ハートストーン

85602b316648ecaa©SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss

アイスランド

ハートストーン

 

Hjartasteinn

監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドル・エイナルソン、ブラーイル・ヒンリクソンほか
日本公開:2017年

2017.7.19

心のなかに転がる石に気づき始める少年少女たち。アイスランドの熱い青春

アイスランドの漁村に暮らす少年・ソールとクリスティアン。幼なじみの彼らは、何をするにもどこにいくにも一緒の大親友で、ソールは二人の姉にそのことを揶揄されています。

unnamed (1)

そんなソールは思春期の真っ最中で、大人びた美少女・ベータに夢中になっています。クリスティアンは、ソールとベータとの仲がうまくいくよう後押しつつも、自分がソールに抱いている特別な好意に気づいていきます。

unnamed

『ハートストーン』という不思議な響きの題名から、私は揺れ動く土台の上で石がごろごろと転がっているイメージを思い浮かべました。アイスランド語の原題”Hjartasteinn”を直訳すると”Heart Stone”で、Hjartaには”温かい感情”、steinnには”厳しい環境”という原義から派生した意味があることに着想を得て、監督が生み出した造語だといいます。

題名のイメージを携えて映画を見進める内に、登場する少年少女たちの耳には自分にしか聞こえない、心の中にある石がゴロゴロと転がる音がしているのだろうなと思いました。誰かに押されてバランスを崩したり、自然の中に身をおいて安定させたりして、登場人物たちはそれぞれの石を落とさないように一生懸命バランスを調整しているように思えました。

unnamed (3)

あわせて、私は添乗させて頂いたツアーの最中に各地で訪れた学校の光景を思い出しました。インド・ブータン・バングラデシュ・パキスタンなどを旅した時、旅程表には書いていない箇所で、学校に立ち寄って見学させてもらうことが多くありました。秘境と呼ばれる場所では、学校が大きな観光スポットに変わります。多くの場合彼らの方から招き入れてくれて、クラス全員で挨拶をしてくれて、ガイドさんを通じて質問をしあったりしました。

ほんの一瞬訪れた私にとって、彼らの素朴な表情は輝かしい光景として記憶として残っていますが、彼ら一人ひとりの心の中にはそれぞれの全く違った石が転がっていたのだろうと、懐かしい思い出に深みを加えてくれました。

また、私はこの映画のパンフレットでLGBTQという言葉を初めて知りました。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)は知っていましたが、そこに加わったQとはQuestioning(疑問)かQueer(変わり者)の意味で、Questioningの意味が主流で使われるそうです。性認識を中立的に表そうとする傾向から生まれたQという要素が、『ハートストーン』では青春ドラマの展開にとてもマッチしています。

unnamed (2)

『ハートストーン』は、7月15日(土)より恵比寿ガーデンシネマにてロードショーほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。

アイスランド大周遊

秋・オーロラの季節限定企画!北部ミーヴァトン湖まで訪れる充実の旅