渡りの本流!韓国・春の離島【後編】

Report by 大西敏一 / 2023年4月25日~30日

 

ツアー3日目

朝目覚めると快晴で風は収まり、波も穏やかです。思わず一人でガッツポーズをしてしまいました。朝食でも皆さん心なしか嬉しそうです。出航が決定し、ホッとした気持ちでチェックアウトを済ませ、港へ向かいました。船に乗り込むと7割程度の乗船率。途中、2つの島を経由して2時間ほどで目的の島に到着です。一昨日から入島している韓国の鳥友からの情報だとホオジロ類が山ほどいるとのこと。宿へ向かう途中、電線に止まっているアカハラツバメを見つけ皆さんと観察。今回は諸事情から2箇所に分かれての宿泊となりましたが、島の宿で各部屋ともトイレ・シャワー付きなのは有り難かったです。

 

はやる気持ちで観察道具をセットし、昼食までの2時間ほど探鳥へ。まずは集落裏の鳥の多いポイントへ行くと、歩くたびに草地からもの凄い羽音を立てて鳥が飛び立ちます。コホオアカとシベリアアオジの大群です。その数、数百!キマユホオジロもめちゃくちゃいます。その一角だけでもそれぞれ1000羽以上はいたと思います。アトリも何百もの数が入っていて、真っ黒な頭にオレンジの胸の雄にドキッとさされます。菜の花には夏羽のノビタキの雄やホオアカが止まっています。背後の林からはカラアカハラやシロハラの囀りが聞こえ、オオルリやキマユムシクイがあたりを飛びます。広葉樹の梢を見るとコイカルの群れが目に入りました。皆さん鳥が多すぎて何を見ていいのかわからない状態で嬉しい悲鳴をあげている様子。と、草むらから少し大きめの鳥が飛び出しました。「コマミジロタヒバリ!」韓国でもレアな部類に入る鳥です。草むらの中でなかなか全身を現さず、そのうち潜って見えなくなってしまいました。遠く飛ぶことをしなかったのでまた出会えるでしょう。

コホオアカの群れ
コホオアカの群れ
島の風景
島の風景
鳥の多いポイント
鳥の多いポイント

 

昼食はユッケジャンと肉鶏タン。午後からの探鳥は東屋の近くで綺麗なコルリの雄が我々を出迎えてくれました。エンベリザとアトリの群れをやり過ごし、歩を進めると聞き覚えのある声がします。声の主はシロガシラでした。今日1日で30羽ほど確認しましたが、この鳥は韓国で分布を広げている代表種で、この島でも繁殖している可能性があります。シベリアジュリンの雌雄を見ながら魚醤タンク置き場へ向かいます。タンクに群がるハエなどの昆虫を狙って多くのセキレイ類を始めとする小鳥が付く場所です。そこではタイワンハクセキレイがそこかしこにいて、真っ赤なムネアカタヒバリの姿も。シマゴマを狙いに峠に向かうと大型ツグミが大合唱していました。カラアカハラがあたりを飛び、時折木に止まるので雌雄や成幼の識別点の説明ができました。ここではアカハラ、クロツグミなど6種の大型ツグミ、ノゴマ、マミジロキビタキなどを確認しましたがシマゴマは鳴き声のみでした。珍しかったのはエゾムシクイで韓国では超レアです。私も20年間で2回しか見たことがありません。それを観ていると、よく似た「ピッ」という声を発しながらひっきりなしにムシクイ類が通過します。今度はアムールムシクイです。忙しい鳥見であっという間に時間が過ぎていきます。これぞ渡りの本流、離島での鳥見です。宿へ戻ると山からコノハズクとアオバズクの声が聞こえてきました。夕食は牛プルコギ。島に渡れたこととコマミジロタヒバリに皆さんと乾杯しました。鳥合わせをすると本日の出現種は72種となりました。

タイワンハクセキレイ雄
タイワンハクセキレイ雄
アムールムシクイ(撮影:藤田明嗣さま)
アムールムシクイ(撮影:藤田明嗣さま)
探鳥風景
探鳥風景

 

ツアー4日目

天候は晴れ。風が幾分吹いています。朝探(朝の探鳥のこと)は6時から開始です。集合前に上空をミサゴとハヤブサが舞っています。昨日一番鳥の多かった菜の花畑に行くとムジセッカが複数囀っています。小さな学校の校庭にはコホオアカやシベリアアオジが群れていて、シロハラホオジロもいます。昨日韓国の鳥友がヒメコウテンシを見た場所をチェックしましたが既に抜けたようでした。残念。広場で鳥を待っていると、どこからかコウライウグイスの声が。「あそこにいます!」五百澤さんがスカイラインの木の中にいるのを発見し、鳴いている場面をプロミナーでじっくり観察できました。広場は小さな人工池があり、珍鳥がでるポイントです。今は水が抜けていますが、雨水が溜まるので鳥が集まります。ぱらぱらといるビンズイを丹念にチェックしているといました!ヨーロッパビンズイです。我々が観察していると韓国のバーダーも到着し、興奮しています。こちらでもそう簡単には見られない種なのです。朝食のため宿に戻る途中、逃げないマミジロキビタキの雄がいてなかなか戻れません。朝食はクロソイの焼き物が出てきました。基本、韓国の食事は野菜や魚中心でヘルシーです。

 

午前の探鳥に出発すると道端には鳥影が多く、シロハラホオジロが増えている感じです。島に鳥が入ってきたのを実感する瞬間です。昨日まで大騒ぎしていたコホオアカやキマユホオジロ、シベリアアオジは、皆さんにはもう普通種になっています。その後、菜の花畑でコマミジロタヒバリを再発見し、今度は姿が見えて大サービス。コイカルも群れで止まっていて雌雄の違いを見比べることが出来ました。島には天然記念物になっている常緑樹の小山がありそちらへ行ってみることに。ヒメイソヒヨがよく出るポイントもあります。木道を歩き、鳥を探しながら登ります。途中、踊り場で一休みしていると上空を小鷹が飛びます。ツミかと思いきや翼先が黒い。アカハラダカです。山頂に着き、昨日鳴いていたコノハズクを探しましたが確認はできずでした。下山後は東屋でまったりと鳥を見ます。歩いての探鳥も良いですが、1箇所留まっていると結構色々なものが見れたりします。その後、発電所脇の草地ではコジュリンの雄やノジコを見ました。

コマミジロタヒバリ
コマミジロタヒバリ
コウライウグイス
コウライウグイス
コイカル雄(撮影:藤田明嗣さま)
コイカル雄(撮影:藤田明嗣さま)
シロハラホオジロ雄(撮影:藤田明嗣さま)
シロハラホオジロ雄(撮影:藤田明嗣さま)

 

昼食を終え、午後からの探鳥は東屋を拠点に周辺をウロウロと探します。朝より逃げない鳥が増えています。採餌に夢中なチョウセンウグイスやケラを捕まえて格闘中のマミジロキビタキの雄が目の前に現れたりとなかなか楽しい。ツグミ類の多かった場所に行くと今度はムシクイ類がたくさんいます。多くはキマユムシクイでしたが、アムールムシクイやヤナギムシクイも出現し、「ムシクイロードだね」と皆さん。その他、クロウタドリの雌、オオヨシキリ、ノゴマなども確認できました。探鳥を終えて宿へ戻ると裏山の稜線にチゴハヤブサが止まっていました。

 

本日の夕食は焼肉、サムギョプサルです。食後にはコピ(コーヒー)を飲みますが、韓国では砂糖とミルクが入りのとても甘いやつを飲みます(最近の若者はブラックが増えているとか)。最初は「そんな甘いのはちょっと」と敬遠していた皆さんもいつの間にか虜になっています。韓国に来るとこれを飲まないと食事が終わった気がしなくなります。面白いですね。食事後の鳥合わせでは78種を観察していました。

キマユムシクイ(撮影:伊藤紀子さま)
キマユムシクイ(撮影:伊藤紀子さま)
ヨーロッパビンズイ(撮影:藤田明嗣さま)
ヨーロッパビンズイ(撮影:藤田明嗣さま)
ラをくわえるマミジロキビタキ雄
ラをくわえるマミジロキビタキ雄

 

ツアー5日目

朝、霧が立ち込めるなか、港にはモンゴルカモメが佇んでいました。この天候で多くの鳥が島に入ってきている様子ですが、朝食後には島を離れなければなりません。朝探でホオジロ類の同じ顔ぶれなどを見ながら歩いているとコウライウグイスの声がします。他にもカラアカハラ、クロツグミ、シロハラが合唱し、シマゴマも鳴いています。霧の中で聞く鳥たちの声はとても幻想的です。と、目の前をヨタカが横切ります。まだまだ面白くなりそうなところでいつも終了です。後ろ髪を引かれながら島を後にし、本土へ戻ります。昼食は海鮮カルグクス。2日目の店よりあっさりしていたかな。

 

午後は車を北へ走らせチョンスマンへ。冬はガンカモ類やハクチョウ、ツルなど多くの鳥たちで賑わう探鳥地として有名な所です。この時期シギチも面白く、このあたりは砂質の干潟もあるのでクンガンとは少し違った種類も期待できます。予想通り干潟にはミヤコドリやオバシギ、キョウジョシギ、チュウシャクシギなどが多く、フラッグ付きのオオソリハシシギも見られました。干潟にいる白いサギを見るとすべてカラシラサギでした。流石は韓国、7羽もいます。シギチドリを堪能したあと、上流の観察舎がある場所へ移動し、カモ類などを観察し、本日の探鳥は終了しました。

 

今日の宿泊地はインチョン。ラストナイトの夕食は韓国の伝統料理・サムゲタン(参鶏湯)。丸鶏の中に高麗人参やもち米、ナツメ、松の実などを詰めて煮込んだ薬膳料理です。今回は全体的に気温が低かったので、探鳥で冷えた体には嬉しい食事です。食後に鳥合わせを行い、本日は84種となりました。

カラシラサギ
カラシラサギ
オバシギ
オバシギ

 

ツアー6日目

朝食はホテルでのバイキング。久しぶりに洋食も嬉しい。最終日の探鳥はクロツラヘラサギとモンゴルカモメの繁殖地へ向かいます。今回は飛行機の関係で午前のみの探鳥になりますが十分に楽しめます。ホテルから40分ほどで現地に到着。調整池の中洲には人工の円形の小島が2つあり、そこでクロツラヘラサギが営巣しています。ただいま繁殖期の真っ只中で、幾つかは雛が孵っています。小さなヘラを持った幼鳥の姿がとてもキュートでした。同じ場所にはモンゴルカモメも営巣していて、こちらも幼綿毛でもふもふの雛の姿が見られました。両種とも今年の繁殖は早いようです。目の前に出てくるガルマエナガを見ているとヨシ原からカモの群れが飛び出しました。アカツクシガモです。池脇の林ではカササギが営巣中でキマユムシクイやシベリアアオジなどの姿も。2時間ほどの探鳥を終え、昼食へ。空港近くの滑走路が見渡せるカフェで韓国冷麺とキンパ(韓国海苔巻き)をいただきました。食事後空港へ向かい、全員でチェックインを済ませ、今回のツアーは無事終了となりました。

㉖アカツクシガモ(撮影:藤田明嗣さま)
アカツクシガモ(撮影:藤田明嗣さま)
営巣中のクロツラヘラサギ
営巣中のクロツラヘラサギ
都会の中の繁殖地
都会の中の繁殖地

今回のツアーでは156種を観察できました。島での滞在は1日短くなってしまいましたが、それでも十分渡りの本流を実感していただけたかと思います。離島は欠航のリスクがあり、渡れないこともしばしばあります。しかし、一度離島マジックを体験してしまうと病みつきになるのがこのツアー。リピーターの方が多いのも頷けます。来年は別の島へ行くことも考えています。今回ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

沖縄本島と奄美大島で2つのアカヒゲを見る旅【奄美編】

Report by 簗川堅治 / 2023年4月3日~7日

奄美大島も風が強かったため、予定していた海岸での探鳥を止め、自然観察の森へ行きました。あまり時間もなく、空模様も怪しい中、沖縄本島とは別亜種の亜種アカヒゲ、そして願わくば、オオアカゲラの亜種オーストンオオアカゲラとトラツグミの亜種オオトラツグミが出てくることを期待し、散策スタート。しかし、ルリカケスを見て時間切れでした。

 

ホテルのチェックインと夕食を済ませ、今度はナイトウォッチングです。地元ガイドさんの同行の元、林道を走らせます。結果的にはたくさんのアマミヤマシギ、アマミノクロウサギに出会えました。また、イシカワガエルやヒメハブ、アマミトゲネズミなど、たくさんの奄美の生き物にも出会え、とてもいい夜になりました。

 

アマミヤマシギ(撮影:河田様)
アマミノクロウサギ(撮影:塚本雄次)
アマミイシカワガエル (撮影:塚本香代様)
リュウキュウコノハズク (撮影:河田様)

 

 

4日目。空模様が気になる中、アカヒゲやルリカケス、オオトラツグミなどを求めて出発しました。現地は時折、小雨が降るあいにくの天候です。希望でアカヒゲとオオトラツグミの班に分かれて行動しました。アカヒゲ班は、複数のアカヒゲを見ることができました。一方、オオトラツグミ班は、姿は何とか見れたものの、いまいちな成果でした。昼食を挟み、再びアカヒゲ班とオオトラツグミ班に分かれました。その結果、全員がアカヒゲの撮影に成功。その後、オオトラツグミもいい成果が出ましたし、ルリカケスの何度かシャッターチャンスがありました。

 

 

亜種アカヒゲ♂(撮影:塚本雄次様)
亜種アカヒゲ♀(撮影:塚本香代様)
亜種オオトラツグミ(撮影:河田様)
ルリカケス(撮影:塚本雄次様)

 

 

5日目。最終日です。天気予報は芳しくありません。解散まではどうやら雨のようです。

まずは夜明け前に出発して、オオトラツグミのさえずりを聞きに行きました。途中、アマミヤマシギが出て、リュウキュウコノハズクの声がしました。小雨が降る中、ポイントに車を停めると、「キョロン、チィー」とオオトラツグミのさえずりが聞こえてきました。

朝食後はあまり時間がありません。オーストンオオアカゲラをまだ見ていなかったので、空港に向かう道すがらに探すも現れず。最後は渡りの鳥に期待して、水田地帯へ行きました。雨の中、シロハラクイナやホオジロハクセキレイ複数、セイタカシギなどを見ることができました。

 

シロハラクイナ(撮影:河田様)
亜種ホオジロハクセキレイ(撮影:河田様)

 

 

今回のツアー、沖縄本島では亜種ホントウアカヒゲを、奄美大島では亜種アカヒゲを見るという風変わりでやや贅沢な(?)ものでしたが、成功だったといえるでしょう。参加者のみなさん、5日間にわたり、朝早くから夜遅くまで大変お疲れ様でした。

 

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

渡り鳥の交差点・春の与那国島【後編】

Report by 簗川堅治 / 2023年3月28日~31日

3日目。久部良の学校グランドで亜種ホオジロハクセキレイやムネアカタヒバリなどを見たあと、久部良バリへ行きました。駐車場に着いた、まさにその時、海側からちょうど今島に渡ってきたかのようにヤツガシラが目の前のアダンに止まり、サービス満点!またまた大盛り上がり!

 

ヤツガシラ

久部良バリをあとにし、観光を兼ねて西崎へ行き、自衛隊駐屯地の前を通り、カタブル浜へ。残念ながら、シギチの仲間はお留守でした。

今度は比川の集落を歩き、鳥を探し始めた途端、すぐそばの木からクロウタドリ♂が飛び出し、木立ちの中へ。しばらく待っていると、畑などに何度か出てきてくれました。♀も出てきました。ヤツガシラといい、クロウタドリといい、なかなかいいタイミングです。

 

クロウタドリ

この日の昼食は弁当にしたので、森林公園で鳥待ちしながら弁当開きをしました。しかし、これといった鳥は出ませんでした。

再び久部良へ戻り、学校のグランドでかなり赤くなったムネアカタヒバリやハクセキレイの各亜種をじっくり観察。亜種メンガタハクセキレイっぽい個体がいましたが、どうも交雑種っぽい感じでした。

亜種メンガタハクセキレイの交雑種?
ムネアカタヒバリ夏羽

学校付近でギンムクドリ、ムクドリを見て、三度、学校グランドを見ていたら、ヤツガシラ登場!何度見ても大盛り上がり!きっと今朝、久部良バリで見た個体でしょう。けっこうな時間、みんなで楽しみました。

 

ヤツガシラ

今度は観光です。チィンダバナ、アヤミハビル館、軍艦岩、立神岩、人面岩に行きました。

その後、警戒心が強いアカツクシガモをなんとかじっくり観察。最後は、久部良ミトでサギ類やセイタカシギを見て、3日目終了しました。

 

アカツクシガモ

 

4日目。最終日はあまり時間がありません。まずは有志で夜明け前に久部良ミトへ行きました。ゴイサギの声から始まり、ヒヨドリ、シロガシラ、メジロ、ノゴマ、そしてオオクイナが鳴き出しました。明るくなり、ダイサギなどのサギ類も見えてきました。

朝食を済ませ、残り2時間の探鳥です。昨日、ヤツガシラがいたアヤミハビル館に行こうとしたら、その入り口で正面からヤツガシラが飛んできました!電線に止まり、草地に降りましたが、すぐ飛んでいってしまいました。

 

今度は未だ出ていないオオチドリ狙いで東崎へ。しかし、相変わらずツメナガセキレイやムネアカタヒバリくらいでした。最後の望み、浦野墓地へ行く途中、時々オオチドリが出る畑を通っていったその時、ついにオオチドリ発見!9回裏で見事逆転した気分です!思う存分、観察撮影しました。そこにはムネアカタヒバリやとてもきれいな亜種マミジロツメナガセキレイもいました。そうこうしているうちに、オオチドリは突然飛んでいきました。

 

オオチドリ

最後は、祖納の集落のパン屋さんでそれぞれパンを買い、空港で解散しました。

 

全体的には種類も個体数も少なかった与那国島ですが、ここならではの鳥たちに出会えた4日間でした。参加者のみなさん、お疲れ様でした。

 

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

渡り鳥の交差点・春の与那国島【前編】

Report by 簗川堅治 / 2023年3月28日~31日

春の琉球らしく、ぐずついた天気の中、条件付きで飛んだ飛行機は無事到着しました。まずはムクドリ類を求めて比川へ。しかし、見当たらなかったので、とりあえず昼食をとりました。その後、雨が上がっている隙に集落内を歩き、ムクドリ類を探していたら、コホオアカやクロウタドリが現れました!比較的じっくりと観察。

 

クロウタドリ

今度は久部良へ移動し、ムクドリ類を発見!100羽ほどのギンムクドリにカラムクドリ数羽、ホシムクドリ2羽が混じっていました。中学校のグランドではマミジロタヒバリ、亜種ホオジロハクセキレイの姿がありました。

 

ムクドリ類の群れ

次は祖納へ。小学校のグランドでヤツガシラを発見!樹上休んで、その後、地面で採餌する姿を観察撮影しました。大盛り上がりです!近すぎて車外には出られなかったので、座席を替わりながら撮影大会となりました。

 

ヤツガシラ

田んぼではハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ、亜種タイワンハクセキレイ、そして亜種シベリアハクセキレイがいました。ツバメチドリもいました。

 

 

亜種シベリアハクセキレイ
ツバメチドリ

この日の最後は、オオノスリとアカツクシガモを待ちましたが、現れず。明日に持ち越しです。

2日目。夜明け前に出発し、林道へ。狙いのオオクイナ、リュウキュウコノハズクの声はしなかったものの、車中からヤマシギ1羽とミゾゴイ2羽をじっくりと観察できました。その後、アカツクシガモ3羽とオオノスリ1羽も何とか見れました。

 

ヤマシギ
ミゾゴイ

朝食後は東崎に行き、多数のツメナガセキレイとムネアカタヒバリ1羽を観察しました。

 

亜種ツメナガセキレイの群れ

その後、祖納の集落を歩くも、インドハッカを見た程度。昨日、ヤツガシラを見た場所にも行きましたが、お留守。なかなかぱっとしません。

昼食を挟んで、比川へ行き、集落を歩きました。耕作放棄地にコホオアカが5羽以上いて、チュウジシギらしいジシギも観察しました。狙いのムクドリ類は、今日も現れず。ただ、最後にヤツガシラが飛び立ち、後ろ姿のみ見れました。

今度は祖納の田んぼで主にハクセキレイの各亜種を観察し、この日も亜種シベリアハクセキレイが1羽、亜種タイワンハクセキレイが2羽、亜種ホオジロハクセキレイが複数いました。そして、オジロトウネンの姿も。

 

オジロトウネン

最後は違う田んぼで土砂降りの雨の中、アメリカウズラシギの夏羽を見て、この日を終えました。

 

アメリカウズラシギ夏羽

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

秋の石垣島で
アカハラダカ・カンムリワシ・ムラサキサギを狙う

Report by 戸塚学 / 2022年9月23日~25日

 

台風14号の影響で、下見の出発が1日遅れたものの無事石垣島へ入ることができた。現地の方たちから情報が入るものの・・・シギやチドリが少ない。どうやら抜けたようだ。

ツアーは23日~25日なのでまだ時間があるものの24・25日が雨予報。ところが23日に天気予報が一気に変わり前日の晴れ!特に24日は今年初めての大当たり!他にも連日鳥たちの撮影を堪能できてみなさま大満足の3日間となりました。

 

*本文中「リュウキュウ○○」という表記を「R」に省略させていただきます。

<1日目>

空港に時間通りみなさん集合されたので、専用車でまずは前日から出ているソリハシセイタカシギ(アボセット)の出ている田へ直行します。少し遠いのですが、超珍鳥なので時間をかけてしっかりと撮影を楽しんでいただきました。他にも周辺の田をゆっくりと車で流しながらシギやチドリを堪能します。途中数は減りましたが、まだクロハラアジサシやハジロクロハラアジサシが飛んでいるので、車から降りて撮影を楽しみました。

クロハラアジサシ
クロハラアジサシ

カンムリワシが飛んできたのですが、すぐに飛んで行ってしまったことで撮影ができず悔しい思いもしましたが次回のチャンスという事で引き続き時間いっぱいまで鳥たちを探しては撮影を繰り返しました。一旦18時にホテルに戻り、各自食事をとっていただいた後、ナイトサファリは19時30分から開始です。現地ガイドさんの案内で、Rアオバズク、Rコノハズク、ヤエヤマオオコウモリを無事撮影ができたので別の場所へ。

ヤエヤマオオコウモリ
ヤエヤマオオコウモリ
リュウキュウコノハズク
リュウキュウコノハズク

この場所は遊歩道を歩きながら生き物を探すスタイル。外来種のオオヒキガエルやサソリモドキ、オカヤドカリ、各種ゴキブリ、Rアオヘビも撮影しました。鳥はRコノハズク、ズグロミゾゴイの成鳥が撮れたのはラッキーでした!

オオヒキガエル
オオヒキガエル
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ
リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン

<2日目>

7時にホテルを出発して展望台を目指します。アカハラダカはだいたい8時から10時の間に飛ぶのですが、少し早めに来て場所の説明や光の回り方、アカハラダカの出現の仕方を説明して待ちました。チョウゲンボウが皮切りに飛び出した後、ズアカアオバトがとまっているのを発見して撮影をすることができました。

ズアカアオバト
ズアカアオバト

風もいい、晴れているというベストコンディション。そして今年はまだアカハラダカの大きなあたりが無いので「今日が当たるかも・爆発ですよ!」なんて冗談交じりに参加者の皆さんには話していたのが、本当になっちゃった!パラパラ飛んできたかなと思ったら頭上でタカ柱!遠くに見つけたタカ柱が上空高くに消えたかと思ったらいきなり目の前にジャンジャン飛んできたりとみなさん大興奮!

タカ柱
タカ柱
アカハラダカ♀
アカハラダカ♀
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂
アカハラダカ♂

この時一番驚いたのはカンムリワシが目線でこちらに向かって飛んできたこと!こんなことは滅多にないし、私も初体験で焦ってしまった。

カンムリワシ
カンムリワシ

9時30分を過ぎた頃には渡りも落ち着いてきたのでシベリアムクドリ・カラムクドリが出ているポイントへ早めに移動。現地に着くと知り合いの現地ガイドさんがいて、いろいろと教えてもらい大助かり。おかげでシベリアムクドリ・カラムクドリは撮れました。

シベリアムクドリ
シベリアムクドリ

11時~15時まで休憩を入れてあるので、ここで一時解散です。この状況でみなさん歩いてホテルまで戻るわけもないので、好きなだけここで撮影をしてもらう事にしました。ただ水分補給だけは忘れないように伝えて私はホテルへ戻りました。さて皆さんの撮影結果はRサンコウチョウ、サメビタキ、シロガシラ、オサハシブトガラス、イソヒヨドリが撮れたと後から報告をいただきました。

シロガシラ
シロガシラ

15時専用車で再び田んぼを巡る旅です。もしかしてアボセットが昨日より近い場所にいるかもと行くと・・・本当にいた!昨日よりも撮りやすく近くて、がっつり撮影ができました!「とまっているカンムリワシ~」というリクエストで探すが見つからない。かわりにツメナガセキレイ、アカガシラサギ、ムラサキサギを撮ることができてみなさん満足そうです。時間になったのでホテルに戻りました。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
アカガシラサギ
アカガシラサギ
ムラサキサギ
ムラサキサギ

<3日目>

ホテルの前の電線にツバメがとまっていた。朝日に照らされ若干赤っぽく見えていた。何気なく双眼鏡で見ると???Rツバメだった。今回ツバメは多かったがRツバメは見られなかったので急に撮影大会になってしまった。

リュウキュウツバメ
リュウキュウツバメ

とはいえいつまでも撮影していては本命がおろそかになるので、展望台へ向かいます。みなさんの期待が高まるも昨日のようにアカハラダカが爆発しません。時折近くに出てもそういう時に限って太陽が雲に隠れてしまう。この日はアカハラダカ以外にチョウゲンボウ・チゴハヤブサ・ハヤブサを見ることができました。残念ながら昨日を超える渡りは望めませんでした。10時なったので田んぼ巡りを開始です。やはり今日も「とまってるカンムリワシ~」というリクエストでカンムリワシを探します。飛んでいる姿を確認できたが見失ってしまった・・・残念。そんな時ドライバーさんが「あのスプリンクラーの上は違うかな?」と指さす先に、いた!カンムリワシです。ちょっと距離はあったがしっかりとその雄姿を撮影ができました。

その後も田を巡り最後まで撮影を楽しみます。12時近くになったので空港近くの田に移動します。運が良ければ何か入っていないかなと思っているとまたしてもドライバーさんが「あれ、何?」と指さす先にムラサキサギの成鳥が!みなさん夢中で撮っていると、突然ムラサキサギは飛び立った!時計を見ると12時30分まるで時計を持っているかのような行動です。本当に最後の最後まで撮影を堪能して空港で無事終了解散となりました。

みなさまお疲れさまでしたね、それにしても超ツキまくりの3日間でした。

リュウキュウツミ
リュウキュウツミ
シマアカモズ
シマアカモズ

 


撮れた鳥
ズグロミゾゴイ・アカガシラサギ・アマサギ・ダイサギ・チュウサギ・コサギ・アオサギ・ムラサキサギ・カルガモ・アカハラダカ・Rツミ・カンムリワシ・ハヤブサ・チョウゲンボウ・チゴハヤブサ・シロハラクイナ・バン・コチドリ・トウネン・ヒバリシギ・エリマキシギ・アカアシシギ・コアオアシシギ・アオアシシギ・クサシギ・イソシギ・タシギ・(チュウシャクシギ?)・セイタカシギ・ソリハシセイタカシギ・クロハラアジサシ・ズアカアオバト・Rコノハズク・Rアオバズク・Rアカショウビン・ツメナガセキレイ・シロガシラ・Rサンコウチョウ・シマアカモズ・イソヒヨドリ・サメビタキ・セッカ・カラムクドリ・シベリアムクドリ・オサハシブトガラス

 

観られた鳥・さえずり
Rヨシゴイ・シマアジ・コガモ・ムナグロ・ツバメチドリ・ハジロクロハラアジサシ・Rキジバト・キセキレイ・Rサンショウクイ・Rヒヨドリ・Rメジロ

 

その他
ヤエヤマオオコウモリ・サキシマキノボリトカゲ・サツマゴキブリ・サソリモドキ・オオヒキガエル・Rアオヘビ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

渡り鳥の楽園・春の与那国島【後編】

Report by 簗川堅治 / 2022年3月23日~26日

 

3日目。朝食前に宿周辺を探鳥し、バライロムクドリ、カラムクドリ、ギンムクドリを観察。港の芝生でホオジロハクセキレイ、タイワンハクセキレイを見て、またしてもチョウセンウグイスは声のみでした。

 

朝食後、チョウセンウグイスの姿を見るべく粘りました。その間、タイワンヒヨドリ、ホオジロハクセキレイ、タイワンハクセキレイなどを見て過ごしましたが、結局、チョウセンウグイスは声のみでした。

ハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ(撮影:上山功夫様)
ハクセキレイの亜種ホオジロハクセキレイ(撮影:上山功夫様)

今日は反時計回りで島を回ることにしたので、自衛隊の前を通り、昨日、たくさんのセイタカシギとオジロトウネンがいた田んぼへ。セイタカシギは増えていました。オジロトウネンも健在。時折、一斉に飛ぶ姿がきれいでした。

 

比川でまたセイタカシギやリュウキュウツバメを見て、お昼にしました。今日は地元のクルマエビが乗ったクルマエビそばを食べました。とてもおいしく、みなさん、いい顔です。

 

今度は小休止と観光を兼ねて、アヤミハビル館へ行きました。館内に入って早々、職員の方からヤツガシラがいるとのことで、館内見学後、早速ヤツガシラ観察です。柵の上にいるヤツガシラを発見。脇の縦斑をしっかりと確認。冠羽を広げないかと、みなさん、シャッターチャンスを狙います。地面に降りた瞬間など、何度か冠羽を広げてくれました。

ヤツガシラ(撮影:上山功夫様)
ヤツガシラ(撮影:上山功夫様)

祖納へ移動です。オジロトウネン、オウチュウがまだいてくれました。カワセミも登場。続いて、これまた観光を兼ねてティンダバナへ。迫力満点の岩場です。祖納の集落を一望できました。

ティンダバナから祖納を望む
ティンダバナから祖納を望む

製糖工場の裏では、サトウキビのかすにハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイがいました。与那国島でも3回程度しか記録がないド珍鳥です。

ハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイ(撮影:上山功夫様)
ハクセキレイの亜種ニシシベリアハクセキレイ(撮影:上山功夫様)

近くには似ている亜種でお馴染みになったホオジロハクセキレイがいました。両種の違いをじっくりと観察。ニシシベリアハクセキレイの方が気が強いようで、ホオジロハクセキレイを追い払う場面もしばしば。

 

ニシシベリアハクセキレイを堪能後は祖納の墓地でシロチドリ、コチドリを見て、久部良ミト、そして校庭を回り、この日を終えました。

 

4日目。最終日です。今日も朝食前に宿付近で探鳥です。昨日、クロウタドリを見たという情報があったので学校周りを探しましたが、残念ながら見当たらず。ムクドリの群れも見当たりません。しかしその後、複数のムクドリがいて、その中にコムクドリが1羽入っているのを見た方がいました。ホオジロハクセキレイの数も減ったようです。

 

チェックアウト後、久部良ミトでクロツラヘラサギやシラサギ類を見て、昨日のニシシベリアハクセキレイの場所へ。今日もホオジロハクセキレイと一緒にいました。タイワンハクセキレイやセッカもいるようです。

セッカ(撮影:上山功夫様)
セッカ(撮影:上山功夫様)

時間がなくなってきました。最後は祖納の墓地でオオチドリに期待します!……が、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリはいるもののオオチドリの姿はありませんでした。ただ、岩場でクロサギの収穫はありました。

クロサギ(撮影:上山功夫様)
クロサギ(撮影:上山功夫様)

昼食用においしいと評判のパン屋さんでパンを買って、空港へと向かい、ツアーは終了しました。

 

今回は鳥の種数も個体数も少なく、期待したオオチドリやクロウタドリには出会えませんでしたが、与那国島でも珍しいバライロムクドリやニシシベリアハクセキレイが見られたことは大収穫だったと思います。4日間、大変お疲れ様でした。

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【後編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

ツアー3日目

島の朝はゆっくりです。この時期の日の出は6時半頃。朝食を7時にとって出発です。宿の前が小・中学校なので朝食までの30分を利用して散歩がてら久部良バリまでを往復するプチ朝探へ。途中、学校脇の電線に止まっている3羽のカラムクドリが見られました。

カラムクドリ(撮影:早川弘美さま)

島での探鳥は各所にあるポイントを丹念に回るスタイルです。平地では歩きながら探鳥をしたいところですが、今年は予想を上回る暑さで、島の人が「これまでで一番暑い」というほどです。なので灼然の炎天下を延々と歩くのは諦めて、ここという場所を効果的に歩きました。今日こそは皆さん一番のリクエスト、セジロタヒバリとハイイロオウチュウを狙います。

島ではツメナガセキレイが一番目につきます。次に多いのは留鳥組のシロガシラ。次いでヒヨドリやアカモズとなります。島のヒヨドリはタイワンヒヨドリという亜種、アカモズはシマアカモズという亜種なのがいかにも与那国的です。

シロガシラ

タイワンヒヨドリ

シマアカモズ

比川ではいつもの顔ぶれに、ハマシギとジシギ類が加わっていました。顔つきや羽衣などからチュウジシギと思われましたが念のために尾羽も確認しOK。与那国岳に向かう林道を歩いていると蝶の姿が目に付きます。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ベニモンアゲハ、ミカドアゲハなどが沢山飛んでいて、一時は蝶の撮影会に。ここではエゾビタキ、コサメビタキ、オオルリなどのヒタキ類やブッポウソウもチラホラと現れました。ブッポウソウは昨日よりも増えていて5羽以上はいましたが、どれも今年生まれの幼鳥でした。

チュウジシギ(撮影:早川弘美さま)

エゾビタキ(撮影:伊原やよいさま)

オオルリ雄若鳥(撮影:早川弘美さま)

今日のお昼はピクニックランチ。といっても売店で買ったパンなどですが、自然の中で食べるのはなぜか違って美味しいのです。遠くの梢に止まるブッポウソウを見ながらお昼のひと時を過ごしました。

与那国島ならではのシュモクザメを模った手作りパン

午後からは目標の2種に絞って探鳥を進めることに。両種のいそうな場所を狙ってこまめに探していると、いました!セジロタヒバリです。地面で餌を採っていると、すぐにキセキレイがやってきて飛ばされてしまいます。炎天下の中、粘り強く待ち続け、ようやくじっくりと観察できました。カメラの方も無事シャッターに収めることが出来て喜んでおられました。

セジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

次はハイイロオウチュウを求めて探します。島で一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(オオバアコウ)の場所でオオルリ、エゾビタキ、サメビタキ、コムシクイ、南牧場でマミジロタヒバリ、久部良ミトゥではヨシゴイなどを見ながらお目当てのものを探します。と林縁から飛び出す1羽の鳥が。ハイイロオウチュウです。まずは飛ばさないように遠目から観察していると盛んにフライキャッチして虫を食べています。そのうち向こうから飛んできて近くの電線に止まりました。皆さんここぞとばかりのシャッターチャンスです。プロミナー組はドアップで観察。わずかの時間ですが本種を堪能することが出来て皆さん大満足の様子でした。

ハイイロオウチュウ(岡本圭祐さま)

コムシクイ(撮影:早川弘美さま)

島一番の巨木「ドゥナンタギノアグ」(撮影:門永洋子さま)

宿に帰る前に立ち寄った久部良漁港でクロハラアジサシを観察し、3日目の探鳥を終了しました。夕食後に鳥合わせと皆さんからの質問を受ける形でちょっとした識別講座を行い、本日56種の確認となりました。

クロハラアジサシ(撮影:伊原やよいさま)

ツアー4日目

今朝も久部良バリまでの散策で始まり、アカガシラサギやツメナガセキレイなどを観察。今日の朝食は洋食で皆さん嬉しい様子。まずは北牧場を覗きます。牧場へ向かう小道を歩いていると、ちょうど朝イチの飛行機が来る時間です。滑走路の端で待機していると、晴天をバックに頭上をかすめて着陸するシーンが見られとても感激しました。牧場内はツメナガセキレイが多く、ムナグロも沢山います。マミジロタヒバリを見つけ観察していると「ツグミみたいなのがいます」の声。見ると胸がよだれかけ状に赤く、腹の白い鳥が。すぐに飛びましたが上面は綺麗なスレート色でした。ノドアカツグミの雄です。その後、飛去した方向を捜索しましたが出会いは一瞬の出来事でした。

マミジロタヒバリ(撮影:早川弘美さま)

祖納のゴミ捨場跡地をチェックしたあと、東へ車を走らせ鳥を探します。丹念に電線をチェックしていると再びハイイロオウチュウを発見。昨日とは場所も違い、体色にも違いがあるので別個体です。ここでも良い感じの距離で観察ができました。島を半周回る形で鳥を探し、途中の小さな貯水池ではカイツブリ、セイタカシギ、コアオアシシギ、チュウジシギなどを確認。ヒバリシギは冬羽に換羽しているのがいて幼羽との違いをゆっくり観察できました。

コアオアシシギ

昼食と少しの休憩を挟んで探鳥の再開です。比川でアカガシラサギをゆっくり観察したあと、山へ向かいます。遊歩道で鳥を探している時にお客さんの一人がヨナグニサンの繭を発見。当たり前ですがアヤミハビル館で見たものそのものです。よくもまあこんなのを見つけたものだと皆さん感心しきりでした。その後、ラッキーなことにヨナグニカラスバトが飛ぶところが見られました。

ヨナグニサンの繭

アオムネスジタマムシ(撮影:門永洋子さま)

アオミオカタニシ(撮影:門永洋子さま)

山を離れ、平地へと移動し、各所のポイントを回りましたが、昨日のセジロタヒバリの姿は既になく、新しい種にも出会わず顔ぶれは同じでした。夕方の久部良ミトゥは塒入り前のシロガシラがうるさく騒いでいます。セイタカシギは8羽に増えていて、クロハラアジサシの小群が上空を舞っています。近くのさとうきび畑でキガシラセキレイを探していると黒く大きなものが林に飛び込んだとのこと。「オオコウモリかもしれませんよ」と話しているとお客さんが木にぶら下がっているのを見つけられたところで本日の探鳥は終了となりました。夕食後に鳥合わせと今日もプチ識別講座を。実際の音源を聞きながら、見た目での識別が難しい種などの識別を学びました。本日の確認種は60種でした。この3日間、リュウキュウコノハズクの声を聞こうと真っ暗な中を久部良ミトゥ近くまで歩いてみましたが、結局声は聞けませんでした。新しく建った自衛隊の施設が影響しているのかもしれませんね。

宿の夕食

ツアー5日日

いよいよ今日が最終日です。朝の散歩探鳥ではチュウシャクシギ、ケリ(昔は南西諸島では珍しかったが最近は時々記録されます)、ムナグロをゆっくり観察。夕日の見える丘では海上からセジロタヒバリ5羽の群れが鳴きながら飛来し、島内へ飛んでいきました。

今日は昼前のフライトなので探鳥の時間はそれほどありません。皆さんのリクエストから北牧場と森林公園を小1時間ほど探鳥することに。北牧場ではマミジロタヒバリ、ハヤブサなどをじっくり見て、森林公園ではアカヒゲの囀りを聞くことが出来ました。公園近くの林内でオオゴマダラとリュウキュウアサギマダラが鈴なりになっている木があり、皆さん感動しておられました。

ハヤブサ(撮影:早川弘美さま)

オオゴマダラの群れ

終了時に東の外れでベニバトの情報が舞い込みましたが、時間切れのため残念でした。空港で搭乗手続きを済ませたあとで鳥合わせを行い、5日間のバードウォッチングの旅が終了となりました。

今回はずっと晴天続きで鳥影が薄く、毎日30度超えの猛暑の中での探鳥になりました。また、水のある水田が無いなど環境的に厳しいこともありましたが、終わってみれば出現種は91種とまずまずの結果でした。お目当てのハイイロオウチュウとセジロタヒバリをじっくりと観察・撮影を出来たのは何よりで、色々と厳しい条件下でもやはり与那国島は珍鳥の渡る交差点なのだと思わせてくれるツアーでした。ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【前編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

沖縄県にはずっと非常事態宣言が出ていてツアーの開催が危ぶまれていましたが、9月末で解除になるというニュースが飛び込み、ほっと胸を撫で下ろしての実施となりました。

以前は春秋冬と幾度も探鳥に訪れていましたが、久方ぶりの与那国島です。聞くところによると道路事情にさほど変わりはありませんが、大きな自衛隊の駐屯地が出来上がり、鳥のポイントだったゴミ捨て場が無くなるなど様々と環境に変化があるようです。また、多くの水田は放棄されて草地に置き換わり、2期作もやらなくなったせいで湿地環境がほとんど無い様子で以前とは鳥を見るポイントも変わっているようでした。予報では10月1日からの5日間はほぼ晴天です。さあ、どういう探鳥になるのか期待半分、不安半分の始まりとなりました。

 

ツアー1日目

今回は現地集合、現地解散の探鳥です。台風の接近で参加が危ぶまれた方もいらっしゃいましたが、誰ひとり欠けること無く全員が集まれたのはツアーの成功を暗示しているようでした。皆さん思い思いに昼食を済ませてから宿で合流し出発です。集合前にサンコウチョウやアカチョウビンの鳴き声、中にはアサクラサンショウクイ!を観察された方もいらっしゃいました。これは否が応でも期待が膨らみます。

アサクラサンショウクイ(撮影:早川弘美さま)

まずは比川へ向かいました。島には北東部に祖納、南部に比川、西部に久部良と3つの集落があり、比川は一番こじんまりしている集落です。テレビドラマのDr.コトーの撮影地で一躍有名になった地でもあります。

Dr.コトーの建物

水田に水が無いせいで水路などに水辺の鳥たちの姿がありました。セイタカシギが出迎えてくれて、ゴイサギは隠れるようにそっといます。よく見るとオジロトウネンやヒバリシギ、アカアシシギの姿も。顔の黄色い今年生まれのホオジロハクセキレイなどを見ながら幼鳥と成鳥の違いなどを観察しました。

セイタカシギ(撮影:伊原やよいさま)

アカアシシギ

浜へ出てシギチ探しをしたあとはベニバトのポイントを経由して田原川へ。セイタカシギやインドハッカなどを観察していると目の前を色鮮やかな鳥が飛びました。キンバトの雄です。すぐ近くの林へ飛び込みましたが、その後姿を表すことはありませんでした。近くの農耕地ではツメナガセキレイがわらわらといます。キガシラセキレイの姿はないようです。お客さんの二人が電線に止まるクロヒヨドリを見つけたようですが、タッチアンドゴーですぐに飛去してしまったとのことで、残念。田原川では小鳥の塒入りを待ちましたが、結果はシロガシラばかりでめぼしい鳥は現れず、クイナ類の声も聞けませんでした。やはり環境が変わったせいでしょうか寂しい限りです。遠くの電線に止まる塒入り前のカラムクドリを見ていると「チュッ チュッ」と上空をセジロタヒバリが飛びます。その辺の畑に降りてくれないかなあと言いながら日の入りを迎え、初日の探鳥は終了しました。夕食後に鳥合わせを行い、本日54種の確認となりました。

探鳥風景

ツメナガセキレイ(撮影:早川弘美さま)

ツアー2日目

今日は日の出の時間に合わせて弁当持参で東崎(あがりざき)へ出発です。着いた頃には丁度水平線から太陽が登ったところでした。遠く西表島を右手に見ながら登る朝陽の下で食べる朝食は格別です。放牧地ではオオチドリやマミジロタヒバリを期待しましたが、ムナグロとツメナガセキレイのみでした。

東崎の日の出

与那国馬

食事後は祖納(そない)へ向かいました。浦田墓地では草むらから飛び出すアカガシラサギを発見。磯に降りたのを観察していると上空をムネアカタヒバリが飛びます。岩礁にはメダイチドリとムナグロもいるようです。本来は祖納の集落の中も探鳥ポイントの一つなのですが、緊急事態宣言が開けたとはいえ、今回は各集落の中を探鳥することは見送りました。その後、比川へ。水路のシギが増えています。3羽になったヒバリシギが割と近く、トウネンも一緒にいたので2種の幼鳥の違いをじっくりと観察しました。

アカガシラサギ冬羽(撮影:早川弘美さま)

ヒバリシギ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

林道ではゆっくりと車で流しながら鳥を探します。この時期ならブッポウソウがいるはずと思っていると電線に止まるブッポウソウを発見。皆さん撮影タイムです。公園の広場でチゴハヤブサやコサメビタキを見ているともうお昼の時間です。昨日から島の飲食店はようやく再開した様子でした。テーブルを一人ずつのパーテションで仕切ったコロナ対策がしっかりしているお店を見つけ、皆で与那国そばをいただきました。

ブッポウソウ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

与那国そば

食後は再び山へ。狙いはハイイロオウチュウやキンバトです。広場で鳥を待っていると上空にはハリオアマツバメやチゴハヤブサが飛びます。林の中を探索していると「コウモリ!」の声。よく見ると大きなコウモリが梢にぶら下がっています。ヤエヤマオオコウモリです。鳥ではありませんが今回これも見ておきたかった動物です。「顔がタヌキみたい」などと言いながらじっくりと堪能した後はアヤミハビル館へ向かいました。

ヤエヤマオオコウモリ

アヤミハビルとは与那国の言葉で世界最大級の蛾であるヨナグニサンのことです。「アヤミ」は「模様のある」、「ハビル」は「蝶」を意味します。同館はヨナグニサンの生態や亜熱帯の自然の素晴らしさを体感できる施設で、与那国島の動植物や人々とヨナグニサンの関わりなどを学ぶ貴重な機会となりました。鳥だけじゃなくこういったツアーも良いねと参加者の皆さんも喜んでおられました。

アヤミハビル館・玄関

アヤミハビル館・館内

館を出たあとは耕作地のツメナガセキレイの大群などを見ながら、久部良ミトゥに到着。久部良ミトゥは久部良集落の東側にある大きな湿地(池)で、水路で久部良漁港とつながっています。

久部良ミトゥ

着くといきなりアカガシラサギが飛び出します。この時期は冬羽で地味ですが、飛ぶと翼の白と背面のあずき色とのコントラストが綺麗です。池の奥では70羽ほどのダイサギ、アマサギ、コサギの群れが休んでいました。飛来したクロハラアジサシの群れの中にハジロクロハラアジサシが1羽混ざっていました。ここではコホオアカ、ムジセッカ、コヨシキリなどの新顔も出てくれました。シロガシラが増えてきてどこかでねぐらを取っているようでした。

コホオアカ(撮影:早川弘美さま)

日がかなり傾いたので本日締めの西崎(いりざき)へと向かいます。夕方、西崎にいると上空を鳴きながら渡っていく小鳥たちを見られることも多いので、夕陽とセットで期待します。与那国島での夕陽は水平線に沈むのでなく、はるか台湾の山並みに沈んでいきます。素晴らしい景色とかすかに聞こえる小鳥の声を聞きながら2日目の探鳥が終了となりました。夕食後に鳥合わせを行い、本日は58種の確認となりました。

西崎の日の入り

最西端の碑

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。