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ユンヒへ

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韓国・日本(北海道)

ユンヒへ

監督:イム・デヒョン
出演:キム・ヒエ、中村優子ほか
日本公開年:2022年

2023.2.1

「あり得ないこと」はどういう時に起こるのか?―雪の小樽と結晶のような思い出

韓国の地方都市で高校生の娘と暮らすシングルマザーのユンヒの元に、小樽で暮らす友人ジュンから1通の手紙が届く。20年以上も連絡を絶っていたユンヒとジュンには、互いの家族にも明かしていない秘密があった。

手紙を盗み見てしまったユンヒの娘セボムは、そこに自分の知らない母の姿を見つけ、ジュンに会うことを決意。ユンヒはセボムに強引に誘われ、小樽へと旅立つ。

「近頃寒いので寒い映画を」と思ったときに、昨年劇場公開された本作のことがパッと思い浮かびました(「寒いから暑い国の映画を観よう」「寒いから夏の映画を観よう」というパターンもあるかと思いますので、かなり気まぐれです)。

本作は制作の経緯が面白いのでご紹介できればと思います。僕と同じく1986年生まれの男性の監督が、中年女性が主人公の脚本を書き進めていたところ、岩井俊二監督の『Love Letter』(1995年)の「聖地巡礼」の旅に友人から誘われます。そして小樽を訪れて、化学反応的に「ここで撮ろう!」と決めたのだといいます。

『Love Letter』公開時、監督は9歳かそこらだったかと思いますので、世代的には若干ストライク・ゾーンからずれていて、小樽という地を知るのに時間がかかったのが逆に功を奏したパターンではないかと思います。

冬の小樽という場所の性質も絡めて本作のエッセンスを一言でまとめるならば「映っている場所はいかにも寒そうだけれども、暖かい話」です。主人公・ユンヒは心の奥底に「ある思い」を長らく封じ込めながら生きてきた人物で、いつしかそれをギュッと抑え込んでいる手を離しても、カチコチに凍りついて動かない状態になり、「ある思い」が有る、ということも忘れてしまっていました。

「ある日手紙が来て・・・」というのは、一聴するとその重い「封印」を解くにはあまりにもベタであるように思えるかもしれません。しかし、やはり実際そういうことは起こり得るのだと、本作を観て思いました。僕の人生も、手紙パターンはないのですが、「ある日一通メールが来て・・・」という形で何度も揺り動かされてきました。

あり得ないくらい寒い中で、あり得ないくらい長い時間熟成された思いが、あり得ないような出会いの中で融解していく様というのは、とてもロマンチックでありながらリアリスティックでもあると思います。

寒い内に今すぐご覧になっても、暑い季節に熱い思いに触れる形でご覧になっても楽しめる作品です。

夏の北海道
色彩あふれる絶景アクティビティを楽しむ

富良野の大自然でのモーターパラグライダー、洞爺湖を見下ろす高台で乗馬、支笏湖でのカヌー体験。ニセコ積丹小樽海岸国定公園に位置する小樽の青の洞窟では、長い年月をかけて波風などで浸食を受けた大自然を海上より楽しむことができます。

冬の北海道
白銀の世界でアクティビティを楽しむ

富良野ではモーターパラグライダーで白銀の雪原を空から望み、美瑛では十勝連峰を、またニセコでは羊蹄山を望みながらのスノーシュー体験へご案内。その他、白銀世界での乗馬体験や雪に包まれた森の中で行うジップライン体験など、冬の北海道の自然を各所のアクティビティを楽しみながら体感していただけます。小樽での夜は、ライトアップされた小樽運河の散策をお楽しみください。

モルエラニの霧の中

fb6ac652e1534d22(C)室蘭映画製作応援団2020

北海道

モルエラニの霧の中

 

監督: 坪川拓史
出演:大杉蓮、大塚寧々ほか
日本公開:2021年

2021.2.3

「鉄のまち」室蘭―柔らかな記憶と7つの季節

いままで「旅と映画」では映画紹介の際に必ずあらすじから入っていましたが、今回ご紹介する邦画『モルエラニの霧の中』は特殊な作品のため、かわりに制作経緯をご紹介します。

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本作全7編を制作した坪川拓史監督は、東日本大震災を機に東京から故郷・室蘭に家族で移住し、久しぶりに町を歩いてみたとき、記憶の中とは全く違う姿の室蘭に遭遇します。表向きは空き家が目立つさびれた町でしたが、昔の姿を知る坪川監督は、大事な点を見逃しませんでした。

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よくよく町を回ってみると、輝きが保たれている場所や面白いストーリーの種にたくさん出会ったのです。そして、脚本の舞台にしていた理髪店が入っているビルが解体されるのをきっかけに、5年にわたる制作に乗り出しました。

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このような経緯もあり、映画本編は春夏秋冬と晩夏・晩秋・初冬と細かく章立てされた全7話構成となっており、実話や実在の場所をモチーフに、時にはモデルになった本人も出演しながら撮影がなされています。私的な記憶に関する映画でありながら、壮大なスケールを保っているのは、北海道の自然の力に依るところが大きいでしょう。

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私が北海道に一度訪れたときは9月の半ば(晩夏あるいは初秋)でしたが、新千歳空港に降り立ったとき、搭乗地の羽田のムワッとした残暑の空気とは全く違うカラッとした冷気に触れたのを今でもよく覚えています。海外旅行では訪れる国々の空港でその国の香りが感じられることがありますが、北海道は日本国内でありながら、空港で何かしらの違いが感じられる場所だと思います(私が最近撮影でよく訪れる奄美大島も同様です)。

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アイヌ語に由来する地名の響きも、北海道への旅が「遠くへ来た」と感じさせてくれる要素のひとつかと思いますが、室蘭という名前にもアイヌ語が関わっているのは本作で初めて知りました。題名に入っている「モルエラニ」が室蘭の地名の由来なのですが、どんな意味なのかはぜひ作品を観ながら想像してみてください。

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室蘭は鉄鋼業をはじめとした工業がさかんで「鉄の町」といういかにも固そうな通称が使われることもあるようですが、本作は色(カラー・モノクロ)やアスペクト比(画面の縦横比)を自由に行き来して、室蘭の風土の柔らかさのようなものが表現されているように感じました。

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7章の中で一番短い晩夏の章で朗読される、『名前のない小さな木』という、もの思いにふけっている崖っぷちの木に海鳥がとまる短い物語がとても印象的でした。

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記憶というのは一個人の頭の中(木の頭の中)にあるように思えますが、実は他者(海鳥)が何かしらの形で媒介して初めて存在し得るものなのではと度々思うことがあり、『名前のない小さな木』の話はそれを簡潔に言語化してくれていました。

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思うに、旅というのはこの映画のように様々な思考の色や枠を行き来して、「あ、いま鳥が自分の木にとまった」とか「ちょっと今日はこの木にとまってみようかな」とか思ったりするようなことなのかもしれませんね。

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最近亡くなった大杉漣さんや小松政夫さんの姿もおさめられている『モルエラニの霧の中』は2月6日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショー。詳細は公式ホームページをご覧ください。

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