初夏の石垣島でツルクイナ、オリイヤマガラに挑戦【前編】

Report by 簗川堅治 / 2021年6月4日~6日

 

梅雨真っただ中の石垣島で、観察難易度が極めて高いツルクイナに挑戦するコアなツアーです。そして、もうひとつ、ヤマガラの亜種オリイヤマガラも石垣島では観察難易度が高いのですが、これにも挑戦!

 

天気予報ではツアー開始頃から雨でしたが、実際には曇りで経過しました。ただ、於茂登岳は雨雲がかかっていたため、この日の(オリイ)ヤマガラ挑戦は諦めました。

まずは空港そばの海岸に行きました。アジサシ狙いでしたが、黒いクロサギがいたくらいでした。その他、南西諸島ならではの(イシガキ)ヒヨドリ、(オサ)ハシブトガラス、(リュウキュウ)メジロなどを観察しました。地元では「ユーナ」と呼ばれるビーチハイビスカスがきれいでした。

続いてお馴染みのカタグロトビです。「いたっ!」と思ったら、すぐ林陰に入ってしまい、それっきりでしたが、シロハラクイナやシロガシラを観察しました。シロハラクイナはどこにでもいて、ちょくちょく目の前には出てきますが、撮影となるとなかなか難しく、厄介な南西諸島の鳥です。

リュウキュウコノハズク(撮影:大塚敦雄さま)

今度は森へ。早速、2ヶ所でのリュウキュウコノハズクと(リュウキュウ)アオバズクを観察しました。夜とはひと味違う印象です。(リュウキュウ)アカショウビンの声もします。その後は、また海岸へ出て、白いクロサギ2羽とシロチドリ2羽を観察しました。白いクロサギも南西諸島ならではです。

クロサギ白色型(撮影:荒井隆之さま)

また森林へ移動し、待つことしばし。来ました!(リュウキュウ)アカショウビンです。すぐそばで餌を探しています。燃えるような赤い色、そして(リュウキュウ)アカショウビンの特徴の体上面の紫色がとてもきれいです。みなさん、夢中でシャッターを切っています。その後は一部の人のみでしたが、カンムリワシ、オオクイナも観察できました。

(リュウキュウ)アカショウビン(撮影:大塚敦雄さま)

夕方になり、いよいよツルクイナに挑戦です。とあるポイントで、ひたすらじっと待ちます。シロハラクイナや(リュウキュウ)アカショウビン、シロガシラなどが鳴いています。カルガモや(オサ)ハシブトガラスが飛ぶ度に、一瞬、ドキッとします。そして、待機してから約40分、飛んできました、ツルクイナです!それもずいぶんと高い所をゆっくりと飛んで、こちらに向かってきました!これはラッキー!♂の赤い額板がわかるほど、よく見えました。残念ながカメラを構えた頃には後ろ姿でしたが、それでも初日であっさりと目標達成です!

ムラサキサギ(撮影:荒井隆之さま)

気分よくホテルへ向かう途中では、これまた時期的になかなか見られないキンバトとムラサキサギのきれいな姿を見ることができ、上出来な初日となりました。

 

この記事を書いた人

簗川 堅治 やながわ けんじ
1967年生まれ。山形県在住。日本野鳥の会山形県前支部長。「何しったのやぁ?こだい寒いどごで(何してるんですか?こんなに寒い所で)」「鳥ば見っだのよぉ(バードウォッチングです)」「こだい寒いどぎ、ほだなどさ、鳥あて、いだんだがしたぁ?(こんなに寒い時にそんな所に鳥がいるんですか?)」私の地元では、こんな会話が日常茶飯事です。鳥はいつでもどこでも楽しめます!見て、聞いて、撮って楽しんでもらうのはもちろん、ほっこりとした温かい時間を過ごしてもらえるように山形弁でがんばります。おらいの(私の)島、飛島さもきてけらっしゃい(飛島にもきてください)!

夏の仲ノ御神島&石垣島アジサシ観察

Report by 五百澤日丸 / 2021年7月15日~7月18日

ツアー下見のため、4日前から石垣島に入って島内を細かく見て回りました。何度も来ている石垣島ですが、毎年同じ場所にいるとは限りません。環境の改変によって、ポイントも大きく変わるので、ツアー直前の下見は非常に大切です。心配していた海況も、非常に穏やかでクルーズ船の航行には問題が無いことを確認し、胸をなでおろしました。

 

初日、石垣空港で参加者の皆様と無事に合流しました。皆さん、挨拶もそこそこに開口一番「船は大丈夫ですか!?」でした。海況は穏やかで問題が無いことをお伝えすると、仲ノ御神島クルーズに2回行こうとして、2回とも欠航で悔しい思いをしているので心配されていたとのことでした。

 

潮の時間がちょうど良く、引き始めで干潟が拡がりつつある状況を生かして、まずは海岸へ向かいます。7月中旬にもなると、シギ・チドリ類が増え始める頃です。干潟には、トウネン、キアシシギ、アカアシシギ、キョウジョシギ、オオメダイチドリ、ダイゼンなどの姿が見られました。今回のメインとなる、アジサシ類はエリグロアジサシとコアジサシが干潟に降りて休んでいました。強い陽射しの中、真っ白い姿は暑さを忘れさせてくれるほど美しかったです。

エリグロアジサシ
エリグロアジサシ(撮影:長谷川誠様)
クロアジサシ
クロアジサシ(撮影:長谷川誠様)

続いて住宅地にある林、水田地帯、その他のポイントを巡り、リュウキュウアカショウビン、シロハラクイナ、ムラサキサギ、移入種で世界的に分布を拡げつつあるカバイロハッカなどを確認して、この日は明日に備えてホテルへ入りました。

 

翌朝、外は今日もいい天気です。皆さんの体調も万全です。朝食後、ホテルから歩いてクルーズ船へ向かいました。すでにクルーズ船のスタッフの方は準備して待っていました。以前にもお世話になった船長さんと挨拶し、今日は穏やかな海況であるとのことで、参加者の皆さんのテンションもあがります。

仲ノ神島遠景(船上より)
仲ノ神島遠景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

石垣港を就航して、リーフ内を滑るように船は進みます。竹富島や黒島などを見ながら、所々にある灯浮標にとまるオオアジサシ、エリグロアジサシなどを観察しました。リーフを出ると、さすがにうねりが出てきます。それでも今日はかなり穏やかな方です。遠くに仲ノ御神島が見えてくると、周辺の海域にはアナドリ、クロアジサシ、カツオドリなどが飛び始めます。やがて仲ノ御神島が目の前に迫ってくると、たくさんのカツオドリが船の上に集まってきました。ごく近くを大きなカツオドリが飛ぶと迫力があります。その表情もはっきりと分かります。

仲ノ神島近景(船上より)
仲ノ神島近景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

波の少し穏やかな場所へ入り、聳える岩壁を見上げると、白っぽいカツオドリがいます。例年、白い綿羽に覆われたカツオドリのヒナがたくさんいる時期なので、「白いのはカツオドリの幼鳥です」と説明して、双眼鏡を覗いてびっくり!しました。なんと、アオツラカツオドリの成鳥でした。それもあちこちにいます!私を含め、船上は騒然となりました。数えること、最大同時64羽のアオツラカツオドリを確認しました。これは国内でも最大級の数です。巣は確認出来なかったので、これから繁殖するのか、たまたまやってきたものなのかわかりませんでした。

アオツラカツオドリ
アオツラカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

島を1週しながら、一番波がおだやかな場所へ行きます。セグロアジサシ、マミジロアジサシ、クロアジサシが無数に舞い、夢のようなひとときを楽しみます。島の北東側でアンカーをおろし、しばし、観察を楽しみます。斜面を飛ぶ白いカツオドリがいます。「こちらにもアオツラがいますね・・・」と、言いかけてまたしてもびっくり!しました。なんと尾が白いのです。「アカアシカツオドリです!」と、またしても予想外の展開に、皆さんと再び大興奮となりました。飛んできたアカアシカツオドリがとまった木には12羽のアカアシカツオドリがとまっているではありませんか!それも巣があり抱卵中?の個体もいます。茶色いのは幼鳥ではなく、褐色型のようです。さあ、次はネッタイチョウ類!と、期待しながら待ちますが、残念ながらそれらは出ませんでした。それでもアオツラカツオドリとアカアシカツオドリがたくさん見られただけでも十分贅沢な瞬間でした。こうしているうちに、あっという間に蛙時間となりました。アジサシ類とカツオドリ類の大コロニーの島、仲ノ御神島をあとに、心地よい疲労感の中、船は一路石垣島へと向かいました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

翌日は、石垣島内の各ポイントを巡ります。穏やかな海だったとはいえ、やはり揺れない陸地は快適です。島の各ポイントを巡り、カンムリワシ、シロハラクイナ、リュウキュウツバメ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、オオアジサシ、クロハラアジサシなどを観察しました。今年は、石垣島で繁殖するアジサシ類は例年よりも少なくて、やや物足りない状況でした。ちょっと残念ですが、これも自然界のことです。来年に期待したいところです。

カンムリワシ
カンムリワシ(撮影:長谷川誠様)
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ(撮影:長谷川誠様)
リュウキュウアオバズク幼鳥
リュウキュウアオバズク幼鳥(撮影:長谷川誠様)

最終日、皆さんにどこで何を目的に回るか相談して、そのリクエストに応える形にしました。まだ行っていない地域を中心に出現する可能性がある、オニカッコウのポイントのほか、リュウキュウアカショウビン、オリイヤマガラ、カタグロトビなどを探しました。時間があまりなかったので、粘ることは出来ず、全部は見られませんでしたが、それなりに楽しむことができました。

リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン(撮影:長谷川誠様)

とにかく暑くて大変でしたが、最大の目的である、チャーター船で行く仲ノ御神島クルーズが欠航することなく、無事に終了することが出来たのはなによりでした。やはり石垣島は何度来ても素晴らしいところでした。参加者の皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

前日までの予報はすべて雨、ツアー3日目に関しては特に大雨予報という先月のツアーに引き続き天候に不安を覚えていましたが、なんと今回は最初から晴れ間が見える天候に恵まれた状態でツアーがスタートです。

ノビタキ
ノビタキ

中標津空港で合流後、早速野付半島へ向かいます。野付半島ではセンダイハギやエゾカンゾウなどの初夏の花が咲き、色鮮やかな風景が広がります。
野付半島の海浜草原ではノビタキがせっせと雛に餌を運び大忙しです。海沿いではオジロワシが佇み、付近のキタキツネの親子やウミウなどの水鳥を狙っています。
野付半島の名物のひとつでもあるエゾシカも道中オスの群れが見られ、皆さん大興奮でした。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島のあとは西遊旅行が運営する羅臼町のゲストハウス、知床サライに向かいます。チェックインし夕食を食べたあと、夜はシマフクロウの観察です。この時期のシマフクロウは雛が巣立ちを迎え、親は餌運びに大忙しなはず……と密かな期待を胸に到着すると、昨日までは全然見られていないと観察場所のスタッフの方から伺い、テンションダウンです。
それでも20時頃に出るかもしれないとのことで、準備をすると、なんとすぐにシマフクロウのオスが出現!全員が不意をつかれ慌てて撮影と観察をします。

オスのシマフクロウ
シマフクロウのオス

見られたー!と喜んでいると、15分後くらい経つとまたオスが現れました。そしてその直後影が動いた?と思うとなんとメスも登場です!この場所のメスはほとんどこの場所に姿は現さず、最後に2羽で見られたのは1月に10秒ほどとのことで、全く予期していなかったペアでの登場に全員が大興奮です!2時間ほどずっとこの場所から離れず、飛んで離れたときにそそくさとこの場所を離れ、いきなり内容の濃い1日目が終了です。

ペアのシマフクロウ
ペアのシマフクロウ

2日目は午前、午後と観光船に乗り海鳥とシャチ探しです。出航してすぐにシャチ発見です。1グループだけではなく、どの方向を向いてもシャチのグループがいます!全体で50頭ほどを観察でき、スパイホップも見せてくれました。

シャチ
シャチ

シャチの周りにはフルマカモメやハシボソミズナギドリの群れもおり、目の前を通り抜け、シャチを見ればいいのか海鳥を見ればいいのかわからない贅沢な状態が終始続きました。

フルマカモメ
フルマカモメ

午後にはフルマカモメが1箇所にかたまりなにかを食べています。写真で確認すると食べているのはオキアミなどの動物性プランクトンのようです。羅臼では毎年フルマカモメを観察できますが、この日は特に多く、珍しい場面を見ることができました。帰りにはオオセグロカモメが堤防の上で巣材を咥えていたり、巣の上で抱卵していたりと、この時期ならではの生態も見られました。

フルマカモメの群れ
フルマカモメの群れ

3日目からは羅臼を離れ、オホーツク海沿岸を北上し私の地元紋別を目指します。知床峠では今回の最大目的のひとつであるギンザンマシコを探す予定でしたが濃霧のため視界がなく、旭岳に期待を託し早々に撤退です。小清水原生花園ではエゾキスゲが見頃を迎え、鳥の姿はあまり見えませんでしたが道路脇で草を喰む馬の姿などを楽しみました。ワッカ原生花園ではノゴマがエゾノシシウドの上にとまり綺麗な声で囀ってくれたり、花の上にいる虫を狩る瞬間を見れたりと、少し歩いただけでしたが様々な鳥たちが楽しませてくれました。

オオジュリン
オオジュリン

シブノツナイ湖ではノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、シマセンニュウ、コヨシキリがそこかしこで見られ、さらに何度も花の上にとまってくれる大サービス!

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
ノビタキの親子
ノビタキの親子

皆さん見るものが多すぎて前に進みません。この次にコムケ湖も見る予定でしたが、コムケ湖は湖畔にあるワタスゲの群落を観察し、ホテルに向かい終了です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!