沖縄・やんばるの森に生きる固有種を撮る

Report by 戸塚学 / 2025年8月31日~9月3日

基本的にはヤンバルクイナがよく出る場所で待機をして撮影を楽しみました。夜間撮影は最後までヤンバルクイナもフクロウ類も出ないという状況にドキドキしましたが、リュウキュウオオコノハズクを皮切りに、ヤンバルクイナが樹上での寝姿が見られた後畑のフェンス上に4羽がいる姿まで見られて逆転満塁ホームランとなりました。

1日目 

今回私がドライバーを兼務するにあたり立体駐車場に車を停めなければならず、出発に少々手こずりました。道中はスムーズに移動をして途中コンビニで翌日の朝食を各自購入していただきました。一旦宿にチェックインと荷物を降ろした後すぐに出発です。予定していた場所に他のカメラマンがいたので少し早いのですが水場で待機すると時間通り同じコースでヤンバルクイナが出てくれました。みなさん初ヤンバルクイナなので大興奮でした。その後日没まで待つとペアでの出現があり超ラッキーでした。

川を渡るヤンバルクイナのペア

夕食後は翌日のナイトツアーの準備体操としてライトを使った撮影時のレクチャーをしました。レクチャー後は宿の周辺をちょっぴり探しますが、生き物との出会いはありませんでした。解散後大浴場から部屋に戻るとやたら何かの鳴き声がするのでライトを照らすとリュウキュウコノハズクです!慌ててみなさんにお知らせしようとするも大浴場での入浴中で私以外は見られませんでした・・・残念!

 

2日目

5時15分、星の煌めく中に出発です。ポイントまで山道で約30分かかるので結構大変です。ポイントに着くと夜も明け、薄明るくなった中で車のスライドドア前とリアハッチを上げた前にシートを張り、車内と車外で静かにヤンバルクイナの出るのを待ちます。だいたい5時50分から6時に出るはずと伝えるとほぼ指定した時間通りに出てくれました。エサを探し、食べながらゆっくりと歩いてくれます。

採餌するヤンバルクイナ

ここのポイントは比較的人に慣れているので近い時は3m以内で観察と撮影ができるのです。餌付けはしていないので彼らのペースで採餌と探餌を繰り返しながら移動をします。その後も2度出てくれました。この場所じつはノグチゲラもよく出る場所でこの日も出てくれたのですが・・・茂みの中ばかりで、ほんのちょっぴり姿を撮影できた人もいました。ホントウアカヒゲも囀ってはいますが姿を見せてくれないのが悔しい!アカショウビンも飛んで来て近くでさえずっているが姿は見られず、一旦8時に切り上げて宿に戻り、休憩後に宿のトレッキングコースを廻る事にしました。今年は何やら森が静かでセミがやかましくないのがさみしい。森のトンネルに入るとすぐ、リュウキュウメジロとオキナワシジュウカラが出迎えてくれました。そんな中、何やら茶色っぽいヒタキ?心当たりはホントウアカヒゲではないのでリュウキュウキビタキだと決めつけ(笑)みなさんに撮ってもらいました。あとで調べると結果は超ラッキーなリュウキュウキビタキの幼鳥でした!

リュウキュウキビタキ幼鳥

その後も進みながらオキナワキノボリトカゲ、ヤンバルヤマナメクジ、リュウキュウハグロトンボなどを撮りながら進みます。

オキナワキノボリトカゲ
リュウキュウハグロトンボ(オス)

そして出口近くの茂みからホントウアカヒゲのメスが!ゆっくりと近づきながら彼女の後について撮影を繰り返します。おかげでかなりアップ目に開けた場所でみなさん撮影をすることができました。素晴らしい!

ホントウアカヒゲ(メス)

その後はカメラを持ったまま昼食に向かいます。道の駅近くの田んぼにシギやチドリがいるはずですが・・・いない。いれば食事前と食事後で2回撮影を試みる予定だったのですが食事後は中止にしました。お昼はフードコートで各自好きなお店で好きな物を食べていただきました。その後は宿に戻り約2時間の休憩でお昼寝をしてもらいます。

15時15分に夕方の撮影に出発です。ポイントに着いたらすぐ準備してヤンバルクイナを待つと、これまた時間通りに出てくれましたが、その後があまり出てくれません。

走るヤンバルクイナ

そうこうしているとノグチゲラが出ますが、枝が邪魔で撮れない!悔しい。参加者の方から猛禽類は何がいますか?と聞かれたので、基本ミサゴとリュウキュウツミだけどリュウキュウツミはかなり厳しいね。と話していると前方の木の枝に何かがとまりました。ヒヨドリかな?と思ったがシルエットがなんか不自然?双眼鏡で覗くと・・・リュウキュウツミのオス!真赤な目が熱い!みなさんに伝え、撮ってもらいました。これは超ラッキーでした。

リュウキュウツミ(オス)

その後水場でヤンバルクイナを待ちますが結局出ませんでした。夕食を食べてすぐ夜間撮影に出発です。しかし・・・長い夜だった。いつもなら簡単に見つかるヤンバルクイナが0!折り返し地点から結構進んだ場所まで来ても0!私の焦りもピーク!そんななかでオリイオオコウモリが撮りたいというリクエストがあったので集落の公民館の近くで車から降りて探してみると・・・いた!リュウキュウオオコノハズクです!みなさんを呼び集めて「今からライトにリュウキュウオオコノハズクを入れるから、すぐ撮影をして!」伝えライトアップ。暗闇に浮かぶ茶色の塊、みなさん奇跡のリュウキュウオオコノハズクをゲットできました。

リュウキュウオオコノハズク

その後はオリイオオコウモリも撮影することができました。以前はリュウキュウオオコノハズクが繁殖をしていて比較的簡単に見られる場所でしたが営巣木が折れてからは確率が低かったのですがまさか当たるとは!その後はすぐに樹上で眠るヤンバルクイナを発見撮影することができました。

樹上で眠るヤンバルクイナ

すごいのはこれからで約100m進んだ畑のフェンスにヤンバルクイナが眠っています。これも撮ってもらい「よかったね」と話しているとフエンス上で眠っているヤンバルクイナが次々見つかり合計4羽各50~100m間隔に停まっていました。

フェンスで眠るヤンバルクイナ

私も20年以上ヤンバルクイナに関わっていますが、これは初体験でした。場所が場所だけに初めの1羽以外は撮影せず通過しました。予定よりも1時間早い終了でしたがみなさん大満足をされていました。

 

3日目

この日も5時15分に出発してポイント近くで車のスライドドアを開けて、目隠し用のシートを張り一時的に「動くブラインド」にしてポイントで待ちます。待つ事10分、まだ暗い中さっそく1羽が出現します。しかしすぐにいなくなってしまいました。ポイントでアカヒゲが出てくれることを期待しましたが、声のみ。その後待ちくたびれていると、ヤンバルクイナは音もなく現れ撮影ができました。しかしあろうことかノグチゲラも同時出現でどちらを狙うかで車内はプチパニックでしたが、結局ノグチゲラが2羽で追いかけっこをしている事と逆光側にとまるので撮影には厳しかった。アカヒゲもさえずっているのですが出てくれないのが悔しい。

ノグチゲラ・オス

8時に切り上げ宿に戻り休憩を入れたのち、この日は沢沿いの遊歩道を歩きながらノグチゲラとアカヒゲを探します。以前ここでノグチゲラが30分毎に食べに来ていたハゼノキは周りの木々に隠されただけでなく、今年は裏年で実が成っていません。その後は川に向って歩きますが、河原に着くとアカヒゲのぐぜりとさえずりが。静かに近づくとオスがいました!振り向くと誰もいません、みなさん川を眺めたり写真を撮ってる!!!何とか声をかけて呼び寄せるも時すでに遅し・・・ブッシュの奥に消えて行った後でした。悔しい。その後は来た道を戻りながら探しますが何もいません、せめてリュウキュウヤマガメは見たかったな。一旦食事に向かいますが、その前に昨日の田んぼへ。車を停めてスライドドアを開けた瞬間、レンガ色の鳥が飛び去ります・・・リュウキュウヨシゴイのオスです・・・やられた。田んぼにはセイタカシギ、ウズラシギ、タカブシギ、ヒバリシギが見えますが遠い。一旦食事に向かいあとからリベンジすることに。しかし食後は鳥たちがもっと遠く、セイタカシギ以外は見つからず断念。ゆっくりしている余裕はないのです、翌日の朝食を買って宿に戻りお昼寝タイムをとらなければ。

15時15分に夕方の部へ出発です。ヤンバルクイナは時間通りに出てくれるのですが、今年は地域のお祭りと旧盆が重なっているため人が多く、そのせいかヤンバルクイナも落ち着かないようですが、合計3回の出現でみなさん余裕をぶっこいた撮影をされていました(笑)

本日、夕食後は何もないのでみなさん、ゆっくりと休んでいただきました。

 

4日目 最終日

この日も星の煌めく5時15分に出発してポイント近くで車のスライドドアを開けて、目隠し用のシートを張り一時的に「動くブラインド」にしてポイントで待ちます。道路を通過するペアや鳴き交わすヤンバルクイナの声は響き渡るが出ない!ちょっと心配になって来ると出てきました!驚いたのはずっとエサを探し、食べながらゆっくり移動をしてくれる。なんとなんと10分以上姿を出したままだった。毎回行動が変わるのには驚かされるし、この1回の出現でしっかりと撮れたようでよかった!その後はまた何も出ない時間が過ぎて行く・・・。と参加者から出た!という声と「キョッ!」という声と黒っぽい鳥が目の前の樹に飛び込んできた、ノグチゲラだ!どうして一緒に出るのか!!!もう車内はプチパニック。ほとんど方がノグチゲラにシフトすると何とか枝が被らない場所へ移動してくれたことで撮影ができたと興奮をされていましたが、ヤンバルクイナはまだいます。いるからには撮らねばならない。この時も10分以上私たちの視界にいてくれたのでしっかりと撮影ができました。時計を見ると7時30分。8時までやる予定でしたが最終日で荷物のパッキングもあるので15分早く切り上げる事にしました。さて空港近くの三角池で最終決戦のはずが・・・潮が引きすぎていてクロツラヘラサギは不在。しかし反対の水路側にはアカアシシギ、アオアシシギ、キアシシギ、コチドリ、チュウシャクシギがいたので、それらを撮影して空港に向かい解散となりました。ご参加していただいたみなさまお疲れさまでした!

アカアシシギ(オス)

 

今回もヤンバルクイナとの遭遇&撮影ができただけでなく、リュウキュウツミ、ノグチゲラとオオコノハズクのサービスもありとても良かったのではないかと感じました。アカヒゲはメスでしたが、しっかりと撮れたし、リュウキュウキビタキの幼鳥というレアな撮影もできたので120点と言っていいでしょう!残念だったのがリュウキュウコノハズクしたがそれはまたの機会に!

 

 

撮影できた

ミサゴ・リュウキュウツミ・ヤンバルクイナ・コチドリ・アカアシシギ・アオアシシギ・タカブシギ・イソシギ・セイタカシギ・リュウキュウオオコノハズク・ノグチゲラ・リュウキュウツバメ・リュウキュウヒヨドリ・ホントウアカヒゲ・ヤマガラ・オキナワシジュウカラ・リュウキュウメジロ・オキナワキノボリトカゲ・ヤンバルヤマナメクジ・オリイオオコウモリ

 

見られた&声が聞かれた

リュウキュウヨシゴイ・ダイサギ・クロサギ・アオサギ・バン・ヒバリシギ・チュウシャクシギ・カラスバト・リュウキュウキジバト・ズアカアオバト・リュウキュウコノハズク・リュウキュウアカショウビン・カワセミ・リュウキュウコゲラ・ツバメ・リュウキュウサンショウクイ・リュウキュウヒヨドリ・イソヒヨドリ・ウグイス・リュウキュウサンコウチョウ・スズメ・リュウキュウハシブトガラス

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

秋の石垣島でアカハラダカ・カンムリワシ・ムラサキサギを狙う【前編】

Report by 戸塚学 / 2023年9月24日~26日

今年は夏にあれほど来ていた台風が、ぱたりとなりを潜めて。おかげさまでこのツアー中は晴れの3日間でした。ただし暑すぎると鳥たちが日中出ないというのは・・・なんともつらい。また最近の沖縄はどこも田んぼで耕作をしてない場所が増えて、鳥が入っていない田が増えたのが困りもの。石垣島も二毛作が有名なのに、労力の割に米が安いので止める農家も多いとか。予定していた三種以外にもツアー中にハシブトアジサシ、ジャワアカガシラサギという珍鳥が出ていたのですがどうも今回は縁が無かったようで。

 

1日目

空港に時間通りみなさん集合されたので、専用車でまずは林道を流すことに。理由は日中暑すぎて鳥たちがなりを潜めてしまうので、林道で休んでいるカンムリワシは見つけやすいと考えたからです。しかし見当たりません。いつもいる場所にいないのです。ゆっくりと探しながら進むとリュウキュウアカショウビンが出ましたが、これまた枝被りでなんともならず。結局枝越しで見られただけでした。しばらく進むとドライバーさんが「いた!」というので見るとガードレールにとまるカンムリワシ。私的にはロケーションがイマイチだったのですが、みなさん初めてのカンムリワシなのでしっかりと撮ってもらいました。そのあとはいつも廻る田を廻りますが、昨日多くのシギ・チドリが抜けてしまったようでさみしい。違う田んぼで鳥を探すとムラサキサギがいたが稲に隠れている姿を何とか撮影できました。そのあとはたくさんいるがちっとも近くに来ないツメナガセキレイに翻弄されました。

ツメナガセキレイ
ヒバリシギ
アオアシシギ
アカアシシギ

ハシブトアジサシポイントへ向かう途中の田にムラサキサギがいたので車を撮影しやすい場所へ回してもらうと、車の横からリュウキュウヨシゴイが飛び出して消えていった!しかしムラサキサギはしっかりと撮影できてみなさま満足そうでした。しかしハシブトアジサシは・・・潮が満ちていて、いなくなっていた。残念!宿近くの田んぼで時間いっぱいまで撮影しましたが、残念ながらジャワアカガシラサギは見つけられませんでした。一旦ホテルに戻り、ナイトサファリに備えます。

ムラサキサギ
セイタカシギ
エリマキシギ

19時30分迎えに来たガイドさんと夜の森へ。リュウキュウアオバズクは出るのですがすぐ飛んでしまう。この日はリュウキュウコノハズクが良く鳴いているので何度か撮影チャンスに恵まれ撮影を楽しむことができました。そしてズグロミゾゴイも寝ている姿を撮影できました。さてリュウキュウアカショウビンですが、最後の最後に何とか撮影できました。私も撮影したのですが、残念ながらすべてブレていたので下見に撮ったものを載せておきます。ヤエヤマオオコウモリも撮影できました。みなさん満足してホテルに戻りました。

リュウキュウアオバズク
リュウキュウコノハズク
ズグロミゾゴイ
リュウキュウアカショウビン

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【前編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

沖縄県にはずっと非常事態宣言が出ていてツアーの開催が危ぶまれていましたが、9月末で解除になるというニュースが飛び込み、ほっと胸を撫で下ろしての実施となりました。

以前は春秋冬と幾度も探鳥に訪れていましたが、久方ぶりの与那国島です。聞くところによると道路事情にさほど変わりはありませんが、大きな自衛隊の駐屯地が出来上がり、鳥のポイントだったゴミ捨て場が無くなるなど様々と環境に変化があるようです。また、多くの水田は放棄されて草地に置き換わり、2期作もやらなくなったせいで湿地環境がほとんど無い様子で以前とは鳥を見るポイントも変わっているようでした。予報では10月1日からの5日間はほぼ晴天です。さあ、どういう探鳥になるのか期待半分、不安半分の始まりとなりました。

 

ツアー1日目

今回は現地集合、現地解散の探鳥です。台風の接近で参加が危ぶまれた方もいらっしゃいましたが、誰ひとり欠けること無く全員が集まれたのはツアーの成功を暗示しているようでした。皆さん思い思いに昼食を済ませてから宿で合流し出発です。集合前にサンコウチョウやアカチョウビンの鳴き声、中にはアサクラサンショウクイ!を観察された方もいらっしゃいました。これは否が応でも期待が膨らみます。

アサクラサンショウクイ(撮影:早川弘美さま)

まずは比川へ向かいました。島には北東部に祖納、南部に比川、西部に久部良と3つの集落があり、比川は一番こじんまりしている集落です。テレビドラマのDr.コトーの撮影地で一躍有名になった地でもあります。

Dr.コトーの建物

水田に水が無いせいで水路などに水辺の鳥たちの姿がありました。セイタカシギが出迎えてくれて、ゴイサギは隠れるようにそっといます。よく見るとオジロトウネンやヒバリシギ、アカアシシギの姿も。顔の黄色い今年生まれのホオジロハクセキレイなどを見ながら幼鳥と成鳥の違いなどを観察しました。

セイタカシギ(撮影:伊原やよいさま)

アカアシシギ

浜へ出てシギチ探しをしたあとはベニバトのポイントを経由して田原川へ。セイタカシギやインドハッカなどを観察していると目の前を色鮮やかな鳥が飛びました。キンバトの雄です。すぐ近くの林へ飛び込みましたが、その後姿を表すことはありませんでした。近くの農耕地ではツメナガセキレイがわらわらといます。キガシラセキレイの姿はないようです。お客さんの二人が電線に止まるクロヒヨドリを見つけたようですが、タッチアンドゴーですぐに飛去してしまったとのことで、残念。田原川では小鳥の塒入りを待ちましたが、結果はシロガシラばかりでめぼしい鳥は現れず、クイナ類の声も聞けませんでした。やはり環境が変わったせいでしょうか寂しい限りです。遠くの電線に止まる塒入り前のカラムクドリを見ていると「チュッ チュッ」と上空をセジロタヒバリが飛びます。その辺の畑に降りてくれないかなあと言いながら日の入りを迎え、初日の探鳥は終了しました。夕食後に鳥合わせを行い、本日54種の確認となりました。

探鳥風景

ツメナガセキレイ(撮影:早川弘美さま)

ツアー2日目

今日は日の出の時間に合わせて弁当持参で東崎(あがりざき)へ出発です。着いた頃には丁度水平線から太陽が登ったところでした。遠く西表島を右手に見ながら登る朝陽の下で食べる朝食は格別です。放牧地ではオオチドリやマミジロタヒバリを期待しましたが、ムナグロとツメナガセキレイのみでした。

東崎の日の出

与那国馬

食事後は祖納(そない)へ向かいました。浦田墓地では草むらから飛び出すアカガシラサギを発見。磯に降りたのを観察していると上空をムネアカタヒバリが飛びます。岩礁にはメダイチドリとムナグロもいるようです。本来は祖納の集落の中も探鳥ポイントの一つなのですが、緊急事態宣言が開けたとはいえ、今回は各集落の中を探鳥することは見送りました。その後、比川へ。水路のシギが増えています。3羽になったヒバリシギが割と近く、トウネンも一緒にいたので2種の幼鳥の違いをじっくりと観察しました。

アカガシラサギ冬羽(撮影:早川弘美さま)

ヒバリシギ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

林道ではゆっくりと車で流しながら鳥を探します。この時期ならブッポウソウがいるはずと思っていると電線に止まるブッポウソウを発見。皆さん撮影タイムです。公園の広場でチゴハヤブサやコサメビタキを見ているともうお昼の時間です。昨日から島の飲食店はようやく再開した様子でした。テーブルを一人ずつのパーテションで仕切ったコロナ対策がしっかりしているお店を見つけ、皆で与那国そばをいただきました。

ブッポウソウ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

与那国そば

食後は再び山へ。狙いはハイイロオウチュウやキンバトです。広場で鳥を待っていると上空にはハリオアマツバメやチゴハヤブサが飛びます。林の中を探索していると「コウモリ!」の声。よく見ると大きなコウモリが梢にぶら下がっています。ヤエヤマオオコウモリです。鳥ではありませんが今回これも見ておきたかった動物です。「顔がタヌキみたい」などと言いながらじっくりと堪能した後はアヤミハビル館へ向かいました。

ヤエヤマオオコウモリ

アヤミハビルとは与那国の言葉で世界最大級の蛾であるヨナグニサンのことです。「アヤミ」は「模様のある」、「ハビル」は「蝶」を意味します。同館はヨナグニサンの生態や亜熱帯の自然の素晴らしさを体感できる施設で、与那国島の動植物や人々とヨナグニサンの関わりなどを学ぶ貴重な機会となりました。鳥だけじゃなくこういったツアーも良いねと参加者の皆さんも喜んでおられました。

アヤミハビル館・玄関

アヤミハビル館・館内

館を出たあとは耕作地のツメナガセキレイの大群などを見ながら、久部良ミトゥに到着。久部良ミトゥは久部良集落の東側にある大きな湿地(池)で、水路で久部良漁港とつながっています。

久部良ミトゥ

着くといきなりアカガシラサギが飛び出します。この時期は冬羽で地味ですが、飛ぶと翼の白と背面のあずき色とのコントラストが綺麗です。池の奥では70羽ほどのダイサギ、アマサギ、コサギの群れが休んでいました。飛来したクロハラアジサシの群れの中にハジロクロハラアジサシが1羽混ざっていました。ここではコホオアカ、ムジセッカ、コヨシキリなどの新顔も出てくれました。シロガシラが増えてきてどこかでねぐらを取っているようでした。

コホオアカ(撮影:早川弘美さま)

日がかなり傾いたので本日締めの西崎(いりざき)へと向かいます。夕方、西崎にいると上空を鳴きながら渡っていく小鳥たちを見られることも多いので、夕陽とセットで期待します。与那国島での夕陽は水平線に沈むのでなく、はるか台湾の山並みに沈んでいきます。素晴らしい景色とかすかに聞こえる小鳥の声を聞きながら2日目の探鳥が終了となりました。夕食後に鳥合わせを行い、本日は58種の確認となりました。

西崎の日の入り

最西端の碑

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。