幸せの経済学

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ラダック

幸せの経済学

 

The Economics of Happiness

監督:ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーリック
、ジョン・ページ
出演:ヘレナ・ノーバーグ=ホッジほか
日本公開:2011年

2017.4.26

インド最北の小チベット・ラダックに打ち寄せるグローバル化の波

インドの北の果て、標高約3500メートルの地に広がる秘境・ラダック。「チベットよりチベットらしい」と言われるに値する、貴重な史跡の数々や文化・慣習が残るラダックは、1974年に外国人立ち入り禁止令が解かれて以降、世界中の人々を魅了してきました。私はよくこの場所に、添乗業務で訪れさせて頂いていましたが、古刹・アルチ僧院の1000年以上前に描かれたマンダラや、ロツァワ(翻訳官)と呼ばれる高僧リンチェン・サンポの足跡は、容易に世界観を変えてくれます。

本作は、そのラダックに急速な近代化の波がおしよせ、伝統・コミュニティ・価値観が変容していくのを目の当たりにしたヘレナ・ノーバーグ=ホッジ(ラダック入門に最適な『ラダック 懐かしい未来』の著者)を中心に、本当の豊かさとは何かを問いかけるドキュメンタリーです。

作中で、グローバル化(globalization)とローカル化(localization)という言葉は、よく意味が混同されるということが説明されます。グローバル化は、国際交流・相互依存・国際社会という意味合いで、ローカル化は孤立主義・保護主義・貿易の排除・・・・・・どちらの言葉も本義とは異なるイメージで都合よく使われ、その引き換えに大切な物事を失ってしまうという指摘です。

その解説を聞きがら、ラダックのどんなガイドさんでも口にする、ある言葉を思い出しました。ラダックの中心都市で空港もあるレーからアルチに向かう途中、必ずニンムーという場所で写真ストップをします。そこは、2つの川(インダス川・ザンスカール川)の合流点で、タイミングによって色が違い、何度来ても新鮮な場所です。そこで、いつもガイドさんたちは、ラダックよりもさらに奥地にあるザンスカールの方を見てこうつぶやいていました。

「この先(ザンスカール川沿い)の道が完成したら、ザンスカールも急激に変わってしまうだろうね」

私が頻繁に訪れていた2010年前後当時、もうすぐ完成すると言われていた道はまだ完成されていないようですが、この言葉は当時ラダックが既に急激な変化にさらされていたことを物語っています。一度手にした便利さを手放すことは容易ではありません。しかし、進歩・発展が全てではないとまだしっかりと知っているラダックの人々は、これからも世界中の人々の心を豊かにしてくれるでしょう。

ラダックという地名を初めて聞いた方も、ラダックに限らず秘境に訪れることの意義について考えたい方も、ぜひご覧ください。

インド最北の祈りの大地ラダック

荒涼とした大地と嶮しい山岳地帯に息づく信仰の地・ラダックへ。保存状態の良い壁画やマンダラを有する厳選の僧院巡り。レーとアルチに連泊し、高所に備えたゆとりある日程。