デオサイ高原、夏のヒマラヤヒグマの親子

インドとの国境地帯にあるデオサイ高原はヒマラヤヒグマの生息地として知られています。

ただし、デオサイ高原に行けば見れるというものではなく、レンジャーと一緒に歩いてヒマラヤヒグマの暮らすエリアに行かなくてはなりません。また、長年ハンティングの対象であったこともあり非常に臆病ですぐに逃げていきます。さらに夏は観光客が多すぎてヒマラヤヒグマたちは谷の奥に行ってしまいます。そのためヒマラヤヒグマと出会うためにはずいぶんと歩かなくてはなりません。

 

デオサイ高原国立公園スタッフの間で「シャイターン」と呼ばれるグループの地域へ行って見ました。「シャイターン」は「サタン=悪魔」の意味ですが、このグループを「悪魔」と呼んでいるのではなく「いたずらっこ」のような意味なのだそうです。

 

標高4,000mほどのキャンプから少し高度をあげ無数の小川が流れる谷へ。

 

同行レンジャー氏が、「Bear!」と。三脚を立ててせいいっぱいのズームで撮影すると熊が2頭、親子です。お母さん熊がたって何かを見ています。

 

お母さん熊が見ていた方向にいたのは雄のヒマラヤヒグマです。親子グマはこの雄を避けて小川沿いの草の中を私たちのほうへ歩いてきました。

 

ラッキーなことに私たちは風下におり、クマに気づかれずにヒマラヤヒグマの観察としては比較的近い位置まで来ることができました。

 

あ、小熊に見つかってしまいました。見られてしまいました。なんてかわいいのでしょう。

 

お母さん熊が立ち上がってこちらを見ています。お母さん熊にも見られてしまいました。

 

ついに2頭で私たちを見ています。夢のようなアングルです。この後、2頭は歩いて離れていきました。

 

少し離れたところに現れた親子熊。このあと、2頭は草原でいろいろ見つけながら移動していきます。

 

親子が岩の上にのって不思議な行動をしていたので観察していると、別のメスのヒマラヤヒグマが現れ、その通過待ちでした。もう1頭のメスは完全にこの親の子のことはスルーでした。

 

その後の親子は・・・小熊がお花畑で少し寝たり、遊んだり。

 

そして丘を越えて見えない場所へと行ってしまいました。大変美しい光景でした。

 

Photo & Text :澤田真理子 Mariko SAWADA

Observation : Jul 2017, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan

Reference : Mr.Ghulman Raza – Deosai National Park, Yousaf Akhtar, (the late) Mr.Zahoor Salmi

※記事は2017年10月にupしたhttps://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?p=3967 を書き直したものです。

カテゴリ:■ギルギット・バルティスタン州 > # パキスタンの野生動物 > デオサイ高原 > ヒマラヤヒグマ
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Balkasar Bear Sanctuary バルカサール・ベアーサンクチュアリ 虐待されたクマたちの保護を!

Balkasar Bear Sanctuary、バルカサール・ベアーサンクチュアリの話です。

ハンティングのツーリズムの仕事をしている知人から、自分の所属するBalkasar Bear Sanctuary バルカサール・ベアーサンクチュアリに来てみないか、と誘われ行ってみました。行って現実を見るまで、正直、何のことかわかっていませんでした。

 

ここにいるクマたち・・・「熊使い(熊を使ったショービジネス)・・Bear vs Dog Fighting(熊と犬のフィテイングショー)やDancing Bear(踊る熊ショー)」に使われたクマたちが保護され集められていました。

クマたちのほとんどは、パキスタンの南部(パンジャブ州南部、シンド州、バロチスタン州)の地主たちの所有物で、その歯と爪は抜かれ、中には飼い主によって腕を切り落とされた個体もいました。手足のないクマを目の前にして、ヒトはどうしてこんなに残酷なのか、人間の醜さに涙が止まりませんでした。

 

施設にやってきて訓練中のヒマラヤツキノワグマ。

 

連れてきてくれた知人はパキスタンでハンティングの仕事に従事している人ですが、このクマの保護のプロジェクトに参加し、野生へ戻すオペレーションを担当しています。パキスタンのハンティング事情はこれまでもブログで書いてきた通り毎年厳しい条件と許可数が決められ、対象を大きな角の老いた個体とし、収益を地元に還元することから違法ハンティングを防ぎ、野生動物の保護につながっているという点があります。ただ、これもトロフィーハンティングの対象となる野生動物の話ですべての野生動物のことではありません。

ここに私を連れてきた彼も、ハンティングの仕事をしていますが、本物の野生動物の姿を知るからこそ、町に連れてこられ芸をさせられるクマたちの悲惨な運命は受け入れられるものではなかったのでしょう。

 

食事の時間です。

 

Balkasar Bear Sanctuary の施設には現在54頭のクマがいます。そのほとんどがヒマラヤツキノワグマ Himalayan Black Bearでした 。

施設の専門家によると、現在のパキスタンの野生のクマの生息数は、ヒマラヤツキノワグマ Himalayan Black Bear が600~650頭、ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear が200~250頭と推測されるそうです(きちんとした統計はとられていません)。ということは・・・およそ6~7%のパキスタンのクマが保護されてこの施設にいるのです。

 

このクマたちはどうやって連れてこられるのか聞いたところ、多くは冬眠中の親子グマを狙い、母熊を殺し子熊を連れてきて売るのだそうです。こんなことをする人間、買う人間がいることが信じられません。

それらの熊はひどい扱いを受け、この施設にやってきた時にはそのひどい状態に係員も目をそらすくらいだといいます。この施設に協力するパキスタン、そして外国の獣医たちによって救われたクマたちもたくさんいます。

でも、このクマたちは野生に帰ることはできません。その牙も、爪も、心ない人間に取り去られてしまいました。この施設はそんなクマたちが、ほかのクマたちとの社会行動も含め、自然な状態で余生を過ごせることを目的としています。

 

そしてこの施設のもう一つの目標として、野生下で生き延びることができそうなクマ(施設で生まれた子熊を含む)を野生環境に戻す取り組みです。

2016年の初夏に3頭のヒマラヤツキノワグマを野生に戻すことに成功し、続いて2017年の初夏に、野生に戻る訓練をしたヒマラヤヒグマの子熊(2歳半)2頭をクンジュラーブ国立公園エリアに放しました。この施設を訪問した2019年10月現在、その2頭は野生環境下で生き延びています。マイクロチップを埋め込み、その動きがモニターされていました。

施設では2020年に野生下への復帰が見込まれるヒマラヤツキノワグマの子熊たちもいました。子熊たちは標高の高いナティヤガリの施設で魚の取り方などの訓練を受ける予定です。同時に政府への働きかけが行われています。

 

Balkasar Bear Sanctuary は政府や寄付などの援助資金で活動しているのではなく、自分たちの菜園の収入で活動をまかなっている点も、驚くべきポイントです。

 

もともと地方の地主などの有力者の持ち物であったクマを交渉して手に入れ、保護し、その子供たちを野生へ帰す・・・並大抵の苦労と努力ではありません。

 

トロフィーハンティングの対象としてアイベックスなどの山羊類は保護され増加する一方、保護を受けることなく、知られることもなく消えようとする野生動物たち。法律整備も整わないパキスタンで野生動物のために戦うBalkasar Bear Sanctuaryの方々に、心より敬意を表します。そしてこの施設で生まれた子熊たちが野生に戻り、話題となり、一般のパキスタンの人たちの意識を変えていけることを期待します。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Visit : Oct2019, Balkasar, Punjab, Pakistan

カテゴリ:■パンジャブ州 > 野生動物保護活動
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秋のヒマラヤヒグマ(デオサイ高原)

デオサイを一番有名にしているのが、ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearの存在です。

ヒマラヤヒグマ Himalaya Brown Bear はヒグマの亜種でヒマラヤ山脈とその周辺に暮らすヒグマ。もともと、ネパール、チベット、北インド、北パキスタンに広く生息しましたが、トロフィー・ハンティングや毛皮・薬の材料目的として狩猟され、また生息地域を失い激減しました。ブータンではすでに絶滅したと考えられ、インド北部とパキスタン北部に数百頭が生息するのみとなりました。

10月、デオサイ国立公園のスタッフとともにヒマラヤヒグマを探しました。この季節は観光客も減るためヒマラヤヒグマが比較的道路近くまで現れることがあるといいます。それでも双眼鏡で「小さな点」のようなヒグマを見つけてから随分と歩きました。

 

もうだいぶ日が陰ってきました。標高4,000mを越える高原を急ぎ足で歩くのは大変でした。ようやく撮影できる距離まで近づけました。

 

ヒマラヤヒグマの後ろ姿です。国立公園のスタッフによると若いオスとのこと、冬眠前でまるまると太っていました。

 

ヒマラヤヒグマは11~12月に冬眠に入ります。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : Oct 2015, Deosai National Park, Gilgit-Baltistan

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