バハイ教の礼拝堂ロータス・テンプル

ナマステ!西遊インディアです。
先日、南デリーにあるロータス・テンプルを訪れてみました。バハイ教という、イスラム系一派のバブ教から発展した新宗教の礼拝堂です。
その名のとおり蓮の花の形をした建築が特徴的で、このインパクトのあるビジュアルに、ガイドブックなどで見覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ロータス・テンプル

「ロータス寺院」「バハーイー寺院」などともよばれますが、正式名称は「Bahá’í House of Worship」といい、デリーメトロのOkhla NSIC駅から徒歩5分ほどの場所にあります。今回は土曜日のお昼に訪問。近くにはカーリー女神を祀ったカルカジ・マンディルというヒンドゥー教寺院があり、参拝する人で行列ができていました。

入口付近はオートリキシャがたくさんいるので、帰りはリキシャも便利です。女性ドライバーの電動オートもありました

– バハイ教とは

1844年成立、イランでバハー・ウッラー(バハ・オラとも)によってひらかれた宗教。国連登録NGO機関として、教育や女性の職業訓練の支援など国際的に活動している団体でもあります。「人類の平和と統一」「宗教と科学の調和」「男女平等」などを原則とし、特定の神様や教義を押し付けるのではなく、異なる信仰や文化を尊重する姿勢を大切にしています。

 

デリーのロータス・テンプルも、「すべての人が信仰・国籍・カースト・性別・民族にかかわらず、並んで祈りを捧げることができる場所」とされています。

実際、リキシャやタクシーのドライバーさん、ガイドさんに「ロータス・テンプルはバハイ教の寺院?」と聞いても、「All religions(すべての宗教)だよ」と答えが返ってくるほど。「誰でも皆がお祈りしてよい場所」という認識が浸透しているようでした。

 

デリーだとわかるアイコニックな場所、ということで観光スポットのように訪れる人も多く、ヒンドゥー教徒と見受けられる人々も寺院を訪れていました。

みんな家族や友達同士で写真を撮り合っていました

– インドとの関係

バハイ教はイラン発祥ですが、インドとの結びつきも深い宗教です。誕生した当初、バブ教(バハイ教の前身)の信者の一部はインドから来ていたため、早くから教義がインド各地に広まったようです。

1872年(明治5年)には、ペルシャのバブ教信者ジャマル・エフェンディがインドを巡り、バハー・ウッラーの教えを広めました。藩王の王族から庶民まで、カーストや宗教を問わず多くの人と交流をもったことで、多様なインド社会でもバハイ教の価値観が受け入れられていきました。20世紀の初頭にはムンバイやデリーにバハイ教徒のコミュニティができ、1923年にはインド全体の統括組織も設立されました。

– 建築の特徴

1986年に完成したロータス・テンプルは、各地にあるバハイ教の礼拝堂の中でも、建築がユニークかつ美しいことで知られています。

設計はイラン出身の建築家ファリブルズ・サバ氏。インド各地の宗教建築を視察した際に、異なる宗教であっても共通して蓮の花が神聖視されていることに注目しました。そこに着想を得て、バハイ教の理念である「純粋さ・シンプルさ・清らかさ」の表現として、開花する蓮の花を模したデザインを採用したのだそうです。

 

建物外部は、27枚(9枚×3層)の花びらを模したパネルで構成され、外側は白大理石で覆われています。大理石は合わせて10,000平方メートル分(サッカーコート1面半くらい)、ギリシャで採掘し、イタリアで加工されたものだそう。礼拝堂を囲む9つのプールは蓮の葉を表現しており、デザイン性だけでなく、夏場には建物を自然に冷却する効果もあるそうです。

礼拝堂の内部はドーム構造になっており、花びらの間から自然光が差し込む設計。一度に最大1300名を収容できます。

礼拝堂を囲むプール

– 見学してきました!

Okhla NSIC駅から徒歩約5分、入口ゲートから整備された遊歩道を流れに沿って歩くと、蓮の花のような建物が見えてきます。

礼拝堂の手前右側に半地下のような建物があり、インフォメーションセンターになっています。ロータス・テンプルの構造がわかるジオラマ、バハイ教の教義や歴史を解説するパネル、海外にある礼拝堂の写真などを展示。ボリュームはコンパクトなので、ぐるっと見て回って10~15分ほどでした。
撮影禁止のため写真はありませんが、日本語を含む多言語のパンフレットが置かれており、書籍の販売コーナーもありました。

日本語リーフレットと引用句ブック

ブックには展示の引用句が

流れに沿って階段をのぼり、ぐるっと礼拝堂の入口まで進んでいきます。途中で靴を脱ぐところがあるので、無料で借りられる靴袋に入れて持ち歩きます。よく掃除されているのか、そこまで靴下は汚れませんでした。

 

礼拝堂の内部は、入場者数を制限しながら見学者に開放している方式です。入口に一定の人数が集まるまで待ち、簡単な説明があったのち、中を自由に見学できます。入場前の説明は基本はヒンディー語ですが、必要に応じて英語でも説明してくれます。

 

堂内では写真撮影や私語は禁止。静かな空間で椅子に座って、思い思いにお祈りや瞑想をすることができます。

今回は土曜日のお昼に訪れましたが、1日4回行われるという祈祷の時間を外していたためか、比較的空いていて落ち着いた雰囲気でした。興味のある方は、祈祷の時間に合わせて見学することもできるそうです。

 

インフォメーションセンターと礼拝堂、両方を見学して、滞在時間は全体で40分ほどでした。礼拝堂の中に入らず、外観だけ見学することもできます。個人的には、先にインフォメーションセンターで情報を知ってから、礼拝堂の見学をするのがおすすめです!

 

■基本情報メモ
・開館時間:8:30〜18:00(4月〜9月)/8:30〜17:00(10月〜3月)
・休館日:月曜日
・祈祷の時間:10:00、12:00、15:00、17:00(各回約15分)
・入場無料
・アクセス:デリーメトロ・マゼンタ線「Okhla NSIC」駅より徒歩約5分

 

 

※寺院の情報は2025年6月訪問時のものです。

参考:Bahá’í House of Worship公式サイト

 

Photo & Text: Kondo

 


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デリーで会えるジャガンナート神

寺院に祀られたジャガンナート三神

ナマステ!西遊インディアです。

今年も、オリッサ州プリーで開催されるヒンドゥー教のお祭りラタ・ヤートラ(Ratha Yatra)の日が近づいてきました。
今年の開催日は2025年6月27日。ラタ・ヤートラは、クリシュナ神の化身であるジャガンナート神に捧げるお祭りで、毎年、インドの太陰暦におけるアーシャーダ月(現代の6〜7月)のうち、シュクラ・パクシャという新月から満月へと月が満ちる期間に盛大に祝われます!

巨大な山車に乗ったジャガンナート神と、その兄・妹の神様の像が、プリーのジャガンナート寺院から町を練り歩き、インドでも最も賑やかで有名な行事のひとつ。
そのお祭りにちなんで、前回紹介したホーズ・カース(Hauz Khas)遺跡と同じエリアにあるジャガンナート寺院(Jagannath Mandir)を訪れた際の様子をまとめてみました!

 

ジャガンナート寺院の入口

オリッサ州の伝統的な建築様式を取り入れた、白い塔門が美しい寺院。寺院上部のシカラ(塔)は漆喰仕上げの彫刻で飾られていて、層状に積み重ねられたトウモロコシのようなフォルムと渦巻き状の形は、かつてオリッサで栄えた王国カリンガの古典様式が感じられるものです。
入口には、寺院を護る象に乗ったシンハ(獅子)の像が立ち、門の上部には花飾りや鈴が吊るされていて、お祭りの日にはさらに華やかに装飾されるそうです。

 

ジャガンナート三兄妹

寺院の内部には、左から兄のバラバドラ(バララーマ)、妹のスバドラー、ジャガンナート神の三神像が並び、きらびやかな装飾とともに祀られています。

去年の7月に訪れたときは日曜の13時頃。はじめは扉が閉まっていましたが、ちょうどお昼のプラサード(お供物)を捧げるダルシャン(ご神体の拝観)の時間になったようで、神像を拝むことができました。

 

ご神体を拝む人々でぎゅうぎゅうです

寺院の中はたくさんの参拝者で賑わっていました。
現地の方に聞くと、1日に数回ダルシャンの時間が設けられており、それ以外の時間帯は扉が閉じられているそうです。

 

そもそも、ジャガンナート神(Jagannath)とはどんな神様かというと、「宇宙の主」「世界の守護者」という意味をもつ、ヒンドゥー教の神様のうちのひとつ。
もともとはオリッサ地方で信仰されていた土着の神様でしたが、ヒンドゥー教にとりこまれ、ヴィシュヌ神の化身であるクリシュナ神と同一視され信仰されています。

ジャガンナート寺院(プリー/オリッサ州)

プリーのジャガンナート寺院は、ヒンドゥー教における四大巡礼地「チャール・ダーム(Char Dham)」のひとつに数えられています。
ちなみに他の3つは、北のバドリナート、南のラーメーシュワラム、西のドワルカです。

 

オリッサ州ブバネーシュワルに祭られているインドセンダンの木を塗装したジャガンナートの像 Krupasindhu Muduli, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ジャガンナート神の特徴はなんといっても、そのユニークなビジュアルです!
丸い大きな目と丸太の柱のような体は、他のヒンドゥーの神々とはまったく違うもので、一度見たら忘れられないインパクト(日本人からすると、キャラクターのような親しみやすい雰囲気も?)があります。

 

このジャガンナート神の独特な姿には、ある伝説が残されています。
ある時、クリシュナ神の遺骨を納めた木製の像を作るため、オディシャの王が職人ヴィシュヴァカルマンに依頼しましたが、彼が依頼を受ける条件として「完成まで絶対にのぞかないこと」という約束をしました。しかし、王(または王妃)は、作るのを失敗していないか、好奇心に負けてのぞいてしまいます。すると職人は姿を消し、未完成のままの像が残っていた…というお話です。
現在のジャガンナート神の像に手足がないのは、この伝説に由来しているともいわれています。

とはいえ、この話は後から作られたという説もあり、もともとはこの地域で古くから信仰されてきた土着神であったとも考えられています。

 

ラタ・ヤートラ当日は、プリーの様子が毎年ライブ配信されています。
こちらは2024年の配信ですが、山車を曳く人々の熱気(と、ものすごい数の人々!)が画面越しにも伝わってきます!なんでも、この山車にひかれて亡くなると、ヴィシュヌの天国ヴァイクンタへ行けるといい、昔は山車の前にとびこむ人もいたそうです。

今年もおそらく同様の配信があると思いますので、ご興味のある方はチェックしてみるとおもしろいかもしれません。

 

デリーのジャガンナート寺院でも、ラタ・ヤートラの当日には山車を曳くお祭りが催されるとのこと。
オリッサ州からデリーに移り住んだ人々によって支えられているそうで、ラタ・ヤートラの雰囲気を感じられる場となっています。

 

デリーにいながらにしてオリッサの文化にふれることができる、ホーズ・カースのジャガンナート寺院。
ラタ・ヤートラの時期にあわせて訪れてみるのもおすすめです!

 

<おまけ>
デリーの手工芸品マーケット「Dilli Haat」のオリッサ州のブースで、ミニサイズのジャガンナート神三兄妹の置物を見つけました。デリーでもこうした民芸品を通じて、ジャガンナート神に出会えるのもなんだかうれしいですね!

 

※寺院の情報は2024年7月訪問時のものです。

参考:Jagannath Mandir Hauz Khas公式サイト、INDIA TODAY、「インド神話入門」(長谷川明)など

 

Photo & Text: Kondo

 


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デリーに残る13世紀の遺跡 ホーズ・カース

マドラサ(神学校)の北塔(ホーズ・カース)

ナマステ!西遊インディアです。
 
歴代イスラーム王朝の都が置かれた歴史から、多くの遺跡が存在するデリー。
デリーにある3つの世界遺産はすべてイスラーム王朝時代に築かれたものであり、その歴史を物語っています。
今回は、世界遺産でないためフィーチャーされることが少ないながらも、貴重な13世紀の遺構が残る「ホーズ・カース」遺跡群をご紹介します。
 
オールド・デリーの南、サウスデリーに残る13世紀の遺跡群ホーズ・カース(Hauz Khas Complex/हौज़ खास)。カタカナではハウズ・カース、ハウツ・カズのように表記されることも多いですが、ホーズ・カースが現地の発音に近い気がします。
入場料は外国人料金250ルピーで、通常8:00~19:00に見学できます。デリーメトロのマゼンタ&イエロー線「Hauz Khas」駅からオートリキシャで10分くらい。周辺は高級ブティックやカフェ、レストランが立ち並ぶおしゃれなショッピングエリアとしても定着しています。
 
車で15分の場所には、同じくデリー=スルターン朝の13世紀に建てられた世界遺産の塔、クトゥブ・ミーナールがあります。

クトゥブ・ミーナール

クトゥブ・ミーナールは、デリー=スルターン朝のなかでも、1206年に始まる奴隷王朝の創始者クトゥブッディーン・アイバクが建てたものですが、ホーズ・カースはその後の1290年から始まるハルジー朝時代に建てられたもの。
ハルジー朝第3代スルターンのアラーウッディーン・ハルジー(1296-1316)が貯水池として造営しました。
 
ホーズ・カースとは、ペルシャ語由来でTank(貯水槽、もしくは湖)を表す「Hauz」と、Royal(王室の)を意味する「Khas」を合わせた意味。“王室の貯水湖”のようなイメージでしょうか。
貯水湖は最大で50ヘクタール(東京ドーム約10.5個分)もの広さに及んだそう。
貯水湖

敷地内には案内板があり、わかりやすいです

ホーズ・カースはハルジー朝の都城址シリの一部で、大きな貯水池はシリの住民に水を供給するために建設されたと考えられています。乾季の間、王族たちがお城で必要な水を十分に確保できるほどの規模だったといいます。
 
敷地内は柵がないところも多く、壁面を近くで見たり、回廊部分に入ってみたり、裏にまわったりと、自由に見学できます。(市民やカップルの憩いの場のような雰囲気もあるので、物陰に入るとたまに人がいてびっくりすることも…!)
敷地内は柵がないところもあり、自由に見学できます

市民の憩いの場のような雰囲気

マドラサの回廊

貯水池の南東側にある遺跡群のエリアには、後のトゥグルク朝スルターンであるフィールーズ・シャー・トゥグルク(1351-1388)が14世紀につくったマドラサ(神学校)や、要塞、モスク、墓廟、居住区などがあります。
 
3つのドームがつながった珍しい造りのパビリオン

庭園にあるドーム構造をもつパビリオン(Assembly Hall)は、さまざまな形とサイズがあり用途は不明ですが、碑文によるとお墓であると推測されています。ただ、現在はお墓の痕跡はありません。その大きさと形状から、集会場のような役割があったとも考えられています。

フィールーズ・シャーの墓の南側にあるパビリオン

フィールーズ・シャーの墓の南側向かいにある、8本の柱を持つ小さなチャトリ(インド・イスラーム様式の建築で、ドームが載った東屋のような建物)も印象的です。
 
このホーズ・カース遺跡群のなかでもっとも重要とされる建物は、フィールーズ・シャーの墓廟です。
南側の入口の碑文には、1508年にローディー朝のシカンダル・ローディーの命令で建物の修理が行われたことが残されています。
フィールーズ・シャーの墓廟

トゥグルク朝3代目のスルターンとして1388年まで統治したフィールーズ・シャーは、内政を重視した行政改革を行い、人々から人気がある王様だったそうです。妻はヒンドゥー教徒の女性、信頼する宰相もヒンドゥー教からの改宗者だったそうで、ヒンドゥー教徒に一定の理解を示した宥和政策をとっていました。また、都市・灌漑施設などのインフラ拡充、税制改革、罪人に対しても残酷な処罰を廃止したりして、イスラーム政権の安定を図りました。
 
フィールーズ・シャーが亡くなったのは1388年でしたが、1354年の生前に、マドラサと同時に自分の墓廟を建てました。
大きさは13.5m×13.5m、マドラサの北棟・西棟の接続点にあり、ドームの頂上は建物全体で一番高い場所になっています。部屋の中央にあるお墓はフィールーズ・シャーのもので、他の大理石のお墓はおそらく彼の息子と孫のものとみられます。
 
通常ツアーで訪問することは少ない場所ですが、見応えは十分。クトゥブ・ミーナールの見学やホーズ・カース・ヴィレッジでのショッピングと合わせて、日差しの強くない日に訪れてみるのもおすすめです!

マドラサの遺構

 
※入場料などの情報は、2024年7月訪問時のものです。
 
Photo & Text: Kondo
 


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インドの新幹線 Vande Bharat Expressに乗ってみた!

Photo by Harshul12345 – Vande Bharat Express on track around Mumbai.(2023) / CC BY 4.0

ナマステ!西遊インディアです。
今回は、インド版新幹線「Vande Bharat Express」(ヴァンディ・バーラト・エクスプレス)の乗車体験を記事にまとめてみました。

インドの新幹線 Vande Bharat Express

インド国鉄が運営する高速鉄道。モディ首相が就任した2014年から掲げる製造業振興の取り組み「Make in India」の一環として、2019年2月15日に、デリー~バラナシの区間で運転開始されました。

運用路線は2024年2月現在で41路線。今後も30路線近くの新設が計画されており、とくに、ムンバイとアーメダバードを結ぶ総延長508kmの路線は、日本の新幹線方式と同じ専用線方式(在来旅客鉄道と軌道を完全に分離するもの)で建設中です(2024年2月現在)。

海外で日本の新幹線方式が採用されるのは、2007年に開業した台湾(台灣高鐵)につづき、インドが2か国目。
デリーを走るメトロの建設にも、計画段階から日本が資金・技術面で支援しており、インドのインフラ整備には日本が大きく関わっています。

なかでもVande Bharat Expressはハード面だけでなく、サービス面でも日本の新幹線方式を取り入れているとのこと。「7分間の奇跡」として知られる日本の新幹線の清掃体制に着想を得た「14分間の奇跡」という取り組みで、ターミナル駅でスタッフが連携し、スピーディーかつ効率よく車内清掃を行っているそうです。

チャンディーガル~デリー区間に乗ってみました

今回乗車したチャンディーガル~デリーの区間は、4番目に運行開始されたNo. 22447 / 22448 New Delhi – Amb Andaura(ヒマーチャルプラデシュ)路線の一部。約270kmの距離を3時間ほどで走ります。休暇でチャンディーガル観光に行ってきたので、デリーへ戻る交通手段としてVande Bharat Expressを利用してみました。
※ちなみにインドでは、カメラによる駅や空港の撮影は防衛上の理由で原則禁止されています。インド鉄道省の規定(鉄道省Webサイト)では、旅行者が思い出にスマホで撮る程度であれば本来許可をとる必要はないとしていますが、現場の係員には問答無用で注意されたりトラブルになる可能性もあります。そのため、世界遺産など観光地化された鉄道以外の撮影は控えた方が無難です。文中の写真も係員さんに許可をもらい、一般の観光客として見られる場所だけをスマホで撮ったものです。
 
1.チケット
チケットは事前にインド国鉄(IRCTC)のWebサイトで予約購入します。
日時、区間、座席クラス、食事などのオプションを選択し、決済するとEチケットがメールで届くので、乗車当日はそれをプリントアウトするかスマホにPDFを保存して持参します。
座席は椅子席タイプのEC、CCの2種類。今回はせっかくなので、ちょっと良い席のECクラスに乗車してみました。ECクラスは、日本でいうところのグリーン車といった感じでしょうか。座席の写真は、後述の車内設備の部分に載せていますのでそちらをご覧ください。
 
2.乗車
現在、チャンディーガルの鉄道駅は再開発中。大きな駅でなくても、焦らず自分の列車がくるプラットホームがどこなのか確認できるよう、余裕をもって出発時刻の30分前には到着しておくと安心です。

チャンディーガル鉄道駅の西側入口

入ってすぐ左手に電光掲示板とエスカレーターがあります。電光掲示板に、列車番号、列車が駅に到着する見込み時刻、プラットホーム番号が表示されるので、確認してエスカレーターで上の階へ。プラットホームへの連絡橋に出るので、そこから自分の列車が来るホームへと降ります。
今回は、エスカレーターを上がってすぐ右のプラットホームNo.1。階段を降りてホームに行きます。構内ではホーム番号のアナウンスも流れていますが、基本はヒンディー語なので、聞き取りはなかなか難易度が高め…!なので、エスカレーターを上がる前に電光掲示板をチェックしていくのが確実です。
 
プラットホームの上部に設置されている小さな電光掲示板に、列車番号とコーチ番号が表示されるので、自分のコーチ番号の場所で列車を待ちます。今回は中央がCCクラス、階段を降りて右奥がECクラスのE1、E2コーチでした。
駅のホーム。天井についている赤い電光掲示板にコーチ番号が表示されます

チャンディーガル駅

今回の路線は、チャンディーガル駅 15:32発 – ニューデリー駅 18:25着。列車は15:30頃に到着しました。インドの鉄道は大幅に遅れることもあるなかで、ほぼ定刻どおりの到着にちょっぴり感動です!

到着したVande Bharat。かっこいいです!色合いもどこか日本の新幹線を思い出します

乗降口は各コーチの前後に一つずつ。席番号は車内の窓の上に書いてあります。頭上の荷物棚はあっという間に埋まるので、置きたい場合は頑張って早く乗りましょう!棚に置けなくてもECクラスは足元のスペースが広いので、機内持ち込みサイズのスーツケースくらいは問題なく置くことができます。

列車番号、コーチ番号、出発駅~行先が表示されます

窓の上にあるシート番号の表示
お水とフットレストもあります!

3.車内
ECクラスの座席配置は2席-2席、シートはベロアのような手触りのいい素材で、リクライニングできます。足元のスペースはゆったりしていて、通路も十分な幅があります。
CCクラスは3席-2席。進行方向に対して前向きと後ろ向きの席があり、足元と通路のスペースはECよりも少し狭め。シートの材質も違います。
ですが、両クラスともに空調完備・車内スタッフも配備されているので、荷物が多くなければ、CCクラスでも問題なく快適に過ごせそうです。

ECクラス

CCクラス

列車は駅に5~10分ほど停車した後、15:40頃に出発。
出発してから15分くらいすると、車両スタッフさんが席を巡回してチケットの確認にきます。名前を聞かれるだけの場合もありますが、念のためチケットをすぐに見せられるよう準備しておくと安心です。
 
その後しばらくすると車内食が配られました。食事は、チケットを予約する時にオプションで選択できます。メニューは時間帯や路線によって異なるようですが、今回はベジのメニューのみだったので、そちらを予約してみました。事前に予約をしていなくても、追加料金を払えば車内で購入できるようです。
ジュース、カチョリ、ナッツとスナック、チーズのサンドイッチ、お手拭きとサニタイザーも

チャイ用のお湯とカップは後から持ってきてくれます
プレートに敷かれた紙もVande Bharat仕様

トイレは各コーチとの連結部にあります。和式のようにしゃがむインド式と洋式があり、洋式には備え付けのトイレットペーパーがありました。
16:15頃、アンバラ・カント駅に停車。この路線では、終点のニューデリーまでに停車するのはこの1駅のみです。到着する少し前に、英語とヒンディー語でアナウンスが入ります。

洋式トイレ
アンバラ・カント駅

しばらく停車した後、駅を出発。この後はノンストップでひたすらデリーへと走ります。はじめは幹線道路沿いを走り、しばらくすると景色は郊外の住宅地に変わります。じょじょに田園地帯や、小さな寺院、ローカルなマーケットなどに移り代わり、車窓には素朴なインドの風景が映ります。

車内の温度は、空調が効きすぎて寒いということもなく快適でした。でも少し冷える感じはするので、カーディガンやパーカーなど羽織れるものを持参するのがおすすめです。
走行中の揺れは少なく、走行音も日本の新幹線とそこまで大きく変わらない印象です(楽しそうな家族のおしゃべり声が絶えないのは、日本と違ってインドらしいところです)。
 
4.終点のニューデリー駅に到着
列車は18:40頃、終点のニューデリー駅に到着。18:25着予定から約15分遅れですが、ほぼ定刻通りの到着です!乗車した2月の日没は18:30前だったので、到着する頃にはすっかり夜に。デリーに到着後、列車は折り返しで別の行先に変わりました。すぐに次の乗客が乗車してくるので、忘れ物のないよう速やかに列車を降ります。

ニューデリー駅

今回はじめてVande Bharatを利用してみて、その快適さとスケジュールの正確さには驚きでした!

日数が限られた旅行のなかで、比較的確実性が高い移動手段として、選択肢のひとつになると思います。
 
昔ながらの長距離寝台列車で移動する旅は情緒があって良いですが、発展いちじるしいインドの「今」を感じられるひとつの体験として、Vande Bharatを利用してみるのもおもしろいかもしれません。
 
Photo & Text: Kondo
 


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