・ケイマフリ・ウトウ・エトピリカ・オジロワシ・ショウドウツバメ・シマセンニュウ・コヨシキリ・ノビタキ・ホオアカ・アオジ・オオジュリン・エゾシカ・キタキツネ・エゾヒグマ・ラッコ・シャチ・イシイルカ

見れた鳥・声を聞けた鳥
ヒドリガモ・マガモ・オナガガモ・キンクロハジロ・スズガモ・クロガモ・シノリガモ・ウミアイサ・カンムリカイツブリ・キジバト・アオバト・シロエリオオハム・カンムリウミスズメ・ウミウ・ヒメウ・ツツドリ・トビ・ハイタカ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ヒガラ・シジュウカラ・ヒバリ・ウグイス・エゾムシクイ・シマセンニュウ・エゾセンニュウ・コムクドリ・スズメ・ニュウナイスズメ・ハクセキレイ・ビンズイ・カワラヒワ・ベニマシコ・ウソ・ウソ

他の生き物
ヒグマ(撮)・ラッコ(撮)・エゾシカ(撮)キタキツネ(撮)・イシイルカ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員