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フキ(蕗:Petasites japonicus)

先日、我が家に母が遊びに来た際に夕食で蕗の煮て(関西、特に京都では”フキの炊いたん”と呼ばれています)卵で絡めた、小さい頃によく食べていた料理を作ってくれ、懐かしい気持ちとなりました。

 

本日は、その料理のレシピではなく、「フキ(蕗:Petasites japonicus)」をご紹介します。

 

フキ(蕗:Petasites japonicus)…雌か雄、どちらでしょうか。

 

被子植物 双子葉類
学名:Petasites japonicus
英名:Giant Butterbur、Japanese Butterbur、Fuki
科名:キク科(Asteraceae)
属名:フキ属(Petasites)

 

上の写真は、昨年5月に長野県・鬼無里の奥裾花自然園を訪れた際に観察したものです。

 

フキ(蕗)は、キク科フキ属、日本原産の多年草で日本全体に分布し、海外では北海道より北の樺太や朝鮮半島、中国にも分布します。
丘陵地や山野の土手など、少し湿った場所で自生し、川岸や林の際などにも自生します。

 

草丈は、花期・花後によって異なります。茎は地上には伸ばさず、地下茎を地中で横に長く這って伸ばして増殖させます。

 

①地面に這うような草丈
花期は3~5月(早春)。この頃は葉は地表に姿を現さず花茎(花穂)が伸び始め、これが春の風物詩の1つ「フキノトウ(蕗の薹)」と呼ばれる段階です。
フキ(フキノトウ)は雌雄異花で、苞葉に包まれ、筒状花が密集して頭状花を成しています。花径は5~10mmほどで花弁のようなものはなく、それぞれの筒の中から毛状の突起が出ているような形状です。

 

花の色は白~黄白色と紹介されています。これは雌雄異株に関連しています。
鬼無里の奥裾花自然園のガイドさんが「雄株と雌株を見分ける際、白色=雌、黄色=雄」と解説してくれ、基本の花は白色ですが、雄株は花粉をつけるため若干黄色味が入った色合いに見えるとのことでした。
その際、ガイドさんは花を包む葉が広がった頃、「雄株は花(総苞)が隙間なく並びキレイな球体、雌株は葉の間に隙間がある」という別の見分け方も教えてくれました。
上の写真を再度ご覧いただくと、筒状花の先端が白く、花の間に隙間があるのが確認できるため、これは「雌株」ということです。

 

②花後は50㎝前後に草丈を伸ばします(雌株)
雌株は雄しべがないため花粉を出しません。昆虫を招く蜜を出すそうです。
雄株は花が終わると枯れてしまいますが、受粉が終わると雌株は花茎を草丈50㎝前後まで伸ばし、タンポポのように白い綿毛をつけた種(果実)を風にのせて飛ばします。

 

③花後に葉柄が伸びはじめる
花後、花茎とは別に地下茎から地表に葉を出し、葉柄が高さ30~80cmほどになります。
葉は円形に1ヶ所深い切れ込みのあるハート形(腎臓型と紹介する資料も)で、幅が20~30㎝と大きく、光沢はありませんが白色の綿毛が密生しています。
色々と調べていると、葉の中央が少し窪んでいるので皿状になっており、それは葉の切れ込み部分から茎を伝って根に水を送るためにそういった形状になっているとのことでした。

 

フキ(蕗)は日本原産の野菜(山菜)として古くは8世紀ごろから栽培が始められていたそうです。
独特の香りや苦味のあるフキ(蕗)は、山菜の一種としてフキノトウは天ぷらやフキ味噌として、葉柄は煮物や佃煮(きゃらぶき)などとして、現在でも食されており、私も大好物の1つです。

 

山菜として有名なフキ(蕗)ですが、薬用植物としても知られ、フキは気管支粘膜の炎症を鎮める作用があり、蕗の薹には食欲増進効果がある苦味質や精油成分が含まれているため消化を助ける働きなどがあるそうです。

 

私を含め、「蕗は美味しいもの」と思っている方も多いかと思います。
初春のころ、丘陵地や山野の土手を歩いてフキを見つけたら、花の形状をゆっくり観察してもらい、雌雄を見比べてみてください。

 

<春~夏の花の観察ツアー>
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花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間

※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月1日出発 満席! 5月5日出発 まもなく催行!
このツアーで、フキの花を観察しました。

花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

4月29日出発 まもなく催行!
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※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)
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※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

 

6月26日出発 まもなく催行!(尾瀬の花の最盛期)
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
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※高山植物の最盛期を迎える尾瀬で楽しむフラワートレッキング

 

先日、ツアーを発表!
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
https://www.saiyu.co.jp/itinerary/new/GJNA31/
※2つの高山植物の宝庫と奥上高地の徳沢にも訪れる自然観察の旅

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エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)

先週完成した「西遊通信」がそろそろ皆様のお手元に届いている頃かと思います。春から夏にかけて様々なツアーを発表しております。春の花、夏の花、高山植物を観察するツアーも充実しておりますので、ご興味あるコースがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

本日は大型のセリ科植物の「エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)」をご紹介します。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)※ベニア原生花園にて

 

被子植物 双子葉類
学名:Papaver fauriei
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

高山植物を観察していると一際大きな存在感を放つのがセリ科の植物です。
セリ科の植物を見つけた際に「あれはセリ科の花」「ウドの仲間」と認識されている方も多いのではないでしょうか。それだけ見分けが難しい植物でもあり、私も自身がなく前述のように説明してしまうことが多い植物です。
「エゾニュウ(蝦夷ニュウ)」はセリ科シシウド属で、北海道の沿岸部の原生花園などで観察する機会が多いですが、国内では北海道以外にも本州の中部地方以北に、海外では千島列島、サハリン、カムチャッカ半島に分布し、沿岸部の草地から山地と幅広く自生します。

 

草丈は1.5m~2m、大きいので3mにも達するものもあり、太い赤みを帯びた茎が直立します。この赤みを帯びた太い茎は中空で直径10㎝にも及ぶものもあるそうです。

 

葉は比較的大型、二回三出複葉で小葉は長楕円形です。

  • 複葉とは、葉身(葉の平たい部分)が小葉と呼ばれる小さな部分に分かれている葉のことで、別々の小さな葉の集まりのように見えるものも、実は全てを合わせて1枚の葉と考えます。
  • 複葉の中にもいくつか種類があり、中央の1本の軸の左右に小葉が並んでいるものを「羽状複葉」、羽状複葉が集まって全体としてさらに大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて「ニ回羽状複葉」、 「三回羽状複葉」と言います。

 

茎頂に大きな蕾をつけ、蕾を覆う苞は深い皺がはいり、少々薄気味悪い印象を与えます。この苞の部分は開花直後に剝がれ落ちてしまいます。
※エゾニュウの蕾の状態の写真はありませんでしたが、同じセリ科の植物の蕾の写真を見つけました(サハリンで撮影)ので、イメージとして掲載しておきます。

 

セリ科の植物の蕾

 

花期は7~8月。複散形花序(花軸から放射状に柄を伸ばし、その先に散形花序をつける)で、白色(クリーム色)の小さな花を多数つけます。
エゾニュウの大花序は50個近く柄を伸ばし、その先につく小花序は30~40個ほどの柄を放射状に出し球形となります。その姿は、まるで打ち上げ花火が大きく広がったようにも見えます。
それぞれの花はルーペがないと見えないくらいの大きさですが、花弁が4~5枚、その中央に長い雄しべが伸びます。ある資料に「雄しべがにゅーっと伸びる」とあり、可愛らしい表現で、エゾニュウの説明にピッタリな表現でした。

 

エゾニュウは、秋田県では「ニョウサク」「サク」「ニオ」などと呼ばれ、塩蔵して冬に食べる越冬山菜の代表として紹介されています。
また、アイヌ語では「シウキナ(若い草)」と呼ばれ、ある資料にアクが強くアイヌでは若い茎の皮を剥いて生のまま『エゾニュウ甘くなれ』とおまじないをかけながら食べていた地域もあったと紹介されていました。

 

見分けが非常に難しいセリ科の植物ですが、また別の機会にセリ科の植物をご紹介したいと思います。まずは見分け方から勉強しないといけませんが・・・。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)②※ベニア原生花園にて

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
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