秘境ツアーのパイオニア 西遊旅行 / SINCE 1973

さて、パート②は一気に終点・歌劇の街、宝塚までの行程をご案内いたします。

鵯越駅から、朝の気持ちのいい時間帯、小鳥がさえずる木漏れ日の中、森を歩きます。その先の下水処理場から前方には、菊水山(459m)の頂上に立つ電波塔が見えます。

電波塔があるところが菊水山(459m)の頂上

菊水山の山名は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて活躍した天才指揮官(武将)の楠木正成の家紋(菊水)が生誕(1935年)祭600年に山腹の若松に掘られたことが由来。ひたすら急で直登の階段が続きます。辛抱強くペースを乱さずジリジリと登ります。頂上手前から視界が開け、神戸の港景色をご堪能いただけます。

菊水山(459m)の頂上へ到着

菊水山(459m)頂上より神戸景を望む

ポートアイランド。赤色はポートタワー。

登頂後、一気に天王吊橋まで下り、登り返して鉄塔の真下をくぐり、鍋蓋山(486m)へ。頂上からの景色も格別です。

鍋蓋山(486m)手前の鉄塔の真下をくぐる

鍋蓋山(486m)山頂にて

一息ついた後、30分下ると立派な大龍寺があります。付近にある再度山(ふたたびさん)は、空海が唐に渡る直前と帰国直後の2度、この寺に参詣したことが由来です。大きな山門が、ランドマークです。

秋、黄葉に映える大龍寺

 

そこからさらに30分下ると市ケ原。清流が流れ、キャンプ場としても活気があります。ここから一気に標高をあげ摩耶山(698m)への核心部の長い登り(約2~2.5時間)。かつての山伏が天狗に見えたことから名がついた天狗道を登ります。

天狗坂を摩耶山(698m)目指して登る

天狗坂を摩耶山(698m)目指して登る

摩耶山は、かつて空海が摩耶夫人を安置したことが山名の由来です。摩耶山山頂には、三等三角点が有ります。日本三大夜景として有名な掬星台(きくせいだい)とは別の所にあり、意外と立ち寄っていない方がいる様です。

 

待ちに待った掬星台からは今までとは比べものにならない絶景が広がります。昼も夜(見える範囲の月間電気代が1000万ドル!)もウットリする神戸の景色。

摩耶山頂の掬星台(690m)より神戸景を望む

1,000万ドルの夜景、日本三大夜景・掬星台(690m)

摩耶山からは、幹線舗装道路に沿ってジグザグについた比較的緩やかな道を進みます。上高地の大正池に類似していて命名された穂高湖や、あごが膝につくくらいに辛い(とされる)アゴニー坂、明治初期に氷を切り出していた三国池を通っていきます。

穂高連峰山麓の大正池に似ていることが由来の穂高湖

六甲山の開祖と呼ばれるA.H.グルームさんの像やビジターセンターのある記念碑台、日本三古湯のひとつ有馬温泉へのロープウェー発着地ガーデンテラスを経て、

記念碑台手前にある自動販売機。神戸ウォーターは有名。

六甲山の開祖、A.H.グルームさん

 

いよいよ六甲山系の最高地点、六甲山(931m)の山頂へ。

第二次世界大戦中は、港湾都市・神戸の防衛に日本陸軍の高射砲陣地が設けらたそう。その後約半世紀間、近畿地方唯一の在日米軍施設の通信基地となり、今は、小規模な自衛隊六甲無人通信中継所施設が置かれています。

偶然居合わせたバーニーズ・マウンテンドッグとともに六甲山頂(931m)にて

阪神淡路大震災で、標高が0.12m上がった

以降、宝塚まで東六甲縦走路に入ります。概ね下りが多いルートで、距離にして13.6km、4~4.5時間の行程です。疲労も蓄積してくる中、転倒に気を付けながらゴールを目指します。眼下に西宮のシンボルである甲山(309m)が見えてきて、歌劇の街、宝塚が近づきます。

宝塚はもうまもなく。西宮の甲山(309m)はシンボル。

山道は、塩尾寺で終了。

山道終着点の塩尾寺

ここから更に舗装道の急な下りが宝塚駅まで続きますが、あとひと踏ん張り。武庫川にかかる橋を渡って、ゴールです!

宝塚駅前の武庫川

歌劇の街・宝塚駅にて

疲労感とともに達成感が残り、将来の長時間山行に対する自信がつきます。是非、トレーニングという意味合いでも奮ってお越しください!

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今回は関西で知名度の高い、六甲全山縦走路(略して全縦!)についてご案内いたします。

須磨アルプスの名勝・馬の背①

須磨アルプスの名勝・馬の背

まずは舞台となる六甲山について。三百名山ではあるもののネームバリューには少し欠けるのかもしれません。

とはいえ実際は、日本の登山の歴史を語るうえで欠かすことができない山なのです。

1874年、ガウランド、アトキンソン、サトウの外国人3人のパーティが、ピッケルとナーゲル(靴底に鋲を打った登山靴)を用いて日本初の「近代登山」を六甲山で行ないました。

1924年、藤木九三が中心となり神戸で発足された日本初のロッククライミングを目的とする山岳会(RCC)のゲレンデも六甲山系にあります。

単独行により数々の登攀記録を残した登山家、加藤文太郎もRCCに所属していて、六甲全山縦走路は、体力作りにいそしむ加藤文太郎が始めた登山ルートなのです。

 

 

さて、六甲全山縦走路は海沿いの須磨浦公園から始まります(隣駅の塩屋からのパターンも有)。朝日に輝く大阪湾の海を見下ろしながら、公園内の急登階段を約30分ひたすらに登ります。汗は噴き出てしまいますが、歩き出し(特に初日!)は心拍や筋肉に負担をかけすぎない様、ペースや歩き方で調整します。

鉢伏山手前の展望台(麓からのロープウェーの終着駅)からは、山と海が一体となったこれぞ神戸!という風景、大阪平野、明石海峡大橋、淡路島のパノラマが広がります。

鉢伏山展望台より神戸景を望む

鉢伏山展望台より神戸景を望む

須磨海浜海岸と埋立地(神戸空港など)

須磨海岸と神戸の港湾風景および埋立地(神戸空港など)

景色を堪能した後、すぐ先の鉢伏山(246m)頂上へ。

全山縦走路56kmのなかには、多数の山々が連なり、アップダウンを繰り返しながら越えていきます。振り返ると、今まで登った山が見えるのも縦走の魅力です。

鉢伏山から少し下って少し登ると、旗振山(263m)へ。

江戸時代から明治にかけ米相場価格を旗振り通信で西へ伝えていたことが山名の由来です。

 

備長炭として重宝されるウバメガシが生える林の中を先に進むと鉄拐山(234m)へ。

源義経が、頼朝の名により隊を率い、鵯越で隊を分け70騎とともに辿り着き「鵯越の逆落とし」という名の奇襲を平氏陣営にかけたといわれている山です。

ブナ科ウバメガシの林を歩く

ブナ科ウバメガシの林を歩く

鉄拐山山頂にて

鉄拐山山頂にて

高倉台の集合団地へ下り、348段の階段を登り切った先には栂尾山(274m)。その先に横尾山(312m)。どんどん越えていきます。

背後に淡路島、明石海峡大橋を望みながら348段の階段を登る

背後に淡路島、明石海峡大橋を望みながら348段の階段を登る

栂尾山山頂にて

栂尾山山頂にて

序盤のハイライトともいえる須磨アルプスの名勝・馬の背は、緑の山の尾根に岩がむき出しになっていて、細い尾根道が馬の背の様になっています。

ワクワクした気持ちで越えていきます!

須磨アルプスの名勝・馬の背②

須磨アルプスの名勝・馬の背①

須磨アルプスの名勝・馬の背③

須磨アルプスの名勝・馬の背②

その後、一気に下ると街に降ります。六甲全山縦走路は山々を繋ぐ間の町で迷いやすいので、標識を見失わない様に注意が必要です。またエスケープがしやすく、自動販売機やコンビニもあるので水分補給も容易いことがメリットです。

次に目指すは高取山(327m)。頂上には立派な神社があり、神戸の街を一望できる展望地にもなっています。

地元の民話において、山全体が水没した際に大きな松に絡んだタコを捕獲したことから「タコ取り山」と名付けられたらしく、全く想像ができないお話が面白いですね。

左より鉢伏山、鉄拐山、栂尾山、横尾山を望む

左より越えてきた鉢伏山(246m)、鉄拐山(234m)、栂尾山(274m)、横尾山(312m)を望む

高取山頂の鳥居

高取山頂の鳥居

高取神社

高取神社

高取神社より神戸景を望む

再び街に降り、坂の多い舗装路を進むと神戸電鉄・鵯越駅に到着します。山間部を走る列車がジブリの映画に出てきそうだなといつも感じてしまいます。

神戸電鉄(略して神鉄)

神戸電鉄(略して神鉄)

弊社のツアーでは、ここで1日目を終えること、17.5km(所要7.5時間 昼食含む)の行程。神戸景を満喫して、疲労感もほどよい初日に仕上がっています。

パート②では、一気に終点宝塚までをご案内いたします。

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これまで2回に分けて「静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ」のツアーの見どころについてご紹介しましたが、本日は静岡県の秘境「寸又峡(すまたきょう)」の見どころをご紹介します。

 

|静岡県の秘境 寸又峡(すまたきょう)を巡る
寸又峡は静岡県中部、川根本町にある大井川支流・寸又川の全長16kmに及ぶ峡谷です。南アルプス(赤石山脈)の隆起とス俣川の激しい浸食作用により複雑に入り組んだ渓谷が形成されました。南アルプスの麓には、寸又峡温泉があり、奥大井の秘境として今もなお昔ながらの風情を残します。

 

①大井川鐵道(大井川本線)に乗って寸又峡へ

茶畑の間を走行する大井川鐵道

大井川鐵道・大井川本線は、金谷駅から千頭駅の39.5kmを結ぶ路線です。大井川鐵道では、技術革新など伴って旧式となり姿を消すことになった鉄道車両を、運用可能な状態で整備・保存し、全国に先駆けて動態保存を行ない、蒸気機関車(SL)や電気機関車(EL)が昭和10~30年代に製造された客車を牽引し運行しています。ツアーでは、新金谷駅からSL(または電気機関車)やレトロな客車に乗って移動し、静岡らしい茶畑や大井川の情緒あふれる風景をお楽しみながら、終点・千頭駅を目指します。
※2021年のツアーは、4/11出発は蒸気機関車、5/27出発は電気機関車による牽引での運行となります。

 

②寸又ダム湖に架かる“夢の吊橋”を歩く

南アルプス奥深くに架かる「夢の吊橋」

江戸時代には架橋禁止だったため、大井川は東海道を旅する旅人の行く手を阻む川でした。そんな中、木材運搬用として唯一掛けられていたのが井川の刎橋(はねばし)でした。その後、川の氾濫などで幾度も橋は流され、明治時代になると大井川とその支流には大小合わせて25本の吊橋が架けられ、この地方の生活道として活躍しました。その中でも寸又峡温泉街の最奥部に位置する寸又ダム湖に架かる全長90m、高さ8mの「夢の吊橋」は、寸又峡のシンボルでもあり、四季折々の渓谷美と湖の美しさを体感できる場所であります。夢の吊橋からさらに渓谷の奥には、かつて森林鉄道のトロッコが走っていた「飛竜橋」もご覧いただけ、両方の端を結ぶハイキングルートは寸又峡の自然美を楽しめる人気コースの1つです。

 

③“美女づくりの湯” 寸又峡温泉
南アルプスから湧き出る硫化水素系・単純硫黄泉の寸又峡温泉は、良質な泉質で有名です。無色透明ながらヌルっとした泉質がお肌をツルツルにすることから“美女づくりの湯”と呼ばれています。ツアーでは、奥大井の秘湯・寸又峡温泉の「翠紅苑」に宿泊し、良質な温泉をゆっくりとお楽しみいただけます。

 

④大井川鐵道(南アルプスあぷとライン)に乗車

レインボーブリッジと奥大井湖上駅

大井川鐵道・南アルプスあぷとラインの正式名称は「大井川鐵道井川線」と言い、大井川水系の発電所を建設のために造られた路線です。奥大井の渓谷をゆっくりと走る列車は、歯車をかみ合わせて急勾配を登る日本で唯一のアプト式列車で、アプトいちしろ駅~長島ダムの間は90パーミル(1,000mの距離に対して高低差90m)という日本一の急勾配を運行します。

大井川鐵道 アプト式トロッコ列車

「アプト式」とは、カール・ロマン・アプト氏が発明した急勾配を上るための鉄道システム(ラック式鉄道)の一種。現在日本でこのアプト式列車に乗ることができるのは、大井川鐵道の南アルプスあぷとラインだけです。ツアーでは、奥泉駅から終点・井川駅までの間を乗車し、列車からの奥大井の渓谷の風景や接岨湖(せっそこ)に浮かんだように見える奥大井湖上駅の風景など、自然豊かな奥大井の風景をお楽しみいただきます。

 

駿河湾フェリーより富士山を望む

合計3回に分けてご紹介した「静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ」は、静岡県の名勝地にポイントを絞ったツアーです。河津七滝、堂ヶ島、寸又峡それぞれの名勝では、歩くことが大好きな方ならどなたでも参加ができる絶景ウォーキングの日程を組み入れており、また、富士山を望むことができる駿河湾フェリーや大井川鐵道など、自然美豊かな静岡の風景を移動の道中もお楽しみいただける日程となっています。

 

初めて静岡へ訪れる方にはもちろんのこと、一度訪れたことがある方でも改めてゆっくりと自然美豊かな静岡の名称を楽しんでいただけるツアーです。是非足をお運びください。

静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ ~その1
静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ ~その2

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前回に引き続き、「静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ」のツアーについて、本日は伊豆半島の西岸に位置する静岡県の中でも屈指の美しさを誇る名勝・堂ヶ島(どうがしま)の見どころをご紹介します。

 

|伊豆半島 堂ヶ島(どうがしま)を巡る
かつて海底火山群だった伊豆は、100万年ほど前にフィリピン海プレートの海底火山や火山島が本州に衝突し、約60万年前には半島を形成し、その後もプレートは伊豆の大地を本州に押し続け、地殻変動などの影響で多くの美しい景観を有しています。

伊豆半島は世界に類を見ない、地球上の特異点と言えます。

 

堂ヶ島では、海底火山の噴火による水底土石流やその水底土石流の上に降り積もった軽石・火山灰層が見られ、これらの白い火山灰層は波の浸食によって削られることで断崖が形成され、堂ヶ島の屈指の美しい景観を作り出しました。

 

①堂ヶ島トンボロ現象

干潮時のみ現れる堂ヶ島のトンボロ現象

堂ヶ島には、象島、中ノ島、沖ノ瀬島、高島の4つからなる、総称を三四郎島と呼ばれる小さな島々が駿河湾上の沖合200mほどの位置に浮かんでいます。干潮時には、一番手前に位置する象島までに幅30mほどのトンボロ(陸繋砂州)が出現し、潮位が30㎝以下になると歩いて島まで渡ることができます。
トンボロ現象とは、海中の障害物に砂が堆積する現象を言い、風波の作用を受けて砂礫などによって対岸の島と地続きとなった地形のことを言います。ツアーは、トンボロ見学の確率を高めるため、日中に潮位が30㎝以下となる時期にのみ設定しており、専門ガイドと共に切り立った白い崖、美しく刻まれている縞模様の地層などの風景と合わせ、トンボロ現象で地続きとなった象島へも渡ります。

 

②国指定の天然記念物「天窓洞」

堂ヶ島の天窓洞を遊覧船で巡る

堂ヶ島の美しい景観の特徴である白い火山灰層の中には、波による浸食で形成された海食洞が蜂の巣の様にあけられており、天井が崩れて穴(天窓)が空いたのが「天窓洞(てんそうどう)」です。国指定の天然記念物に指定されている天窓洞の周辺には遊歩道が設けられており、ツアーでは、専門ガイドと共に遊歩道から天窓洞を見学するだけではなく、天窓洞の迫力ある内部を巡る遊覧船への乗船もお楽しみいただきます。

 

③専門ガイドと堂ヶ島の地層を学ぶ

専門ガイドと共に堂ヶ島を見学

ツアーでは、専門ガイドと共に天窓洞の周辺に設けられた遊歩道をはじめ、堂ヶ島周辺の断崖風景や迫力ある地層の風景をご覧いただきながら、のんびりウォーキングをお楽しみいただきます。ただ眺めるだけでも素晴らしい堂ヶ島ですが、地元の専門ガイドと共に歩きながら見学することで、より堂ヶ島の風景が魅力的なものとなります。

 

④黄金色に染まる堂ヶ島

堂ヶ島「三四郎島」の夕景

伊豆の西岸にはいくつもの夕陽のスポットがあり、その代表的なスポットが堂ヶ島海岸です。日本の夕陽百選にも選ばれています。ツアーでは、西伊豆・駿河湾に沈む夕陽や黄金色に染まる堂ヶ島の風景をご堪能いただくため、駿河湾に面した「堂ヶ島ニュー銀水」にご宿泊いただきます。ロビーやホテル周辺から望む美しい夕焼けの風景も、堂ヶ島の魅力の1つです。

 

移動中の風景を楽しむのも旅の楽しみの1つです。堂ヶ島での見学後は、伊豆半島の土肥港から駿河湾を横断する駿河湾フェリーにて清水港を目指し、天気が良いと船上からは富士山を望むことができます。

 

ツアーの最後は、静岡の秘境「寸又峡」へ・・・次回へ続く。

 

静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ ~その1
静岡の美景を歩く 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ ~その3

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山、川、海が凝縮された南国の山岳島、別名「洋上のアルプス」と呼ばれる屋久島を11月に訪れ、島の中央に聳える宮之浦岳(1,936m)を縦走してきました。宮之浦岳に登り、縄文杉を経て、白谷雲水峡へ至る1泊2日の縦走登山の様子をご紹介します。

 

■縦走1日目:淀川登山口-宮之浦岳-新高塚小屋

宮之浦のホテルを朝4:00に出発し、1時間強で淀川登山口に到着。あたりはまだ真っ暗です。早速、ヘッドランプをつけて歩き始めます。

淀川登山口

まずは、モミやツガ、スギの樹林帯の中を進みます。木道や階段、木の根の連続ですが、アップダウンはさほどではなく、歩き易く感じます。しばらく行くと花崗岩の露出した場所があり、ガイドの松田さんが、花崗岩が隆起してできたという島の成り立ちとあわせて、土壌の薄さと保水力のなさ、そして、土壌の少なさを凄まじい雨量が補ってくれるので木々が成長できる事などを分かりやすく説明してくれました。

花崗岩の露岩

登山口から1時間弱で淀川小屋に到着です。ようやく日が出て明るくなりました。小屋の先にある橋からはモミジが美しく紅葉しているのが見え、淀川(よどごう)の清流と相まって美しい景観でした。淀川を渡ると急登がはじまり、ひたすら登りが続きます。

淀川の紅葉

途中、コブのある杉を示しながら、屋久杉とコブについて説明がありました。屋久島では樹齢1,000年以上の杉を屋久杉、それ以下を小杉と呼びます。これは大正時代に仕分けのために使われた言葉で、杉の直径が、両手を広げた長さである一尋(いちひろ=約160cm)あるか否かで、昔の人は、屋久杉の目安にしたそうです。ちなみに有名な「千尋(せんぴろ)の滝」は、千人の人間が手を結んだくらい大きいという例えから名付けられているそうです。また、コブはストレスを受けた時にできる杉の防御反応の結果できるもので、この部分には油(精油)が多く含まれており、工芸品として利用する際には、独特の模様ができるため、高値で取引されるそうです。

屋久杉とコブ

さらに進むと日本最南端にある高層湿原・花之江河(はなのえごう)に到着です。正面に見えるのは、黒味岳(くろみだけ/1,831m)です。黒味岳の名の由来は、「黒御岳」からきているそうです。通常、奥岳(おくだけ)や御岳(みたけ)と呼ばれる峰々は、山麓から眺めると花崗岩の岩峰や岩肌が見えるのですが、黒味岳は木々に覆われて黒々していたため、黒い御岳⇒黒御岳⇒黒味岳となったそうです。また、花之江河は山麓の集落を結ぶ道の分岐になっており、祠が祀られ、昔から人々に大事にされてきたそうです。奥岳は聖域だったため、ここで体を清めるという意味合いもあったそうです。

小花之江河から望む高盤岳の豆腐岩

花之江河から望む黒味岳

「黒味別れ」という黒味岳の分岐を経て、さらに進むと花崗岩の露出した場所やロープを使って下る急斜面もありました。まさに花崗岩でできた屋久島らしい登山道です。

ロープを伝って下る

屋久島らしい花崗岩の登山道

森林限界の投石平(なげしだいら)の岩盤に出ると、視界が広がり、低木のうねりの中に花崗岩の巨石が点在する頂上稜線が見えました。

岩峰・中股の頭と右奥の雲の中のピークが宮之浦岳

投石平から急斜面を登り、ロープを2本登った後は、トラバース道に変わり、小さなアップダウンを繰り返しながら進みます。

小さなアップダウンを繰り返す

翁鞍部に到着すると「宮之浦岳まであと1km」の表示がありました。大きな岩のある栗生岳(くりおだけ/1,867m)では、山頂にある祠と岳参りの説明がありました。栗生岳は、栗生の集落の奥岳です。屋久島では集落(村)ごとに奥岳があり、屋久島では現在においても山に登り、祈りを込める「岳参り(たけまいり)」という風習が残っています。この岳参りは「山岳信仰」の一種ではあるものの、山伏のように修業をするわけはなく、そこに住む人々が集落の繁栄、五穀豊穣、家内安全を願って山に登る行事の一つなのです。

栗生岳

栗生岳から頂上へ続く斜面を20分ほど登り、ようやく宮之浦岳の山頂に到着しました。

宮之浦岳の山頂へ向かって

ガスにまかれ、展望はなくても、嬉しい山頂です。

宮之浦岳の山頂

その後は、ヤクザサ(ヤクシマヤダケ)とシャクナゲの低木の主稜線を平石岩屋まで下りました。春にはシャクナゲの花が咲き、それはそれは美しい景色になるそうです。平石岩屋からは樹林帯に入ります。下り気味にほぼ平坦な登山道を進みます。杉の巨木にナナカマドが着生し、そのナナカマドが紅葉しています。緑色の中に紅色が映えています。ガイドの松田さんによると「屋久島の紅葉は打ち上げ花火だ」と言ったガイド仲間がいるそうです。本州では「山肌を紅色に染める」のが紅葉かもしれませんが、屋久島では「常緑樹林の緑の中に、紅色の紅葉がそこだけ浮かび上がって見える」からなのだとか。詩的な表現ですね。

スギに着生したナナカマドの紅葉

第2展望台の手前で坊主岩を眺め、ヒメシャラの林を眺めながら、ようやく新高塚小屋に到着しました。

ヒメシャラの林

新高塚小屋は、収容人数40人のブロック造りの山小屋で、内部は2階建てになっています。近くに水場もトイレもある快適な小屋でした。山小屋到着後、雄と雌のヤクシカが姿を現しました。

ヤクシカ

新高塚小屋

■縦走2日目:新高塚小屋-縄文杉-白谷雲水峡

翌朝は6:00に新高塚小屋を出発。屋久杉の巨木の森を進み、高塚小屋に向かいます。日の出の時間帯には、雲海の上に昇る朝日が樹林帯を照らし、幽玄な景色になりました。この区間の屋久杉の巨木の森は、人も少なく、とてもよい雰囲気です。木々の間から宮之浦岳と翁岳を見ることができました。

日の出と雲海

木々の間から宮之浦岳を望む

点在するヒメシャラの赤い幹は目をひきます。屋久杉に絡みつくように密着して生えている木は、大抵、ヤマグルマの木です。ガイドの松田さんによるとヤマグルマは、シカやサルの大好物なんだそうです。屋久杉の枝に着生して成長する事で、シカやサルの食圧から逃れることができ、かつ、日光を浴びるには有利な高い場所にあるためだと考えられています。ただし、ヤマグルマは、絞め殺しの木とも言われ、あまりに密着しすぎてスギを枯らせてしまう事もあるそうです。

1時間ほどで高塚小屋に到着しました。高塚小屋は3階建ての独特の形をしており、入口には「レモンガス 赤津慎太郎 小屋」と書かれたプレートが張られています。この小屋は、「レモンガスかごしま」という電力会社の社長・赤津氏の個人の寄付によって2013年に改築されたそうです。

高塚小屋

高塚小屋からは「大株歩道(おおかぶほどう)」と名付けられた屋久杉が集中する道を進みます。江戸時代につけられた屋久杉の試し切り跡を見ながら進みます。ほどなくして「縄文杉」に到着しました。縄文杉は日本最大のスギで、樹高25.3m、胸高直径5.2m、胸高周囲16.4mです。この時間帯は、山小屋泊りの人しかいないので、静かにゆっくり見学できるのがよいですね。

縄文杉

その後は、子供が生まれる瞬間のようなコブがある「子宝杉(こだからすぎ)」、や横枝が両側のスギに癒着し2本のように見えるから名づけられた「夫婦杉(めおとすぎ)」、推定樹齢3,000年の「大王杉(だいおうすぎ)」と屋久杉のオンパレードです。

子宝杉

夫婦杉

大王杉

「ウィルソン株」では、株の内部に入り、お約束のハート型に見えるポイントで写真を撮ります。その後は、10年ほど前に倒れてしまった「翁杉(おきなすぎ)」を通り、大株歩道入口へ。

ウィルソン株

株の内側から見上げるとハート型に見えます。

大株歩道入口から先は、大正時代から今も現役でトロッコが走る安房森林軌道、通称トロッコ道に変わりました。トロッコは、登山道にあるトイレなどの維持管理に必要な物資・し尿の輸送や、屋久杉の土埋木や昔の切り株などの運搬に使用しています。

トロッコ

トロッコ道の軌道沿いに、ほぼ平坦な道を楠川分れまで進みます。途中、「仁王杉(におうすぎ)」、「三代杉(さんだいすぎ)」を通り、「楠川分れ」に到着です。

トロッコ道を進む

楠川分れからは「楠川歩道(くすかわほどう)」と呼ばれる道をすすみます。島の北東にある楠川集落を起点に海から山に入るルートのひとつで、スギの平木(薄板)を年貢として納めていた江戸時代には、「年貢道」と呼ばれていました。楠川分れからは標高差約280mを1時間ほどで登り、辻峠へ向かいます。

楠川分れから辻峠へ

辻峠から太鼓岩を往復しました。太鼓岩では、昨日登った宮之浦岳を中心に頂上稜線と大杉谷、安房川の流れを眼下にします。左から岩峰・天柱岩(てんちゅういわ)のある太忠岳(たちゅうだけ/1,497m)、石塚山(いしづかやま/1,589m)、翁岳(1,860m)、宮之浦岳(1,936m)、永田岳(1,886m)を見渡すことができました。

眺めのよい太鼓岩。眼下に大杉谷と安房川

岩峰・天柱岩のある太忠岳と石塚山

左から翁岳、宮之浦岳、永田岳

太鼓岩から辻峠に戻ると、木道と階段で整備された道を白谷雲水峡へ向かって進みます。「かみなりおんじ」「武家杉・公家杉」を通り「苔むす森」へ。「苔むす森」は、1997年公開のジブリ映画「もののけ姫」でシシ神やコダマがいる森のモデルとされた場所で、実際に宮崎駿監督やジブリのスタッフが訪れています。木々や岩がよい感じに苔に覆われ、神秘的な雰囲気さえ感じさせます。

辻峠から白谷雲水峡へ

苔むす森

「七本杉」を経て、白谷小屋の分岐で休憩。その後は、「鹿の宿」「くぐり杉」、渡渉地点を越えて、さつき橋、飛流おとしの滝、憩いの大岩を経て、ようやく白谷登山口に下山したのでした。皆さまお疲れ様でした。

白谷雲水峡の美しい清流

白谷小屋の分岐

憩いの大岩を経て白谷登山口へ下山

2021年は、シャクナゲ咲く5月~6月とベストシーズンの10月~11月に実施します!
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