コペンハーゲンに山を

(C)2020 Good Company Pictures

デンマーク

コペンハーゲンに山を

 

Making a mountain

監督:ライケ・セリン・フォクダル、キャスパー・アストラップ・シュローダー
出演:ビャルケ・インゲルスほか
日本公開:2023年

2022.12.28

北欧の世界観から生まれた、ゴミ焼却場×スキーというイノベーション

2011年、デンマークの首都コペンハーゲンにあるゴミ処理施設建て替えのコンペ結果発表会が行われた。満場一致で選ばれたのは、同国のスター建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)建築事務所。

彼らのアイデアは、ゴミ焼却発電所の屋根に人工の山を作ってスキー場を設置し、街の新たなランドマークにするという奇想天外なものだった。

しかし完成までの道のりは苦難の連続で、予算問題をはじめ課題や疑問が次々と積み重なっていく。そして2019年10月、コペンハーゲンに標高85メートルの新しい山「コペンヒル」が誕生。

年間3万世帯分の電力と7万2000世帯分の暖房用温水を供給する最新鋭のゴミ焼却発電所でありながら、屋上にはスキー場のほかレストランなども併設する夢のような施設に生まれ変わった。

西遊旅行ではグリーンランドのツアーの最初にデンマークの首都コペンハーゲンに宿泊するので、コペンヒルをおそらく見られる機会もあるのではないかと思います(調べたところ空港から車で10分ほどようです)。

グリーンランド(デンマーク領)とデンマークの国土は北海・フェロー諸島・アイスランドなども飛び越していかなければいけないので相当な距離がありますが、デンマークという国がそのような地理条件にあるということは、コペンヒルという建築に大きく影響しているように思えます。

ビャルケ・インゲルスは本作の冒頭で、「土地が平坦であること」はどういうことかについて語ります。有機的な建築は単体として箱のようにボンッと置かれるわけではなく、外部環境をいくらか吸収・咀嚼し呼吸もする存在であることが理想的です。そして、その周辺世界のランドスケープ(景観)の見え方を変えてくれることを意図すると同時に、建築自体が発信主体となってランドスケープやその土地に住む人々に対して逆に影響を与えることも期待されています。

コペンヒルはまさにそのように、ランドスケープや人々の心と建築との間に相互交流が起こる有機性を持ち合わせているということが、約10年にわたる映像アーカイブとインタビューによって明らかになっていきます。

特に僕が気付いて面白かったのは、映画の中ではあまり詳細に説明がないのですが、ゴミが焼却炉にすべり落ちていく様子と、人がスキーで斜面を滑る様子が相似した形で表現されていたことです。それは、人間がゴミのような存在だという意味ではなく、観光客・来訪者にスキーを滑りながら(観客は滑った気持ちになりながら)環境問題に関する価値転換を図ってほしいという思いがこもっているということです。

おそらく十中八九「スキーヤー」たちは、「自分たちはゴミ焼却場の上を滑っている」という不思議な気持ちを抱いて斜面を下っていきます。その過程で、仮に自分の心が平坦めな大地だったとしたら、ボコボコっと山ができていく。その山に登ってみて景色を眺めてハッとするひとときというのが、価値転換の瞬間ということなのだと思います。

老朽化した巨大ゴミ処理施設が観光名所へと生まれ変わるまでを追った『コペンハーゲンに山を』は、1月14日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー、その他詳細は公式ホームページをご確認ください。