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開放されたユキヒョウ、山へ帰る(クンジェラーブ国立公園、パキスタン)

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (6)

2017年2月下旬、パキスタン北部の村ミズガルで家畜を襲ったユキヒョウが捕らえられました。家畜小屋に入り込みヤギ・ヒツジを殺した上、家畜小屋から出れなくなっていたところを捕獲したとのこと。

村人は、ユキヒョウを保護しなくてはならないことは理解するが、行政への「殺された家畜の補償」をもとめた話し合いがもたれ、捕獲されてから3日目に山へ帰されることになりました。

このユキヒョウはミズガルの村近くで2頭の子どもを連れている姿が目撃されているメスのユキヒョウでした。ユキヒョウは捕獲されたミズガルではなく、クンジェラーブ国立公園へ運んできて放すことになりました。

ユキヒョウがミズガルで捕獲された話はすぐにニュースになりましたが、ミズガルは中国との国境に近いため、2017年現在外国人が行けない場所。偶然にもクンジェラーブ国立公園のデーにあるスタッフ小屋にいたところ、このユキヒョウが連れてこられました。

このユキヒョウを放す瞬間を見ようとテレビ局、政府関係者が集まり、車列を組んで移動です。デーから少しいった場所の山の斜面で放すことになりました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (2)

檻が開けられても、ユキヒョウはすぐには出てきませんでした。出てこないので、その場にいたパキスタン人が「ローリー、ローリー」と呼びます。「ローリー」は2016年の秋までスストのチェックポストで飼われていたユキヒョウのこと。今はナルタルに行ってしまいましたが、クンジェラーブ国立公園の人たちはユキヒョウを見ると「ローリー」と呼ばずにはいられないようです。

ユキヒョウが檻から顔を出して、最初にしたことは、雪を食べたこと。のどが渇ききっていたのでしょう。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (3)

ひとしきり雪を食べるとようやく前を見ました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (4)

そしてあたりを見ます。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (5)

ゆっくりと檻から出てきました。この瞬間、関係者より拍手が起こりました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (7)

自由になったミズガルのユキヒョウ

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (9)

3日間の拘束で毛並みが乱れているし、家畜の血が体についたりして汚れていました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (10)

立ち止まっては雪を食べます。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (11)

こちらのほうを見ました。弱っているのか、動きはゆっくり。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (12)

ひとしきり雪を食べると茂みの中へ入っていきました。まだこちらのほうを見ています。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (13)

岩の上に乗って休憩。ものすごいカモフラージュです。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (14)

しばらくすると、ふたたび山を登り始めました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (15)

開放されたものですが、野生のユキヒョウが歩いている姿を、初めて見ました。

ミズガルのユキヒョウ パキスタン free a Snow Leopard from a cage Pakistan (17)

そしてまた座りました。対岸の山の斜面を見ています。そこにはアイベックスの群れがいました。

その後、このユキヒョウはじっとしたままでした。私たちも、このユキヒョウが無事にミズガルの2頭の子どものもとに戻れることを願い、その場を後にしました。

翌日、スタッフが最後にユキヒョウがいた付近を見に行きましたがもうその姿はありませんでした。そして開放してから3日後、このユキヒョウが2頭の子どもと一緒にいるのがミズガルで目撃されたと、国立公園のスタッフから電話がありました。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Feb 2017, Khunjerab National Park, Pakistan

Reference : Mr.Sultan Gohar -KNP(Khunjerab National Park), Mr.Falman Razah -KVO ( Khunjerab Villager Organization), Wildlife Department of Pakistan

 

 

 

 

パキスタンの野生動物保護とハンティング事情

パキスタンのアイベックス (5)

ヒマラヤアイベックス Himalyan Ibexの親子

いまどきハンティング?と、私には考えられないのですが、パキスタンのハンティン グと 野生動物保護について考える機会がありましたのでご紹介したいと思います。

10月上旬、デオサイ高原国立公園 Deosai National Parkとクンジェラーブ国立公園Khujerab National Parkへ行って来ました。デオサイ高原では、苦労もしましたが貴重なヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearに出会うことができ、クンジェラーブ国立公園ではアイベックスの群れをあちこちでみかけました。

パキスタンのアイベックス (2)

国立公園のスタッフによると、野生動物の個体数は確実に増えているとのこと。パキスタンのワイルドライフもなかなか…と思ったのですが、よ~く話を聞いていると、単なる自然愛護や保護の話ではありませんでした。

クンジェラーブ国立公園は、「世界の屋根」パミール高原の南部に位置する国立公園。 公園の中央を「カラコルム・ハイウェイ」が貫通し、中国とパキスタンの国境となる「クンジェラーブ峠」を含みます。1975年に国立公園が設立されたとき、この公園となった地域はワヒ族の土地でした。このことで土地を失うことになったワヒ族の人々は、村民による議会Khunjerab Villager Organization(KVO)を設立。事実上、国立公園は違法ハンティングの取り締まり以外のすべての事項に村民議会(KVO)の承認が必要となりました。また、スストなどワヒ族の暮らす7つの村が位置する地域は、「KVO保護地域」としてKVOの管理下に置かれることになりました。

ここでハンティングについてです。現在、クンジェラーブ国立公園内でのハンティングはもちろん認められていません。また、KVO保護地域でも「許可された狩猟」を除く一切の狩猟は禁止されており、10年ほど前に最後の違法狩猟が摘発され厳しく罰せられた事件以来、違法ハンティングは一件もないとのこと(事実ではなさそうですが)。

この「許可された狩猟」というのが「トロフィーハンティング」。肉や毛皮のためではなく、合法に、趣味として「大型野生動物を撃つ」というものです。剥製などを「トロ フィー」として持ち帰ります。

毎年10月半ば以降に、トロフィーハンティングの許可証がオークションされます。2014年の価格は、アイベックスなら5000ドル(外国人ハンター)か1500ドル(パキスタン人ハンター)、ブルーシープだと8500ドル(外国人ハンター)か5000ドル(パキスタン人ハンター)くらいとのこと。KVO保護地域では、2014年度はアイベックス18頭、ブルーシープ2頭、総数20頭のハンティングが許可されました。

この許可証による収入は、パキスタンの山奥の村にとっては 非常に大きなものです。KVO 保護地域で「トロフィーハンティング」が始まったのは、1993年のことです。この時、狩猟が許可された頭数は1頭。そのころから村人がトロフィー・ハンティングを許可される個体数を増やすために「野生動物の保護」を考えるようになったのだそうです。

トロフィー・ハンティングの対象となる動物の数は、毎年、AKRSP, WWF, Nationa Park, KVO, Wildlife Department Gilgit-Baltistanなどの機関が調査を行い、その結果で割り当てを決めることになっているといいます。野性動物の数が多ければ多いほど、トロフィーハンティングの数が増える=収入が増えるのです。

1993年に1頭から始まったトロフィーハンティングは、2014年には20頭(アイベックス18頭、ブルーシープ2頭)に。このシステムが始まってから違法ハンティングに対する取締りが厳しくなり、アイベック スや ブルーシープの数は確実に増えているといいます。

2014年度のKVO保護地域の調査に よる個体数は、(クンジェラーブ国立公園の野生動物個体数は含みません)アイベックスが2300頭、ブルーシープが270頭とのことでした。

「トロフィーハンティング」に差し出された20頭の犠牲が、2000頭を救う…。なんとも切ないですが、地元の人々の収入となり理解を得て、進められる野生動物保護のひとつの形なのでしょうか。

次に、この「トロフィーハンティング」により得られた収益の使い道に関してです。初めての収入を得たとき、365人の村人に5000ルピーづつ分配したのだそうですが、みんなすぐに使ってしまい、良い結果が出ませんで し た。そのため、その後、トロフィーハンティングの収入の有益な利用を目指す目的でKVO Multi-Purpose Cooperation Societyを設立し、60%はKVOの見張りやスタッフ、調査費用・給与に当て、40%は教育・福利厚生に使うことになりました。

具体的な事例としては、高校のないこの地域の学生を就学させるために、ギルギットに土地を買い、2008年に女学生寮が完成しました。2015年現在70人の女学生が通っています。また、毎年貧しい40家族の医療保険代をサポートしたり、救急搬送、そしてビジネスを始めたい人へ低金利での貸付も行っています。

さて、この「トロフィーハンティング」ですが、これも厳しい条件で行われています。

パキスタンのアイベックス (3)

まず、ハンターは「1発」で仕留めなければいけないこと。何回も撃っていいものではありません。原則、はずしたらそこまでです。そして、狙っていい対象は、アイベックスなら角が38インチ(97センチ)以上、ブルーシープなら角が22インチ(56センチ)以上の固体。このページの写真の中にいるアイベックスたちはすべて対象外です。

なぜかと理由を聞くと、角の大きな固体は年寄りで、もう繁殖能力もないのでハンティングの対象としても良いと。自然に死ぬくらいなら、収入になったほうがいいと。

これも、かなり切ない話です。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Observation : Oct 2015, Khunjerab National Park, Pakistan

Reference : 情報はMr Mahabat karim, Office Manager of Khunjerab Villagers Organization (KVO),Mr.Sultan Gohar, Khunjerab National Park (KNP)によるものです。

パキスタンのユキヒョウ ローリーの話

Loli the Snow Leopard -Khunejrab National Park (1) パキスタンのユキヒョウと、クンジェラーブ国立公園のユキヒョウ、「ローリー」の話です。(この記事のユキヒョウの写真は、下記の国立公園提供のビデオを除いて野性の状態のものではありません)

パキスタン北部、中国との国境を接するクンジェラーブ国立公園では時々「ユキヒョウ」の話題がでてきます。ユキヒョウはヒマラヤ山脈、カラコルム山脈、ヒンドゥークシュ山脈、パミール高原に暮らすヒョウで、寒い環境に適した長い毛で全身が覆われています(冬はさらに毛が長くなるといいます)。
クンジェラーブ国立公園ではアイベックスなどの野生動物を捕食して暮らし、冬場にはカラコルム・ハイウェイ付近まで降りて来るのが観察されます。

下記のビデオは2015年3月25日にカラコルム・ハイウェイ上にて、クンジェラーブ国立公園スタッフのスルタン・ゴハールさんによって撮影されたビデオ(クンジェラーブ国立公園より提供)

9年ほど前だったでしょうか、国立公園の事務所に「レオ」という子供のユキヒョウがいて中国との国境を越える時の楽しみだったのですが、アメリカの動物園へ行ってしまいました。

そして3年ほど前、再び子供のユキヒョウが凍った川で溺れているところを助けられました。6ヶ月くらいと推定されるメスの子供のユキヒョウは、「ローリー」と名付けられスストの国立公園のチェックポストのそばの檻で3年目を迎えました。

Loli the Snow Leopard -Khunejrab National Park (3)

ローリーを助けたファルマン・ラザーさん、今でも小さい時のローリーをあやすように近づきます。ローリーも「ゴロゴロ」とはいきませんが「ガウガウ」といいながらすりすりしています。

Loli the Snow Leopard -Khunejrab National Park (5)

国立公園スタッフに甘えるローリー

Loli the Snow Leopard -Khunejrab National Park (6)

毎日3キロの肉をもらいます。肉は、羊・ヤギやヤクなど。

Loli the Snow Leopard -Khunejrab National Park (7)

ローリーはいつまでこの状態なのか、野生に戻ることは出来ないのか。

国立公園のスタッフによると「レオ」がアメリカから間もなく帰ってくるので、レオとローリーが暮らす「リハビリテーション施設」をナルタル谷(ギルギットの近く)に作り、そこで繁殖を試みる・・・そして野性に返す訓練をする・・・と先のプランを教えてくれました。早ければこの冬に、といいますが、自然環境が変るので反対する意見もあります。そしてここはパキスタン、筋書き通りには行きません。

最後に、小さいころの「レオ」の写真です。クンジェラーブ国立公園のスルタン・ゴハールさんと。(写真はクンジェラーブ国立公園提供)

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野性の状態ではないことは残念ですが、それでも、大型ネコ科動物ファンにはたまりません。

Photo & Text : Mariko SAWADA 澤田真理子

Video, Photo of Leo & Sultan Gohar : Credit to Gohar -KNP(Khunjerab National Park)
※ビデオとレオの写真はクンジェラーブ国立公園提供のものです。

Observation :**Captive condition in cage** Oct 2015, Khunjerab National Park, Pakistan

Reference : Mr.Sultan Gohar -KNP, Mr.Falman Razah -KVO, Wikipedia( JP)