ヒマラヤハゲワシ Himalayan griffon vulture (チトラル・ゴル国立公園)

パキスタン北部、カイバル・パクトゥンクワ州チトラル・ゴル国立公園のヒマラヤハゲワシです。

7,750ヘクタールのチトラル・ゴル国立公園には3つの深い谷があり、ハゲワシ類の観察には絶好の場所。マーコールの観察のために訪れたのですが、「崖から落ちて死んだマーコールにハゲワシたちが集まっているので見に行かないか」と誘われ、道なき山の斜面を歩き谷を見渡す断崖へ向かいました。

死んだマーコールは見えませんでしたが、谷を飛翔するヒマラヤハゲワシ、クロハゲワシ、そしてヒゲワシやイヌワシの姿が。しかもアイレベルでの飛翔もあり、たまらない光景でした。

 

ヒマラヤハゲワシ Himalayan griffon vulture ( Himalayan vulture) です。大ヒマラヤ山脈と隣接するチベット高原、パミール高原に生息するハゲワシで、パキスタンでは北部山岳地帯で見ることができます。

翼を広げると3mにもなる大きなハゲワシで、かつてはパキスタン北部で広く見られたそうですが、パキスタン中南部に生息するベンガルハゲワシと同様で、獣医薬ジクロフェナクに汚染された家畜の死肉を食べたことにより、その数が減ったと言われています。(※2006年にジクロフェナクは南アジアの国全域で使用禁止され、個体数の回復が期待されています)

 

ヒマラヤハゲワシの成鳥です。若鳥は首毛も含め全体が黒っぽい茶色です。

 

断崖のヒマラヤハゲワシとクロハゲワシ Cinereous Vulture。

 

この日、少なくとも4羽のヒマラヤハゲワシ、1羽のクロハゲワシ、複数のカラス(おそらくワタリガラス)が1頭のマーコールに集まっていました。この死んだマーコール、国立公園のレンジャーの話によるとユキヒョウやオオカミに襲われたのではなく、野犬の群れに追いこまれて崖から落ちて死んだといいます。

確かに、マーコールが一斉に走っているとその向こうに野犬の姿がありました。もしそれがユキヒョウだったら、夢のような光景なのですが。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Dec 2020, Chitral Gol National Park, Chitral, Khyber Pakhtunkhwa