夏の小笠原 ゆったり探鳥入門スペシャル

report by 吉成才丈 2023年9月1日~6日

 

1日目
おがさわら丸が定刻で竹芝桟橋を出港するとウミネコが舞い始め、アクアライン周辺からはオオミズナギドリも出現。他に東京湾内ではカルガモやアジサシ、アオサギ、ダイサギなども観察できました。

ウミネコ
ウミネコ

 

東京湾から外洋にでると、アナドリやアカエリヒレアシシギ、ハイイロヒレアシシギ、シロハラトウゾクカモメ、アカアシカツオドリなども出現し、初日にしてはまずまずの成果がありました。船上での探鳥が初めての方もいましたので初日から無理はせず、皆さんのペースでお楽しみ頂きました。

オオミズナギドリ
オオミズナギドリ

 

2日目
デッキは日の出の30分ほど前に解放されるため、まだ薄暗いうちからデッキにでて観察を開始。心配された台風は熱帯低気圧に変わり、さらに予想ルートからも遠ざかり、予想外に静かな海でした。
そんななか、オナガミズナギドリやアナドリがポツポツと出始め、いよいよ南の海域に入ってきた印象が強まります。

オナガミズナギドリ
オナガミズナギドリ

 

完全に明るくなる前にアカアシカツオドリが一瞬横切り、シロハラミズナギドリやクロトウゾクカモメなども出現。
カツオドリは船に付き、船の周囲を飛翔しながらトビウオを狙います。海に飛び込むカツオドリを狙う方でデッキの動きも活発になり、恒例のカツオドリ祭りも盛況でした。

父島の二見港で下船すると慌ただしくははじま丸に乗り換え、ははじま丸からの海鳥観察を開始。オナガミズナギドリやアナドリ、クロアジサシなどが出現しますが、船が小さいため、おがさわら丸からよりも近くで観察できました。
母島が近づくと船に付くカツオドリが増え、カツオドリ祭り再開。皆さん、手を伸ばせば届きそうなほど接近するカツオドリに大興奮していました。

母島の港に着くと、迎えに来ていた宿の車に荷物を預け、母島の中心部を散策しながら宿に向かいました。もうすぐ宿というところで、目の前をオガサワラノスリが横切りました。もしかしたら..と思って1ブロック先まで進んで覗き込むと、期待通りに電柱にとまっていてくれました。光線状態や背景も考えて周囲を見回すと、我々がとまる宿の玄関がベストポジションであることが判明。さらに、皆さんの部屋からなら更に条件がよくなることがわかり、部屋からも撮影して頂きました。

オガサワラノスリ
オガサワラノスリ

 

一息ついたのちに専用車に迎えに来てもらい、この日は観察ポイント数か所を軽く巡り、ハハジマメグロやアカガシラカラスバトなどを探索。
そう、この日のうちにハハジマメグロとアカガシラカラスバトが見られてしまうと気が楽になるのですが、ハハジマメグロは橋の上から目線でちょろちょろしているところをゲット。

皆さんでメグロを撮影していると、同じ木の枝に黒っぽい大き目の鳥がとまっているのを発見。なんと、アカガシラカラスバトが橋から見下ろす枝にとまっていました。アカガシラカラスバトはずいぶん見ましたが、地上で採餌しているところを除くと、5mも見下ろす枝にとまっているのを見たのは初めてで驚かされました。

ハハジマメグロ
ハハジマメグロ(ケンスケ様 撮影)
アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト(ケンスケ様 撮影)

3日目
夜明け前の薄暗い時間に宿の前に集合すると、オガサワラオオコウモリが上空を飛翔していきました。
この日も朝食前の早朝、午前、午後と専用車で島を巡り、森や耕作地、港周辺などをじっくり観察。ハハジマメグロやオガサワラノスリ、キョウジョシギ、ムナグロなども観察しましたが、アカガシラカラスバトには出会えませんでした。

また、港にはカツオドリが飛び回っていたり建物の屋根にとまっていたりするなど、本州ではあまり見られない光景もお楽しみいただきました。こんな光景が落ち着いてみられるのも、母島2泊というのんびりプランのおかげですね。

カツオドリ
カツオドリ

 

4日目
この日も朝食前の薄暗い時間、朝食後の午前中に専用車で島を巡り、ハハジマメグロを堪能していただきました。
そして、午後のははじま丸で父島に移動。船上からの観察では、またまたカツオドリ祭りが開催されました。

カツオドリ
カツオドリ

 

父島では、早めの夕食後にナイトウォッチングに出発。地元ガイドさんの案内でオガサワラオオコウモリを探すと、カラスのような大きな姿を何頭も確認できましたが、あの大きさは、初めてご覧になった方は驚きますよね。

オガサワラオオコウモリ
オガサワラオオコウモリ

 

コウモリ観察の後は、光るキノコ<グリーンペペ>を求めて山に移動しました。父島のガイドさんが環境を整備したという場所でライトを消すと、真っ暗闇の中に星空のような光景が浮かび上がりました。このきのこは、ある程度雨が降らないと光らないという事でしたが、幸運にも緑色に光る光景を見ることができました。

そして驚くことに、周囲は真っ暗闇なのに、わずかな光しか放たないグリーンペペがミラーレスカメラで撮影できてしまったのです。もちろん、ISOをかなり上げましたが、暗闇の中で小さな光るキノコが、それも手持ちで撮影できるとは思いませんでした。

グリーンペペ
グリーンペペ

 

5日目
今年は宿の周辺にアカガシラカラスバトが降りないとのことで、早朝の探鳥はやめ、予定より早めに南島に渡り、帰った後に集落近くを散策するプランに変更。しかし強風で予定していた南島の船が欠航になったため、急遽、専用車で島内を巡ることになりました。

まず、グラウンドでシギ・チドリを探すと、数羽のムナグロを発見。ムナグロをじっくり観察していると、端の方ででタカブシギも見つかりました。続いて向かった八瀬川河口ではカワセミやオガサワラノスリを観察。

ムナグロ
ムナグロ(YK様 撮影)

 

そして最後に、認定ガイドと一緒でないと入れないというアカガシラカラスバトのサンクチュアリーを訪ねました。残念ながらカラスバトには出会えませんでしたが、これまでの経緯やとりくみ、現在の状況、ハトの生態などの話を実際の現場で見聞きでき、意義深い訪問だったと思います。

眺望のよい展望台で景色を楽しんだ後に街に戻ると、周辺を少し散策して一旦解散。各自で昼食をとったのちに港で集合しておがさわら丸に乗船し、出港後の見送りを受けたあとに海鳥観察を開始。
カツオドリやアカアシカツオドリ、オナガミズナギドリ、アナドリなどを観察し、聟島列島が見えなくなるあたりまでデッキで過ごしました。

カツオドリ
カツオドリ(YK様 撮影)
アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(YK様 撮影)

 

6日目
いよいよ最終日となりましたが、海鳥観察のチャンスはまだあります。この日も、日の出前の薄暗い時間帯からデッキで観察しました。早朝の時間帯にはまだオナガミズナギドリもでていましたが、次第にオオミズナギドリが姿を見せるようになり、いつの間にかオナガミズナギドリとオオミズナギドリが入れ替わっていました。
他にアナドリなども見ながら大島沖まで進むと、ほぼ昨年と同じ位置で潜水艦が出現。浮上しながら大島方面に進む潜水艦と交差して東京湾に入るあたりで一旦観察を終了し、東京湾内は自由行動とさせて頂きました。

今年は船上から観察されるミズナギドリの種類が少なめでしたが、ツアーのタイトル通り、小笠原の固有(亜)種を含めてゆっくりお楽しみ頂けたかと思います。

 

(確認種33種)

 

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

渡り鳥の楽園・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

飛行機は20分遅れで与那国島に到着しました。春の琉球らしく(?)ぐずついた天気の中、スタート。まずは、好調のムクドリ類を抑えに久部良集落へ。到着早々、強風の中、バライロムクドリ成鳥を見ることができました。与那国島でもなかなか成鳥は見られません。しかし、ちょっと見ただけで飛んでいき、周囲を探すも見つからず。小休止を兼ねて久部良ミトへ。すると今度はヤツガシラが飛び出し、全員で観察。アマサギやシロガシラも複数いました。

ヤツガシラ(撮影:簗川)
ヤツガシラ

続いて祖納へ。集落を歩き回るも、小雨が降ってきたので退散。インドハッカを見た程度でした。田んぼでは、複数のタカブシギ、コチドリ、アマサギなどを見て、比川へと向かいました。

比川ではセイタカシギやシラサギ類の群れなどを見て、久部良へ戻りました。

セイタカシギ(撮影:簗川)
セイタカシギ

雨も上がったので集落を歩いて、バライロムクドリを探しました。ほどなく、ムクドリの群れにいるバライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを発見し、時間を掛けてじっくりと楽しみました。

ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)
ムクドリ類(撮影:浅井賢治様)

バライロムクドリの分布の西端が、今、世界中で心配されているウクライナの南東部、一躍有名になったマリウポリ辺りです。ロシアの侵攻で逃げてきたのか?と冗談にならない思いが巡りました。

バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)
バライロムクドリ(撮影:浅井賢治様)

2日目。夜明け前に出発して、祖納へ向かう林道を走りました。独特の「ファッ、ファッ……ファッ、ファッ……」というオオクイナの声を聞くことができました。道路に降りていたヤマシギも何度か飛びました。ヒヨドリの亜種タイワンヒヨドリやメジロの亜種リュウキュウメジロが鳴き始め、騒がしくなってきたところで祖納到着です。

 

まずは田んぼを見ました。早速、ツバメチドリを発見。疲れていたのか、じっとしています。何とも言えない独特の顔。コチドリ、タカブシギもいました。ムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイが飛んできました。

ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)
ツバメチドリ(撮影:浅井賢治様)

朝食後、久部良集落と久部良バリを回りました。久部良バリでムナグロの群れとツメナガセキレイを見て、集落ではムクドリの群れにバライロムクドリ、カラムクドリも発見。まだいてくれたようです。

ムナグロ(撮影:浅井賢治様)
ムナグロ(撮影:浅井賢治様)

また、やたら人馴れしているアカモズの亜種シマアカモズをじっくりと観察しました。

アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)
アカモズの亜種シマアカモズ(撮影:浅井賢治様)

港でハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、そして亜種タイワンハクセキレイを見ていたら、いつの間にかヤツガシラがいました!大人気のヤツガシラ、みなさん、気分も高まります。しきりに地面をつついて採餌しています。ウグイスの亜種チョウセンウグイスはさえずりのみでしたが、聞くことができました。その後は久部良ミトへ移動し、アカガシラサギ夏羽も見ることができました。

アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)
アカガシラサギ(撮影:浅井賢治様)

祖納へ行く途中、水の張った田んぼでは、たくさんのセイタカシギ、タカブシギに混じって、ツルシギとオジロトウネンがいました。川の藪ではコムシクイの地鳴きが聞こえていました。

セイタカシギ(撮影:上山功夫様)
セイタカシギ(撮影:上山功夫様)

再び祖納です。オウチュウ情報があった場所でしばらく探しましたが、出会えず。タイワンハクセキレイ、ホオジロハクセキレイ、チョウゲンボウ、インドハッカなどで楽しみました。田んぼへ移動し、オジロトウネンを観察したあと、オウチュウ発見!全員で堪能することができました。お気に入りの場所からフライング・キャッチを繰り返して虫を捕っていました。

オウチュウ(撮影:上山功夫様)
オウチュウ(撮影:上山功夫様)

続いて東崎。マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリがいましたが、じっくり見る前に飛ばれてしまい、残念。比川に行く途中、ヤツガシラ情報の場所に行くものの、こちらは出会えず。

 

比川では、普段はあまりよく見られないシロハラクイナを見ることができました。森林公園で休憩し、最後は観光で日本最西端の西崎へ行き、この日を終えました。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!