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添乗員ツアーレポート  アフリカ

チュニジア周遊 後編:ローマ遺跡とバルドー美術館

2020.05.14 update

北アフリカというと、イスラームの生活や砂漠を一番にイメージされることが多い地域。意外かもしれませんが、チュニジアには多くのローマ遺跡が残されています。ヨーロッパと比べ湿度が低い乾燥した気候の為に保存状態が極めてよく、ヨーロッパの遺跡に比べると観光客も少ないのでゆっくりと観光できることも大きな魅力の一つです。

 

スフェチュラ遺跡

もともとはベルベル人によって始まった都市です。1世紀にローマ風の街として整備されました。5世紀にバンダル人に侵略されましたが、7世紀にはビザンツ帝国が支配しました。そのためチュニジアで最も新しいローマ遺跡と呼ばれているこのスフェチュラ遺跡。通常は一つしかない神殿が3つ横並びに建設されていることがこの遺跡の特徴です。極めて質の良いオリーブの産地であり、また東西南北の交易路の交差点にあったために非常に繁栄したのだそうです。

中心にゼウス、右にヘラ、左にミネルウァを祀る神殿

他にもオリーブ圧搾機やモザイクが各所に残ります。

スフェチュラの繁栄を支えたオリーブオイルの圧搾機

ローマ遺跡のモザイクでよく見かけるこのマークは「永遠」を意味し、英語圏で幸福を示すジェスチャー「クロスフィンガー」の起源だとか。

 

エル・ジェムの円形闘技場

世界で四番目に大きく、最も完全な形で残っているローマ帝国の円形闘技場です。約150m×120mの楕円形をし、高さは40mにもなります。

エル・ジェムの円形闘技場の外観。建設当初は大理石で覆われ、真っ白に光り輝いていたそうです。

チュニジアは大型の野生動物の生息地に近かった為、ここエル・ジェムではライオンや象、ヒョウ等と奴隷や剣闘士を戦わせるショーが多く開催されました。今はもう絶滅してしまいましたが、当時生息していたアトラスクマやアトラスオオカミも捕らえられ、連れてこられたそうです。

アリーナの地下には猛獣を閉じ込めておく檻が残ります。

一説には、「エル・ジェム」とはアラビア語で「なんて大きな!」という意味だとか。その名の通り見ごたえのある円形闘技場でした。

アリーナの近くからVIP席、一般市民席、女性と奴隷の席に分かれていました。

 

ドウッガ遺跡とブッラレージア遺跡

チュニジア北部の丘陵地帯に残る2つの遺跡の1つ、ブッラレージア遺跡の見どころは半地下式となった住居跡。ベルベル人の建築様式をローマの人々が取り入れた珍しい例となっています。ローマの様式を地下でもそのまま再現しようとしたのが良くわかります。

ローマのパティオ式住居を地下で再現しています。

当時のエアコン。壁にめぐらされたパイプには水が通り、気化熱で空気の温度を下げたそうです。

また、「アンフィトリテの家」に残された色鮮やかで生き生きとしたモザイクも見逃せません。ポセイドンがイルカを贈りアンフィトリテと結婚したという神話に基づき、イルカをはじめとする海の生物たちと神々が華やかに描かれます。

海の生物とアンフィトリテ、ポセイドンとトリトン

その横にあるモザイクはアンフィトリテとも、屋敷の女主人の顔とも言われています。当時は施工主がモザイクの登場人物を自分に似せることはよく行われたそうです。

アンフィトリテの家の女主人

 

ドウッガ遺跡には丘の上に建設された都市がまるまる残ります。特徴はベルベル人の王国ヌミディアの時代からローマ、イスラームと3つの様式が共存していること。まるでチュニジアに栄えた文化を象徴するような遺跡です。

上からエジプト、ギリシャ、フェニキアの様式を融合した霊廟。

 

額縁のように見える「無名の寺院」の門と、アントニウス・ピウスに捧げられたキャピトル

 

美術館

これらの遺跡から出土したモザイクやイスラーム建築の華麗なタイル、カルタゴの時代の石像などが一堂に会するのがチュニスで訪れるバルドー美術館です。

 

バルドー美術館のエントランス。

 

世界一とも言われるモザイクのコレクションはまさに圧巻。その大きさ、完成度、バラエティともに見ごたえたっぷりで全く飽きさせません。

 

「オデュッセイア」より、セイレーンの島を通過するシーン。オデュッセウスはマストに自身を縛り付け、水夫たちには耳栓をさせてセイレーンの歌が聞こえないようにしています。

 

ポセイドンと四季の女神たち。右下から、春、夏、秋、冬を擬人化しています。春が一番若く、徐々に年老いていきます。また、服装それぞれの季節に適したものになっています。

 

1週間の曜日(惑星)の擬人化と黄土12星座を描いたモザイク。中心が土曜日を意味するネプチューンなのは、土曜日が安息日であるユダヤ人の富豪の家に作られたからだとか。

 

奉納品を示す石像。上部に神、中部に供物、下部には奉納をした人物が描かれています。

カルタゴ時代のものは、ローマ軍がほとんど破壊してしまった為に現存するものは大変貴重。

 

また、バルドー美術館は建物自体も見事。オスマン帝国時代のベイ(総督)の宮殿の跡を改装しているためです。展示物以外にも各所に目を奪われます。

ヴェネツィア風の天井の装飾。地中海を中心に、チュニジアとイタリアは近しい関係にありました。

壁の美しいモザイク。イスラームで豊かさを表す緑色が多用されています。

 

それまでモザイクに興味が無くともその魅力に開眼してしまうような、素晴らしいコレクションの数々。ツアーの中で訪れる遺跡に鮮やかに色付けされてゆくようです。

 

街歩きに砂漠、遺跡に美術館と多様な魅力のあふれるチュニジア。

アフリカでもヨーロッパでも、イスラームでも無いようで全てを含むチュニジア。色々な文化を一度に味わえるこの国をぜひ1度訪れてみて下さい。

 

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