根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【後編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

4日目は旭岳に向かう前に紋別のオムサロ原生花園に向かいます。オムサロ原生花園では前日撮影が難しかったシマセンニュウやコヨシキリが見られ皆さん楽しまれました。帰る直前には車の横に綺麗なベニマシコのオスが現れ、センダイハギの黄色い前ボケとのコラボレーションで撮影できました。旭岳に向かう途中にはエゾライチョウを探しましたが、残念ながら今回は見られませんでした。

シマセンニュウ
シマセンニュウ
コヨシキリ
コヨシキリ

ベニマシコ昼からはガイドさんと合流し旭岳でギンザンマシコ探しです。残雪の上を歩きながら歩いていくと、カヤクグリやビンズイがあちこちで囀りを響かせています。この時期にはない残雪の上を歩き少々苦労しましたが、観察ポイントに到着し早速ギンザンマシコを探していきますが全く出る気配がありません。16時を過ぎ見られたのはカヤクグリとノゴマとルリビタキ、そしてウソのみです。今日は見られないかなと諦めの気持ちが出てきた頃、ちらっとだけ遠くにギンザンマシコのメスが出てきましたが、すぐにハイマツに隠れてしまいその後見ることはできませんでした。生存確認はできたので、なんとか明日は見つけたいものです。

 

5日目は新型コロナウイルスの影響で早朝ロープウェイは運行しておらず、朝はホテルの周辺でバードウォッチングです。コガラやヒガラ、コルリなどの囀りを聴きながら森に入ります。途中キビタキの声が近くで聞こえ、ダケカンバを見ると綺麗なオスの成鳥がいました。大きく動かずにいてくれたおかげで、皆さんじっくりと観察できたようです。その後帰りの道中では普段あまり姿を見ることがないウグイスを観察することもできました。

ウグイス
ウグイス

9時からは再度旭岳に登りギンザンマシコ探しです。カヤクグリが目の前のハイマツにとまり楽しませてくれましたが、なかなかギンザンマシコは現れず段々と終わりの時間が気になりだします。

カヤクグリ
カヤクグリ

ふと形に違和感を覚えた遠くのハイマツを双眼鏡で覗くとギンザンマシコのオスが!慌てて皆さんと場所を共有し2枚だけ確認写真を撮ると、スッとハイマツから降り、その後は姿を現すことはありませんでした。

ギンザンマシコ
ギンザンマシコ

その後終了の時間までギンザンマシコを探している間は、少し離れた看板の上で囀るノゴマを見つけ、静かに寄るとファインダーに入り切らないほど目の前で美声を聞かせてくれました。

ノゴマ
ノゴマ

時間となり下山し、次は十勝岳に移動です。途中北海道を代表するコンビニ、セイコーマートで昼食を買い、到着後綺麗な山を眺めながらピクニック気分でお昼ごはんです。食後は氷河期の生き残りであるナキウサギを探しに行きます。ポイントに到着し、静かに待つとピチッというナキウサギの鳴き声が!途中にはシマリスがそばを通過してくれ、可愛い姿を見せてくれ、ナキウサギもこの流れで見れるかなと期待が高まりましたが、残念ながら今回は出会えませんでした。

シマリス
シマリス

6日目は旭岳からサロベツ原野へ移動です。最初は幌延ビジターセンターのある通称下サロベツでバードウォッチングです。ツメナガセキレイがしきりに姿を見せ、遠くにはチュウヒの姿が見えていました。サロベツ原生花園では今年はシマアオジの姿が確認されておらず、残念ながら出会うことはできませんでしたが、ノビタキやアリスイなどに出会い楽しませてくれました。ホテルでは夕食後窓を開けると付近から「キョキョキョキョ……」とヨタカの声が。その他にもオオジシギやヤマシギなど贅沢な自然のBGMを聞きながら就寝です。

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ

7日目はツアー最終日です。この日はサロベツ湿原を代表する野鳥ひとつであるアカエリカイツブリを探します。早朝はご希望の方のみで周辺にバードウォッチングです。朝靄の美しい牧草地を見ながら、キャンプ場と沼を散策です。キャンプ場では車から降りるとアカハラの囀りが聞こえ、見上げるとトドマツの梢にシルエットで姿を確認することができました。歩いているとアカゲラが子育てをしており、盛んにヒナが餌をねだり鳴いています。これには親も大忙しで1分おきに餌を運びてんやわんやです。沼では遠くに浮かぶ2羽の鳥が。確認するとアカエリカイツブリ抱卵の準備をしています。朝食後最後のバードウォッチングに出かけ、アカエリカイツブリの距離の近い個体を探します。複数の沼を探すもなかなか見られず、以前繁殖を確認した沼を最後の望みに覗くと、ペアは確認できませんでしたが、アカエリカイツブリの夏羽が見られました。

アカエリカイツブリ
アカエリカイツブリ

今回のツアーでは草原の小鳥から高山の鳥まで様々なものを観察でき、移動は長かったですが有意義な時間を過ごされたのではないでしょうか。この時期は特に草原性鳥類の子育てが見られるのが最大の魅力です。来年もこの時期に行えれば幸いですので是非また北海道の小鳥達に会いにお越し下さい。ツアーにご参加された皆様お疲れさまでした!

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

根室海峡のシャチ・ミズナギドリと大雪山のギンザンマシコ【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年6月18日~24日

前日までの予報はすべて雨、ツアー3日目に関しては特に大雨予報という先月のツアーに引き続き天候に不安を覚えていましたが、なんと今回は最初から晴れ間が見える天候に恵まれた状態でツアーがスタートです。

ノビタキ
ノビタキ

中標津空港で合流後、早速野付半島へ向かいます。野付半島ではセンダイハギやエゾカンゾウなどの初夏の花が咲き、色鮮やかな風景が広がります。
野付半島の海浜草原ではノビタキがせっせと雛に餌を運び大忙しです。海沿いではオジロワシが佇み、付近のキタキツネの親子やウミウなどの水鳥を狙っています。
野付半島の名物のひとつでもあるエゾシカも道中オスの群れが見られ、皆さん大興奮でした。

オジロワシ
オジロワシ

野付半島のあとは西遊旅行が運営する羅臼町のゲストハウス、知床サライに向かいます。チェックインし夕食を食べたあと、夜はシマフクロウの観察です。この時期のシマフクロウは雛が巣立ちを迎え、親は餌運びに大忙しなはず……と密かな期待を胸に到着すると、昨日までは全然見られていないと観察場所のスタッフの方から伺い、テンションダウンです。
それでも20時頃に出るかもしれないとのことで、準備をすると、なんとすぐにシマフクロウのオスが出現!全員が不意をつかれ慌てて撮影と観察をします。

オスのシマフクロウ
シマフクロウのオス

見られたー!と喜んでいると、15分後くらい経つとまたオスが現れました。そしてその直後影が動いた?と思うとなんとメスも登場です!この場所のメスはほとんどこの場所に姿は現さず、最後に2羽で見られたのは1月に10秒ほどとのことで、全く予期していなかったペアでの登場に全員が大興奮です!2時間ほどずっとこの場所から離れず、飛んで離れたときにそそくさとこの場所を離れ、いきなり内容の濃い1日目が終了です。

ペアのシマフクロウ
ペアのシマフクロウ

2日目は午前、午後と観光船に乗り海鳥とシャチ探しです。出航してすぐにシャチ発見です。1グループだけではなく、どの方向を向いてもシャチのグループがいます!全体で50頭ほどを観察でき、スパイホップも見せてくれました。

シャチ
シャチ

シャチの周りにはフルマカモメやハシボソミズナギドリの群れもおり、目の前を通り抜け、シャチを見ればいいのか海鳥を見ればいいのかわからない贅沢な状態が終始続きました。

フルマカモメ
フルマカモメ

午後にはフルマカモメが1箇所にかたまりなにかを食べています。写真で確認すると食べているのはオキアミなどの動物性プランクトンのようです。羅臼では毎年フルマカモメを観察できますが、この日は特に多く、珍しい場面を見ることができました。帰りにはオオセグロカモメが堤防の上で巣材を咥えていたり、巣の上で抱卵していたりと、この時期ならではの生態も見られました。

フルマカモメの群れ
フルマカモメの群れ

3日目からは羅臼を離れ、オホーツク海沿岸を北上し私の地元紋別を目指します。知床峠では今回の最大目的のひとつであるギンザンマシコを探す予定でしたが濃霧のため視界がなく、旭岳に期待を託し早々に撤退です。小清水原生花園ではエゾキスゲが見頃を迎え、鳥の姿はあまり見えませんでしたが道路脇で草を喰む馬の姿などを楽しみました。ワッカ原生花園ではノゴマがエゾノシシウドの上にとまり綺麗な声で囀ってくれたり、花の上にいる虫を狩る瞬間を見れたりと、少し歩いただけでしたが様々な鳥たちが楽しませてくれました。

オオジュリン
オオジュリン

シブノツナイ湖ではノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、シマセンニュウ、コヨシキリがそこかしこで見られ、さらに何度も花の上にとまってくれる大サービス!

ツメナガセキレイ
ツメナガセキレイ
ノビタキの親子
ノビタキの親子

皆さん見るものが多すぎて前に進みません。この次にコムケ湖も見る予定でしたが、コムケ湖は湖畔にあるワタスゲの群落を観察し、ホテルに向かい終了です。

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!

クマゲラの棲む利尻の森と礼文島・サロベツ湿原【前編】

Report by 今堀魁人 / 2021年5月15日~19日

前日までの天気予報では半分以上が雨予報、そして風も強い予報でどんなツアーになるかとドキドキしながらのツアースタートとなりました。

初日は稚内空港で合流後、サロベツ湿原周辺でバードウォッチングです。まず最初に訪れたのは幌延ビジターセンター、通称「下サロベツ」と呼ばれる場所です。

 

ノビタキ
ノビタキ(オス)

木道を歩くとすぐに出会えたのは、北海道を代表する草原性の夏鳥の一種ノビタキです。営巣の準備をしているようで、オスメスがせわしなく飛び交っています。真っ黒で胸のオレンジ色が目立つオスのノビタキに、一気にテンションが上ります。何度もノビタキに足止めをされながらゆっくり歩いていくと、今後は林から美しい囀りが。ノゴマです。一瞬だけ美しい赤い喉を見せてくれましたがすぐにどこかへ行ってしまいました。また利尻、礼文で出会えることに期待です。

その後はレモンイエローのセキレイ、ツメナガセキレイも姿を現してくれました。最初はかなり遠い距離でしたが、帰り際には目の前の低灌木にとまり、しっかりと爪の長いところまで見せてくれたり、一瞬ですがメスも姿が見れたりと楽しませてくれました。

ツメナガセキレイ
姿を見せてくれたツメナガセキレイ

その後、初日の本命であるサロベツ湿原に向かいます。道中で見られた利尻島の景色は、天から光が差し込み幻想的な風景でした。

利尻島
幻想的な利尻島の風景

サロベツ湿原では、時期が少し早いですがシマアオジが一番の目玉、その他にもオオジシギやチュウヒの観察を狙います。木道を歩き探しますが、この日の気温が低かったせいか鳥の活性が低く、全く姿が見えません。やっと見られたノビタキを利尻島背景で観察します。

ノビタキ
ノビタキ(オス)

シマアオジも渡ってきていないようで観察できませんでしたが、木道が終わる直前に上空から「ジュ~ビヤク!ジュービャク!ブブブブブ!」の音が!オオジシギです。上空で2羽がディスプレイフライトを始めたようで、写真に撮るのは難しかったですが、素敵な求愛行動を観察できました。その後も目の前の湿原をV字飛行する姿が。

チュウヒ
チュウヒ(オス)

チュウヒのオスです。すぐに木の陰に消えていってしまいましたが、サロベツ湿原を代表する草原の鳥たちに出会うことができました。

 

2日目はあいにくの雨ですがフェリーに乗り、一路礼文島へ向かいます。途中の航路ではアカエリヒレアシシギの群れに何度も出会い、中にはハイイロヒレアシシギの綺麗な個体も混ざっていました。

アカエリヒレアシシギ・ハイイロヒレアシシギ
アカエリヒレアシシギとハイイロヒレアシシギ

観察中突如ぴょんぴょんと跳ねる生き物の姿が。写真を撮るとキタオットセイです。合計で15頭以上いたでしょうか。とても楽しませてくれました。

キタオットセイ
キタオットセイ

礼文島に到着後は北部で探していきます。あいにく島の上部は霧の中。海岸線を中心に探します。途中の海岸にはシノリガモやウミアイサが見られ、じっくりと観察することができました。

シノリガモ
シノリガモ

旧礼文空港にはガンの仲間、亜種オオヒシクイが4羽採餌しています。ここからどこまで渡っていくのでしょう。

北部の桜の名所へ行こうと向かう途中には、上空に大きなシルエットが。オジロワシかな?と双眼鏡を覗くと、この時期には珍しいオオワシの若鳥でした。この鳥がこの時期に見られるチャンスがあるのも、サハリンに近い礼文島ならではです。

オオワシ
オオワシの若鳥

その後は霧が濃く鳥が見えないため撤退、花の名所として特に有名な礼文島の高山植物を見るため高山植物センターへ。

カワラヒワ
カワラヒワ

花を見ていると、お客様から「あれヒメウ?」の声が。
ふと上を見ると、何故かマナヅルが飛んでいます。予期しない場所で予期しない鳥に出会ったため、全員が写真も撮ることができず、ただ呆然と眺めていました。

イワツバメ
道中にいたツバメ

この記事を書いた人

今堀魁人 いまほり かいと
北海道紋別市出身。西遊旅行・バードガイド、ネイチャーガイド。幼い頃から野鳥や自然に魅了され、北海道を中心に野鳥・野生動物の撮影に没頭。まだまだ駆け出しの身ですが、生まれ育った北海道を拠点に、自然の中で暮らす野鳥の魅力をツアーを通して感じていただけるよう精進しております。ぜひ世界遺産「知床・羅臼」にも遊びに来てください!