残像

4c397ed1663c1f7b(C)2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Lodz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

配給:アルバトロス・フィルム

ポーランド

残像

 

Powidoki

監督: アンジェイ・ワイダ
出演: ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフワチほか
日本公開:2017年

2017.6.7

辿り着けなくても歩き続ける・・・ポーランドの名匠が最後に遺した不屈の道標

第二次大戦後、ポーランド中部・ウッチ。大戦前に名を馳せた前衛画家のヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、大学教授でもあり生徒たちに慕われています。しかし、芸術を政治に利用しようとするポーランド政府と対立し・・・

"Powidoki" 2015 rez. Anfdrzej Wajda zdjecia Pawel Edelman fotosy Anna Wloch www.annawloch.com anna@annawloch.com

2016年、惜しくも90歳でこの世を去ったアンジェイ・ワイダ監督の遺作となった本作は、映画そのものが残像を生み、心の中に光を残してくれます。タブーを描くことを恐れず、自由・抵抗を一貫して訴え続けたワイダ監督は、最後までその意志を貫いたメッセージを世界中の観客に残してくれました。

"Powidoki" 2015 rez. Andrzej Wajda Fot. Anna Wloch www.annawloch.com anna@annawloch.com Na zdj od lewej : Zosia Wichlacz, Adrian Zareba, Irena Melcer, Filip Gurlacz, Mateusz Rzezniczak, Tomasz Chodorowski, Paulina Galazka; tylem Boguslaw Linda

映画の舞台となったウッチという場所はポーランドの名匠たちを輩出した映画大学があり、第二次世界大戦で焦土と化したワルシャワの代わりに首都機能をしばらく担っていました。戦後に芸術の街として発展していったウッチで展開される本作は、自由・抵抗というワイダ監督ならではのテーマはもちろんのこと、「歩く」ということをストゥシェミンスキが描いた絵画のように、芸術的に表現しているように思えました。

"Powidoki" rez. Andrzej Wajda
Zdjecia: Pawel Edelman
fotosy: Anna Wloch
www.annawloch.com
anna@annawloch.com

旅をすると色々な場所を歩きます。草むら、砂漠、岩場、雪原、道なき道。ストゥシェミンスキは、第一次世界大戦で右足・左手を失っていて、常に身体部位の不在を抱えています。もちろん片足を失っても足を踏み出すことはでき(また片手を失っても絵を描くことはでき)、劇中でもストゥシェミンスキは松葉杖を使って力強く移動しますが、両足がある場合とは全く違った足の踏み出し方になります。また、右足を踏み出すという行為は永遠に不可能です。

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私が「歩く」という行為をこの映画のキーポイントとして見出したのは、劇中に「足を踏み出すことができる」という自由が表された、非常に小さくも力強い演出があったからです。水たまりに、ストゥシェミンスキではない、ある人物が足を踏み出して靴が濡れてしまったことを実感するというだけのシーンなのですが、ストーリー展開ともあいまってとても美しい場面になっているので、見逃さないように登場人物の足元に時々気を払ってご鑑賞ください。

"Powidoki" rez. Andrzej Wajda Zdjecia: Pawel Edelman fotosy: Anna Wloch www.annawloch.com anna@annawloch.com

芸術・自由とは何か・・・共謀罪法案が採決されたという最近のニュースとも関連性があり、ワイダ監督の力強いメッセージを受け取れる『残像』。6月10日(土)より岩波ホールにてロードショーほか全国順次公開。その他詳細は公式ホームページをご覧ください。