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ショウジョウバカマ(猩々袴:Heloniopsis orientalis)

我が家の近所ではツルニチニチソウに続き、ツツジも蕾が膨らみ、早いものは花開くものもあり、通勤ルートに楽しみが増えてきました。
先日もお伝えしましたが屋久島の垂直分布を知るツアーとして、亜熱帯植物から着生植物、高山植物を観察するツアーが完成・発表間近です。今週中には・・・!!

 

本日は「ショウジョウバカマ(猩々袴:Heloniopsis orientalis)」をご紹介します。

 

ショウジョウバカマ(猩々袴:Heloniopsis orientalis)

 

被子植物 単子葉類
学名:Heloniopsis orientalis
科名:シュロソウ科(Melanthiaceae)
属名:ユリ属(Liliaceae)

 

ショウジョウバカマ(猩々袴)は、全国に広く分布しており、また垂直分布も広く(高度適応性が高い)、田んぼの用水路脇から高山帯の高層湿原までに分布し、やや湿った場所などに自生する多年草です。
※今回のショウジョジョウバカマの写真は、弊社楠が「紀伊半島 ダイヤモンドトレール縦走45km」に同行させていただいた際、大阪・奈良・和歌山の3つの県境に位置するあたりで観察したものです。

 

草丈は開花期には10~30㎝ですが、花後には新葉が芽吹き始め、50㎝くらいにまでなるものもあります。冬の間に雪の下で埋もれていた根生葉の中心から花芽が挙がってきます。
その根生葉は倒披針形で長さが7㎝ほどから長いもので20㎝になるものもあり、ロゼット状に広がり、少し光沢も確認できます。また、花茎には鱗片状の葉が数枚付いているのも確認できます。

 

ショウジョウバカマ(猩々袴)は、早春の代表花として紹介されることもあり、「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」の1つとしても紹介される花です。
花期は3~7月と幅広く表記されている資料もありますが、これは花を咲かせる場所の標高による差が関係しています。低山や平地などでは雪解け後の3~4月の早春に花を咲かせ、高山では雪渓が溶ける頃の6~7月に花を咲かせます。

 

茎頂に密集する形で3-10個の花を総状に付け、横向きに花を咲かせるのですが、ショウジョウバカマの面白い点は、花の向きが片側に偏ったように咲かせることです。
ある資料には「半球型の総状花序」と記載されており、イメージにピッタリな表現だと個人的には思っています。
1つ1つの花は小さく10~15㎜ほどで、花被片が6枚です。ショウジョウバカマの花は色の変異が多く、淡紅色、淡紅紫色、濃紫色など様々で、稀に白色の花のものもあります。
ある資料には、シロバナショウジョウバカマは葉に鋸歯が見られる別種で、ショウジョウバカマ本種の白花ではないというものもありました。
中央から先端が濃紫色をした雄しべと雌しべが長く突き出ているのも、花の色合いを印象深いものとします。

 

上記で紹介した「スプリング・エフェメラル」(昔は春植物って呼んでいた気もします)は、落葉樹林で木々が芽吹く前の春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成を行い、木々に葉が生い茂り林床が暗くなる夏には地上部を枯らして地中で過ごす草花のことですが、ショウジョウバカマは少し例外的です。
ショウジョウバカマの花被は花後も残り、緑色になって残るのが特徴です。

 

和名の「猩々袴」は、、花が赤いのを猩々(中国の伝説上の赤ら顔の動物)になぞらえ、根生葉の重なりが袴に似ていることから名付けられたと言われています。

 

林床や湿原などに淡紅紫色のショウジョウバカマが群生していると、その色合いに魅了されて撮影に夢中になってしまいますが、次回の観察時にはバリエーション豊かな花が周囲にいくつ咲いているかなどを確認するのも面白いかもしれません。また、袴になぞらえた根生葉にも注目してみてください。

 

ショウジョウバカマの群生

 

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エゾスカシユリ(蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)

早いもので2021年も1ヶ月が過ぎました。
今年は1897年(明治30年)以来、124年ぶりに節分の日が2月2日でした。毎年恒例の恵方巻も、例年より1日早く嫁さんと共に「無言」でいただきました。

 

本日は「エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)」をご紹介します。

 

エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Lilium pensylvanicum
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ユリ属(Lilium)

 

エゾスカシユリと言えば、エゾキスゲ(蝦夷黄菅)の際にもお伝えしましたが、個人的に思い出されるのが北海道・小清水原生花園です。レモンイエローのエゾキスゲとオレンジ色のエゾスカシユリの両方を観察できたのが、良い思い出です。因みに北海道の小清水町がエゾスカシユリを町の花に指定しています。
また、北海道北部のサロベツ原生花園でも群生したエゾスカシユリを観察したのを覚えています。

 

エゾスカシユリ(蝦夷透百合)は、北海道の低地の原生花園に咲く代表的な花の1つです。海外では、シベリアやサハリンなどに広く分布します。海岸線の砂地・砂丘や産地の草地、岩場に自生し、北海道の道東や道北では原生花園以外の場所でも観察することができます。

 

草丈は30~100㎝と比較的大型で直立し、葉は先の尖った披針形で互生します。
花期は6~7月。茎頂に鮮やかなオレンジ色(橙赤色)で直径10cmほどの花を1~5個ほど、上向きに花を咲かせます。
花被片は6枚で、上部が外側に反り返っており、花被片の内側には濃紅色の斑点があるのが特徴的です。
※ユリの花は6枚の花被片のうち、外側の3枚が萼、内側の3枚が花弁です。
花被片内側の基部付近、花柄、蕾などには白い細かな毛が密集しています。

 

上の写真でも確認できますが、他のユリ科の花よりも花被片の根元が細くなっており隙間ができています。
この隙間(透かし)がある構造が和名の「スカシユリ」の由来となっています。

 

西遊旅行に入社する前、カナディアンロッキーのフラワーハイキングツアーに同行した際(確かボウバレー州立公園だったように記憶しています)、現地では「ウエスタン・ウッド・リリー」と呼ばれているエゾスカシユリに似た「Lilium philadelphicum」を観察しました。エゾスカシユリより赤みが強く、数は少なかったのですが、非常に印象深く、現地で「エゾスカシユリにそっくり」と大いに盛り上がりました。
その時のガイドさんが「日本のエゾスカシユリとウエスタン・ウッド・リリーは近縁種」と説明がありました。また、ウエスタン・ウッド・リリーの学名「Lilium philadelphicum」には、アメリカのフィラデルフィアの地名が、エゾスカシユリの学名「Lilium pensylvanicum」にはアメリカの州の1つであるペンシルベニア州の名が含まれているが、その理由は不明とのことでした。
エゾスカシユリは北米に分布しないはずなのに・・・。その時は解決できず、ブログを作成の際にも調べてみましたが、理由は判りませんでした。
ある資料には「エゾスカシユリにペンシルベニアの名が入っているのは腑に落ちない」とあり、原記載した研究者の勘違いかもとありました。

 

学名の不思議はありますが、色鮮やかで可憐な花であるのは間違いありません。
エゾスカシユリをはじめとするユリ科の花に出会った際は、是非細部までゆっくりと観察してみてください。

 

<これまでご紹介したユリ科の花々>
030.マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)
031.ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
054.クロユリ(Fritillaria camschatcensis)
070.カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)
071.ニシノハマカンゾウ(西の浜萱草:Hemerocallis fulva var. aurantiaca)
080.エゾキスゲ(蝦夷黄菅:H. lilioasphodelus var. yezoensis)

 

エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)②

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
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※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
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※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

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花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

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クルマユリ(車百合:Lilium medeoloides)

今年に入り首都圏1都3県に緊急事態宣言が発令され、さらに13日には7府県が追加発令されました。最近「コロナ慣れ」という言葉を耳にする事が多くなりましたが、今こそ気を引き締めて生活をしなければいけないと感じる日々です。
皆さんも体調管理、感染症対策に十分お気をつけください。

 

先日、カタクリの花をご紹介しましたが、本日は同じユリ科の「クルマユリ(車百合:Lilium medeoloides)」をご紹介します。

 

クルマユリ(車百合:Lilium medeoloides)

 

被子植物 単子葉類
学名:Lilium medeoloides
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ユリ属(Lilium)

 

クルマユリ(車百合)は、北海道から本州、四国に分布し、亜高山帯や高山帯に自生しますが、北海道では低地にも自生します。海外では、中国、朝鮮半島、サハリン、カムチャッカ半島、千島列島などに分布します。

 

草丈は30~100㎝で直立し、茎の中ほどに長さ10㎝前後の披針形の葉を5~10枚、数段にかけて輪生します。茎の上部に向かうにつれ、葉は小さくなっていき、まばらに互生します。
葉が輪生するユリは珍しいそうで、ある資料によると「クルマユリ(車百合)」という名の由来は、茎の中ほどで輪生する葉を車輪に見立てたことから「車百合」と名付けられたとありました。私も知らなかったので、新たな発見でした。

 

花期は7~8月。茎頂に直径5㎝ほどのオレンジ色(朱色、朱赤色と表記されるものもある)の花を下向きに咲かせます。鮮やかなオレンジ色の花被片を6枚つけ、花弁の上半分が大きく反り返っているのが特徴です。時折、花被片が8枚になるものも確認されているそうです。

 

カノコユリをご紹介した際にも記載させていただきましたが「花弁が6枚」ではありません。
ユリの花は3枚の花弁と3枚の萼片に分かれており、外側の萼片はやや幅が狭く外花被と呼ばれ、内側の3枚は幅がやや広く内花被と呼ばれ、百合の花の構造の共通点です。
花弁、萼片とも外側に反り返った形状ですが、このように丸まっている姿が手毬のように見えることから「手毬型」と表記されています。
6枚の花被片には濃紅色の斑点が付いており、これもユリ科の花によく見られる特徴です。

 

下向きに咲く花の中央に花被片より少し短い雄しべが6本伸び、雄しべの上部に赤褐色の葯(花粉を入れる袋)があり、この葯の色合いがクルマユリの色合いを印象的なものにしていると、個人的に思っています。
花の中央に雌しべが1本伸びており、先端の柱頭(粘液を分泌して花粉を受ける部分)もハッキリと確認ができます。先端が丸いのが柱頭=雌しべ、先端が細長いのが葯=雄しべと見分けます。

 

アイヌ料理では、秋にクルマユリやエゾスカシユリの鱗茎を米と混ぜて炊き、杓子で鍋の片隅から飯を潰していく調理方法があるそうです。

 

ユリ科の花は非常に色鮮やかなものが多く、花の観察に出掛け、ユリの花に出会うと絶対に足を止めてしまい、ゆっくりと観察・撮影を楽しみたくなる花の1つです。ユリの花を観察する際、花被片や雄しべ・雌しべなど、細かな点にも一度注目をしてみてください。

 

<色鮮やかなユリの花>
カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)
ニシノハマカンゾウ(西の浜萱草:Hemerocallis fulva var. aurantiaca)
ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)
クロユリ(黒百合:Fritillaria camschatcensis)

 

<おすすめ!! 花咲くシーズンに訪れるツアー>
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※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

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クルマユリ(車百合:Lilium medeoloides)
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カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)

先日「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島」へ同行させていただきました。
コロナウイルスの影響により長らくツアーが実施できず、久々のツアー添乗でしたが、お客様とともに感染症対策に十分気を付けながら、各所での観光を楽しませていただき、甑島(上甑島、下甑島)ではカノコユリが満開を迎えており、各所で観察を楽しむことができました。

 

本日は甑島で堪能したカノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)をご紹介します。

 

カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Lilium speciosum
別名:ドヨウユリ(土用百合)、タナバタユリ(七夕百合)
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ユリ属(Lilium)

 

カノコユリは四国南部(愛媛県や徳島県の山間部)や九州(薩摩半島から長崎県沿岸)などで見られ、今回訪れた鹿児島県薩摩川内市の甑島が日本唯一の自生地と言われています(もっとも自生密度が高いという表現をした資料もあります)。
また、海外では台湾北部、中国・江西省に自生し、タイワンカノコユリと呼ばれています。タイワンカノコユリは花は白く、赤からオレンジ色の斑点が入るそうです。

 

カノコユリは漢字で「鹿の子百合」と書きます。名の由来は紅色(またはピンク色)の斑点模様が鹿の背の斑(まだら)模様に似ていることから名付けられました。
ある資料では絞り染めの一種である「鹿の子絞り(かのこしぼり)」の模様に似ていることから名付けられたとされていました。

 

草丈は50㎝から大きいもので150㎝ほどまで成長します。
葉は線形で10~20㎝ほどの長さ、葉に触れてみると少し硬さを感じ、光沢も少し見られます。
花期は7月~8月。直立したカノコユリは茎先で枝分かれをし、数個の花をつけ、花の大きさは直径で10㎝ほどで、大半は下向きに咲きます。

 

花弁の縁が白く、中央部に向けて徐々にピンク色となり、個体によってはより濃いピンク色のものもあり、花全体が白花のものもあります。
花弁それぞれにカノコユリの名の由来どおり、花弁より濃紅色の鹿の背のような斑模様がついており、実際に観察するとこの色合いが何とも言えない美しさです。
カノコユリを調べていると、赤みの強い球根ほど色の濃い花を咲かせる傾向があるようです。

 

写真を見ると「花弁が6枚」と思いますが、実は違います。
これはユリの花の構造の共通点ですが、実は3枚の花弁と3枚の萼片に分かれているのです。
外側の萼片はやや幅が狭く外花被と呼ばれ、内側の3枚は幅がやや広く内花被とよばれています。

花弁、萼片とも外側に反り返った形状ですが、このように丸まっている姿が手毬のように見えることから「手毬型」と表記されている資料もありました。

 

花弁(内花被)と萼片(外花被)それぞれから雄しべが伸び、計6本つけており、雌しべが1本。上の写真でも判りますが、雌しべは先端の柱頭(粘液を分泌して花粉を受ける部分)が丸く、雄しべは葯(花粉を入れる袋)が細長いという点で見分けることができます。

 

江戸時代にフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトがカノコユリとテッポウユリの球根を日本から持ち帰り、ヨーロッパでも知られるようになり、カサブランカなどの品種で有名な「オリエンタル・ハイブリッド種」が生まれたそうです。
また、明治6年(1873)のウィーン万国博覧会で日本の自生ユリの数々が持ち込まれて紹介されるや、熱狂的なブームが起こったそうです。

 

先日甑島でカノコユリの群生を観察したので信じられませんが、現在カノコユリは環境省のレッドリストに登録されており、絶滅が危惧されているそうです。
心癒される美しい色合いのカノコユリの学名の「speciosum」は「美しい」という意味を持ちます。「美しいユリ」のカノコユリ、いつまでも美しく可憐に咲き続けてほしいものです。

 

白花のカノコユリも観察できました
カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)