春の奄美大島でバードウォッチング三昧

Report by 吉成才丈 / 2022年3月17日~20日

<1日目>

予定通りに空港で集合。ローカルコンビニで軽い昼食をとった後、空港近くの港や海辺を観察しました。港にはめぼしい鳥の姿はありませんでしたが、潮が引いた海岸ではサルハマシギやトウネン、ムナグロ、オオメダイチドリなどのシギ・チドリが観察されました。
その後は建物で繁殖中のルリカケスをチェックし、早めにホテルにチェックイン。
そう、この夜はナイトツアーが控えているので、夜の準備をする必要があったのです。

早めの夕食をとった後に再出発し、夜の林道を巡るツアーに参加しました。直前まで雨が降っていて心配しましたが、林道のナイトツアーは雨上がりが一番よいコンディションなんだそうです。出発早々、日本で一番美しいというアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルなどが出現し、幸先の良いスタートとなりました。

アマミハナサキガエル(撮影:藤塚裕美様)

そろそろ鳥も..と期待していると、林道脇にアマミヤマシギも登場してくれました。2羽で並ぶ姿も見られましたが、オス・メスの識別は難しそうでしたね。
そしてナイトツアーの主役といえば、やはりアマミノクロウサギですね。この日は成獣から幼獣まで、いろいろな個体に出会うことができました。また、道路沿いにある巣穴も教えてもらい、アマミノクロウサギの生態を垣間見ることができました。

アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)
アマミノクロウサギ(撮影:藤塚裕美様)

 

主役も登場して満足していると、多くの人にとっては嬉しくない、あの危険ないきものも登場しました。「水たまりは危ない..」と脅かされましたが、どうやら脅しではなく、本当に危ないと身をもって感じることができましたね。(ハブやヒメハブの画像は出さないでおきます)
めったにできない体験に興奮しながらホテルに戻りました。

 

<2日目>

この日は暗いうちに出発し、地元のガイドさんに案内されて金作原に向かいました。金作原は奄美大島の中でも亜熱帯植物の原生林が残る自然ゆたかなエリアで、まさに奄美大島を象徴するスポットなのです。あいにくの雨模様で鳥の姿は少なかったのですが、アカヒゲやオオトラツグミの鳴声も聞かれ、奄美大島の自然を肌で感じることができました。

午後は名瀬から南の方面に向かい、森や草地、水辺の鳥をチェックしながら移動。オーストンオオアカゲラのドラミングのほか、カラスバトやズアカアオバトの鳴声、ササゴイ、クロサギ、ミサゴなどの姿を確認しました。昨夜は遅く、今朝も早かったので、この日も早めにホテルに戻ってお休みいただきました。

<3日目>

昨日も暗いうちに出発したのですが、この日はもっと早い時間に出発して、未明から明け方の観察を行いました。夜の鳥のメインターゲットは、初日のナイトツアーでは後ろ姿しか見られなかったリュウキュウコノハズクです。林道に入るとあちこちから鳴き声が聞こえ、姿もバッチリ確認することができました。全長20cmくらいしかない小さなフクロウは、本当にかわいいですよね。
リュウキュウコノハズクは耳で探し、目ではアマミヤマシギを探しながら、ゆっくりゆっくりと車を走らせてもらうと、道路脇にアマミヤマシギも発見。

リュウキュウコノハズク(撮影:藤塚裕美様 )
アマミヤマシギ(撮影:藤塚裕美様)

そして夜明け頃にはオオトラツグミの声も聞くことができ、未明時の探鳥は充実していました。
ホテルでの朝食後には、また別のスポットを訪ねてみました。小学校のグランド(というより草も生えている庭)では、ムクドリやツグミに混じってギンムクドリが採餌してました。
グランド際のアマミシジュウカラを見ていると、校舎のすぐ近くから、牛のようなカラスバトの声が..。まさかと思って探してみると、カラスバトが飛んで木の中に入りました。角度を変えて木の中を探すと、かろうじて頭だけ見ることができました。
それにしても、海沿いの学校なのに、ギンムクドリやカラスバトがいる学校なんて、すばらしいですよね。ちなみに登校日ではなかったので、学校にはだれもいませんでした。

ギンムクドリ(撮影:藤塚裕美様)
カラスバト

そして、奄美の知人に紹介してもらった場所に行ってみると、聞いていたとおりにルリカケスが近くで出迎えてくれました。ここは斜面上部に建物があるため、目線や眼下にルリカケスを見ることができるんですね。

ルリカケス(撮影:藤塚裕美様)

また道路際の斜面では、今回は姿はあきらめかけていたアカヒゲのオスが出現。ルリカケスに続いて大興奮でした。
午後は耕作地に立ち寄ると、予想していなかった暗色のサシバがいきなり出迎えてくれました。すぐに飛び立つと一気に移動し、その後は見つからなかったため、そのまま渡って行ったのかもしれません。とてもラッキーでした!

アカヒゲ(撮影:藤塚裕美様)
サシバ(暗色型)

<4日目>

最終日の朝は、ホテルの敷地でのんびり観察しました。近くで繁殖するルリカケスは定期的に現れ、駐車場のごみ箱などにもとまったりします。見ることすら大変だった過去があるとは思えない光景でした。

チェックアウト後には近くにクロサギでもいないか..と、海辺を流してもらいました。すると、岩にとまっているウミウを発見。しかしよく見ると、同じ岩にクロサギが座っていました。そう、陸から離れた海面に突き出した岩で抱卵していたのです。陸地からは適度な距離があったため、ちょっと観察させてもらいました。

 

クロサギ黒色型(撮影:藤塚裕美様)

また、もう少し進んだ海岸では、クロサギの白いタイプも発見。白いクロサギなんて紛らわしいですが、奄美大島には両方のタイプがいます。目の前を何度か飛んでくれたため、皆さん写真もバッチリ撮れたようです。

クロサギ白色型(撮影:藤塚裕美様)

そして空港近くの耕作地でサシバやシロハラクイナなどを観察し、ランチタイムには奄美パークで自由行動としました。銘々が田中一村の美術館を見たり敷地内で探鳥したりして楽しみ、奄美空港で解散しました。

今年はどこも冬鳥が少なく、奄美大島も例外ではありませんでしたが、いろいろな鳥たちに出会うことができ、ぐ~っと濃縮された4日間でした。

(観察種数60種)

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【後編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

ツアー3日目

島の朝はゆっくりです。この時期の日の出は6時半頃。朝食を7時にとって出発です。宿の前が小・中学校なので朝食までの30分を利用して散歩がてら久部良バリまでを往復するプチ朝探へ。途中、学校脇の電線に止まっている3羽のカラムクドリが見られました。

カラムクドリ(撮影:早川弘美さま)

島での探鳥は各所にあるポイントを丹念に回るスタイルです。平地では歩きながら探鳥をしたいところですが、今年は予想を上回る暑さで、島の人が「これまでで一番暑い」というほどです。なので灼然の炎天下を延々と歩くのは諦めて、ここという場所を効果的に歩きました。今日こそは皆さん一番のリクエスト、セジロタヒバリとハイイロオウチュウを狙います。

島ではツメナガセキレイが一番目につきます。次に多いのは留鳥組のシロガシラ。次いでヒヨドリやアカモズとなります。島のヒヨドリはタイワンヒヨドリという亜種、アカモズはシマアカモズという亜種なのがいかにも与那国的です。

シロガシラ
タイワンヒヨドリ
シマアカモズ

比川ではいつもの顔ぶれに、ハマシギとジシギ類が加わっていました。顔つきや羽衣などからチュウジシギと思われましたが念のために尾羽も確認しOK。与那国岳に向かう林道を歩いていると蝶の姿が目に付きます。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ベニモンアゲハ、ミカドアゲハなどが沢山飛んでいて、一時は蝶の撮影会に。ここではエゾビタキ、コサメビタキ、オオルリなどのヒタキ類やブッポウソウもチラホラと現れました。ブッポウソウは昨日よりも増えていて5羽以上はいましたが、どれも今年生まれの幼鳥でした。

チュウジシギ(撮影:早川弘美さま)
エゾビタキ(撮影:伊原やよいさま)
オオルリ雄若鳥(撮影:早川弘美さま)

今日のお昼はピクニックランチ。といっても売店で買ったパンなどですが、自然の中で食べるのはなぜか違って美味しいのです。遠くの梢に止まるブッポウソウを見ながらお昼のひと時を過ごしました。

与那国島ならではのシュモクザメを模った手作りパン

午後からは目標の2種に絞って探鳥を進めることに。両種のいそうな場所を狙ってこまめに探していると、いました!セジロタヒバリです。地面で餌を採っていると、すぐにキセキレイがやってきて飛ばされてしまいます。炎天下の中、粘り強く待ち続け、ようやくじっくりと観察できました。カメラの方も無事シャッターに収めることが出来て喜んでおられました。

セジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

次はハイイロオウチュウを求めて探します。島で一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(オオバアコウ)の場所でオオルリ、エゾビタキ、サメビタキ、コムシクイ、南牧場でマミジロタヒバリ、久部良ミトゥではヨシゴイなどを見ながらお目当てのものを探します。と林縁から飛び出す1羽の鳥が。ハイイロオウチュウです。まずは飛ばさないように遠目から観察していると盛んにフライキャッチして虫を食べています。そのうち向こうから飛んできて近くの電線に止まりました。皆さんここぞとばかりのシャッターチャンスです。プロミナー組はドアップで観察。わずかの時間ですが本種を堪能することが出来て皆さん大満足の様子でした。

ハイイロオウチュウ(岡本圭祐さま)
コムシクイ(撮影:早川弘美さま)
島一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(撮影:門永洋子さま)

宿に帰る前に立ち寄った久部良漁港でクロハラアジサシを観察し、3日目の探鳥を終了しました。夕食後に鳥合わせと皆さんからの質問を受ける形でちょっとした識別講座を行い、本日56種の確認となりました。

クロハラアジサシ(撮影:伊原やよいさま)

ツアー4日目

今朝も久部良バリまでの散策で始まり、アカガシラサギやツメナガセキレイなどを観察。今日の朝食は洋食で皆さん嬉しい様子。まずは北牧場を覗きます。牧場へ向かう小道を歩いていると、ちょうど朝イチの飛行機が来る時間です。滑走路の端で待機していると、晴天をバックに頭上をかすめて着陸するシーンが見られとても感激しました。牧場内はツメナガセキレイが多く、ムナグロも沢山います。マミジロタヒバリを見つけ観察していると「ツグミみたいなのがいます」の声。見ると胸がよだれかけ状に赤く、腹の白い鳥が。すぐに飛びましたが上面は綺麗なスレート色でした。ノドアカツグミの雄です。その後、飛去した方向を捜索しましたが出会いは一瞬の出来事でした。

マミジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

祖納のゴミ捨場跡地をチェックしたあと、東へ車を走らせ鳥を探します。丹念に電線をチェックしていると再びハイイロオウチュウを発見。昨日とは場所も違い、体色にも違いがあるので別個体です。ここでも良い感じの距離で観察ができました。島を半周回る形で鳥を探し、途中の小さな貯水池ではカイツブリ、セイタカシギ、コアオアシシギ、チュウジシギなどを確認。ヒバリシギは冬羽に換羽しているのがいて幼羽との違いをゆっくり観察できました。

コアオアシシギ

昼食と少しの休憩を挟んで探鳥の再開です。比川でアカガシラサギをゆっくり観察したあと、山へ向かいます。遊歩道で鳥を探している時にお客さんの一人がヨナグニサンの繭を発見。当たり前ですがアヤミハビル館で見たものそのものです。よくもまあこんなのを見つけたものだと皆さん感心しきりでした。その後、ラッキーなことにヨナグニカラスバトが飛ぶところが見られました。

ヨナグニサンの繭
アオムネスジタマムシ(撮影:門永洋子さま)
アオミオカタニシ(撮影:門永洋子さま)

山を離れ、平地へと移動し、各所のポイントを回りましたが、昨日のセジロタヒバリの姿は既になく、新しい種にも出会わず顔ぶれは同じでした。夕方の久部良ミトゥは塒入り前のシロガシラがうるさく騒いでいます。セイタカシギは8羽に増えていて、クロハラアジサシの小群が上空を舞っています。近くのさとうきび畑でキガシラセキレイを探していると黒く大きなものが林に飛び込んだとのこと。「オオコウモリかもしれませんよ」と話しているとお客さんが木にぶら下がっているのを見つけられたところで本日の探鳥は終了となりました。夕食後に鳥合わせと今日もプチ識別講座を。実際の音源を聞きながら、見た目での識別が難しい種などの識別を学びました。本日の確認種は60種でした。この3日間、リュウキュウコノハズクの声を聞こうと真っ暗な中を久部良ミトゥ近くまで歩いてみましたが、結局声は聞けませんでした。新しく建った自衛隊の施設が影響しているのかもしれませんね。

宿の夕食

ツアー5日日

いよいよ今日が最終日です。朝の散歩探鳥ではチュウシャクシギ、ケリ(昔は南西諸島では珍しかったが最近は時々記録されます)、ムナグロをゆっくり観察。夕日の見える丘では海上からセジロタヒバリ5羽の群れが鳴きながら飛来し、島内へ飛んでいきました。

今日は昼前のフライトなので探鳥の時間はそれほどありません。皆さんのリクエストから北牧場と森林公園を小1時間ほど探鳥することに。北牧場ではマミジロタヒバリ、ハヤブサなどをじっくり見て、森林公園ではアカヒゲの囀りを聞くことが出来ました。公園近くの林内でオオゴマダラとリュウキュウアサギマダラが鈴なりになっている木があり、皆さん感動しておられました。

ハヤブサ(撮影:早川弘美さま)
オオゴマダラの群れ

終了時に東の外れでベニバトの情報が舞い込みましたが、時間切れのため残念でした。空港で搭乗手続きを済ませたあとで鳥合わせを行い、5日間のバードウォッチングの旅が終了となりました。

今回はずっと晴天続きで鳥影が薄く、毎日30度超えの猛暑の中での探鳥になりました。また、水のある水田が無いなど環境的に厳しいこともありましたが、終わってみれば出現種は91種とまずまずの結果でした。お目当てのハイイロオウチュウとセジロタヒバリをじっくりと観察・撮影を出来たのは何よりで、色々と厳しい条件下でもやはり与那国島は珍鳥の渡る交差点なのだと思わせてくれるツアーでした。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

渡り鳥の楽園・秋の飛島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2021年10月22日~24日

 

定期船とびしまは検査のため、代船のきららの初運航日でのスタートとなった22日、無事、出航しました。

まずは、昨日確認され、今朝もいたハイイロオウチュウを狙いました。本来は南の鳥で、中国南部などに生息しています。飛島では2017年の秋以来、2度目の記録のド珍鳥です。しかし、なかなか出てきません。約一時間待ちましたが、現れないので引き上げることとしました。抜けてしまったか?

するとちょうど、すぐ近くでコノドジロムシクイがいることがわかり、草地や樹上で採餌する珍鳥・コノドジロムシクイをじっくり見ることができました。

今度は階段を上がり、「3の畑」へ行きました。今年は島中の柿の実が夏に落ちてしまい、ほとんどなっていません。柿の実がなっていれば色々な鳥が訪れ楽しめるのですが、それも叶いません。わずかに残された柿の実にメジロがきていました。他、畑ではミヤマホオジロ、カシラダカ、ジョウビタキなどを見ることができました。北へ進み、鳥海荘の畑の脇の畑でもわずかに残った柿の実にシロハラやツグミが来ていました。

今度は山グラウンドでニシオジロビタキ情報が出てきましたので向かいます。トイレ休憩を兼ねて、山グラウンドでニシオジロビタキを探すことしばし。独特の「ディッ…ディッ…」という声とともに、ニシオジロビタキの登場です。♀型のようです。地上30cm程度を鳴きながら移動し、餌を探していました。

ヘリポに移動しましたが、芳しくありませんでしたので、校庭に向おうとしたところに、開始時に見られなかったハイイロオウチュウが出ていると情報が入りました。校庭をパスして、急ぎ、現場に向かいました。歩くこと約15分。いました!ド珍鳥・ハイイロオウチュウです。電線に止まっては飛び立つのを繰り返しています。フライング・キャッチをして飛んでいる虫を捕っているようです。全身灰色で目の周りが白く、愛嬌のある顔をしています。長い尾の先端が二股に分かれ、外側に反っているところはオウチュウ類の特徴です。ハイイロオウチュウのお陰で、いい一日の終わりにすることができました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の富士山奥庭で亜高山帯の野鳥観察

Report by 吉成才丈 / 2021年8月21日~22日

真夏の暑さとは無縁の富士山五合目・奥庭ですが、直前の天気予報は雨…。少しでも好転することを願いつつ、新宿のバスターミナルを出発しました。途中、富士山の姿が見えてきてほっとしましたが、やはり厚い雲が気になります。今回は1泊2日の短い行程なので、できるだけよい条件で..と富士山に祈りながら向かいました。

車窓の富士山
車窓の富士山

昼すぎに奥庭荘に到着すると天気は曇りで、時折、陽も差し始めるという好条件。標高も2,200m近くあるので気温も20度ほどと涼しく、下界とは異なり快適そのものです。

奥庭荘
奥庭荘

なぜこの奥庭荘を訪ねたかというと、ここには高山では貴重な水場があり、亜高山帯の鳥たちが水を飲んだり水浴びに来る様子が間近で観察できるのです。間近で、ですよ!

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

さっそく観察・撮影のスタンバイをすると、ルリビタキやウソ、ホシガラスが水場にやってきてくれました。

ルリビタキ(幼鳥)
ルリビタキ(幼鳥)
ウソ(オス)
ウソ(オス)
ホシガラス
ホシガラス

すこし慣れてくると、皆さんも鳥たちの行動パターンが分かるようになり、水場の前後にとまる木や岩にとまる姿も撮れるようになります。

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

そして翌日の午前中も天気はもち、昼頃まで亜高山帯の鳥たちを楽しむことができました。

奥庭の魅力は、夏の暑い時期に亜高山帯の鳥たちが間近で楽しめること。
水場だけならほぼ歩かず、片道約300mの散策路を歩くと景色や野鳥、高山植物などが楽しめ、自分のペースで自由に観察・撮影ができること。体力に自信のない方もOKです。そして雲がかからなければ、夕方には赤く染まる富士山が間近に見えることなど。今回は雲がかかって赤富士は見られませんでしたが、鳴声をたよりにキクイタダキやメボソムシクイを撮影された方もいました。

 

暑さと鳥の端境期で出かける場所も少ないこの時期には、標高が高くて快適な奥庭は最適な鳥見スポットです。来年は、赤く染まる迫力ある富士山もぜひ..。

目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません
目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

4日目は旭岳に向かう前に紋別のオムサロ原生花園に向かいます。オムサロ原生花園では前日撮影が難しかったシマセンニュウやコヨシキリが見られ皆さん楽しまれました。帰る直前には車の横に綺麗なベニマシコのオスが現れ、センダイハギの黄色い前ボケとのコラボレーションで撮影できました。旭岳に向かう途中にはエゾライチョウを探しましたが、残念ながら今回は見られませんでした。

シマセンニュウ
シマセンニュウ
コヨシキリ
コヨシキリ

ベニマシコ昼からはガイドさんと合流し旭岳でギンザンマシコ探しです。残雪の上を歩きながら歩いていくと、カヤクグリやビンズイがあちこちで囀りを響かせています。この時期にはない残雪の上を歩き少々苦労しましたが、観察ポイントに到着し早速ギンザンマシコを探していきますが全く出る気配がありません。16時を過ぎ見られたのはカヤクグリとノゴマとルリビタキ、そしてウソのみです。今日は見られないかなと諦めの気持ちが出てきた頃、ちらっとだけ遠くにギンザンマシコのメスが出てきましたが、すぐにハイマツに隠れてしまいその後見ることはできませんでした。生存確認はできたので、なんとか明日は見つけたいものです。

 

5日目は新型コロナウイルスの影響で早朝ロープウェイは運行しておらず、朝はホテルの周辺でバードウォッチングです。コガラやヒガラ、コルリなどの囀りを聴きながら森に入ります。途中キビタキの声が近くで聞こえ、ダケカンバを見ると綺麗なオスの成鳥がいました。大きく動かずにいてくれたおかげで、皆さんじっくりと観察できたようです。その後帰りの道中では普段あまり姿を見ることがないウグイスを観察することもできました。

ウグイス
ウグイス

9時からは再度旭岳に登りギンザンマシコ探しです。カヤクグリが目の前のハイマツにとまり楽しませてくれましたが、なかなかギンザンマシコは現れず段々と終わりの時間が気になりだします。

カヤクグリ
カヤクグリ

ふと形に違和感を覚えた遠くのハイマツを双眼鏡で覗くとギンザンマシコのオスが!慌てて皆さんと場所を共有し2枚だけ確認写真を撮ると、スッとハイマツから降り、その後は姿を現すことはありませんでした。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

その後終了の時間までギンザンマシコを探している間は、少し離れた看板の上で囀るノゴマを見つけ、静かに寄るとファインダーに入り切らないほど目の前で美声を聞かせてくれました。

ノゴマ
ノゴマ

時間となり下山し、次は十勝岳に移動です。途中北海道を代表するコンビニ、セイコーマートで昼食を買い、到着後綺麗な山を眺めながらピクニック気分でお昼ごはんです。食後は氷河期の生き残りであるナキウサギを探しに行きます。ポイントに到着し、静かに待つとピチッというナキウサギの鳴き声が!途中にはシマリスがそばを通過してくれ、可愛い姿を見せてくれ、ナキウサギもこの流れで見れるかなと期待が高まりましたが、残念ながら今回は出会えませんでした。

シマリス
シマリス

6日目は旭岳からサロベツ原野へ移動です。最初は幌延ビジターセンターのある通称下サロベツでバードウォッチングです。ツメナガセキレイがしきりに姿を見せ、遠くにはチュウヒの姿が見えていました。サロベツ原生花園では今年はシマアオジの姿が確認されておらず、残念ながら出会うことはできませんでしたが、ノビタキやアリスイなどに出会い楽しませてくれました。ホテルでは夕食後窓を開けると付近から「キョキョキョキョ……」とヨタカの声が。その他にもオオジシギやヤマシギなど贅沢な自然のBGMを聞きながら就寝です。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ

7日目はツアー最終日です。この日はサロベツ湿原を代表する野鳥ひとつであるアカエリカイツブリを探します。早朝はご希望の方のみで周辺にバードウォッチングです。朝靄の美しい牧草地を見ながら、キャンプ場と沼を散策です。キャンプ場では車から降りるとアカハラの囀りが聞こえ、見上げるとトドマツの梢にシルエットで姿を確認することができました。歩いているとアカゲラが子育てをしており、盛んにヒナが餌をねだり鳴いています。これには親も大忙しで1分おきに餌を運びてんやわんやです。沼では遠くに浮かぶ2羽の鳥が。確認するとアカエリカイツブリ抱卵の準備をしています。朝食後最後のバードウォッチングに出かけ、アカエリカイツブリの距離の近い個体を探します。複数の沼を探すもなかなか見られず、以前繁殖を確認した沼を最後の望みに覗くと、ペアは確認できませんでしたが、アカエリカイツブリの夏羽が見られました。

アカエリカイツブリ
アカエリカイツブリ

今回のツアーでは草原の小鳥から高山の鳥まで様々なものを観察でき、移動は長かったですが有意義な時間を過ごされたのではないでしょうか。この時期は特に草原性鳥類の子育てが見られるのが最大の魅力です。来年もこの時期に行えれば幸いですので是非また北海道の小鳥達に会いにお越し下さい。ツアーにご参加された皆様お疲れさまでした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

前日までの予報はすべて雨、ツアー3日目に関しては特に大雨予報という先月のツアーに引き続き天候に不安を覚えていましたが、なんと今回は最初から晴れ間が見える天候に恵まれた状態でツアーがスタートです。

ノビタキ
ノビタキ

中標津空港で合流後、早速野付半島へ向かいます。野付半島ではセンダイハギやエゾカンゾウなどの初夏の花が咲き、色鮮やかな風景が広がります。
野付半島の海浜草原ではノビタキがせっせと雛に餌を運び大忙しです。海沿いではオジロワシが佇み、付近のキタキツネの親子やウミウなどの水鳥を狙っています。
野付半島の名物のひとつでもあるエゾシカも道中オスの群れが見られ、皆さん大興奮でした。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島のあとは西遊旅行が運営する羅臼町のゲストハウス、知床サライに向かいます。チェックインし夕食を食べたあと、夜はシマフクロウの観察です。この時期のシマフクロウは雛が巣立ちを迎え、親は餌運びに大忙しなはず……と密かな期待を胸に到着すると、昨日までは全然見られていないと観察場所のスタッフの方から伺い、テンションダウンです。
それでも20時頃に出るかもしれないとのことで、準備をすると、なんとすぐにシマフクロウのオスが出現!全員が不意をつかれ慌てて撮影と観察をします。

オスのシマフクロウ
シマフクロウのオス

見られたー!と喜んでいると、15分後くらい経つとまたオスが現れました。そしてその直後影が動いた?と思うとなんとメスも登場です!この場所のメスはほとんどこの場所に姿は現さず、最後に2羽で見られたのは1月に10秒ほどとのことで、全く予期していなかったペアでの登場に全員が大興奮です!2時間ほどずっとこの場所から離れず、飛んで離れたときにそそくさとこの場所を離れ、いきなり内容の濃い1日目が終了です。

ペアのシマフクロウ
ペアのシマフクロウ

2日目は午前、午後と観光船に乗り海鳥とシャチ探しです。出航してすぐにシャチ発見です。1グループだけではなく、どの方向を向いてもシャチのグループがいます!全体で50頭ほどを観察でき、スパイホップも見せてくれました。

シャチ
シャチ

シャチの周りにはフルマカモメやハシボソミズナギドリの群れもおり、目の前を通り抜け、シャチを見ればいいのか海鳥を見ればいいのかわからない贅沢な状態が終始続きました。

フルマカモメ
フルマカモメ

午後にはフルマカモメが1箇所にかたまりなにかを食べています。写真で確認すると食べているのはオキアミなどの動物性プランクトンのようです。羅臼では毎年フルマカモメを観察できますが、この日は特に多く、珍しい場面を見ることができました。帰りにはオオセグロカモメが堤防の上で巣材を咥えていたり、巣の上で抱卵していたりと、この時期ならではの生態も見られました。

フルマカモメの群れ
フルマカモメの群れ

3日目からは羅臼を離れ、オホーツク海沿岸を北上し私の地元紋別を目指します。知床峠では今回の最大目的のひとつであるギンザンマシコを探す予定でしたが濃霧のため視界がなく、旭岳に期待を託し早々に撤退です。小清水原生花園ではエゾキスゲが見頃を迎え、鳥の姿はあまり見えませんでしたが道路脇で草を喰む馬の姿などを楽しみました。ワッカ原生花園ではノゴマがエゾノシシウドの上にとまり綺麗な声で囀ってくれたり、花の上にいる虫を狩る瞬間を見れたりと、少し歩いただけでしたが様々な鳥たちが楽しませてくれました。

オオジュリン
オオジュリン

シブノツナイ湖ではノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、シマセンニュウ、コヨシキリがそこかしこで見られ、さらに何度も花の上にとまってくれる大サービス!

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
ノビタキの親子
ノビタキの親子

皆さん見るものが多すぎて前に進みません。この次にコムケ湖も見る予定でしたが、コムケ湖は湖畔にあるワタスゲの群落を観察し、ホテルに向かい終了です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

3日目は天気が回復し、午前中礼文島南部と高山植物の花畑となる桃岩展望台へ。桃岩展望台では、礼文島固有種のレブンコザクラ、そしてハクサンイチゲを観察しながら野鳥を探します。

レブンコザクラ
レブンコザクラ
利尻島をバックに、レブンコザクラとハクサンイチゲ
利尻島をバックに、レブンコザクラとハクサンイチゲ

道中、何度か上空をイスカの群れが飛び、そしてノビタキが道端で姿を見せ楽しませてくれます。ふと大きなシルエットが見え、双眼鏡で覗くとチュウヒでした。旋回し、上空高くどこかへ飛んでいきましたが、ここからサハリンまで渡っていくのでしょうか。桃岩展望台を見たあと、車で戻る際にハイタカ属の姿が。見ると北海道では珍鳥のサシバのオスです。本当に離島は何が出るのかわかりません。

ウトウ
利尻島へ向かう途中に出会ったウトウ

午後からは利尻島へ向かいます。利尻島到着後、早速ガイドさんとともに今回のツアー最大の目的であるクマゲラを探しに行きます。
森の中を歩いているとそばから「ゴッゴッ」と鈍器で殴っているような音が。見ると5mほどのところでクマゲラのメスが木をつついています。皆さん驚きです。

クマゲラ
クマゲラ(メス)

その後今年の営巣木に案内して頂き、静かに抱卵交代する瞬間を待ちます。抱卵していたオスがメスの帰宅が遅いため何度も外を見たり巣のなかで叩いて交代を催促したりとなかなか見ることのできないシーンを観察できました。

 

4日目は、日の出の時間から皆さんの宿のそばにある公園で散策です。「利尻コマ」と呼ばれるだけあって、周辺にはコマドリの声があちこちから響いています。
声の方向を見ているとオスが目線の高さにぴょんと上がり、目の前で囀りを披露してくれました。日本三大鳴鳥の囀りを目の前で聞くと格別です。

コマドリ
コマドリ
コマドリ
コマドリ

そして、そばの草原にはなんとキマユホオジロがいました。以外なところにいる珍鳥の姿に皆さん興奮です。かなり敏感で姿を捉える前にどこか飛んでいってしまうので観察は難しかったですが、ほとんどの方がその姿を見ることができたかなと思います。

キマユホオジロ
キマユホオジロ

朝食後は再度クマゲラ探し、そして利尻島を一周しながらバードウォッチングです。昨日とは違う巣穴に向かいます。ここでも姿を隠し声を出さずに静かに待ちます。
2時間ほど経ち、やっとメスの帰宅です。メスが交代のために巣穴を覗くとオスが飛び出し、目の前を飛んでいってくれました。とても貴重な瞬間でしたね。

クマゲラ(オス)
クマゲラ(オス)

その後は利尻島を巡ります。沓形岬公園では、ノゴマが利尻島背景にこちらを向いて囀りを披露してくれました。

ノゴマ
ノゴマ

オタトマリ沼では、綺麗なチュウサギやダイサギ、そして散策すると夏羽のアカガシラサギを発見し、観察することができました。北海道ではシラサギは基本的に珍鳥、繁殖もしていないのですが、離島では毎年多くのシラサギが見られます。これは離島の特徴の一つです。

チュウサギ
チュウサギ
アカガシラサギ
アカガシラサギ(夏羽)

帰り際、お土産を買うため売店に立ち寄ると、サバクヒタキとシラガホオジロのメスが!一瞬の出来事で見たのはほんの一瞬でしたが、どこにどんな鳥が出るのかは本当にわかりません。

 

最終日も早朝宿のそばの公園で散策です。コマドリは昨日とはうって変わり姿をなかなか現さず、森を歩くとクロジやイスカ、カシラダカが姿を見せてくれました。

クロジ
クロジ
クロジ
クロジ
カシラダカ
カシラダカ

宿へ戻る際には再度キマユホオジロが姿を見せてくれ、そしてマミチャジナイが目の前で採餌していたりと、最後まで楽しませてくれたツアーとなりました。

マミチャジナイ
マミチャジナイ

離島のツアーは本当に何がどこに出るかわからないというのも魅力です。そして利尻島はクマゲラ、コマドリが数多く生息し出会える可能性が高いというのも大きな魅力です。是非また訪れて頂き、今回とは違う魅力を再発見していただけると幸いです。ツアーにご参加された皆様お疲れさまでした!

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今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

前日までの天気予報では半分以上が雨予報、そして風も強い予報でどんなツアーになるかとドキドキしながらのツアースタートとなりました。

初日は稚内空港で合流後、サロベツ湿原周辺でバードウォッチングです。まず最初に訪れたのは幌延ビジターセンター、通称「下サロベツ」と呼ばれる場所です。

 

ノビタキ
ノビタキ(オス)

木道を歩くとすぐに出会えたのは、北海道を代表する草原性の夏鳥の一種ノビタキです。営巣の準備をしているようで、オスメスがせわしなく飛び交っています。真っ黒で胸のオレンジ色が目立つオスのノビタキに、一気にテンションが上ります。何度もノビタキに足止めをされながらゆっくり歩いていくと、今後は林から美しい囀りが。ノゴマです。一瞬だけ美しい赤い喉を見せてくれましたがすぐにどこかへ行ってしまいました。また利尻、礼文で出会えることに期待です。

その後はレモンイエローのセキレイ、ツメナガセキレイも姿を現してくれました。最初はかなり遠い距離でしたが、帰り際には目の前の低灌木にとまり、しっかりと爪の長いところまで見せてくれたり、一瞬ですがメスも姿が見れたりと楽しませてくれました。

ツメナガセキレイ
姿を見せてくれたツメナガセキレイ

その後、初日の本命であるサロベツ湿原に向かいます。道中で見られた利尻島の景色は、天から光が差し込み幻想的な風景でした。

利尻島
幻想的な利尻島の風景

サロベツ湿原では、時期が少し早いですがシマアオジが一番の目玉、その他にもオオジシギやチュウヒの観察を狙います。木道を歩き探しますが、この日の気温が低かったせいか鳥の活性が低く、全く姿が見えません。やっと見られたノビタキを利尻島背景で観察します。

ノビタキ
ノビタキ(オス)

シマアオジも渡ってきていないようで観察できませんでしたが、木道が終わる直前に上空から「ジュ~ビヤク!ジュービャク!ブブブブブ!」の音が!オオジシギです。上空で2羽がディスプレイフライトを始めたようで、写真に撮るのは難しかったですが、素敵な求愛行動を観察できました。その後も目の前の湿原をV字飛行する姿が。

チュウヒ
チュウヒ(オス)

チュウヒのオスです。すぐに木の陰に消えていってしまいましたが、サロベツ湿原を代表する草原の鳥たちに出会うことができました。

 

2日目はあいにくの雨ですがフェリーに乗り、一路礼文島へ向かいます。途中の航路ではアカエリヒレアシシギの群れに何度も出会い、中にはハイイロヒレアシシギの綺麗な個体も混ざっていました。

アカエリヒレアシシギ・ハイイロヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギとハイイロヒレアシシギ

観察中突如ぴょんぴょんと跳ねる生き物の姿が。写真を撮るとキタオットセイです。合計で15頭以上いたでしょうか。とても楽しませてくれました。

キタオットセイ
キタオットセイ

礼文島に到着後は北部で探していきます。あいにく島の上部は霧の中。海岸線を中心に探します。途中の海岸にはシノリガモやウミアイサが見られ、じっくりと観察することができました。

シノリガモ
シノリガモ

旧礼文空港にはガンの仲間、亜種オオヒシクイが4羽採餌しています。ここからどこまで渡っていくのでしょう。

北部の桜の名所へ行こうと向かう途中には、上空に大きなシルエットが。オジロワシかな?と双眼鏡を覗くと、この時期には珍しいオオワシの若鳥でした。この鳥がこの時期に見られるチャンスがあるのも、サハリンに近い礼文島ならではです。

オオワシ
オオワシの若鳥

その後は霧が濃く鳥が見えないため撤退、花の名所として特に有名な礼文島の高山植物を見るため高山植物センターへ。

カワラヒワ
カワラヒワ

花を見ていると、お客様から「あれヒメウ?」の声が。
ふと上を見ると、何故かマナヅルが飛んでいます。予期しない場所で予期しない鳥に出会ったため、全員が写真も撮ることができず、ただ呆然と眺めていました。

イワツバメ
道中にいたツバメ

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今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!