ヤイロチョウの棲む島・巨済島(コジェド) 囀りの季節の撮影 4日間

Report by 戸塚学 / 2025年5月25日~28日

1日目 晴れ

釜山空港で合流して撮影ポイントの成る場所で地元の保護協会の方と合流して各ポイントを巡ることになりました。初めに「世界初」というヤイロチョウの保護区の案内をしていただき、特別に保護区の中にある、昨年ヤイロチョウが使った古巣を見せてもらいました。
ヤイロチョウは、毎年巣造りをするので問題はないとのことでした。ただし、周辺で今年も営巣する可能性が大きいので、環境的な撮影をすることができたのは良かったです。韓国での巣は岩の上が70%、木で20%、地面が10%で、地面の場合はほとんど失敗するとのことでした。理由は捕食者に襲われる確率が高く1番はイタチで、他にはカラスなどとのこと。 その後は各ポイントを廻り、ヤイロチョウのさえずりを確認すると、遠くでさえずりを確認することができました。

2日目 晴れ

朝6時に出発して車で移動をしながら保護協会の方と一緒に探します。さえずりが聞こえる場所で待つのですが、なかなかに厳しい。近くまで来ても手前の枝葉が邪魔をして見えない!声は超近くなのに見えない!
しばらくすると何かが飛ぶ姿が視線に入り視線の先を見ると?ヤイロチョウだ!!!何とか抜ける場所を見つけるがお客様に説明が難しい。それでも何とか確認をすることができました。

ヤイロチョウ
ヤマガラ

一旦朝食でホテルに戻ると、ホテル脇の山の上にタカが飛んでいるというので、見るとハチクマが10羽ほど旋回している?これは繁殖なのか?渡りなのか?気になるが、それよりも撮影できる距離ならと悔しい思いをする。

ハチクマ

朝食後はいったん休憩を30分ほど入れてから、何か所かを廻り同じような撮影を繰り返すことになるが、ほとんどが近くまで来ても姿を見ることさえできないのが悔しい。地元の方も「ヒナがいれば巣の近くで確実に見られるけど、さえずりの場合はやはり難しい」とのこと。それでも私たちの真上に来てお腹の赤い部分をしっかり見られ撮影もできたことはラッキーでした。

ヤイロチョウ
ヤイロチョウ


昼食後は休憩を入れて16時からスタートです。コウライウグイス、コウライキジ、ブッポウソウは見られたが本命のさえずりが聞こえない。ようやく声がするので待っていると同じ場所から動かない。必死に双眼鏡でさがすと、手前の青葉の奥にコバルトブルーが見えた?と思い、少しづつ動くとやはりそこにヤイロチョウがいた!

ヤイロチョウ

ただしお客様に教えることができない。私の位置以外見えないし、少しでも目を離すと再捕捉が難しい。そこで、みなさんのカメラを借りて私が撮影をすることにしました。その後は、夕食に合わせて18時終了となりました。

ブッポウソウ
キセキレイ

3日目 晴れ

珍しくこの日も晴れ。昨日同様6時スタートです。しかしこの日はさえずりが聞かれない。どういうことかわからないが、なぜか日によってまったく状況が変わることがあるのは経験的に分かっているが、まさしくそんな日でした。よくさえずるポイントを探すがまったくさえずりが聞かれず、ひたすら車で移動しながら声を探します。ようやくさえずりが聞かれる場所を見つけ探していると、なんと2羽いたが飛ばれてしまいました。喧嘩をしている様子は見られなかったのでペアだと思われます。悔しい・・・

一旦朝食を食べたあと、1時間ほど休憩を入れて再スタート。やはり探せど、探せど見つからない・・・結局、撮影どころか見つけることができませんでした。昼食に行く途中、小さな島がサギのコロニーになっていたので少し覗くと、ダイサギ、チュウサギ、アマサギ、アオサギの姿を確認。海岸でカラシラサギはいないか探すが見つかりませんでした。午前の部は終了となりました。

サギのコロニー
モズ

夕方は、一番確率が高そうな場所で探すことに。コウライキジを発見したお客様がチャレンジするも、まんまと逃げられてしまいました。これは私の想像だが、きっと狩猟鳥なので人間に対しての警戒心が強いんじゃないかなと思っています。赤松のてっぺんにとまるチゴモズとサンショウクイを撮れたのはラッキーでした。その後ヤイロチョウのさえずりが聞こえたので期待をしたが、結局探し当てることもできず終了となってしまいました。

チゴモズ
サンショウクイ

4日目 晴れ

最終日なので、早朝の2時間が実質ラスト!
昨日の夕方かなり近くでさえずっていた場所へまっすぐ向うが・・・声がしない。全くしない。少ない時間で粘るのは危険なので次の場所へ向かうがことごとく声が無い。これは困ったと焦っていると、声が!車を停めて外へ出る。さえずりを頼りに近づくと近い!しかしどうやっても見つけられない。ヤイロチョウのさえずりに触発されたのか、カラアカハラとマミジロキビタキも囀り出す。本命も狙いたいがこの2種も捨てがたい・・・!おまけにホオジロの声まで加わった?ホオジロと不審に思い声の方向を見ると鳥がいた。後ろ姿はホオジロだ。ふと横を向くと眉毛が黄色い!ミヤマホオジロだ。みなさんに撮影してもらおうと呼ぶと飛ばれてしまいました・・・悔しい。

カラアカハラ

結局ヤイロチョウは同じ場所でしばらくさえずった後、森の奥へ離れて行きました。最後の最後に期待をして向かった場所は、なぜかこんな早くから林道沿いで伐採作業をしていて、前に進めずやむなくUターンして、朝一で行った場所に戻るも結局声も聞くこともなく終了となってしまった。朝食後にそのまま釜山空港へ向かい無事終了となりました。

 

ヤイロチョウ=地面のイメージがあるが、さえずりは木の中間部から上層部にいることが多く、声を頼りに探しても見上げになることで手前の枝葉が邪魔で探すのに苦労しました。今回は手探りの部分もあったが、今後は早朝のみヤイロチョウ探しにして、他はブッポウソウ、コウライウグイス、チゴモズなどを探すのが良いかもしれない。ヤイロチョウの撮影は非常に難しいです。

ヤイロチョウ
ヤイロチョウ
 

撮影できた鳥
アオサギ・チュウサギ・ダイサギ・アマサギ・ハチクマ・ブッポウソウ・コゲラ・ヤイロチョウ・サンショウクイ・チゴモズ・モズ・ミヤマカケス・ヤマガラ・シジュウカラ・ヒガラ・カラアカハラ・キセキレイ・ミヤマホオジロ

見られた&声が聴かれた鳥(S=さえずり)
コウライキジ・カワウ・コサギ・ウミネコ・ドバト・キジバト・カッコウS・ホトトギスS・アカショウビンS・オオアカゲラ・ヤマゲラS・コウライウグイス・サンコウチョウS・カササギ・ハシボソガラス・ハシブトガラス・ツバメ・エナガ・ヒヨドリ・ウグイスS・マミジロキビタキS・イソヒヨドリ・シロハラS・ムクドリ・カワラヒワ・スズメ

この記事を書いた人

戸塚 学 とつか がく
高校3年生の時写真に興味を持ち、幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影をする。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから、野鳥の撮影にのめり込み、「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。野鳥を中心としたネイチャー系フォトグラファーを目指す。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどにに多数発表。
●日本野鳥の会会員 ●西三河野鳥の会会員 ●SSP 日本自然科学写真協会会員

珍鳥が渡る交差点!秋の与那国島5日間【前編】

Report by 大西敏一 / 2021年10月1日~5日

 

沖縄県にはずっと非常事態宣言が出ていてツアーの開催が危ぶまれていましたが、9月末で解除になるというニュースが飛び込み、ほっと胸を撫で下ろしての実施となりました。

以前は春秋冬と幾度も探鳥に訪れていましたが、久方ぶりの与那国島です。聞くところによると道路事情にさほど変わりはありませんが、大きな自衛隊の駐屯地が出来上がり、鳥のポイントだったゴミ捨て場が無くなるなど様々と環境に変化があるようです。また、多くの水田は放棄されて草地に置き換わり、2期作もやらなくなったせいで湿地環境がほとんど無い様子で以前とは鳥を見るポイントも変わっているようでした。予報では10月1日からの5日間はほぼ晴天です。さあ、どういう探鳥になるのか期待半分、不安半分の始まりとなりました。

 

ツアー1日目

今回は現地集合、現地解散の探鳥です。台風の接近で参加が危ぶまれた方もいらっしゃいましたが、誰ひとり欠けること無く全員が集まれたのはツアーの成功を暗示しているようでした。皆さん思い思いに昼食を済ませてから宿で合流し出発です。集合前にサンコウチョウやアカチョウビンの鳴き声、中にはアサクラサンショウクイ!を観察された方もいらっしゃいました。これは否が応でも期待が膨らみます。

アサクラサンショウクイ(撮影:早川弘美さま)

まずは比川へ向かいました。島には北東部に祖納、南部に比川、西部に久部良と3つの集落があり、比川は一番こじんまりしている集落です。テレビドラマのDr.コトーの撮影地で一躍有名になった地でもあります。

Dr.コトーの建物

水田に水が無いせいで水路などに水辺の鳥たちの姿がありました。セイタカシギが出迎えてくれて、ゴイサギは隠れるようにそっといます。よく見るとオジロトウネンやヒバリシギ、アカアシシギの姿も。顔の黄色い今年生まれのホオジロハクセキレイなどを見ながら幼鳥と成鳥の違いなどを観察しました。

セイタカシギ(撮影:伊原やよいさま)

アカアシシギ

浜へ出てシギチ探しをしたあとはベニバトのポイントを経由して田原川へ。セイタカシギやインドハッカなどを観察していると目の前を色鮮やかな鳥が飛びました。キンバトの雄です。すぐ近くの林へ飛び込みましたが、その後姿を表すことはありませんでした。近くの農耕地ではツメナガセキレイがわらわらといます。キガシラセキレイの姿はないようです。お客さんの二人が電線に止まるクロヒヨドリを見つけたようですが、タッチアンドゴーですぐに飛去してしまったとのことで、残念。田原川では小鳥の塒入りを待ちましたが、結果はシロガシラばかりでめぼしい鳥は現れず、クイナ類の声も聞けませんでした。やはり環境が変わったせいでしょうか寂しい限りです。遠くの電線に止まる塒入り前のカラムクドリを見ていると「チュッ チュッ」と上空をセジロタヒバリが飛びます。その辺の畑に降りてくれないかなあと言いながら日の入りを迎え、初日の探鳥は終了しました。夕食後に鳥合わせを行い、本日54種の確認となりました。

探鳥風景

ツメナガセキレイ(撮影:早川弘美さま)

ツアー2日目

今日は日の出の時間に合わせて弁当持参で東崎(あがりざき)へ出発です。着いた頃には丁度水平線から太陽が登ったところでした。遠く西表島を右手に見ながら登る朝陽の下で食べる朝食は格別です。放牧地ではオオチドリやマミジロタヒバリを期待しましたが、ムナグロとツメナガセキレイのみでした。

東崎の日の出

与那国馬

食事後は祖納(そない)へ向かいました。浦田墓地では草むらから飛び出すアカガシラサギを発見。磯に降りたのを観察していると上空をムネアカタヒバリが飛びます。岩礁にはメダイチドリとムナグロもいるようです。本来は祖納の集落の中も探鳥ポイントの一つなのですが、緊急事態宣言が開けたとはいえ、今回は各集落の中を探鳥することは見送りました。その後、比川へ。水路のシギが増えています。3羽になったヒバリシギが割と近く、トウネンも一緒にいたので2種の幼鳥の違いをじっくりと観察しました。

アカガシラサギ冬羽(撮影:早川弘美さま)

ヒバリシギ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

林道ではゆっくりと車で流しながら鳥を探します。この時期ならブッポウソウがいるはずと思っていると電線に止まるブッポウソウを発見。皆さん撮影タイムです。公園の広場でチゴハヤブサやコサメビタキを見ているともうお昼の時間です。昨日から島の飲食店はようやく再開した様子でした。テーブルを一人ずつのパーテションで仕切ったコロナ対策がしっかりしているお店を見つけ、皆で与那国そばをいただきました。

ブッポウソウ幼鳥(撮影:早川弘美さま)

与那国そば

食後は再び山へ。狙いはハイイロオウチュウやキンバトです。広場で鳥を待っていると上空にはハリオアマツバメやチゴハヤブサが飛びます。林の中を探索していると「コウモリ!」の声。よく見ると大きなコウモリが梢にぶら下がっています。ヤエヤマオオコウモリです。鳥ではありませんが今回これも見ておきたかった動物です。「顔がタヌキみたい」などと言いながらじっくりと堪能した後はアヤミハビル館へ向かいました。

ヤエヤマオオコウモリ

アヤミハビルとは与那国の言葉で世界最大級の蛾であるヨナグニサンのことです。「アヤミ」は「模様のある」、「ハビル」は「蝶」を意味します。同館はヨナグニサンの生態や亜熱帯の自然の素晴らしさを体感できる施設で、与那国島の動植物や人々とヨナグニサンの関わりなどを学ぶ貴重な機会となりました。鳥だけじゃなくこういったツアーも良いねと参加者の皆さんも喜んでおられました。

アヤミハビル館・玄関

アヤミハビル館・館内

館を出たあとは耕作地のツメナガセキレイの大群などを見ながら、久部良ミトゥに到着。久部良ミトゥは久部良集落の東側にある大きな湿地(池)で、水路で久部良漁港とつながっています。

久部良ミトゥ

着くといきなりアカガシラサギが飛び出します。この時期は冬羽で地味ですが、飛ぶと翼の白と背面のあずき色とのコントラストが綺麗です。池の奥では70羽ほどのダイサギ、アマサギ、コサギの群れが休んでいました。飛来したクロハラアジサシの群れの中にハジロクロハラアジサシが1羽混ざっていました。ここではコホオアカ、ムジセッカ、コヨシキリなどの新顔も出てくれました。シロガシラが増えてきてどこかでねぐらを取っているようでした。

コホオアカ(撮影:早川弘美さま)

日がかなり傾いたので本日締めの西崎(いりざき)へと向かいます。夕方、西崎にいると上空を鳴きながら渡っていく小鳥たちを見られることも多いので、夕陽とセットで期待します。与那国島での夕陽は水平線に沈むのでなく、はるか台湾の山並みに沈んでいきます。素晴らしい景色とかすかに聞こえる小鳥の声を聞きながら2日目の探鳥が終了となりました。夕食後に鳥合わせを行い、本日は58種の確認となりました。

西崎の日の入り

最西端の碑

この記事を書いた人

大西 敏一 おおにし としかず
1961年生まれ。大阪府在住。野鳥歴45年。フリーランスとして鳥類調査をメインに執筆、講演、ツアーガイドなどに携わる。離島の渡りに関心があり、韓国の島嶼にも長年通い続けている。シギ・チドリ類やムシクイ・ヨシキリ類などが好み。主な著書に「日本の野鳥590/650」(平凡社)、「世界のカワセミハンドブック」(文一総合出版)などがあり、協力図書も多い。