夏の仲ノ御神島&石垣島アジサシ観察

Report by 五百澤日丸 / 2021年7月15日~7月18日

ツアー下見のため、4日前から石垣島に入って島内を細かく見て回りました。何度も来ている石垣島ですが、毎年同じ場所にいるとは限りません。環境の改変によって、ポイントも大きく変わるので、ツアー直前の下見は非常に大切です。心配していた海況も、非常に穏やかでクルーズ船の航行には問題が無いことを確認し、胸をなでおろしました。

 

初日、石垣空港で参加者の皆様と無事に合流しました。皆さん、挨拶もそこそこに開口一番「船は大丈夫ですか!?」でした。海況は穏やかで問題が無いことをお伝えすると、仲ノ御神島クルーズに2回行こうとして、2回とも欠航で悔しい思いをしているので心配されていたとのことでした。

 

潮の時間がちょうど良く、引き始めで干潟が拡がりつつある状況を生かして、まずは海岸へ向かいます。7月中旬にもなると、シギ・チドリ類が増え始める頃です。干潟には、トウネン、キアシシギ、アカアシシギ、キョウジョシギ、オオメダイチドリ、ダイゼンなどの姿が見られました。今回のメインとなる、アジサシ類はエリグロアジサシとコアジサシが干潟に降りて休んでいました。強い陽射しの中、真っ白い姿は暑さを忘れさせてくれるほど美しかったです。

エリグロアジサシ
エリグロアジサシ(撮影:長谷川誠様)
クロアジサシ
クロアジサシ(撮影:長谷川誠様)

続いて住宅地にある林、水田地帯、その他のポイントを巡り、リュウキュウアカショウビン、シロハラクイナ、ムラサキサギ、移入種で世界的に分布を拡げつつあるカバイロハッカなどを確認して、この日は明日に備えてホテルへ入りました。

 

翌朝、外は今日もいい天気です。皆さんの体調も万全です。朝食後、ホテルから歩いてクルーズ船へ向かいました。すでにクルーズ船のスタッフの方は準備して待っていました。以前にもお世話になった船長さんと挨拶し、今日は穏やかな海況であるとのことで、参加者の皆さんのテンションもあがります。

仲ノ神島遠景(船上より)
仲ノ神島遠景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

石垣港を就航して、リーフ内を滑るように船は進みます。竹富島や黒島などを見ながら、所々にある灯浮標にとまるオオアジサシ、エリグロアジサシなどを観察しました。リーフを出ると、さすがにうねりが出てきます。それでも今日はかなり穏やかな方です。遠くに仲ノ御神島が見えてくると、周辺の海域にはアナドリ、クロアジサシ、カツオドリなどが飛び始めます。やがて仲ノ御神島が目の前に迫ってくると、たくさんのカツオドリが船の上に集まってきました。ごく近くを大きなカツオドリが飛ぶと迫力があります。その表情もはっきりと分かります。

仲ノ神島近景(船上より)
仲ノ神島近景(船上より)(撮影:長谷川誠様)

波の少し穏やかな場所へ入り、聳える岩壁を見上げると、白っぽいカツオドリがいます。例年、白い綿羽に覆われたカツオドリのヒナがたくさんいる時期なので、「白いのはカツオドリの幼鳥です」と説明して、双眼鏡を覗いてびっくり!しました。なんと、アオツラカツオドリの成鳥でした。それもあちこちにいます!私を含め、船上は騒然となりました。数えること、最大同時64羽のアオツラカツオドリを確認しました。これは国内でも最大級の数です。巣は確認出来なかったので、これから繁殖するのか、たまたまやってきたものなのかわかりませんでした。

アオツラカツオドリ
アオツラカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

島を1週しながら、一番波がおだやかな場所へ行きます。セグロアジサシ、マミジロアジサシ、クロアジサシが無数に舞い、夢のようなひとときを楽しみます。島の北東側でアンカーをおろし、しばし、観察を楽しみます。斜面を飛ぶ白いカツオドリがいます。「こちらにもアオツラがいますね・・・」と、言いかけてまたしてもびっくり!しました。なんと尾が白いのです。「アカアシカツオドリです!」と、またしても予想外の展開に、皆さんと再び大興奮となりました。飛んできたアカアシカツオドリがとまった木には12羽のアカアシカツオドリがとまっているではありませんか!それも巣があり抱卵中?の個体もいます。茶色いのは幼鳥ではなく、褐色型のようです。さあ、次はネッタイチョウ類!と、期待しながら待ちますが、残念ながらそれらは出ませんでした。それでもアオツラカツオドリとアカアシカツオドリがたくさん見られただけでも十分贅沢な瞬間でした。こうしているうちに、あっという間に蛙時間となりました。アジサシ類とカツオドリ類の大コロニーの島、仲ノ御神島をあとに、心地よい疲労感の中、船は一路石垣島へと向かいました。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(撮影:長谷川誠様)

翌日は、石垣島内の各ポイントを巡ります。穏やかな海だったとはいえ、やはり揺れない陸地は快適です。島の各ポイントを巡り、カンムリワシ、シロハラクイナ、リュウキュウツバメ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、オオアジサシ、クロハラアジサシなどを観察しました。今年は、石垣島で繁殖するアジサシ類は例年よりも少なくて、やや物足りない状況でした。ちょっと残念ですが、これも自然界のことです。来年に期待したいところです。

カンムリワシ
カンムリワシ(撮影:長谷川誠様)
ズグロミゾゴイ
ズグロミゾゴイ(撮影:長谷川誠様)
リュウキュウアオバズク幼鳥
リュウキュウアオバズク幼鳥(撮影:長谷川誠様)

最終日、皆さんにどこで何を目的に回るか相談して、そのリクエストに応える形にしました。まだ行っていない地域を中心に出現する可能性がある、オニカッコウのポイントのほか、リュウキュウアカショウビン、オリイヤマガラ、カタグロトビなどを探しました。時間があまりなかったので、粘ることは出来ず、全部は見られませんでしたが、それなりに楽しむことができました。

リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビン(撮影:長谷川誠様)

とにかく暑くて大変でしたが、最大の目的である、チャーター船で行く仲ノ御神島クルーズが欠航することなく、無事に終了することが出来たのはなによりでした。やはり石垣島は何度来ても素晴らしいところでした。参加者の皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

この記事を書いた人

五百澤 日丸 いおざわ ひまる
新潟県在住。(有)レイヴン・所属。鳥類調査を中心に、執筆、写真撮影、ツアーガイドを行う。一番の関心事は、ヒマラヤ山脈から台湾・南西諸島・朝鮮半島・日本にかけての鳥類の分類・分布。主な著書に「日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版」(共著/文一総合出版)、「日本の野鳥650」(共著/平凡社)など。他にも著書多数。

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

前日までの予報はすべて雨、ツアー3日目に関しては特に大雨予報という先月のツアーに引き続き天候に不安を覚えていましたが、なんと今回は最初から晴れ間が見える天候に恵まれた状態でツアーがスタートです。

ノビタキ
ノビタキ

中標津空港で合流後、早速野付半島へ向かいます。野付半島ではセンダイハギやエゾカンゾウなどの初夏の花が咲き、色鮮やかな風景が広がります。
野付半島の海浜草原ではノビタキがせっせと雛に餌を運び大忙しです。海沿いではオジロワシが佇み、付近のキタキツネの親子やウミウなどの水鳥を狙っています。
野付半島の名物のひとつでもあるエゾシカも道中オスの群れが見られ、皆さん大興奮でした。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島のあとは西遊旅行が運営する羅臼町のゲストハウス、知床サライに向かいます。チェックインし夕食を食べたあと、夜はシマフクロウの観察です。この時期のシマフクロウは雛が巣立ちを迎え、親は餌運びに大忙しなはず……と密かな期待を胸に到着すると、昨日までは全然見られていないと観察場所のスタッフの方から伺い、テンションダウンです。
それでも20時頃に出るかもしれないとのことで、準備をすると、なんとすぐにシマフクロウのオスが出現!全員が不意をつかれ慌てて撮影と観察をします。

オスのシマフクロウ
シマフクロウのオス

見られたー!と喜んでいると、15分後くらい経つとまたオスが現れました。そしてその直後影が動いた?と思うとなんとメスも登場です!この場所のメスはほとんどこの場所に姿は現さず、最後に2羽で見られたのは1月に10秒ほどとのことで、全く予期していなかったペアでの登場に全員が大興奮です!2時間ほどずっとこの場所から離れず、飛んで離れたときにそそくさとこの場所を離れ、いきなり内容の濃い1日目が終了です。

ペアのシマフクロウ
ペアのシマフクロウ

2日目は午前、午後と観光船に乗り海鳥とシャチ探しです。出航してすぐにシャチ発見です。1グループだけではなく、どの方向を向いてもシャチのグループがいます!全体で50頭ほどを観察でき、スパイホップも見せてくれました。

シャチ
シャチ

シャチの周りにはフルマカモメやハシボソミズナギドリの群れもおり、目の前を通り抜け、シャチを見ればいいのか海鳥を見ればいいのかわからない贅沢な状態が終始続きました。

フルマカモメ
フルマカモメ

午後にはフルマカモメが1箇所にかたまりなにかを食べています。写真で確認すると食べているのはオキアミなどの動物性プランクトンのようです。羅臼では毎年フルマカモメを観察できますが、この日は特に多く、珍しい場面を見ることができました。帰りにはオオセグロカモメが堤防の上で巣材を咥えていたり、巣の上で抱卵していたりと、この時期ならではの生態も見られました。

フルマカモメの群れ
フルマカモメの群れ

3日目からは羅臼を離れ、オホーツク海沿岸を北上し私の地元紋別を目指します。知床峠では今回の最大目的のひとつであるギンザンマシコを探す予定でしたが濃霧のため視界がなく、旭岳に期待を託し早々に撤退です。小清水原生花園ではエゾキスゲが見頃を迎え、鳥の姿はあまり見えませんでしたが道路脇で草を喰む馬の姿などを楽しみました。ワッカ原生花園ではノゴマがエゾノシシウドの上にとまり綺麗な声で囀ってくれたり、花の上にいる虫を狩る瞬間を見れたりと、少し歩いただけでしたが様々な鳥たちが楽しませてくれました。

オオジュリン
オオジュリン

シブノツナイ湖ではノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、シマセンニュウ、コヨシキリがそこかしこで見られ、さらに何度も花の上にとまってくれる大サービス!

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
ノビタキの親子
ノビタキの親子

皆さん見るものが多すぎて前に進みません。この次にコムケ湖も見る予定でしたが、コムケ湖は湖畔にあるワタスゲの群落を観察し、ホテルに向かい終了です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

前日までの天気予報では半分以上が雨予報、そして風も強い予報でどんなツアーになるかとドキドキしながらのツアースタートとなりました。

初日は稚内空港で合流後、サロベツ湿原周辺でバードウォッチングです。まず最初に訪れたのは幌延ビジターセンター、通称「下サロベツ」と呼ばれる場所です。

 

ノビタキ
ノビタキ(オス)

木道を歩くとすぐに出会えたのは、北海道を代表する草原性の夏鳥の一種ノビタキです。営巣の準備をしているようで、オスメスがせわしなく飛び交っています。真っ黒で胸のオレンジ色が目立つオスのノビタキに、一気にテンションが上ります。何度もノビタキに足止めをされながらゆっくり歩いていくと、今後は林から美しい囀りが。ノゴマです。一瞬だけ美しい赤い喉を見せてくれましたがすぐにどこかへ行ってしまいました。また利尻、礼文で出会えることに期待です。

その後はレモンイエローのセキレイ、ツメナガセキレイも姿を現してくれました。最初はかなり遠い距離でしたが、帰り際には目の前の低灌木にとまり、しっかりと爪の長いところまで見せてくれたり、一瞬ですがメスも姿が見れたりと楽しませてくれました。

ツメナガセキレイ
姿を見せてくれたツメナガセキレイ

その後、初日の本命であるサロベツ湿原に向かいます。道中で見られた利尻島の景色は、天から光が差し込み幻想的な風景でした。

利尻島
幻想的な利尻島の風景

サロベツ湿原では、時期が少し早いですがシマアオジが一番の目玉、その他にもオオジシギやチュウヒの観察を狙います。木道を歩き探しますが、この日の気温が低かったせいか鳥の活性が低く、全く姿が見えません。やっと見られたノビタキを利尻島背景で観察します。

ノビタキ
ノビタキ(オス)

シマアオジも渡ってきていないようで観察できませんでしたが、木道が終わる直前に上空から「ジュ~ビヤク!ジュービャク!ブブブブブ!」の音が!オオジシギです。上空で2羽がディスプレイフライトを始めたようで、写真に撮るのは難しかったですが、素敵な求愛行動を観察できました。その後も目の前の湿原をV字飛行する姿が。

チュウヒ
チュウヒ(オス)

チュウヒのオスです。すぐに木の陰に消えていってしまいましたが、サロベツ湿原を代表する草原の鳥たちに出会うことができました。

 

2日目はあいにくの雨ですがフェリーに乗り、一路礼文島へ向かいます。途中の航路ではアカエリヒレアシシギの群れに何度も出会い、中にはハイイロヒレアシシギの綺麗な個体も混ざっていました。

アカエリヒレアシシギ・ハイイロヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギとハイイロヒレアシシギ

観察中突如ぴょんぴょんと跳ねる生き物の姿が。写真を撮るとキタオットセイです。合計で15頭以上いたでしょうか。とても楽しませてくれました。

キタオットセイ
キタオットセイ

礼文島に到着後は北部で探していきます。あいにく島の上部は霧の中。海岸線を中心に探します。途中の海岸にはシノリガモやウミアイサが見られ、じっくりと観察することができました。

シノリガモ
シノリガモ

旧礼文空港にはガンの仲間、亜種オオヒシクイが4羽採餌しています。ここからどこまで渡っていくのでしょう。

北部の桜の名所へ行こうと向かう途中には、上空に大きなシルエットが。オジロワシかな?と双眼鏡を覗くと、この時期には珍しいオオワシの若鳥でした。この鳥がこの時期に見られるチャンスがあるのも、サハリンに近い礼文島ならではです。

オオワシ
オオワシの若鳥

その後は霧が濃く鳥が見えないため撤退、花の名所として特に有名な礼文島の高山植物を見るため高山植物センターへ。

カワラヒワ
カワラヒワ

花を見ていると、お客様から「あれヒメウ?」の声が。
ふと上を見ると、何故かマナヅルが飛んでいます。予期しない場所で予期しない鳥に出会ったため、全員が写真も撮ることができず、ただ呆然と眺めていました。

イワツバメ
道中にいたツバメ

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!