宮城県で冬鳥を楽しむ!
伊豆沼・蕪栗沼の水鳥と仙台湾の海鳥

Report by 田野井博之 / 2024年1月17日~20日

1日目
暖冬の影響で雪もなく、暖かい晴天の中でのスタートです。
ガン類のねぐら入りを観察するまで少し時間がありましたので、まずはカリガネを探すことにしました。毎年カリガネが越冬しているエリアへ行くと、すぐに家族と思われる群れを発見。晴天のおかげで、カリガネの特徴でもある金色のアイリングがとても綺麗でした。

田んぼで休むカリガネ

その後はガン類のねぐら入りを観察するために伊豆沼へ。観察ポイントに着いて周辺のマガンの群れをチェックすると、ハクガンが4羽混ざっていました。次第に暗くなり、16時30分を過ぎると次第にマガンの群れが沼へと戻り始め、日没後の17時頃にピークを迎えました。着水する際にヒラヒラと高度を下げる落雁と呼ばれる光景があまり見られなかったのは少し残念でしたが、無数のマガンが鳴きながら頭上を通過する光景は何度見ても壮観です!次々と帰ってくるマガンを見ていると、100羽を超すハクガンの群れも帰ってきました。マガンが湖面で鳴き交わす様子を見つつ、この日の観察を終えました。


2日目
夜明け前にホテルを出発し、ガン類のねぐら立ちを観察するために伊豆沼へ向かいました。曇天のため朝焼けの中での飛び立ちという光景には恵まれませんでしたが、ゴォーという音を立てて飛び立つマガンの群れに圧倒されます。

マガンのねぐら立ち


朝食後は昨日に続いてカリガネのいるエリアへ。この日もすんなりとカリガネが見つかり、前日よりも近い距離でじっくり観察することができました。

続いてはハクガンを探すことに。すると、こちらもあっさりと80羽ほどの群れが見つかりました。よく見ると、アオハクガン(ハクガンの青色型)も2羽混じっていました!ハクガンの渡来数の増加とともにアオハクガンの記録も増えてきていますが、まだまだ個体数も少なく観察も容易ではないので、とても嬉しい発見でした。

ハクガンとマガン
ハクガンに混じるアオハクガン(中央)

 

午後は蕪栗沼へ。堤防を歩きながら鳥を探します。沼にはオオハクチョウやヒシクイ、オナガガモのほか、毎年越冬しているヘラサギと宮城県では珍しいクロツラヘラサギも見られました。ヨシ原ではベニマシコやオオジュリンの鳴き声、そして低空を飛ぶチュウヒも見られました。

この日の最後は毎年シジュウカラガンの群れが見られているエリアへ。こちらも着いてすぐに80羽ほどの群れが見つかり、マガンとともに採餌する様子を観察することができました。

シジュウカラガン


3日目
当初の予定ではチャーター船で海鳥を見る予定でしたが、強風予報のため急遽予定を変更し、南三陸町の志津川湾へコクガンを見に行くことにしました。志津川湾はコクガンの餌となる海草のアマモが豊富なため、毎年たくさんのコクガンが越冬しています。
ポイントに到着すると、すぐに15羽ほどのコクガンを見つけました。ひたすらアマモを食べています。また、オオバンが食べるアマモのおこぼれをいただく労働寄生という行動もあちらこちらで見られました。海上を見ると、さらに200羽ほどのコクガン、ウミアイサやミミカイツブリ、ワシカモメなどが見られました。

コクガン

皆さんにコクガンを満足するまで観察していただいた後は、仙台近郊のカモ類が飛来する沼へ向かいました。今冬は暖冬の影響もあり越冬するカモ類は例年より少なめでしたが、マガモやオナガガモ、コハクチョウの群れのほか、ミコアイサやトモエガモを見ることができました。

 

ミコアイサ
トモエガモ

 

4日目
この日はツアーのメインでもあるチャーター船からの海鳥観察です!前日の強風も収まり、晴天の中での出港となりました。
まずは毎年ウミスズメやアビ類が見られるエリアに到着すると、この日もウトウやウミスズメの小さな群れ、アビ、アカエリカイツブリなどが見られました。そして、とても驚いたことにウミバトが出現!宮城県では何度か記録がありますが、仙台湾の奥部では初めての記録かもしれません。

ウトウ
ウミバト

ゆっくりと船を進めていくと、今度はアビ類の数百羽の群れが海面に浮いていました。ほとんどはシロエリオオハムでしたが、オオハムやアビ、そしてミツユビカモメも混じっていました。

オオハムの群れ(アビとシロエリオオハムも混じる)

その後もウミスズメやアカエリカイツブリ、アビ類を見ながら移動し、出港から3時間を過ぎたころ、ついにマダラウミスズメを2羽見つけました!この2羽は潜水して探餌していましたが、どんどん移動していき見えなくなりました。そこで、見えなくなった方へ船を進めていくと、次々とマダラウミスズメが出現!最終的には20羽をカウントしました。私の過去の観察では、1回の乗船で2羽か3羽が見られれば上出来という出現状況でしたので、これほどの数が見られるとは思いもしませんでした。仙台湾がマダラウミスズメにとって重要な越冬地であるということを改めて認識しました。

マダラウミスズメ

マダラウミスズメが予想外に多く見られた一方で、暖冬による影響からかクロガモやビロードキンクロなどの海ガモ類は例年よりもかなり少なめでした。

ビロードキンクロ

その後はウミスズメやカンムリカイツブリなどを見ながら帰路につき、無事にツアー終了となりました。4日間、大変お疲れさまでした。

 

この記事を書いた人

田野井博之 たのい ひろゆき
1985年生まれ。小学生の時に野鳥の観察を始める。東北地方を中心に鳥類調査に携わりつつ、関心のある海鳥やシギ・チドリ類、チュウヒなどを見るため全国各地へ。特に海鳥の識別や生態に強い興味を持ち、国内外を問わず観察を続けている。

秋深まる野付半島から十勝平野へ
~ハクガン・コクガンの群れとナキウサギ~【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年10月26日~30日

3日目は日の出前からメインであるハクガンを探しに行きます。到着後何やら騒がしいと外を見ると、ガンが乱舞しています!

ハクガンとシジュウカラガンの飛翔

降りた沼を見に行くとハクガンとシジュウカラガンが見られました。その後何度も1000羽ほどのハクガンが上空を旋回してくれたり、車内から比較的近距離で観察できたりと、とても贅沢な時間を過ごすことができました。

ハクガンとシジュウカラガン

ハクガンの飛翔

午後は2日目とは別なエゾフクロウのポイントに行きましたが、残念ながら出会えませんでした。公園ではエゾリスがチョロチョロと姿を現し、可愛い姿が見られました。

エゾリス

エゾリス

夕方再度シジュウカラガンを探した時は、朝とは全く違うところにおり、夕方の光の中美しい光景が広がっていました。

シジュウカラガン

夕暮れの空を舞うハクガンとシジュウカラガン

4日目は山にナキウサギを探しに行きました。午前中静かに待っていると、鳴き声とともにちらっと姿を見せてくれました!途中ガサッという音とともに遠くにヒグマの姿を確認したため安全のため下山しました。帰り際車の近くで探すと、ここでも姿を現し皆さん大興奮です。

ナキウサギ

ナキウサギ

山から下山し、午後はエゾリス探しです。イチョウの黄葉の絨毯に佇む可愛らしいエゾリスの姿を見ることができました。

エゾリス

夕方はリクエストのあったエゾライチョウ探しです。写真には撮れませんでしたが、目の前をオスのエゾライチョウが飛んでいくシーンは格好良かったです。日高山脈に沈む夕日を展望台で眺め、この日は終了です。

日高山脈のシルエット

最終日は再度日の出前にハクガンを探しに出発しましたが、何やら沼が静かです。日が昇ると沼には1羽もガンがいません。どうやら一昨日の夕方を最後に、本州へ渡っていってしまったようです。見ることはできませんでしたが、静かになった沼を見て渡っていったハクガンの無事を祈りました。

沼の日の出

最後は帯広市内の公園で小鳥を探します。今回のツアーではまだ観察していなかったアカゲラやハシブトガラ、ゴジュウカラなどの定番の小鳥を間近で観察し、さらにエゾリスも観察できました。

アカゲラ

ハシブトガラ

ゴジュウカラ

今回のツアーでガン類を合計7種観察することができました。日本で見られるガン類の多くを一度のツアーで全て見られるのは渡りのシーズンと、その観察ポイントに簡単に移動できる北海道ならではではないでしょうか。春には残雪の残った風景とともにガンが帰ってきますので、ぜひお迎えをしにまたお越しください。皆様お疲れ様でした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

初冬のみちのく 宮城・山形の海から山まで目指せ120種!

Report by 簗川堅治 / 2021年12月2日~5日

本格的な積雪を前に、冬鳥も揃ったみちのく宮城県、そして山形県で多くの鳥を楽しもうというツアーです。

 

冬型の気圧配置で天候が心配されましたが、ツアー開始前には穏やかになりました。まずはガイド簗川の地元でアオシギです。こちらは難なく観察することができました。しかし、あまりのカモフラージュさに、望遠鏡を使っても「どこ、どこ?」となる場面もありました。さすが、アオシギです!

アオシギ(撮影:高後洋子様)

 

マガモ、コガモ、そして数羽のヨシガモがいる沼をほんの少しだけ観察し、伊豆沼へと向かいました。冬型の気圧配置なので太平洋側は晴れです。伊豆沼ではハクガンを探しましたが、ガンの大きな群れ自体がほとんどおらず、四苦八苦しました。あきらめて移動する時に、遠くで大きな群れが飛び立ちました。と同時に、2羽のハクガンを発見!ところが、段々遠くなり、よく見ないうちに行ってしまいました。残念。

続いてカリガネのポイントに行きました。もうお馴染みの場所です。こちらもいることはいたのですが、遠い。それでも望遠鏡で餌をついばむカリガネの家族を見ることができました。

 

カリガネ

 

最後はもちろん、ガンのねぐら入りです。まずはコチョウゲンボウのねぐら入りを待ちます。いつの間にか現れ止まっていました。♂のようです。今度は、遠くから続々とガンの大群がやってきました。一体、どこにこんなにいたのかと思うくらいです。

場所を変え、さらにねぐら入りの観察です。頭上、そして目の前に次々にガンがやってきます!シジュウカラガンもたくさんいるようです。そして、何かがあったのか、一斉に舞い上がりました。ものすごい数です。上空を一周して、再び沼に舞い降りました。いつもながら、この何万羽というガンのねぐら入りは、本当に感動的です。

 

ツアー2日目

当然、ねぐら立ち観察です。蕪栗沼に行きました。シジュウカラガンの大群が水面見えます。そして、日の出の時刻に地響きを伴い数万羽のガンが飛び立っていきます。ある群れは北東に、またある群れは南東に、南西に…真上も通過し、ただただ「すごい!」の一言です。

シジュウカラガンとマガン

 

朝食後は、昨日、チラッとしか見られなかったハクガンを探しに行きましたが、残念ながら出会えず。再び蕪栗沼に。今度は散策路を歩き、ベニマシコ、ジョウビタキ、シメなどの小鳥類や亜種オオヒシクイやチュウヒを観察しました。

ベニマシコ(撮影:高後洋子様)

オオヒシクイ(撮影:森久美子様)

チュウヒ(撮影:森久美子様)

午後は南三陸でコクガンです。その前に東日本大震災で犠牲になった大川小学校へ立ち寄り、津波のおそろしさ、むごさを実感しました。そんな中、オオワシが真上を通過していきました。

震災直後は、港にたくさんの海藻が生え、コクガンが漁港にたくさん入りました。しかし、港の工事が終わった今は、昔のようにちょっと沖の養殖場にいることが多くなりました。それでも、一ヶ所の漁港で25羽以上のコクガンを比較的近くでじっくり観察することができました。オオワシやワシカモメの姿もありました。

コクガン(撮影:高後洋子様)

ツアー3日目

天気予報通り、朝から雨降りです。雨の中、最上川河口へハクチョウのねぐら立ちを見に行きました。こんな天気の時は、ハクチョウのねぐら立ちもゆっくりなので、日の出時刻を過ぎても飛び立ちません。その代わり、ゆっくりと観察できる利点はあります。ここのところの大雨で増水して中洲がなくなったためか、ハクチョウの数はかなり少なめです。コハクチョウがほとんどなので、亜種アメリカコハクチョウを探しました。それっぽい個体はいましたが、ちょっと黄色部が広めなので、合いの子のようです。

 

朝食後は、海岸沿いを回りました。ヒメウやハマシギなどを観察。その後、田んぼでミヤマガラス、そしてオオワシを見ることができました。柿の実にくるムクドリの群れやツグミなども見ました。レンジャクを期待したものの、残念ながら会えませんでした。

オオワシ(撮影:吉田徹様)

お昼を挟んで、今度は大山上池下池でカモの観察です。しかし、カモは例年よりかなり少なく、ちょっとがっかり。それでも、ここの名物、トモエガモはたくさん見ることができました。その他、ミコアイサ、カワアイサ、ハシビロガモなども見ました。オジロワシもいるはずですが、あちこち探しても見当たらず。

続いて、また海岸です。カモメ類はほとんどおらず、期待はずれな感じはありましたが、ウミウ、スズガモ、そしてシノリガモとウミアイサを楽しむことができました。

シノリガモ(撮影:吉田徹様)

帰り際、オオワシの近くに止まるオジロワシも見られましたし、柿の実のそばでは2羽のオオタカも見ることができました。

オジロワシ(撮影:吉田徹様)

ツアー4日目

最終日です。まずは沼でカモ類です。トモエガモを納得いくまで観察。マヒワ、アトリが上空を通過して行きました。

トモエガモ

今度はスペシャルメニューで、急きょ、鷹匠の家へ訪問し、鷹狩りに使うイヌワシ、クマタカなどをじっくり見せてもらい、目の前のワシとタカに大興奮!そして面白い鷹匠の体験話に思わず笑顔になりました。

 

最後は、初日のアオシギにまた挑戦しましたが、あいにく見ることはできませんでした。残念。

目標の120種には及びませんでしたが、初冬のみちのく宮城・山形の海から山までたくさんの鳥に出会うことができました。4日間、大変お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!