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ヤクシマダイモンジソウ(屋久島大文字草:Saxifraga fortunei var. obtusocuneata f. minima)

前回に引き続き、本日も屋久島の花の1つ「ヤクシマダイモンジソウ(屋久島大文字草:Saxifraga fortunei var. obtusocuneata f. minima)」をご紹介します。

 

ヤクシマダイモンジソウ(屋久島大文字草:Saxifraga fortunei var. obtusocuneata f. minima)

 

被子植物 双子葉類
学名:Saxifraga fortunei var. obtusocuneata f. minima
科名:ユキノシタ科(Saxifragaceae)
属名:ユキノシタ属(Saxifraga)

 

ヤクシマダイモンジソウ(屋久島大文字草)は、ユキノシタ科の多年草で標高1,000m以上の標高帯で、湿った岩上に自生する屋久島の固有変種です。
同じユキノシタ科のダイモンジソウの仲間の1つであるウチワダイモンジソウ(団扇大文字草)が矮小化した品種とされています。

 

草丈は3~10cmで、ダイモンジソウに比べて草丈は低く、直立します。
葉は小さく0.5~1.5cmで縁が浅く4~5裂しており、葉全体に軟毛が確認でき、少し光沢も確認できます。

 

屋久島には「ヤクシマダイモンジソウ(屋久島大文字草)」ともう1種、屋久島の固有種「ヒメウチワダイモンジソウ(姫団扇大文字草)」があり、花の見た目はほとんど一緒で見分けが難しいようです。
私はヒメウチワダイモンジソウを観察したことがなく、見比べたことはありませんが、葉の違いが見分けるポイントとのことです。

 

※葉の軟毛の有無
→軟毛が確認できる種は「ヤクシマダイモンジソウ」
※葉の基部
→ハート型が「ヤクシマダイモンジソウ」、くさび型なら「ヒメウチワダイモンジソウ」

 

花期は8~10月。私は8月末に黒味岳山頂直下で観察することができました。
茎頂に細長く白い花弁(淡いピンク色にも感じる個体もありました)を5枚付けた花を1つ咲かせます。ユキノシタの仲間の特徴ですが、1つの花の中で花弁の長さに違いがあるのが面白いです。
上の2枚は短く2~3mmほど、横に広がる2枚の花弁は少し長く5mmほど、真下に伸びる1枚が最も長いですが、それでも1cm未満の短さです。
この5枚の長さの違いがまるで「大」の字ような広がりを見せることが「大文字草」の名の由来です。

 

花の中央からは、一番短い2枚の花弁とほぼ同じ長さの雄しべが数本伸び、中央に黄色い子房も確認できます。この黄色い子房と白色(または淡いピンク)の花弁との色合いのコントラストがヤクシマダイモンジソウをより印象深いものにすると感じます。

 

先日もお伝えしましたが、屋久島の花は矮小化したものが多いため、このヤクシマダイモンジソウも危うく見落としてしまいそうになります。
黒味岳など山頂を目指す中、いち早く山頂へ向かいたい気持ちも判りますが、逸る気持ちを抑えてヤクシマダイモンジソウをはじめとする高山植物をゆっくりと探してみてください。黒味岳には登頂と高山植物の観察という2つの楽しみがある点が魅力です。
※現在、春の屋久島で植生観察ツアーを造成中です。お楽しみに!!

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン
※活火山・桜島の徹底探求と大隅半島・薩摩半島から名峰・開聞岳を望む

 

2月21日出発が催行決定!!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

干潮時には対岸に浮かぶ象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」
静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークの4つのジオサイトから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る

 

現在、屋久島で春の花の観察ツアーを含め、いくつか春の花ツアーを造成中です。発表次第、ホームページやこちらのブログでお知らせします。

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ヤクシマママコナ(屋久島飯子菜:Melampyrum laxum var. yakusimense)

本日は「ヤクシマママコナ(屋久島飯子菜:Melampyrum laxum var. yakusimense)」をご紹介します。

 

ヤクシマママコナ(屋久島飯子菜:Melampyrum laxum var. yakusimense)

 

被子植物 双子葉類
学名:Melampyrum laxum var. yakusimense
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:ママコナ属(Melampyrum)

 

ヤクシマママコナ(屋久島飯子菜)は、ハマウツボ科の一年草で屋久島の固有変種です。黒味岳や宮之浦岳を目指す登山道上の小花之江河より上部に自生し、鹿児島県絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
以前はゴマノハグサ科に属していましたが、新しいAPG植物分類体系でハマウツボ科に変更されました。

 

草丈は15~20cmで直立し、葉は狭卵形~長楕円状披針形で、長さ1.5~3cm、幅0.5~1cmで先端が少し尖っている印象で光沢や鋸歯などは見られません。

 

花期は8~9月。花茎の上部の葉腋に1つずつ、薄いピンク色の小さな花を咲かせます。
花冠は0.5~0.8cm(1cm弱と表記する資料もあり)と小さく、草丈も含めて他のママナコの仲間の中でも小型です。
花冠は上唇部と下唇部に分かれます。
上唇(薄いピンク色)は兜型で縁の部分に軟毛が確認できます。
下唇(白色)は横に広がるように垂れ下がり、先端は非常に浅く3裂しています。
また、下唇には米粒のような白い膨らみが確認でき、花が見頃を迎える頃には、白い膨らみが濃い赤色に変わっていきます。
和名「飯子菜(ママナコ)」は、この膨らみが米粒に似た形状であることが由来とされています。
苞は卵形~長楕円形で葉と同様に鋸歯は確認できません。

 

<屋久島は小さな花・高山植物が多い ~矮小化>
周囲約130kmで円錐形をしている屋久島は、島の中央に聳える宮之浦岳 (1,936m)をはじめ、標高1,000mを超える山が40数峰連なり、洋上のアルプスと呼ばれています。
海岸線などの低地では年間平均気温が20℃前後で一年中ハイビスカスなどが昨亜熱帯の植生が見られ、山地・高地では、年間平均気温が北海道・札幌と同じくらいで冬になると2~3mの積雪も確認できる冷温帯帯から亜寒帯に属する植生を観察することができます。
屋久島は、直径わずか30kmほどの島に沖縄から北海道までの植生が垂直分布し、まさに日本列島の縮図のような島になっているのが屋久島の最大の特長と言えます。また、屋久島の高地では厳しい環境で植生が育つため、通常より数分の1にも矮小化した植物が多いのも、他では見られない珍しい現象です。

 

今回ご紹介した「ヤクシマママコナ(屋久島飯子菜)」も、単独で咲いていたら見落としてしまうような小さな花でしたが、今回は小花之江河の前後、黒味岳の山頂を目指すルート上で数多く群生していたため、見落とすことなくゆっくりと観察を楽しむことができました。

 

花冠が非常に小さいヤクシマママコナ(屋久島飯子菜)

 

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サクララン(桜蘭:Hoya carnosa)

本日より8月に同行させていただきました「屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング」で観察した花々をご紹介します。
本日は、屋久島では「ツバキラン」とも呼ばれる「サクララン(Hoya carnosa)」をご紹介します。

 

サクララン(桜蘭:Hoya carnosa)

 

被子植物 双子葉類
学名:Hoya carnosa
英名:Wax vine
別名:ツバキラン(屋久島)、Wax vine
科名:ガガイモ科(Asclepiadaceae)
属名:サクララン属(Hoya)

 

サクララン(桜蘭)は、九州暗部以南の南西諸島や琉球諸島に分布するつる性常緑多年草です。サクラランの仲間は200種ほどあるとされており、海外ではオーストラリア、アジア東部に分布し、日本にはカルサノ種だけが分布するという資料もありました。

 

茎はつる性で、樹幹や岩肌を這うように伸び、途中から気根(植物の地表に出ている茎や幹から出て、空気中に現れている根)を出し、樹木や岩肌などに張り付き成長します。
葉は常緑で肉厚、光沢があり(蝋質と表現する資料もあります)、長さ5~10㎝で先の尖った長楕円形の葉が対生します。肉厚な葉は、日陰でも光合成をためやすくするためとも言われています。

 

光沢のあるサクララン(桜蘭)の葉

 

花期は5~9月。葉の付け根あたりから花柄を伸ばし枝先に1つずつ花をつけ、直径2㎝ほどの小さな花を密集して咲かせます。50個ほどの花を半球状にまとまって咲く姿は非常に印象的です。
花冠は5裂し、真っ白な星形の花冠のように見え、中央部分が淡紅色をしており、よく見ると中央の淡紅色の部分も星形になっているようにも見えます。
花も多肉質で蝋質をしており、英名「Wax vine」は、蝋質の花(や葉)をつけるつる性の植物という意味から来ているようです。意外とそのままの英名でした。
因みに、学名の種小名「carnosa」は「肉質」という意味を持ちます。色々調べていると、学名と属名の「Hoya」はイギリスの園芸家であるT.Hoy氏の名前に因んだものだそうです。

 

花の色がサクラ、葉がランに似ていることが名の由来ですが、屋久島では葉が椿に似ていることで「ツバキラン」と呼ばれているそうです。

 

花後の果実は袋果で、果実が熟してくると自然に果皮が裂け、種を放出する仕組みとなっているそうです。

 

サクララン(桜蘭)は8月に訪れた屋久島の西部林道を散策している際、お客様が発見しました。
私の背丈(174cm)の何倍もの高さの木に花を咲かせており、真上に咲く花を皆さんと共に観察・撮影させていただきました。
その時、サクラランにキレイな蝶、リュウキュウアサギマダラ(マダラチョウ科)が飛んでおり、ちょうどサクラランに止まってくれました。真上の方向を見ながら撮影をしていたため、木々の合間から陽光が射しこみ、サクラランもリュウキュウアサギマダラも程よく輝き、思いがけないキレイな写真を撮ることができました。

 

サクララン(桜蘭)とリュウキュウアサギマダラ

 

<冬から春 オススメのツアー>
※12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅

※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン
※活火山・桜島の徹底探求と大隅半島・薩摩半島から名峰・開聞岳を望む

 

※2月21日出発が催行決定!!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークの4つのジオサイトから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る

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ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica)

昨日、昨年に引き続き「大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただきました。能取湖のサンゴソウ、さらには大雪山国立公園での紅葉が素晴らしく、お客様と共に素晴らしい景観を楽しませていただきました。

 

本日は「ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica)」をご紹介します。

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):大雪山系・旭岳山麓にて

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana nipponica
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆)は、北海道から本州の中部地方以北に分布し、高山の湿った草地などに自生する日本固有のリンドウ科の多年草で、フデリンドウ(筆竜胆:Gentiana zollingeri )の高山種と紹介されています。
今夏は、7月に千畳敷カール、9月(先日)に大雪山系の旭岳山麓にて観察することができました。

 

地表を這うように伸びた茎から花茎を立ち上げ、草丈は5~15cmほどとなり、茎はやや赤紫色を帯びています。
葉は葉柄がなく、長さ5~12mmほどで広披針形~卵状長楕円形の形状の葉を対生してつけます。横に展開するように付く葉は先が尖らず、少し厚みを感じ、少し光沢も確認できます。根生葉はありません。

 

花期は7~9月。茎頂や上部の葉腋に1.5~2cmほどの青紫色の小さな花を1~数個咲かせます。花冠の先端は5裂、裂片間に副片があり、平開します。萼の先端はやや反り返っている印象です。私は観察したことがありませんが、稀に白花種もあり「シロバナミヤマリンドウ」と呼ばれています。

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):中央アルプス・千畳敷カールにて

 

形状などが非常によく似ているタテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)との見分け方のポイントとして、葉の違いがよく紹介されています。その他の見分け方もありますので、下記を参考にしてください。

 

<タテヤマリンドウとミヤマリンドウの見分け方>
①茎葉の違い
タテヤマリンドウは横に展開しない(上向き)、ミヤマリンドウは横に展開する

②花茎につく花の数
タテヤマリンドウは茎頂に1つずつ、ミヤマリンドウは1~数個

③花の中央部付近の斑点の有無
タテヤマリンドウには斑点が付き、ミヤマリンドウには斑点がない

④5裂した花冠の間の副花冠(副片)
ミヤマリンドウは細長く、先が不規則に裂ける、タテヤマリンドウは先は避けず短い

 

その他、変種として飯豊連峰の飯豊山に特産する「イイデリンドウ(飯豊竜胆)」や近縁種として「ハルリンドウ(春竜胆)」などが紹介されています。

 

リンドウの花は一見派手な色合いをしておりますが、ゆっくり観察をすると1つ1つの花の形状が美しく、気付くと心奪われる魅力ある花であります。

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):大雪山系・旭岳山麓にて
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キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪:Viola biflora)

本日は「キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪:Viola biflora)」をご紹介します。

 

キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪:Viola biflora)

 

被子植物 双子葉類
学名:Viola biflora
科名:スミレ科(Violaceae)
属名:スミレ属(Viola)

 

キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪)は、北海道、本州(中部地方以北:資料によっては紀伊半島以北)、四国山地、屋久島に分布し、の亜高山帯から高山帯の礫地や岩場、湿った草地や沢沿いの林縁などに自生します。海外でも北半球の冷温帯の広範囲に分布します。
今回の写真は、7月に中央アルプス・宝剣岳の麓に広がる千畳敷カールにて観察・撮影したものです

 

草丈は5~15cmほど、葉は2~3cmで円形~腎円形。葉の縁には鋸歯となっており、表面に毛が見られ、表面は少し光沢が感じられます。
キバナノコマノツメの葉は先端は尖らないのが特徴です(資料によって葉の先端がやや凹むものも多いと紹介されています)。
同じ千畳敷カールには、近縁種であるクモマスミレ(雲間菫:Viola crassa var. alpicola)も自生しており、見た目が同じ「黄色いスミレ」で見分けるのが難しいですが、葉の先端が尖る点が見分けるポイントです。今回は残念ながらクモマスミレ(雲間菫)は咲いていなかったので、比較する写真は掲載できませんが、またの機会に。

 

花期は6~8月。茎頂に1.5~2cmほどの黄色い花を1つ、1つの株で多数の花を咲かせます。
花弁は5枚。上弁と側弁の計4枚がそり返るように上を向き、他のスミレ科の花に比べて細長い印象です。下向きの唇弁も細長い印象で、それぞれの花弁の基部からはスミレ科の特徴である暗紫色の筋があり、唇弁の筋は上弁や側弁と比べるとハッキリと確認ができます。距、萼片には毛はなく、距の部分は非常に短いので見落としてしまうほどです。
花の中央には、薄い黄緑色の花柱が確認でき、二股に分かれて左右に広がっているような形状です。

キバナノコマノツメの花柱は二股に分かれて左右に広がっている形状

 

和名は「黄花の駒の爪」と書き、非常に印象的な名称です。名の由来は、葉の形状が馬の蹄に似ており、黄色の花を咲かせることから名付けられたそうです。
また、スミレ科の中でも和名に「スミレ」とつかない数少ない種とも紹介されています。

 

バナノコマノツメ(黄花の駒の爪)の変種として、下記2種があります。
◇ジョウエツキバナノコマノツメ(上越黄花の駒の爪)
→谷川岳や尾瀬・至仏山の蛇紋岩地に自生。葉に厚みがある。
◇アカイシキバナノコマノツメ(赤石黄花の駒の爪)
→南アルプスに自生。果実に毛がある。長野県でレッドリストの絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定。

 

また、キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪)には稀に白花種もあり、唇弁の基部に黄色が淡く残り、写真でしか見たことありませんが、印象的な色合いです。
黄花で白花・・・名前は???

 

フラワーハイキングなどを楽しんでいる際にスミレが咲いていても、さっと観察するだけで通過してしまう事が多いですが、今回は黄花のスミレで花弁の細長い形状が印象的だったため、足を止めってゆっくりと観察を楽しみました。
スミレの花の観察の際、花の形状などゆっくりと観察すると新たな発見があるので、是非ゆっくり観察してみてください。

 

キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪:Viola biflora)
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シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)

現在、10月に発行予定の西遊通信で発表予定のツアー造成に励んでいます。冬さらには春に向けて新たなツアーを発表しますので、お楽しみに。一足先に確認されたい方は、是非弊社ホームページへアクセスを。

 

本日は「シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)」をご紹介します。

 

シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Trollius japonicus
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:キンバイソウ属(Trollius)

 

シナノキンバイ(信濃金梅)は、以前紹介したハクサンイチゲと並ぶ高山植物の代表種として紹介されるキンボウゲ科の多年草です。
北海道から中部地方以北に分布し、高山帯などの湿った草地に自生する日本固有の花です。
花の名は、信濃地方で多く観られ、他のキンバイソウ属の花と同様に黄金色で梅に似た花を咲かせることから「信濃金梅」と呼ばれています。

 

草丈は20~80cmで直立します。背丈に差がありますが、南・北アルプスなどでは背が低い傾向にあると記載する資料もあります。
葉は、円心形で直径が5~10cmで3全裂、側裂片が2深裂し、縁には不揃いな鋸歯があります。手のひら状に5裂するギザギザな葉とも紹介されています。
下部の葉には長柄がありますが、茎の上部の葉は葉柄が短く(または無し)、茎を抱くように付けています。
根生葉と株の葉の表面には光沢が確認できるという資料もありますが、上部の葉は個人的にはあまり光沢を感じることはありません。

 

花期は7~9月。茎頂に1~2つ、直径3~4cmほどの黄橙色の花を咲かせます。
黄橙色の花弁が5~7枚・・・と言いたいところですが、花弁に見える黄橙色の部分は「萼片」です。萼片が変化したもののため、花が開く前は縁が緑を帯びています(一番下の写真をご覧ください)。

ただ、シナノキンバイには花弁がない訳ではありません。シナノキンバイの花弁は、雄しべや雌しべが密集している花の中央にあります。雄しべより短く、濃いオレンジ色の線形の花弁が確認できます。真ん中の写真で上のアップ写真で確認できるでしょうか。

 

シナノキンバイの花弁は確認できますか?(雄しべより短く、濃いオレンジ色の線形)

 

以前、ミヤマキンバイ(深山金梅)をご紹介した際にも記載しましたが、「ミヤマ~」と名のついた花、「~キンバイ」と名のついた黄色い花など、黄色い花は似ているものが多く、見分けが本当に困難です。
今回も、シナノキンバイのことを調べていると、尾瀬ではシナノキンバイによく似たリュウキンカと共に咲いているとあり、春の訪れを告げる花の1つして紹介されていました。見分け方は丸い葉がリュウキンカ、ギザギザの葉がシナノキンバイだそうです。

 

その他、黄色い花の見分け方のポイントは「葉の違い」です。
・シナノキンバイ(信濃金梅:キンポウゲ科):葉は掌状で切れ込みが深い
・キンバイソウ(金梅草:キンポウゲ科):葉の切れ込みは信濃金梅より浅い
※キンバイソウは、信濃金梅より標高の低い山地に自生
・ミヤマキンバイ(深山金梅:バラ科):小葉は3個で切れ込みが浅い
・ミヤマダイコンソウ(深山大根草:バラ科):葉は丸い心形
・ミヤマキンポウゲ(深山金鳳花:キンポウゲ科):葉は深く3裂、信濃金梅に比べ裂片が細かい

 

黄色い花の見分け方は非常に困難ですが、1つ1つ観察して覚えていくしかありません。
来年こそは、しっかり見分ける方法を身に付けたい・・・毎年言っている気もします。

花弁状の萼片は、花が開く前は縁が緑を帯びています
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ヨツバシオガマ(四葉塩釜:Pedicularis japonica)

本日は「ヨツバシオガマ(四葉塩釜:Pedicularis japonica)」をご紹介します。
7月に「花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く」に同行させていただいた際、千畳敷カールと乗鞍畳平にて観察することができました。

 

ヨツバシオガマ(四葉塩釜:Pedicularis japonica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Anemone narcissiflora
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

ヨツバシオガマ(四葉塩釜)は、日本固有の花であり、シオガマギク属の花の中で最もよく見かける花の1つです。北海道から本州の中部地方以北の高山帯に分布すると紹介されています。
ただ、近年行われた遺伝子解析により、ヨツバシオガマと呼ばれている種が大きく2つに分かれることが分かったそうです。

 

1.福島、新潟、山形に跨る飯豊山地から北に自生するもの(北方系)
→「キタヨツバシオガマ(別名:ハッコウダシオガマ)」と呼びます

2.上記より南(月山以南~中部地方以北)に分布するもの(南方系)
→従来の「ヨツバシオガマ」と呼ばれていたもの

 

ここからは従来のヨツバシオガマ(上記2)について、ご紹介します。

 

ヨツバシオガマ(四葉塩釜)は、亜高山帯~高山帯の湿地(湿り気のある草地)に自生する多年草。イネ科やカヤツリグサ科の植物の根に寄生して養分を分けてもらうため、近くに宿主のある草原に自生することから、シオガマギク属は『半寄生植物』と紹介されます。
草丈は10~30㎝で直立し、葉は1~3段に分かれ、各段4枚の葉が輪生します。「4枚の葉がつく」ことが花の名の由来です。
輪生する葉は、長さ2~5cmで長楕円状披針形で羽状全裂し、裂片はさらに羽状に中~深裂します。

 

花期は6~8月。茎の上部で2~6段に分かれ、ピンク色(薄紫色)の花を4つほど輪生して花を咲かせます。
花の形状の最大の特徴は「嘴のように伸びた」部分ですが、3枚の花弁と1つの唇弁に分かれているように見えますが、ヨツバシオガマの花冠は2唇形。
細長く下向きに伸びる上唇弁は、先端が嘴のように尖る形状をしていますが、根元から下向きに伸びているのではなく、上唇弁の中ほどから下向きに曲がっているのが、写真をご覧いただくと判ります。
下唇弁は、3枚ではなく、3つに深裂している状態です。

 

高山植物のルーツは、北極圏付近に自生していた寒さに強い植物が氷河期に日本にやってきて、暖かくなると高山に取り残されて生き残った植物だと考えられているものが多くあり、ヨツバシオガマもその1つとされています。
ある資料には、古い氷河期に北極圏からやってきて暖かくなった時に高山に残されたのがヨツバシオガマ、新しい氷河期に北極圏からやってきたのがキタヨツバシオガマであるという、興味深い考えもありました。
これまで北海道~中部地方異国の亜高山帯~高山帯に咲く「ヨツバシオガマ」という認識だったこともあるので、いつかしっかりと見比べてみたいものです。

 

ヨツバシオガマ(四葉塩釜:Pedicularis japonica)
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ハクサンイチゲ(白山一花:Anemone narcissiflora)

本日は、「ハクサンイチゲ(白山一花:Anemone narcissiflora)」をご紹介します。高山植物と調べると、よくハクサンイチゲが群生する写真が掲載されていたり、様々な資料で「高山植物の代表種」として紹介される花の1つです。

 

ハクサンイチゲ(白山一花:Anemone narcissiflora)

 

被子植物 双子葉類
学名:Anemone narcissiflora
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:イチリンソウ属(Anemone)

 

ハクサンイチゲ(白山一花)は、本州の中部以北から東北地方に分布し、亜高山帯から高山帯の湿った草地に自生する日本固有のキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草です。
7月の「花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く」に同行させていただいた際、中央アルプスの宝剣岳の麓にある千畳敷カール、北アルプスの乗鞍岳の麓にある乗鞍・畳平にて観察することができました。

 

草丈は15~60㎝で直立し、葉は無柄で4枚の葉が輪生し、それぞれが手のひら状に2~3回深裂し、裂片の先が尖っているのが特徴です。ハクサンイチゲは、茎、葉柄、葉、花柄に粗い毛が確認できます。

 

花期は6~8月。花茎の先端は数本に分かれて各々に1つずつ、2~5個の花を散形状に、直径2~2.5cmほどの花を咲かせます。
「イチゲ」とは、通常は1株に1つの花をつける花のことですが、ハクサンイチゲなどイチリンソウ属の植物に多く付けられる名前のため、花が一輪でなくてもイチゲの名前が付いています。

 

真っ白な花弁が印象的・・・と言いたいところですが、ハクサンイチゲには花弁はありません。
花弁に見える真っ白の部分は花弁ではなく「萼片」で、少し先端が尖った形状の萼片は5~7枚付けます。花の中央部には黄色の雄しべ、緑色の雄しべが密集します。

 

近縁種や変種として、エゾノハクサンイチゲ(蝦夷の白山一花:北海道から東北地方北部の高山帯に分布し、葉の幅が広く先端が尖らない)やシコクイチゲ(四国一花:四国山地の岩場(石鎚山など)に分布し、複散形に咲く)があります。
また、日本第二の高峰・北岳にしか咲かないキタダケソウに似ていると紹介されることもあり、キタダケソウは花弁の先端が尖らず、窪んでいる点が違いです。
また、私も知りませんでしたが、萼片が緑色に変わった「ミドリハクサンイチゲ( f. viridis )」と呼ばれるものもあるそうです。是非一度観察してみたいものです。

 

ハクサンイチゲをはじめ、「ハクサン」という名のつく花が多いですが、ご存知の方も多いと思いますが、石川県の白山のことです。
色々と調べていると、興味深い資料があったのでご紹介します。
日本の植物研究は古くからあったようですが、西欧文化を受け入れ、植物学として発展したのが明治時代。その後、高山が研究対象となり、登山道があり山の案内人のいる山で調査が始まったそうです。白山は江戸時代から山岳信仰として登られてきた歴史があるため、当時の植物研究家は白山で多くの植物を発見し、植物に白山の山の名を付けたことが理由とのことです。
その後、日本中の高山が登られるようになり、白山以外でも同じ高山植物が発見されましたが、一度つけた名前は簡単には変えられず、ハクサンという名のつく花が多く残っているとのことです。
因みに「ゴゼン」という名の付く花も多いですが、白山の御前峰のことです。

 

ハクサンイチゲは、その色合い、花の美しさから群生すると見事な花畑の風景となります。群生したハクサンイチゲをのんびり眺めるだけでも幸せな気持ちになります。

 

ハクサンイチゲ(白山一花:Anemone narcissiflora)

 

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ミヤマクロユリ (深山黒百合:Fritillaria camschatcensis var. keisukei)

昨年5月、私がぬか床づくりを始めた頃に「クロユリ(Fritillaria camschatcensis)」として「エゾクロユリ(蝦夷黒百合)」ご紹介しましたが、本日は「ミヤマクロユリ (深山黒百合:Fritillaria camschatcensis var. keisukei)」をご紹介します。因みに、今もぬか床づくりは継続しています。

 

ミヤマクロユリ (深山黒百合)の両性花

 

被子植物 単子葉類
学名:Fritillaria camschatcensis var. keisukei
別名:skunk lily(スカンクユリ)、outhouse lily(外便所ユリ) など
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:バイモ属(Fritillaria)

 

本日ご紹介する「ミヤマクロユリ(深山黒百合)」は、7月に木曽駒ケ岳の千畳敷カール、乗鞍・畳平にて観察したものです。

 

ミヤマクロユリ(深山黒百合)は、中部地方以北(白山が分布の西限)の高山帯~亜高山帯に自生する多年草。
クロユリは、広義ではエゾクロユリ(蝦夷黒百合)とミヤマクロユリ(深山黒百合)の両方を指し、狭義ではエゾクロユリ(蝦夷黒百合)のみを指します。
また、エゾクロユリとミヤマクロユリでは染色体数に違いがあり、ミヤマクロユリの染色体数は2対24本(2倍体)、エゾクロユリは3対36本(3 倍体)とのことです。
私個人的には、北海道などの低地に生える クロユリ は「エゾクロユリ(蝦夷黒百合)」、本州の高山に生えるクロユリはミヤマクロユリ(深山黒百合)という認識です。

 

草丈は10~30㎝で直立し、葉は披針形~長楕円状披針形をしており、茎の中央あたりから3~5枚の葉が輪生上に2~3段につきます。

 

花期は6~8月。茎の頂に柄を伸ばし、下向きに1~2輪ほど花を咲かせます。
長さ2~3cmの花被片を6枚付け、色は黒というより、暗紫褐色で、黄色の網目模様(黄色の細かい斑点と表現する資料もあり)が内外にあるのが特徴です。
個人的な印象として、黄色の網目模様があることで花の色が茶色に近い色合いに感じることもあります。

 

雄しべは6個あり花被片の半分ほどの長さで先端部(葯)が黄色く、花柱は黄緑色で基部から3裂し先は外側に曲がる形状をしています。

 

クロユリは、両性花と雄性花が同じ株に付き、雌花がない「雄性両全性同株」です。茎頂に2個以上の花をつける場合、両性花と雄性花を1つずつ、もしくはどちらか一方を複数咲かせる場合など、組み合わせは様々です。
両性花と雄性花の見分け方は一目瞭然で、花の中央に黄緑色で3裂した花柱が確認できれば両性花、なければ雄性花です。ちなみに、上の写真が両性花、下の写真が雄性花です。

 

クロユリには独特の悪臭があり、花粉を運ぶのは大部分が「ケブカクロバエ」と呼ばれるハエ。この悪臭がこのハエを呼び寄せるといわれています。
花が終わると徐々に上を向くように変化し、実が膨らみ羽をもった種子をたくさんつけますが、発芽率は良くなく、繁殖の大半は栄養繁殖と呼ばれる地下の鱗茎が分裂して数を増やしています。

 

<エゾクロユリとミヤマクロユリの見分け方>
1.草丈
エゾクロユリが10~50cm/ミヤマクロユリは10~30cm。
2.花の色
エゾクロユリは黒褐色に近い/ミヤマクロユリは茶色に近い暗紫褐色
3.網目模様
エゾクロユリはあまり目立たず/ミヤマクロユリは非常に目立つ
4.茎頂の花の数
エゾクロユリが3~5個/ミヤマクロユリは1~2個

 

ミヤマクロユリを見つけると「クロユリ?イメージと違う」という声が挙がり、実際7月のツアーの際にもそのような声が挙がりました。おそらく、クロユリ=エゾクロユリのイメージなのかもしれません。
次回、クロユリを観察する機会がありましたら、エゾクロユリとミヤマクロユリの違い、両性花と雄性花の違いをじっくりと観察してみてください。

 

ミヤマクロユリ (深山黒百合)の雄性花
エゾクロユリ(蝦夷黒百合)の両性花

 

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シラタマノキ(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

先日、「屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング」に同行させていただき、屋久島の亜熱帯植物や照葉樹林の植生を楽しみ、黒味岳の1泊2日の登山では屋久島固有の矮小化した高山植物や様々な苔類の観察を楽しむことができました。

 

以前、シラタマノキの実をご紹介しましたが、本日は「シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)」をご紹介します。

 

シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria pyroloides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

ツツジ科の常緑小低木であるシラタマノキ(白玉の木)は、本州・中部地方の以北から北海道にかけて分布し、海外でも東北アジアからアラスカにかけて広く分布します。亜高山帯~高山帯にかけて、比較的乾燥した岩石地、林縁 草地などに自生します。

 

茎は地を匍い、草丈が10~20cmほどになります。葉は1.5~2.5cmの楕円形で少し厚みもあり、少し光沢も確認できます。葉の縁の鋸歯、葉の表裏にくっきりとした葉脈があるのが特徴です。

 

花は枝分かれした茎の上部に花柄を伸ばし、2~5個ほどの花が垂れ下がるように付いています。大きさは0.5cmほどと小さく、丸みのある壺型で花の先端がキュっとしぼんだ形状が何とも言えない愛らしさを感じます。よく観察すると、キュッとしぼんだ先端部分が浅く5裂していることも判ります。

 

シラタマノキは、9月を過ぎると1cm弱の小さく、白い球状の実を付けます。この事が和名「シラタマノキ」の名の由来であり、別名を「シロモノ」とも言います。
因みに、同じツツジ科でアカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)という花もあり、白い花を咲かせますが、赤い実を付けることから「アカモノ」と呼ばれます。
上の写真は、6月に群馬県中之条町のチャツボミゴケ公園を散策している際に観察したものですが、遊歩道を挟んで向かい側にアカモノの花も咲いており、振り返りながら2つの花を見比べることができました。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

シラタマノキの実は、筋肉疲労などの塗り薬でも使われる「サロメチール(サリチル酸)」の匂いがすることで有名ですが、一粒摘み採り口に入れると、わずかな甘味と清涼感が口に広がるそうですが、生食より果実酒に利用されるそうです。ある資料に焼酎に漬け込み、3ヶ月後に実を出して熟成させるとあり、花以上に興味のある情報でした。

 

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

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