種名 | シャチ |
英名 | Killer whale |
学名 | Orcinus orca |
体長 | オス 約9m メス 約7m |
体重 | オス 約7t メス 約4t |
分布 | ほぼ全世界の海洋 |
熱帯から北極、南極まで生息しており、分布が最も広い鯨類の一種です。大型の鯨類やアザラシ、海鳥、魚類、イカなど多様な生き物を食べますが、それぞれの環境下により実際に食べているものは異なります。オスはメスに比べて体がずっと大きくなり、背びれが高くのびます。また、オスはメスに比べて胸ビレも広く大きいため、ヒレにより見分けることが可能です。
現在、学名は「Orcinus orca」とひとくくりにされていますが、シャチには身体的特徴・生態に異なる性質があることがわかっており、近い将来複数の種類に分けられる可能性があります。
シャチの基本になる集まりは、母子を中心とした家族群(サブポッド)とよばれるもので、サブポッドがいくつか集まって拡大家族群であるポッドをつくります。それぞれのポッドは独自の声のレパートリーをもち、群れで協力して子育てをし、母親以外のメスが子どもと一緒に遊ぶ行動がよく観察されています。子どもが海面に出て確実に呼吸ができるよう母親は子供の体を下から持ち上げて支えますが、群れで弱った仲間が出たときも同様に支えているのが観察されており、とても愛情深い動物であることがわかります。
知床羅臼沿岸は2006年ごろからシャチの出現情報が増え、現在の日本近海においてシャチとの遭遇率が最も高い海域です。5~6月をピークに、年に200頭前後のシャチがこの海域に現れます。羅臼付近の海域の群れは平均11頭ほどで、群れの中に未成熟個体の頭数が多い傾向があるようです。子どもは警戒心が薄く好奇心が強いため、船に興味をもち近づいてくることがあります。幼い子どもは白い部分が黄色みを帯びていることで見分けられます。好奇心旺盛で、ブリーチングやスパイホップなどの水面行動も観察されます。
種名 | マッコウクジラ |
英名 | Sperm whale |
学名 | Physeter macrocephalus |
体長 | オス 約18m メス 約11m |
体重 | オス 約45t メス 約15t |
分布 | 両半球の熱帯から氷縁にかけて |
マッコウクジラはハクジラの仲間で、地球上で最も大きな歯をもつ生物です。羅臼沖は離岸わずか5kmほどで深海域があり、水深1000mを超える場所まで潜水し、イカ類を中心に深海性の魚類などを捕食しています。
特徴的な巨大な頭部は体の4分の1から3分の1を占め、その中には脳油が詰まっており、それが精液(sperm)に似ていることから「Sperm whale」という英名が付けられました。普段は液体である脳油が、冷やされると個体になって比重を増すため、潜水と浮上の際の浮力調節に用いられているとする説もあります。また、根室海峡にやってくるクジラはすべてオスのマッコウクジラです。
オスの方が大きく、またオスとメスで分布が異なります。メスは小笠原諸島のような低緯度の温かい海で血縁の近いメス同士で群れを作り、群れのメス全員で子育てをします。メスの子どもは成長後も母親の群れにとどまり、オスは成長すると母親の群れを離れ、同じ世代のオスとともに高緯度の海まで少しずつ移動するようになります。成長にともないオスの群れの個体数は減っていき、最終的には単独もしくは2頭連れとなります。ときどきメスたちのいる温かい海に戻ってきて、メスの群れを渡り歩きながら繁殖活動を行います。そのため知床半島沿岸には基本的にメスはおらず、迫力のある大きなオスのマッコウクジラを見ることができます。
ブロー(噴気)を見つけることで、マッコウクジラを探します。噴気は長い間クジラの体内で温められた空気が冷たい大気にふれて霧になったもので、浮上した際に吹き上げられます。他のハクジラ類と同様に噴気孔はひとつですが、マッコウクジラは大きく左に偏った位置にあります。そのため斜め前方に飛び散るような噴気を見つけたら、マッコウクジラです。マッコウクジラは海面にとどまって呼吸を繰り返した後再び潜っていき、その際に海面に尾びれを高くあげ、深海へと潜航していきます。
知床の川は多くのサケ科の魚が海と川を行き来することが特徴です。5月頃にサクラマスが遡上し始め、8~9月に上流で産卵を始めます。カラフトマスは8月中旬から10月に遡上し、9月にピークを迎えます。シロザケは9月から翌年の1月にかけて遡上し、10月にピークを迎えます。
サケ科の魚は孵化後、数か月後で川を出て海に入り北太平洋を回遊するようになります。そして成長し海の栄養を蓄えたサケは、また産まれた知床の川へと戻ってきます。遡上するため川に入った途端にサケは色が変わり、婚姻色とよばれる赤っぽい斑肌になり、皮膚は厚く鱗ははがれにくくなります。オスは上顎がのび下顎に覆いかぶさり「鼻曲がり」とよばれる状態になります。
ヒグマは遡上するサケを食べ、脂肪を蓄えて冬眠に入ります。また鳥やキツネなど他の生き物もサケを食べ、残りはその後分解され土壌の栄養になり、森を育てています。流氷による海の豊富な栄養は、サケやマスにより大量に陸へと運ばれています。アイヌの人々はサケを「カムイチェップ(神の魚)」とよびました。まさしくサケは知床に生きる多くの生き物たちを支えています。
知床は世界で最南端の流氷到着地ですが、どうして流氷が見られるのでしょうか。その答えはオホーツク海にあります。カムチャッカ半島、千島列島、北海道に囲まれたこの海域は、水深が浅く、周囲の海域の海流と混ざることが少ないのです。そこにロシアのアムール川から大量の淡水が注ぐと、海の表面に塩分の少ない層を作ります。この層に「シベリアおろし」とよばれる冷たい季節風が吹き付けると、通常よりも高い温度で海水が凍り、流氷が誕生すると考えられています。
知床半島では例年1月下旬頃から3月下旬頃まで観察できます。ウトロ側で見られる断崖は、こうして接岸する流氷によって浸食されたとも考えられています。
冬の知床の風物詩といえる流氷は、特に観光船から見るのが人気で、羅臼では国後島から昇る朝日を見られる夜明けのクルーズがおすすめです。
※図/流氷ができる仕組み
春、流氷の底に付着するアイスアルジーとよばれる植物プランクトンが、流氷が溶けるとともに大繁殖。それを餌に動物プランクトンが発生します。この動物プランクトンを餌にカタクチイワシなどの小魚が群がり、それを狙ってイルカやクジラなどの鯨類がやってきます。クジラやイルカの死体が浜に漂着すると、クマや猛禽類がそれを餌にします。また、秋に遡上するサケやマスも食料になります。こうして海の養分は、まわりまわってクマをはじめとする陸上動物に取り込まれていきます。
陸上動物に取り込まれた海の養分は、排泄物として森の養分になり、森の養分は植物の糧となります。植物の養分は、あるものは動物に取り込まれ排泄物として、あるものは枯れて土中のバクテリアに分解されて川に溶け、海に流れ込みます。流れ込んだ森の養分は、やがて海の命の糧になります。
流氷から海、川、陸へとつながるダイナミックな食物連鎖。知床には壮大な生命の循環が息づいています。
※上記は、野生動物の出現を約束したものではなく、気象状況や現地の環境の変化により出現時期が変動する可能性があります。
※流氷の到来は、気温や風、海流の影響を強く受けるため、予想される時期と変動する可能性があります。
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