草原の河

c7d39c7596646263©GARUDA FILM  配給:ムヴィオラ

チベット

草原の河

 

監督・脚本:ソンタルジャ
出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテンほか
日本公開:2017年

2017.4.19

日本初、チベット人監督による劇場公開作!少女に死生観が芽生える瞬間

舞台はチベット高原東北部の青海省。広大な自然の中で牧畜を営む一家のもとに新しい命が誕生しようとしています。しかし、6歳の少女・ヤンチェンは母親をとられてしまうかもしれないと、赤ちゃんが生まれることを喜んで受け入れられません。

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ヤンチェンの父・グルは、4年前に起きたある出来事から、自分の父との間に確執を抱えています。季節の変化とともに、家族の気持ちも変化していき・・・・・・

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主人公のヤンチェンは、ピアスやアクセサリーをつけていて、カラフルな民族衣装も立派に着こなしているのですが、まだ乳離できていなく精神的に幼い女の子です。目の前のことひとつひとつに興味を持つ多感な彼女は、子どもができる仕組みや、種を蒔くと芽が出ることなど、素朴なことに疑問を抱きます。

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答えを知ることからだけでなく、分からないことを突き詰めていく過程でも人は成長していきますが、ヤンチェンは物語の中で「誕生」や「死」という深遠な事柄に興味を抱いていきます。カメラはそんな少女を、空と大地が接しているようなチベットの空間の中にポツンと配置し、きっと自然から多くを教わって育っていくのだろうと見守りたくなるような切り取り方で映しだします。

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自然のシーンもさることながら、ヤンチェンとグルがある理由で都市部に行くシーンも印象的です。以前、このコラムで取り上げたグアテマラ映画『火の山のマリア』も、先住民が都会と距離を置いて生活している姿が描かれた映画でしたが、ヤンチェンたちは都市部にバイクで(おそらく1〜2時間ぐらい)行ける距離で放牧をしています。ヤンチェンは町を特に珍しがっている様子はなく、時折都市まで出てくることがあるという環境で育っているのでしょう。

近い将来、ヤンチェンが町の学校に行くことになったら、遊牧生活を送る一家はどうなっていくのか・・・いつか来る「終わりの時」をかすかに感じさせながら、彼女の純粋な振る舞いは観客に、生きること、死ぬことを今一度見直させてくれます。

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記念すべき日本初のチベット人監督による劇場公開作『草原の河』は、4月29日(土・祝)より岩波ホールにてロードショーほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。