夏の富士山奥庭で亜高山帯の野鳥観察

Report by 吉成才丈 / 2021年8月21日~22日

真夏の暑さとは無縁の富士山五合目・奥庭ですが、直前の天気予報は雨…。少しでも好転することを願いつつ、新宿のバスターミナルを出発しました。途中、富士山の姿が見えてきてほっとしましたが、やはり厚い雲が気になります。今回は1泊2日の短い行程なので、できるだけよい条件で..と富士山に祈りながら向かいました。

車窓の富士山
車窓の富士山

昼すぎに奥庭荘に到着すると天気は曇りで、時折、陽も差し始めるという好条件。標高も2,200m近くあるので気温も20度ほどと涼しく、下界とは異なり快適そのものです。

奥庭荘
奥庭荘

なぜこの奥庭荘を訪ねたかというと、ここには高山では貴重な水場があり、亜高山帯の鳥たちが水を飲んだり水浴びに来る様子が間近で観察できるのです。間近で、ですよ!

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

さっそく観察・撮影のスタンバイをすると、ルリビタキやウソ、ホシガラスが水場にやってきてくれました。

ルリビタキ(幼鳥)
ルリビタキ(幼鳥)
ウソ(オス)
ウソ(オス)
ホシガラス
ホシガラス

すこし慣れてくると、皆さんも鳥たちの行動パターンが分かるようになり、水場の前後にとまる木や岩にとまる姿も撮れるようになります。

ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)
ルリビタキ(オス)

そして翌日の午前中も天気はもち、昼頃まで亜高山帯の鳥たちを楽しむことができました。

奥庭の魅力は、夏の暑い時期に亜高山帯の鳥たちが間近で楽しめること。
水場だけならほぼ歩かず、片道約300mの散策路を歩くと景色や野鳥、高山植物などが楽しめ、自分のペースで自由に観察・撮影ができること。体力に自信のない方もOKです。そして雲がかからなければ、夕方には赤く染まる富士山が間近に見えることなど。今回は雲がかかって赤富士は見られませんでしたが、鳴声をたよりにキクイタダキやメボソムシクイを撮影された方もいました。

 

暑さと鳥の端境期で出かける場所も少ないこの時期には、標高が高くて快適な奥庭は最適な鳥見スポットです。来年は、赤く染まる迫力ある富士山もぜひ..。

目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません
目の前の富士山の迫力は写真では伝わりません

この記事を書いた人

吉成 才丈 よしなり としたけ
1962年生まれ、東京都在住。東京都千代田区で、バードウォッチング専門店<Hobby's World(ホビーズワールド)>および鳥類調査会社<(株)日本鳥類調査>経営。バードウォッチングのガイドで、全国各地も巡る。歳時記的に、毎年同じ時期に同じ探鳥地を訪ねることが多く、タカやシギチの渡り、ガン類の越冬、海鳥などを観察・撮影するのが楽しみ。バードウォッチングは、だれでも気軽に楽しめる趣味だと思っています。難しく考えることなく、皆さんのペースで楽しんで頂けるように心がけています。

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

前日までの天気予報では半分以上が雨予報、そして風も強い予報でどんなツアーになるかとドキドキしながらのツアースタートとなりました。

初日は稚内空港で合流後、サロベツ湿原周辺でバードウォッチングです。まず最初に訪れたのは幌延ビジターセンター、通称「下サロベツ」と呼ばれる場所です。

 

ノビタキ
ノビタキ(オス)

木道を歩くとすぐに出会えたのは、北海道を代表する草原性の夏鳥の一種ノビタキです。営巣の準備をしているようで、オスメスがせわしなく飛び交っています。真っ黒で胸のオレンジ色が目立つオスのノビタキに、一気にテンションが上ります。何度もノビタキに足止めをされながらゆっくり歩いていくと、今後は林から美しい囀りが。ノゴマです。一瞬だけ美しい赤い喉を見せてくれましたがすぐにどこかへ行ってしまいました。また利尻、礼文で出会えることに期待です。

その後はレモンイエローのセキレイ、ツメナガセキレイも姿を現してくれました。最初はかなり遠い距離でしたが、帰り際には目の前の低灌木にとまり、しっかりと爪の長いところまで見せてくれたり、一瞬ですがメスも姿が見れたりと楽しませてくれました。

ツメナガセキレイ
姿を見せてくれたツメナガセキレイ

その後、初日の本命であるサロベツ湿原に向かいます。道中で見られた利尻島の景色は、天から光が差し込み幻想的な風景でした。

利尻島
幻想的な利尻島の風景

サロベツ湿原では、時期が少し早いですがシマアオジが一番の目玉、その他にもオオジシギやチュウヒの観察を狙います。木道を歩き探しますが、この日の気温が低かったせいか鳥の活性が低く、全く姿が見えません。やっと見られたノビタキを利尻島背景で観察します。

ノビタキ
ノビタキ(オス)

シマアオジも渡ってきていないようで観察できませんでしたが、木道が終わる直前に上空から「ジュ~ビヤク!ジュービャク!ブブブブブ!」の音が!オオジシギです。上空で2羽がディスプレイフライトを始めたようで、写真に撮るのは難しかったですが、素敵な求愛行動を観察できました。その後も目の前の湿原をV字飛行する姿が。

チュウヒ
チュウヒ(オス)

チュウヒのオスです。すぐに木の陰に消えていってしまいましたが、サロベツ湿原を代表する草原の鳥たちに出会うことができました。

 

2日目はあいにくの雨ですがフェリーに乗り、一路礼文島へ向かいます。途中の航路ではアカエリヒレアシシギの群れに何度も出会い、中にはハイイロヒレアシシギの綺麗な個体も混ざっていました。

アカエリヒレアシシギ・ハイイロヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギとハイイロヒレアシシギ

観察中突如ぴょんぴょんと跳ねる生き物の姿が。写真を撮るとキタオットセイです。合計で15頭以上いたでしょうか。とても楽しませてくれました。

キタオットセイ
キタオットセイ

礼文島に到着後は北部で探していきます。あいにく島の上部は霧の中。海岸線を中心に探します。途中の海岸にはシノリガモやウミアイサが見られ、じっくりと観察することができました。

シノリガモ
シノリガモ

旧礼文空港にはガンの仲間、亜種オオヒシクイが4羽採餌しています。ここからどこまで渡っていくのでしょう。

北部の桜の名所へ行こうと向かう途中には、上空に大きなシルエットが。オジロワシかな?と双眼鏡を覗くと、この時期には珍しいオオワシの若鳥でした。この鳥がこの時期に見られるチャンスがあるのも、サハリンに近い礼文島ならではです。

オオワシ
オオワシの若鳥

その後は霧が濃く鳥が見えないため撤退、花の名所として特に有名な礼文島の高山植物を見るため高山植物センターへ。

カワラヒワ
カワラヒワ

花を見ていると、お客様から「あれヒメウ?」の声が。
ふと上を見ると、何故かマナヅルが飛んでいます。予期しない場所で予期しない鳥に出会ったため、全員が写真も撮ることができず、ただ呆然と眺めていました。

イワツバメ
道中にいたツバメ

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!