大雪山・旭岳のギンザンマシコと海鳥の聖域・天売島
<前編>

Report by 戸塚学 / 2025年6月13日~17日

個人的にはどちらも何度か足を運んでいる場所ですが、西遊のツアーでは初めてとなります。時期的に旭岳の宿が山開きに合わせてオープンさせるという事で、2日間宿が旭川市内という事になり本来予定をしていた山麓周辺の撮影ができなかったことが残念だった。天売島はピーカンの晴れとはいかなかったのですが2日目に奇跡的出来事が続き大変喜んでいただけたのではないかと思いました。

1日目 晴れ

旭川空港での集合に飛行機がかなり遅れた事と宿が旭川市内名なのでそのまま宿入りしました。

2日目 旭岳 晴れ

旭川市内からの出発のためロープウェイの始発に乗れず、8時30分の便で姿見駅へ。今年は少ないとはいえ残雪の残る斜面をおっちらえっちら歩いて行きます。第一展望台に向かう途中に鳥のさえずりが?ふと見上げるとオスのギンザンマシコがハイマツの上に!しかし撮影する前に飛ばれてしまった。まず第一展望台に上がり周囲の場所の説明をしたのちギンザンマシコ狙いのカメラマンで賑わう第三展望台へ向かいます。どうやら朝1番でこの場所の近い場所でゆっくりと撮影ができたらしい・・・悔しい。その後も何度か飛んだり、ハイマツの上にとまるもすぐに飛び去ったりなどしてなかなか撮影をさせてはくれない。途中でカヤクグリやノゴマが撮影はできたものの本命はさっぱり。

カヤクグリ

参加者の1人が、第二展望台に行ってみる!と歩き出した。彼女があと少しで到着という時です、なんと目の前の岩にギンザンマシコのメス2羽がとまったのです。こちらからは逆光&遠い!しかし彼女からは順光&近い!「「しっかり撮って!」と声をかけてしっかり撮ってもらいました。その後、持ってきた携行食を食べながら待ちますが・・・時計は14時を回ります。ダメかなと諦めかけた時とうとうその時は来ました。ハイマツのてっぺんに真赤なオスがとまりました。時間としては3分あったか無いかですが、動かないのでしっかりと撮影ができました!

ギンザンマシコ

15時45分のロープウェイで下山をしたのですが、あれっきりギンザンマシコは出なかったので超ラッキーでした。ホテルへ戻りサービスで付いてきたグラス生ビールで祝杯を挙げました!

3日目 旭川―羽幌―天売島 晴れ

旭川から予定よりも早く羽幌港に到着したので、周辺で撮影を試みますが天気がいい事と時間的に鳥たちが少なく撮影ができません。一旦ろうそく岩まで戻りウミウを撮影しようとしますが・・・陽炎がひどくてダメでした。それではと食事に向かいましたがどこも高い!特にお客様の所望のうに丼がどこも5000円!結局ホテルのレストランで普通の味と値段の食事となりました。天売航路では思ったほど海鳥たちには出会う事ができずウトウ、ケイマフリ、ウミウ、2度ほど出てくれたウミスズメを撮ることができなかったのが悔しい。

ウミウ

天売島に着いてそのまま西遊の宿、天売マフレへ。この日は18時から赤岩展望台で帰巣するウトウの撮影のため早めの食事をする予定。その前に宿周辺で鳥を撮影します。天売島にはノゴマとコムクドリが多いのでまずは撮影できてよかった。一番の収穫は巣立ち間もないアカゲラを撮れたことでしょう。

 

17時から食事をして出発します。天売島ではウミネコが繁殖する場所が海岸にあり道路周辺にも広がるため道路がウミネコで埋め尽くされてしまう。今年はまだヒナの数が少なくてよかったがここがヒナで溢れるとどかして車で通行するのが超大変!

ウミネコのヒナ
ウミネコ

そこを抜けると展望台までの上り坂を登り展望台です。今年はオオイタドリの丈が高く戻って来るウトウが見つけにくい。合わせて予定をしていた時間よりも1時間遅く戻ってきたので暗くなってしまい思ったような撮影ができませんでした。参加者からも「この撮影は私たちには難しい」と言われますが私自身も超苦戦しているのだから当然です。暗くなってからは色づく空をバックに帰巣するウトウを狙いますが・・・いつもより数が少ない。現地ガイドの話によると今年はエサの魚が少ないのでほとんどの親鳥たちがエサを持ち帰れない&時間が遅いとのことでした。そのあとはライトアップされたウトウを撮影するのですが一般観光客も多いので思うように撮影ができずみなさん結構ストレスを感じていらっしゃった。ここからの帰りは鳥たちを車で轢かないためにガイドの車に着いて帰路につきました。

ウトウ

 

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡りの本流!韓国の離島バードウォッチングツアー【前編】

Report by 大西敏一&五百澤日丸 / 2025年5月3日~7日

5月3日:初日 / Report by 五百澤日丸

今年も韓国離島ツアーがやってきました。このところのツアーは天候に恵まれないこともあり、不安な気持ちもありましたが、多くの鳥たちに会えることを期待しつつ仁川国際空港へ向かいました。

関空組は私一人なので参加者の皆さんとは仁川で顔合わせです。仁川に到着するとあいにく雨。午後からの回復予報を期待しつつ、中部からご参加の方々と合流し談笑していると、成田便が遅延との一報が。現地添乗の朴さんといつものドライバーさんとも合流し、ファストフード店でしばし待機。13時過ぎに成田組の方たちが到着する頃にはすっかり雨も上がっていました。これは幸先が良いぞ。皆さん機内食が出ていたので昼食はパスし、ホテルに向かい、荷物を置いて早々に探鳥に出かけました。

まずはいつものクロツラヘラサギの繁殖する場所へ。調整池のど真ん中の人工島でクロツラヘラサギとモンゴルセグロカモメが繁殖しています。例年ならこの時期は両種とも可愛いヒナの姿が見られるのですが、今年はまだ抱卵中のようです。気温の低い日が続いたからかもしれません。そこではアカツクシガモ、セイタカシギ、コガモに混じるシマアジなども観察。定番のダルマエナガはなかなか手ごわくて写真が難しそうです。

調整池に浮かぶ人工島

セイタカシギ(藤田正昭さま撮影)

その後、クロツラヘラサギが至近距離で見られる湿地公園へ移動。お約束どおり、本種が近い。散歩の人が通るすぐ横で採餌していて、スマホでも撮影できそうです。セイタカシギもすぐ近くにいます。1枚の田んぼにバンが10羽もいる場所があり、デイスプレイや争いなどいろいろな行動が見られて楽しめました。他にはアカハラツバメ、ヒバリシギ、タカブシギなどが見られました。

クロツラヘラサギ(C)五百澤日丸

アカハラツバメとツバメ(大林修文さま撮影)

初日最後の探鳥は干潟で。以前、ホウロクシギなどが数百いた場所ですが、干潮のタイミングだったようで、多くのシギチは遠くで蠢いていました。それでもダイゼン、オオソリハシシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギなどはそこそこの距離で観察ができ、特にズグロカモメの夏羽がひっきりなしに目の前を飛び回り、干潟でシャコの仲間などを捕って食べる場面もありました。気温が低いうえ、風が強く、寒くなってきたので長居はせず本日の探鳥を終了。

夕食はいつもの店でサムギョプサルです。明日は皆さんと渡島できることを願って美味しくいただきました。

ズグロカモメ成鳥夏羽(大林修文さま撮影)

サムギョプサル

この日確認した鳥:56種

 

5月4日:2日目 / Report by 大西敏一

朝起きて、真っ先に空と風を確認した。快晴でほぼ無風。これなら船は出そうです。ホッと胸をなで下ろしながら、ホテルの朝食会場へ行くと、皆さん、すでに朝食バイキングへと集まっておられました。出航が9時なので、朝食は6時30分からです。今日は離島に渡ることが最優先のため、早朝の探鳥はご遠慮いただきました。朝食後、専用車にてフェリーターミナルへと向かいます。

韓国も連休2日目となっているので、道路もやや混んでいます。ターミナルの駐車場も満車で入れません。外で下ろしてもらい荷物を持って乗り場へと向かいます。中に入るとものすごい混雑ぶりで、座る場所もありません。たくさんある離島の船乗り場なので、みんながみんな、同じ離島ではないので、心配はありませんが、それでも満席とのことでした。8時40分、乗船し指定席に座ります。9時に出港すると鏡のような海面を滑るように走ります。船酔い止めはいつも飲みますが、この日は飲まなくても大丈夫そうでした。黄海は海鳥がいつも少なく、ずっと探していてもほとんどいなくて疲れるだけで後悔します。モンゴルセグロカモメとウミネコ、カワウ(亜種が気になるところです)、ウミウ程度で、参加者の中でヒメウも確認されました。12時30分、目的の離島に無事に到着しました。これで一安心です。今回の宿は以前もお世話になってペンションで、そちらの迎えのバスに乗り込んで、まずは宿に入ります。荷物を置いたら昼食会場へ行って腹ごしらえです。

今回の離島のペンション

ウミネコ

 

13時30分、昼食後、宿に戻りひと休憩して観察機材を各自準備していよいよ探鳥の開始です。宿の周りには林、荒れ地、農耕地があり、集合中、宿の木にとまっているシベリアムクドリ、キマユムシクイ、バフマユムシクイ、ヤナギムシクイと次々と鳥たちが出てきます。始めから渡りパワー?全開で参加者もガイドもどうして良いのかわからなくなるような嬉しい悲鳴が続きました。

離島の環境(荒れ地)

シベリアアオジ(五百澤撮影)

 

まずは宿の前の荒れ地を見ながら舗装道路をゆっくりと進みます。足下から次々と小鳥たちが現れては藪に入ります。地面で草本の種子を一生懸命についばんでいます。シベリアアオジ、コホオアカが中心で、キマユホオジロ、シマノジコ、シマアオジなどなど。その数は日本の離島の比ではありません。シベリアアオジやコホオアカなど各1,000羽は楽にいる感じだし、シベリアムクドリも200羽程度の群れでいます。チョウセンメジロも20羽程度の群れが飛んできて目の前の桜の低木に入り、一気に盛り上がりました。空を見ると、ハチクマとサシバが結構な柱を作り、東から西へと渡っていきます。その中にアカハラダカやアカアシチョウゲンボウの姿も確認できました。大西さんがノゴマやアカモズを説明していると、こちらでアリスイやハリオシギなど出て、どこを見たら良いのかわからなくなるほどでした。

ノビタキ(五百澤撮影)

ハチクマ(五百澤撮影)

 

こうしてあまり歩く前に時間は過ぎていき、あっという間に夕方になってしまいました。終了間際、チャキンチョウが1羽飛んでいく姿を見ましたが、去った方向を探しても見つからず・・・。日没は日本より西にあるだけ(時差はない)、まだまだ明るかったのですが、18時30分に夕食の時間となり、本日はここで、終了です。

 

この日確認した鳥:106種

 

 

5月5日:3日目 / Report by 五百澤日丸

後述しますが本日は渡りが大爆発した一日でした。いつどこを見ても鳥がいる状況で長年韓国に来ていますがなかなかお目にかかれない、素晴らしい鳥見の一日でした。

今日は島に一日滞在して探鳥ができる日です。朝5時半に探鳥へ出発。空は昨日とうって変わり曇天で霧も出ています。このような天気の時は渡り鳥たちが島に降りてくる可能性が高く、ときに大当たりになることがあるのです。昨日のコースを逆に辿りながら回ってみることに。いきなり道端からハリオシギが飛び出し、コイカルやサンショウクイが群れで飛びます。ツツドリ、カラアカハラ、キマユムシクイなどがよく囀っています。オウチュウは複数で出現。昨日五百澤さんが見たチャキンチョウ目当てに定点観察をしているとマミジロキビタキの雄が現れ、端ではムジセッカが囀り始めました。上空を見上げるとマミチャジナイとカラアカハラの大群が何度も渡っていきます。明らかに小鳥類が増えてきている感じです。水田地帯に抜ける途中でシロハラクイナやシマノジコを確認。まだ水が張っていない田んぼでは、ツメナガセキレイ3亜種、アカガシラサギ、シマアオジなどをじっくりと観察しました。朝探だけで61種を観察。

コイカル・シベリアムクドリ・コムクドリ・シロガシラの水浴び(大林修文さま撮影)

オウチュウ(大林修文さま撮影)

マミジロツメナガセキレイ(大林修文さま撮影)

 

朝食のメインはカレイの煮つけ。ゆっくりと食事をしたあと9時半から探鳥を再開。宿前の電線にはシベリアムクドリが飛来し、桜にはアカマシコの群れも現れたので皆さんで観察。宿前の空き地を歩くとマミジロタヒバリやジシギが飛び出します。綺麗なノゴマの雄の姿も。ツメナガセキレイやホオジロハクセキレイを見ているとケリが1羽佇んでいます。本種は離島でたまに見られる珍鳥です。ムクドリ類の声がするので見ると数十羽の群れが飛んできて木に止まりました。なんとほとんどがシベリアムクドリ!カラムクドリも混ざっています。さながらシベリアムクドリがなる木には皆さん大興奮。遠くの電線にも群れが止まっています。

アカマシコ雄と雌(藤田正昭さま撮影)

シベリアムクドリのなる木(藤田正昭さま撮影)

その後、カラアカモズやマミジロキビタキなどを見たあと、海岸でしばしカモメウォッチング。ウミネコが多く、モンゴルセグロカモメの姿もちらほら。ひときわ背中の色が濃い個体がいたので見ると足の色が黄色い。ホイグリンカモメかと思いましたが、そこまで背中が濃くないのでtaimyrensisタイプでしょう。成鳥の初列風切はすべて換羽している点もモンゴルセグロカモメと違うポイントです。ここではミヤコドリやタイワンハクセキレイなども近くで観察しました。海岸横の小さな公園もポイントです。草地にはシマアオジやキマユホオジロ、コホオアカなどがいます。コイカルの声のする方を見ると数十羽木に群がっています。シベリアムクドリやシロガシラも羽繕いをしています。どうもそばに水たまりがあり、そこで水浴びしたものが木に移って休んでいるようでした。結局、午前中だけで103種を観察しました。

モンゴルセグロカモメ第1回冬羽(藤田正昭さま撮影)

シマアオジ雄(藤田正昭さま撮影)

 

昼食は豆腐チゲ。スープがとても美味しい。朴さんのコーディネイトで辛いのが苦手な方も安心して美味しい韓国料理が食べられるのもこのツアーの良いところです。食事を終えて店を出ると近く木にマミジロキビタキが止まっています。と、「クロウタドリ!」と五百澤さん。見ると目の前の畑に雄がいます。コウライウグイスも数羽飛んできます。少しも気が抜けないのが離島の渡りです。宿に戻り、バスから降りると今度はブッポウソウが10数羽飛来して木に止まりました。私は宿にカメラを置いて食事に出ましたが、私がカメラを持っていないと必ず何かが出るジンクスは健在で、皆さんに「今後はカメラ無しでお願いします」と言われ大爆笑でした。

マミジロキビタキ雄(藤田正昭さま撮影)

少しの休憩を挟み、14時から探鳥スタートです。オジロビタキが宿裏にいたようでお客さんが綺麗な雄を撮影されていました。宿前の電線には奇麗なシベリアムクドリの雄が止まっています。午後は少し遠出をして以前のツアーで色々と見られた島の南部の集落を目指すことに。しかし現地に着いて驚きました。ここ数年の間に風景が変貌しており、良かったポイントは軍施設のフェンスで仕切られていたり、農地には住宅がいくつも建っていて探鳥ポイントが無くなっていました。これは島だけのことではなく、本土側でも様々な理由で探鳥ポイントが失われているのはとても残念なことです。

オジロビタキ雄(大林修文さま撮影)

早々にその場を離れ、ある程度戻った位置から徒歩で水田地帯を進みながら宿まで戻るコースに変更。幸い今回は鳥影が濃いので歩きながらじっくり探す方が色々と見られそうです。途中、軍人さんから職務質問を受けるハプニングを挟みながら探鳥が進みます。キマユムシクイやマミジロキビタキが増えていて、後者を撮りたかった方も無事カメラに収められたようです。畑と隣接するブッシュにイワミセキレイが出現。皆さん色めき立ちます。独特の声も聴かれました。ここではオジロビタキやアムールムシクイ、シマノジコ、シロハラホオジロ、アカガシラサギなども見られました。

イワミセキレイ(大林修文さま撮影)

 

ふと空を見上げると断続的にブッポウソウの群れが飛んでいきます。一体、何羽通過して行くのでしょうか。水田地帯を歩くとアカガシラサギが何度か出現。田植え前の田んぼではシマアオジの雄やハリオシギ、ツメナガセキレイ3亜種などを観察。シベリアアオジやコホオアカはどこにでもいます。昨日のチャキンチョウポイントで定点観察をしているとブッポウソウとコウライウグイスの群れが飛来し、木に止まったのを皆さんとじっくり観察。宿には18時過ぎに戻りましたが、再びブッポウソウの群れが。数えると70羽以上。コウライウグイスもわらわら飛んでいきます。今日一日でブッポウソウはゆうに300羽以上は見られたし、シベリアムクドリに至っては一生分見たような感じでした。

シマノジコ雄(大林修文さま撮影)

コウライウグイスとブッポウソウ(大林修文さま撮影)

本日の夕食はペクスクという地鶏を使った鍋です。参鶏湯のようにナツメグなど漢方的なものやコウタケなどが入っていて美味しい。今日のような鳥だらけの島にはずっと居たいですねと皆さんと乾杯。食事が終わり店を出ると遠くコノハズクが鳴いていました。

ぺクスク

この日確認した鳥:116種

 

後編に続く………

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。

冬の道東を撮る【後編】

Report by 戸塚学 / 2025年2月16日~21日

4日目 

風連湖が結氷していないので、宿前での撮影ができない&バードテーブルにシマエナガも来ないという事で朝食後から港周りです。まずはチシマシギが見られるポイントへ行きますが、ゴマフアザラシが出ただけで見つかりませんでした。それにしてもチシマシギのポイントは遠くて撮影は不可能でしょう。

切り上げて移動を始めると、オオワシとオジロワシが行ったり来たりする海岸があり、ここに車を停めて撮影を始めると雲間から太陽が出て青空バックで撮れました。これはラッキーでした!移動をすると小さな港の奥の池にカワアイサとヨシガモがいたので撮影のためにUターンをすると、見えないところにオジロワシがいて池上空を低く飛ぶと・・・みんな飛ばされてしまった。残念。納沙布岬はハイドが工事中で入れないのでヒメウの集まる岩でヒメウを撮影しました。

ヒメウ
ヒメウ

ここからは海ガモを探して港巡りです。まずは歯舞漁港へ行くと・・・カモが少ない!いつもなら港が凍っていてカモたちがぎゅっと集まっているのですが開放水面なので散らばっています。港の一角にホシハジロの群れを見つけると、ドライバーさんが「オオホシハジロのメスがいる!」と教えてくれましたがみんな首を背に突っ込んで寝ているので顔が見えない!約30分粘りようやく顔を出してくれた時にその姿を確認できました。しかしシノリガモ、クロガモ、ウミアイサは見られたのですが遠くて歯が立ちません。

オオホシハジロ
オオホシハジロ
シノリガモ
シノリガモ
クロガモ
クロガモ

引き続きいつもはコオリガモが90%の確率で近くで撮れる花咲漁港へ行くが・・・ダメだ、数が少ないし遠い。それでもコオリガモは何とかゲット。これは決して成功と呼ぶには悔しい結果だ。

コオリガモ
コオリガモ

この後は屈斜路湖に向かい宿に入る前にオオハクチョウを狙うのですが、強風のため寒い寒い。それでも高い波に立ち向かい波しぶきを上げるオオハクチョウを撮影することができました。

波しぶきを上げるオオハクチョウ
波しぶきを上げるオオハクチョウ

ここから養老牛温泉へ移動。養老牛「湯宿だいいち」は食事も温泉も施設もゴージャスなのですが、インバウンドの人でごった返し。シマフクロウが出れば近いが、場所が狭くて厳しい。参加者のみなさんには自由参加にしてもらい、私は0時まで付き合いましたが出現はありませんでした。結局1名だけ4時まで粘ったようですが、1時に1度出ただけとのことでした。

5日目

朝食前と朝食後に宿の中からエサ台の小鳥を狙ってもらいます。ここでアオシギに期待をしたのですが、残念ながら出現はありませんでした。それでもミヤマカケス、アカゲラ、シメ、カワガラス、シロハラゴジュウカラは撮れたと思います。

ミヤマカケス
ミヤマカケス
カワガラス
カワガラス

その後は走古丹へ向かう途中、別海の1本松にとまるオジロワシのペアを撮ることもできました。走古丹を進むとコクガンの群れがいて飛ぶ姿を撮れました、晴れていたらよかったのに悔しい!先端部でユキホオジロとハギマシコの情報があったので向かうとユキホオジロの群れがいました!しかし近づけず一部の方が何とか飛翔する姿を撮ることができました。

コクガン
コクガン

そのポイント近くにやたらとワシたちが集まっていたので一番近いワシに寄ってもらうとなんと!成鳥と若いオオワシがフレッシュなゴマフアザラシを一心不乱に食べていてしっかりと撮影することができました!こんなシーンは滅多にないので超ラッキーでした。

ゴマフアザラシを食べる成鳥と若いオオワシ
ゴマフアザラシを食べる成鳥と若いオオワシ

戻る途中にもユキホオジロがいましたが近づけずに撮影はできませんでした。野付半島でナラワラを過ぎたあたりで車から異音が・・・パンクをしたのでタイヤ交換をしましたが、夜はは羅臼でシマフクロウの撮影なので、先に進むことを断念してゆっくりと羅臼に向かいました。宿で早めに食事を摂り17時出発でワシの宿の小屋へ向かいますが、ここもすごい人。それでもシマフクロウは18時30分から出てくれ撮影ができました。合計3回出てくれましたが、3回目は車の上の電柱にとまったままで私たちが下を歩いても逃げないのには驚きました。

シマフクロウ
シマフクロウ
シマフクロウ
シマフクロウ

6日目 

流氷は来てませんが5時40分の早朝便で出航します。船は沖には行かず周辺で待機します。これは港の近くだと波の影響が出にくいからです。紅くなる空と絡めて飛翔したり、魚を掴む姿を撮影します。また月も出ていたので月を絡めての撮影ができました。日があがり明るくなると今度は順光側でワシたちの飛翔を撮影してもらいました。また山側の大木にとまる「ワシのなる樹」も撮影してもらいました。

月とオオワシ
月とオオワシ
オジロワシ
オジロワシ
「ワシのなる樹」
「ワシのなる樹」

本来なら流氷の上の姿を狙えるのですが、氷が無いので仕方がない。しかし岸壁に積もった雪の上にワシたちがとまっているので「疑似流氷」撮影を楽しんでもらいます。これのいいところは二階席に上がるとワシたちを目線で撮影ができるところです!

雪の上にワシの群れ
雪の上にワシの群れ

時間になったので港に戻り、宿に戻って朝食です。朝飯前の仕事をしたことと、思った以上にいい撮影ができたことでみなさんおいしく食べられたようです。朝食後はワシの宿も前でカワガラスを撮影しながらヤマセミに期待をしましたがこちらは出ませんでした。港でカモ類が撮れないかと探しますが、やはり数が少ない&遠い!しかし岸壁でワシたちにエサを与えていたことでこちらに向かって来る姿を堪能することができました。

向かってくるオオワシ
向かってくるオオワシ
オオワシ
オオワシ

帰路、中標津町でラーメンを食べてから空港に向かい無事終了となりました。
みなさまご参加ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

撮れた生き物
オオハクチョウ・オオホシハジロ・シノリガモ・クロガモ・コオリガモ・ホオジロガモ・カワアイサ・ヒメウ・アカエリカイツブリ・タンチョウ・マナヅル・オオセグロカモメ・シロカモメ・ワシカモメ・コクガン・オジロワシ・オオワシ・エゾフクロウ・シマフクロウ・コゲラ・アカゲラ・シジュウカラ・ハシブトガラ・モズ・シロハラゴジュウカラ・シマエナガ・カワガラス・セグロセキレイ・ホオジロ・ハギマシコ・ベニマシコ・シメ・ミヤマカケス・キタキツネ・ゴマフアザラシ・エゾシカ

観察できた生き物・聞かれた鳥
ヨシガモ・ヒドリガモ・マガモ・ハシビロガモ・オナガガモ・ホシハジロ・スズガモ・キンクロハジロ・キジバト・ドバト・ウミウ・カワウ・オオバン・ハマシギ・トビ・ノスリ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ヒガラ・ツグミ・ハイイロチュウヒ・モズ・ホオジロ・カンムリカイツブリ・ミンク

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

冬の道東を撮る【前編】

Report by 戸塚学 / 2025年2月16日~21日

今年の鶴居村はインバウンドでごった返し撮影場所に入れない、気温が下がらず霧氷が付かない、根室では風連湖が結氷せずワシの撮影ができない&シマエナガも来ない、港にはカモが少ないというトリプル難。さらに羅臼では流氷がまだ来ていないというさんざんな状況ではあったものの、それなりに収穫のあった内容になったのではないかと感じました。ただしあまりにも短い期間に内容が盛りだくさんなスケジュールだったため、みなさまかなり疲れたと思われたのが少し残念でした。

1日目 

釧路空港で集合し、すぐに車に乗って夕陽のポイントへ向かいました。空は曇り予報でしたが、若干日の光が届く高曇りで「上手く行けば空が焼けるかも?」と期待をしたがやはりどん曇りになってしまった。現場に着いて小鳥が撮れる場所を見ると人でごった返していて「今日は入れないから、外から撮る分はお金はいらないよ」と言われ、ポイントの外から何とかシマエナガやアカゲラを撮っていると、隣にいた女性から「さっきエゾフクロウが2羽いて撮影ができた!」と聞き、立ち入り禁止だったのでは?と思ったが、ここで待っているのも時間の無駄なので、急遽エゾフクロウの場所へ移動をすることにしました。

シマエナガ
シマエナガ
アカゲラ
アカゲラ

入り口にロープがしてあったのは車両の進入禁止と駐車禁止のロープだった。ここで降ろしてもらい、歩いて撮影に向かいました。すでに外国人のカメラマンがたくさんいたので、その隙間から何とか撮影ができました。何度もツアーで来ているが本当に久しぶりに2羽の姿を撮れたのはラッキーでした。みなさんしっかりと撮影ができ、歩いて駐車場まで戻る途中、木の枝に小鳥?が。双眼鏡で覗くとハギマシコだったので撮影をしてもらいました。ラッキー!

2羽のエゾフクロウ
2羽のエゾフクロウ
ハギマシコ
枝の上にハギマシコ

さて、この天気で夕陽のポイントへ戻っても小鳥も撮れないし夕陽も望めないので伊藤サンクチュアリーに行くと、時間的にインバウンドのお客さんが帰り出していて、空いた場所でゆっくりと撮影をすることができました。運がいいことに雪が降り出し、雪絡めの撮影もすることができました。

2日目

予定では早朝4時30分から音羽橋に撮影に出る予定でしたが、冷え込まず朝陽が出ない予想から中止し、かわりに7時に食事を摂り終わり次第音羽橋へ向かい、給仕場に向かう姿を狙う事に。その前に伊藤サンクチュアリを覗きに行くと・・・すでに撮影ポイントは人でごった返していてどうやっても撮影ができる状況ではない。そのまま音羽橋へ。たぶんここもさっきまでは人でごった返していたに違いないが、全員移動していたので私たち以外は3名!天気は曇りだが、こちらに向って来るタンチョウを撮影することができました。

タンチョウ
タンチョウ
タンチョウ
こちらに向かってくるタンチョウ

9時過ぎには給仕場に移動をするので、本当なら伊藤サンクチュアリに行く予定でしたが、入れるスペースはなさそうなので鶴見台へ移動しました。今年はここにマナヅルが入っているという事でしたが見当たりません。時期的に求愛ダンスをよくするのでそれを狙ってもらうのですが、ごちゃついたところで撮影に苦労するも2回交尾のシーンを撮影できました。途中マナヅルも飛んできたので撮影をしましたが、近くに来てくれない事とアクションが少ないのが残念でした。

鶴見台
鶴見台
タンチョウの交尾シーン
タンチョウの交尾シーン
マナヅル
マナヅル

ランチをした後、夕陽のポイントへ向かいました。夕陽には時間があるのですが、小鳥を撮影するには仕方がないと判断しました。気合を入れたのですがこの日はガラガラでした。その分、余裕で撮影をすることができましたが、途中からハイタカが出たのかまったく来なくなってしまった!やはり夕陽が狙える天気ではなかったのでこの日も伊藤サンクチュアリへ向かい昨日のような状況を期待しましたが・・・この日はイマイチでした。。

ハシブトガラ
ハシブトガラ

鶴居村では2日間、宿の温泉とおいしい食事を堪能していただきました。

3日目 

この日は晴れたのですが、冷えて霧氷が付くとは思えないので昨日と同じ工程にしました。しかし、タンチョウの動きが昨日とは違っています。どうもこちらに飛んで来てくれません。思うようにはゆきませんね。ヤマセミに期待をしましたが、カワアイサが出ただけでした。その後鶴見台へ移動しますが、こちらも昨日よりも動きが悪く残念な結果でしたが、思わぬサプライズでまさかのベニマシコが撮れたのは意外でした!またホオジロも見ることができました。北海道ではこの時期この2種を見られるのはレア体験です。

ベニマシコ
ベニマシコ

次は根室へ移動です。その前に厚岸でランチをして火散布でカモ類を探しますが・・・パッとしません。オオワシ&オジロワシもいますが、やはり外に出ているので近くでは撮れませんでした。サプライズだったのはゴマフアザラシが出たことぐらい。そして霧多布岬ではラッコを探しますが見つけることができませんでした。根室の宿では夕陽とタンチョウやオオハクチョウを夕食の時間まで撮っていただきました。

オオハクチョウ
オオハクチョウ
タンチョウ
夕陽とタンチョウ

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戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

奥日光で冬鳥観察&会津でヤマセミ撮影にもチャレンジ

report by 吉成才丈 2024年11月5日~8日

1日目
予定通りに宇都宮駅に集合し、貸切りバスで奥日光に向かいました。
夏から秋の暑さが長引いた影響で紅葉シーズンが遅れたため観光客が多く、多少の渋滞はあったものの、ほぼ時間通りに奥日光に到着。
昼食を済ませた後、川沿いの遊歩道を散策すると、すぐ近くでニホンザルが川に降りて採餌していました。川の周辺では、カワガラスが潜って採餌したりする様子や梢にとまって周囲を伺うミソサザイを観察。日光の川沿いはロケーションもよいので、皆さんでじっくり撮影させてもらいました。
この日は曇天で薄暗くなるのも早かったため、夕方は早めにホテルにチェックインしました。

ニホンザル

ミソサザイ

 

2日目
早めに朝食を済ませ、荷物をバスに積んでからホテル周辺を散策。昨年はこのあたりでイスカを観察しましたが、今年は赤い実も少なく、ゴジュウカラやイカルなどが少し見られただけ…。
今年は小鳥が少ないのかなと思い、トイレを済ませてバスに乗ろうとしたら、アトリの小群が近くの木に飛来。静かに観察・撮影していると次第に近寄ってきて、じっくり撮影させてくれました。またアトリにつられるようにカシラダカも群れに加わり、こちらもじっくり撮影できました。

アトリ

再び川沿いをチェックすると、昨日と同じようにカワガラスが出迎えてくれました。昨日の撮影状況を踏まえ、スローシャッターでの撮影などにも挑戦して頂いていると、とまっていた1羽にもう1羽が接近し、なんと交尾を開始!
これから寒さが増すこの時期に繁殖を始めることはないと思いますが、さすがに驚きました。

カワガラス

カワガラス撮影後には、別の入口から散策路にアプローチ。小鳥はこちらの方が多い傾向があり、ツグミの群れやアカハラ、シロハラなどを観察していると、ベニマシコの声が複数聞こえてきました。
少しずつ接近して待っていると、ようやく姿を現してくれました。真っ赤なオスではありませんでしたが、やはりベニマシコは興奮しますよね。

アトリ

午後は明日のヤマセミに備え、会津に移動しました。

 

3日目
いよいよ今日、明日がヤマセミ撮影の本番です。
まだ暗いうちに迎えに来てもらい、明るくなる前にハイドに身を隠して息をひそめます。この日は時折小雨が降り、風も強めでコンディションは芳しくない状況。いつもなら目前の河川上空を通過したり、すぐ近くの枝にとまる姿を見せてくれるのですが、なかなか姿を現しません。やきもきしていると、小さな声が聞こえた後、2羽が追いかけあうようにいきなり目の前に出現し、下流方向に飛翔していきました。いつもなら河川上空を飛来するので間に合うのですが、ハイドと同じ岸の陰から突然現れたため、満足に撮影できた方はいませんでした。
その後は下流から上流方向に低く飛翔する様子が1回あり、参加された方のお1人が見事に捕えてくれました。ヤマセミは見慣れない方が多いので、ついつい撮るのを忘れて見てしまうんですよね。
だから2日間連続チャレンジなのですが、明日に期待ですね。

ヤマセミ

午後は貸切り車で市内を巡り、お堀のカモ類やエナガ、シジュウカラ、ヤマガラなどの小鳥類を撮影して回りました。
また猪苗代湖畔の耕作地も巡り、ノスリやチョウゲンボウ、コハクチョウなども撮影しましたが、今朝は暗いうちから活動していたため、早めにホテルに戻りました。

エナガ

コハクチョウ

 

4日目
前日に続き、まだ暗いうちに迎えに来てもらい、明るくなる前にハイドに身を隠して息をひそめました。この日は風もほぼなく、星空も見えるといった状況で期待が高まります。しかし昨日同様、ヤマセミはなかなか姿を現してくれません。一昨日までは明け方から頻繁にチャンスがあり、また昨日は天候の影響もあったようでイレギュラーな日だと思っていましたが、いつもと異なる状況に、少しずつ不安が募り始めます。
時折、遠くで飛翔やとまりが見られたりはしたものの、結局この日は、ヤマセミは目の前には現れてくれませんでした。ここまで出が悪い日が続くことはめったになく、現地ガイドさんが考えるには、この2日間でも観察されたハイタカなどの猛禽類に追われて怖い思いをしたのではないかとのことでした。たしかに東京周辺でも、ヤマセミがオオタカなどに襲われて命を落としたこともあり、行動に影響を及ぼしても不思議ではありません。自然やいきもの相手なので仕方ないとはいえ本当に残念で、ご参加いただいた方には申し訳ない限りです。

ヤマセミがとまるはずだった枝にはカワセミが…

いつも元気なセグロセキレイ

撤収後はホテルに戻り、ご挨拶後に解散。宿泊したホテルはチェックアウト時間に余裕があるので、皆さんの都合で銘々に帰路についていただきました。

2~3日後に現地のヤマセミの状況を聞いたところ、すでにいつも通りに回復しているとのことでした。
昨年と一昨年のツアーではしっかりお撮りいただいてるので、また来年にチャレンジさせて頂こうと思います。

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吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

夏の富士山・奥庭で亜高山帯の野鳥と大磯海岸でアオバト観察

report by 吉成才丈 2024年8月21日~23日

1日目
今回も全員が新宿のバスターミナルに集合し、直行バスで標高約2,300mの富士山五合目に向かいました。
途中の高速は渋滞があったものの、ほぼ予定通りに水場に到着。

水場

さすがにTシャツ1枚では涼しいくらいの気温で快適でしたが、先着組の方によると「鳥がまったく出てこない…」という不吉な言葉が…
今回はOMシステムさんの協賛があるので、希望者にカメラとレンズをレンタルし、初めての方に使い方をレクチャーしてもらっていると、まずは、ヒガラが水場に出てきてくれました。

ヒガラ

ほっと一安心してさらに待つと、ウソやルリビタキのメスや幼鳥なども出てきてくれました。

ウソのオス・メス

ここは危険な生き物も生息しておらず景色もよく、富士山頂も望める散策路も整備されているので、水場で待機しながらも、個々で自由に過ごして頂きました。

山荘の夕食時間は早く、この日も16:30から夕食となりました。

山の上にもかかわらず豪華な夕食

夕食後でもまだまだ明るいので、皆さんと散策路を巡り、夕焼けや朝焼け、星空撮影のポイントをチェック。
なんと今回は、OM-1MkⅡや望遠ズームレンズの無料レンタルと共に、星空撮影のセミナーや体験撮影まであるという贅沢な内容なので、山荘に戻った後にOMシステムの社員の方に座学で、星空撮影時のカメラ設定や撮り方のコツを教えて頂きました。

外が暗くなると、いよいよ星空撮影の実践…だったはずなのですが、あいにく雲が広がり、皆さん揃っての撮影はできませんでした。
あとは適時、個々での撮影となりましたが、結局、雲はなかなか取れませんでした。

 

2日目
やはり多くの方が星空撮影を体験してみたかったようで、夜明け前の真っ暗なうちから何人もが、星空撮影ポイントに集まってきました。
そんな方々の願いが届き、夜明け少し前には雲が切れ、早起き組は星空撮影を楽しめました!
なかにはスマホで星空をきれいに撮る方もおり、そのまま朝焼けの撮影まで楽しむことができました。

富士山と星空

朝焼け

朝食後に水場で待機しているとウソやルリビタキなどが出てきてくれ、まずまずの撮影ができました。

その後、ある程度人数がいると降りてこないと言われていたホシガラスが水場に舞い降りました。
皆さんもホシガラスを驚かせないよう、息をひそめて静かに撮り続けます。
今までの小鳥とは、大きさも存在感も異なるホシガラスの登場で、満足度は一気に増したと思います。

ホシガラス

この日は昼過ぎまで撮影し、翌日のアオバト撮影に備えて平塚に移動しました。

 

3日目
平塚の朝は早く、夜明け前にホテルを出発して大磯に向かいました。
まだ薄暗いうちに撮影の準備を済ませて待つと、アオバトの群れが次々と飛来。
暗いうちの撮影は難しいのですが、明け方の様子も観察頂きながら、明るくなった後のシュミレーションをして頂きました。

明け方に飛来したアオバト

明るくなるにつれ、アオバトの行動パターンもわかってくると、いよいよ撮影の本番です。
飛翔する個体や岩に降りて海水を飲む個体の撮影のほか、波で飛び立つ瞬間も狙っていただきました。

海水を飲むアオバト

波で飛び立つアオバト

美しいアオバト

最初はカメラの仕組みや撮影の基本がわからず疑問だらけだった方も、いろいろなシチュエーションで撮影するうちに少しずつ理解し、野鳥撮影の楽しさを感じられたと思います。
いつもなら夏の大磯は暑くて大変なのですが、この日は曇りがちで暑さもやわらぎ、快適な条件下でアオバト撮影を楽しみました。

 

今回はミラーレス一眼の望遠撮影システムや星空撮影の機材レンタルにレクチャーがあり、撮影初心者の方にもお楽しみ頂けたと思います。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

2025年1月には、同じように機材レンタル付の霞ヶ浦や銚子をめぐる撮影ツアーもありますので、野鳥撮影未体験の方も、どうぞお気軽にお出かけください。

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吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ

Report by 今堀魁人 / 2024年6月14日~19日

1日目

14時半頃に中標津空港で集合しツアースタートです。初日は最初に野付半島へ行きました。野付半島まで行く道中ではすぐにタンチョウを発見!

タンチョウ
タンチョウ

その後は野付半島に入りすぐに綺麗なベニマシコを撮影。そして近距離でオジロワシが見られました。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島の奥ではこの時期では珍しいまだツノを落とさず付けているエゾジカのオスを発見。センダイハギとのコラボレーションが美しかったです。あっという間に時間はタイムアップ。

エゾジカ
エゾジカ

夕食後はシマフクロウを狙います。出ないなーと待っているとタイムアップギリギリにメスが登場!良かったです!

シマフクロウ
シマフクロウ

2日目

翌日はシャチクルーズからスタートです。霧に包まれていましたが出て数分でシャチの群れに囲まれました。その後終始シャチを観察し、目の前に出たりと色々楽しませてくれました。

シャチ
シャチ

午後はウトロと知床峠の頂でギンザンマシコ探し。ウトロではクマゲラに出会えました。近距離で見ることは難しく、今回は本当にラッキーでした。そして頂上に行くとすぐに本命のギンザンマシコが!数度見ると今度は後ろから声が?なんと目の前!みなさん持っていますね!

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

3日目

早朝からギンザンマシコを探しに峠へ出発しましたが濃霧で何も見えず。早々に旭岳に賭け撤退。朝食後、ここからはバードウォッチャーのドライバー、佐藤さんと共に紋別方面へと出発です。風の強いオホーツクではアマツバメやノビタキ、ベニマシコなどを狙いながら観察していきますが、とにかく暑い。この時期では珍しい28℃まで気温が上がり、私と鳥たちはバテ気味。少し出が悪かったですが、ホオアカなども囀る姿を見せてくれました。色々と観察をしているとあっという間に時間は過ぎ、後半は少し巻き気味で宿にチェックインです。明日が草原性の小鳥観察の本番。楽しみましょう!

アマツバメ
アマツバメ

ホオアカ
ホオアカ

 

4日目

早朝シブノツナイ湖でバードウォッチングです。早朝は観察最難関のエゾセンニュウが霧の中ちらっと見えました。

エゾセンニュウ
エゾセンニュウ

午後はオムサロ原生花園に行きました。オムサロでは、ノゴマやノビタキが見られるも鳥の姿が少なく、日暮れは再度コムケ湖方面へ。この時期ならではのワタスゲや偶然出会ったミヤコドリを見ながら再度シブノツナイ湖へ。ツメナガセキレイがずっと長時間観察させてくれたりといい天気の中楽しませてくれました。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ

5日目

シブノツナイ湖からスタートです。早朝鳥を探すと、全員には姿を見せることができませんでしたが、マキノセンニュウの姿も!他にもアオバトやウグイスなど、さまざまな小鳥に会えました。

マキノセンニュウ
マキノセンニュウ

アオバト
アオバト

そして再度ギンザンマシコチャンスを手にするべく、一路北海道の最高峰・旭岳へ。到着後、展望台でずっと探すと、遠くにギンザンマシコの姿が!一度潜ったところで全員集合。もう一度出てくれーと思っているとさっきよりも近いところで出てくれました。他にもカヤクグリが出てくれましたが、雷雲が近づいており、危険と判断し下山。下山後は日本で最も遅い桜も見ることができました。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

6日目

最終日もギリギリまでギンザンマシコを見るために旭岳に向かいます。

北海道の最高峰・旭岳へ
北海道の最高峰・旭岳へ

到着した時から天気は昨日と変わり山頂が見えます。これは見えるかも。と期待しましたが、待てど暮らせど姿は見えず。途中ルリビタキやカヤクグリは姿を見せてくれましたがギンザンマシコは姿を見せてはくれませんでした。

カヤクグリ
カヤクグリ

それでも今回6日間で合計63種を観察し、本当に多くのこの時期らしい鳥を観察することができました。この翌週には鳥はぱったりと姿を消し、子育てに奮闘していたので最高のタイミングでした。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原

Report by 今堀魁人 / 2024年5月18日~22日

1日目

初日13時に稚内空港を出発しツアースタートです!
最初は空港すぐそばのメグマ沼へ。風が強く、なかなか鳥が出てきてくれない中、到着直後にはオジロワシが目の前を飛んでくれました。風に逆らい、ゆっくりと止まっているかのように飛んでくれたのでじっくり見ることができました。ノビタキも一瞬出てきてくれました。

オジロワシ
オジロワシ

ノビタキ
ノビタキ

その後はサロベツ湿原に移動です。木道を歩いてもなかなか鳥が見られませんでしたが、道中ちらっとだけツメナガセキレイの姿が!この道北を代表する夏鳥の一種です。次の兜沼へ行く道すがらアカエリカイツブリの繁殖地へ。遠かったですが、近年激減しているこの鳥を見ることができ一安心しました。

アカエリカイツブリ
アカエリカイツブリ

兜沼では最初から最後までツツドリが遊んでくれました。なかなか見えないところに止まるので右に行ったり左に行ったりと隙間を探しての観察でした。

ツツドリ
ツツドリ

 

2日目

翌日は航路探鳥からスタートです。航路ではウトウがパラパラとあまり多くの鳥は飛びませんでしたが、序盤にはトドが泳いでいたり、後半には上空をチュウシャクシギの群れが渡っていきました!シギチドリが海を超えロシアへ渡る姿を見られるのは稚内航路ならではですので、ここから数千キロ離れた繁殖地へ向かう貴重な姿だったかと思います。

チュウシャクシギの群れ
チュウシャクシギの群れ

到着後はお昼を食べ、ガイドの渡辺さんと共にメインのクマゲラを見にいきます。ポイントに到着し、じっと待っていると、巣穴からメスの顔が!そろそろ来るかな?と期待して待ちますが、そこから1時間半が経過。まだか?と足のしびれの限界を感じながら待っていると遠くからクマゲラの声が! 近くまで帰ってきてくれましたが、警戒したのか巣のある木にはオスは止まらず、痺れを切らして先にメスが飛んで行ってしまいました。

巣穴から顔を出したクマゲラのメス
巣穴から顔を出したクマゲラのメス

帰りはコマドリ探し。藪の中にちらっと見えましたね。

コマドリ
コマドリ

3日目

早朝の公園観察からスタートです。鳥を探しましたが寒さのせいか動きがあまりなく、なかなか多くの鳥は見られませんでした。午前中には再度別の巣でクマゲラを観察です。到着早々クマゲラの声が聞こえ、見ていると20分で抱卵交代に来てくれました。しかし抱卵中のオスが出ず、入っているにも関わらず巣に潜るというハプニングもありました。

クマゲラ
クマゲラ

その後は雨模様の中利尻島を一周。近距離でアカエリヒレアシシギやイスカに出会うことができました。特にイスカは本当に逃げず、貴重な瞬間でした。

アカエリヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギ

イスカ
イスカ

夕方には再度コマドリの撮影チャレンジ。あそこ!ここ!一瞬でなかなか難しいですね。

コマドリ
コマドリ

4日目

再度利尻の森のバードウォッチングからスタートです。まずはコマドリ再チャレンジ!2時間ほど待っていると、ここに出るよーと伝えていたソングスポットに出てきてくれ、ほっと一安心しました。

コマドリ
コマドリ

午前はクマゲラ再チャレンジ。今回はやっと放卵交代の2ショットを見ることができました。そして森を回るとガイドの渡辺さんと友達のクマゲラが登場!近距離でその姿を見せてくれました。

クマゲラのツーショット
クマゲラのツーショット

午後にはフェリーで利尻島から礼文島へ。礼文島ではさまざまな小鳥を狙いますが、草刈り中だったりと中々姿が見えません。久種湖ではアカモズを撮影できました。そして森の中のポイントへ行くとなんとコウライウグイスが!全員にしっかり見せることができず悔しいですが、こんな鳥が見られるのが離島の魅力です。明日は最終日です!

コウライウグイス
コウライウグイス

5日目

ついに最終日です。早朝は希望者のみでコウライウグイスを再チャレンジ!見つけたい!と頑張りましたが、強風のせいもあり見つけることは叶わず。なかなか難しいですね。
帰りの船はこの強風のせいで道中大きく揺れる可能性が高い上、波が高すぎて鳥が見られないため船内で寝ながらの移動。私は潮風でビシャビシャ、鼻血で鼻を赤くしながら外で観察しましたが、観察できたのは遥か遠くを飛ぶ合計4羽のハシボソミズナギドリと思われるミズナギドリ類、ウトウが3羽、そして爆風にゴミのように飛ばされながら必死に短時間船へ退避したカラフトムシクイのみでした。こんな人も恐れる天気の中たった数グラムの小さな鳥が海を渡っていると考えるとロマンがあります。

強風に煽られるカラフトムシクイ
強風に煽られるカラフトムシクイ

カラフトムシクイ
退避中のカラフトムシクイ

今回は少し渡りの鳥は少なかったかもしれませんが、一発逆転の鳥がいつ現れるか分からないという離島のポテンシャルは少し感じていただけたかなと思います。ぜひまた来年お越しください!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!