ポルト

90d8210a3d43cd11(C)2016 Bando a Parte – Double Play Films – Gladys Glover – Madants

ポルトガル

ポルト

 

Porto

監督:ゲイブ・クリンガー
出演:アントン・イェルチン、ルシー・ルカース
日本公開:2017年

2019.2.13

港町・ポルトですれ違う、恋人たちの記憶

ポルトガル第二の都市・ポルト。家族に見放されてしまった26歳のアメリカ人ジェイクと、恋人と一緒にこの地にやってきた32歳のフランス人留学生マティは、考古学調査の現場でお互いの存在を意識する。カフェでマティを見つけたジェイクは彼女に声を掛け、その後一夜を共にする。しかしマティには恋人がいた。一夜の出来事を信じたいジェイクと、彼とは違う未来を見るマティ。あるひと時の、異なる2つの見え方が交錯していく・・・

本作の映像はフィルムとデジタルカメラ両方で撮影され、さらにシーンごとに違うアスペクト比(縦横比)が採用されています。「旅と映画」では「旅」に重きをおいて極力映画の専門用語を使わないようにして作品を紹介していましたが、本作については物語の理解につながるので専門知識を織り交ぜて紹介したいと思います。

まずはフィルムとデジタルの違いについてです。一番大きな違いは、「記録可能なのが一度限りかどうか」という点です。デジタル撮影ではメディアがSDカード等に記録され、すぐに消したりコピーしたりできます。フィルム撮影はフィルムという「物」に焼きけられる、一度限りの記録です。

次にアスペクト比についてです。現在のデジタルテレビは16:9というサイズですが、ビスタサイズやスコープサイズなどといった様々なアスペクト比の中間ということで16:9が採用されました。一般的に「映画っぽい」アスペクト比として認識されているのはスコープサイズなど横長のものです。

横長の画面は人間の視野に近く、「見る人」にとって心地よいです。本作ではそこからアスペクト比が狭まる(厳密に何対何かはわかりませんが)場面があります。私は何作かブラウン管テレビ時代に主流だった4:3というサイズ(スタンダードサイズ)で映画を撮ったことがあり、撮ったのは子どもが主人公の作品ですが、子どもの視点(のめり込むような好奇心)や記憶を表現するのに4:3は適していると私は考えています。本作でも、狭めなアスペクト比は過去を表現するのに用いられています。

こうした撮影方法がラブストーリーという枠の中でユニークに機能した『ポルト』。美しい町並みのポルトへの旅情を掻き立てる秘密を、技術面から少しでもご紹介できていれば幸いです。

ポルトガル人の道から聖地サンティアゴへ

ポルトガルから陸路で国境を越えサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。

port

ポルト

港湾都市ポルトは、リスボンに次ぐポルトガル第2の都市です。有名なポートワインは、この町から18世紀にイギリスに大量に輸出され、広く知られることとなりました。中世の面影を残す美しい旧市街は、「ポルト歴史地区」として世界遺産に登録されています。