031

ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)

アルゼンチンの最北の高原砂漠「ワイルド・プーナエクスプローラー」のツアーに添乗させていただいており、ブログ更新の間隔が空いてしまいました。

 

本日は前回に引き続きユリ科の一種「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」紹介させていただきます。その名の通り、ピレネー山脈の固有種のユリ科の花です。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)

被子植物 単子葉類
学名:ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
英名:Yellow Turk’s Cap Lily/Yellow Martagon Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

黄色の色合いがとても印象的な「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」はピレネー山脈の固有種ですが、スペインおよび東方の山岳地帯からコーカサスまで分布範囲は広がります。

標高1,200~2,000mの草地や林間に自生していることが多く、花の開花時期は6~8月となります。
私も初めてピレネー・ユリを観察したのは、陽光が気持ちの良い6月、ピレネーのプランス側のカバルニー大圏谷(1650m)でした。

 

前回ご紹介させていただいた「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と同じく草丈は40~120㎝と高く、茎は直立して、10~15㎝ほどの細長い葉が互生しています。
日本でも同じユリ科の「エゾスカシユリ」も印象的な鮮やかなオレンジ色をしていますが、このピレネー・ユリも鮮やかな黄色の花弁が非常に印象的で、ユリ科の花の特徴である暗色の斑点も確認できます。
外側に反り返った花弁の中心から数本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

上記の英名をご覧いただき、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と英名が同じくトルコ人の被るターバンに似ているということから「Turk’s Cap Lily」という英名の頭に「Yellow (黄色)」がついたものとなります。

ハイキング中、ピレネー・ユリを最初に観察したときは正直驚き、「グロテスクな色合い」という印象でしたが、観察を続けていると徐々にその魅力的な花に心を奪われる結果となりました。

 

ブログ作成のため、ピレネーの花々を撮影した写真を眺めていると、私も久々にピレネー山脈に訪れ、固有種を探し求めてハイキングを楽しみたいと感じています。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)
029

ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)

先日エクアドルへの海外添乗より帰国後、近所に淡い紫色のツユクサが咲いていました。
わずかな数でしたが、沿道に咲くツユクサの花を観て、仕事の疲れを癒してくれるくれる可憐な花でした。

 

本日はシオガマギク属の花を1つ紹介したいと思います。
「シオガマギク(塩竈菊)」と聞いて、皆様は何色の花を思い浮かべるでしょうか?
やはりピンク色のシオガマギクの花が一番イメージする色合いでしょうか。

 

今回ご紹介するシオガマギク属の一種「ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)」は、花弁が印象的な色合いのシオガマギク属の花です。

 

シオガマギクの一種 ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス

被子植物 双子葉類
学名:ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae) 属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

鮮やかな黄色の色合いがとても印象的な「ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)」は、インドのカシミールやザンスカール地方、ブータン、チベット、中国の雲南省や四川省に分布しています。私が初めてこの花を観察したのが、インドのザンスカール地方でした。

 

ヒマラヤなどの標高4,000m前後の高山地帯では、夏の時期になると高峰の氷河が解け始め、谷間に流れ込みます。高峰の氷河や雪などの解けた水が湿地帯を形成しますが、ペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミスはそのような湿地帯や沼沢地に自生します。
花期は6~8月。背丈は10~30㎝、葉身は細長く2~4㎝ほどの長さ、鋸歯があるのが特徴です。

 

花冠は鮮やかな黄色(黄金色)で、下唇の基部にえんじ色の斑点があり、この斑点が鮮やかな黄色の色合いを、より印象深い色合いに演出しているように感じます。

シオガマギク属の特徴の1つである上唇のくちばしは螺旋状にねじれ、下唇は幅2㎝弱で3つに分かれており、ハート型をしています。

 

日本でも、黄色のシオガマギク属「キバナシオガマ(黄花塩竈)」がありますが、より鮮やかな黄色とえんじ色が印象的なペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミスの花の時期は6~8月です。
ザンスカールの観光にベストなシーズンです。この時期のザンスカールでは、別の種類のシオガマギク属の花も観察することができます。
様々な色合いのシオガマギクの花を求めて、是非ザンスカール地方へ訪れてみてください。

黄金色とえんじ色の斑点が印象的なペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス

 

014

ペレシア(Perezia magellanica)

先日「パタゴニアを撮る」のツアーへ同行させていただきました。
天候に恵まれなかった日もありましたが、やはり何度行ってもパタゴニアの大自然、風景は素晴らしいものでした。
という訳で、本日も私の大好きなパタゴニアの花を紹介させていただきます。

本日紹介する花は「ペレシア(Perezia magellanica)」というキク科の花です。

プレジア(Perezia)

被子植物 双子葉類
学名:Perezia magellanica 英名:Fuegian edelweiss
科名:キク科(ムティシア亜科 Mutisioideae) 属名:ペレシア属(Perezia)

 

緑美しいパタゴニアの樹林帯や草原を散策していると、足元に色鮮やかな紫の花が目に移り、青紫色の少し反り返った花びらをもつ、その美しい形状に心奪われる花の1つです。英名ではエーデルワイスの名が付いていますが、一目でキク科の花であることが分かる花です。

 

先日同行させていただいたパタゴニア・ツアーでは、パタゴニアの花の盛りは過ぎてしまっていましたが、ペレシア(Perezia magellanica)の花はパイネ国立公園のハイキングルートでたくさん観察することができました。

 

パイネ山群の雄大な景色の中で色合いがとても印象的なペレシア(Perezia magellanica)の花をもとめて、是非パタゴニアの大地を訪れてみてください。

ペレシア(Perezia magellanica)
009

モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

私の暮らすマンションの入口では管理人さんが様々な花を大切に育てており、季節ごとの花を楽しませてくれます。ここ1、2週間はあじさいの花が見事に咲きそろっており、出勤前の楽しみの1つでした。

本日は「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」をご紹介します。

モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

被子植物 双子葉類   時期:6~8月
学名:Sempervivum montanum
英名:Mountain Housleek 和名:クモノスバンダイソウ
科名:ベンケイソウ科(Crassulaceae) 属名:クモノスバンダイソウ属(Sempervivum)

 

ヨーロッパ南部の山岳地帯に自生し、西はピレネー山脈から東はカルパチア山脈(中央ヨーロッパ・東ヨーロッパの山脈)に分布する多年草です。
標高1,500~3,000m前後の、岩場やガレ場(酸性岩地帯に多いと言われています)に生息し、草丈は5~20㎝ほどです。
根生葉(地上茎の基部についた葉のこと)は、1㎝前後の先の尖った形をし、先の尖った葉が集まり球形となり、次第に外に開きます。
全体的に緑色ですが、その先端部が若干赤みを帯びていることもあります。
これらの球形の根生葉が密集しマット状になり、そこからのびる茎は、先の尖った長さ2㎝ほどの葉が互生して茎全体を覆っています。

 

茎頂には、長さ1㎝ほどの赤紫色した先の尖った花びらを10~15枚付け、1つの茎に3~8個ほどの花を咲かせます。

 

属名にある「クモノス(蜘蛛の巣)」という名は、根生葉の表面に生える腺毛(せんもう:植物の表皮に生じる毛のような突起物で、特殊な液体を分泌する)があることから名付けられたそうですが、このモンタヌム・バンダイソウは腺毛はほとんど付きません。
また属名「Sempervivum(センペルビブム)」は「常に生きる」という意味から、不死のシンボルとされています。※実際は、開花後に身を付けてから枯れてしまいます。

 

このバンダイソウの仲間は、ヨーロッパ・アルプスでは昔から雷避けとして屋根や壁、バルコニーに植えられていたそうです。
※かの有名なカール大帝(西ローマ皇帝を号した、 後の神聖ローマ皇帝の祖)は、自分の所有する建物にこのバンダイソウを屋根に植えるように命令書を出していたとも言われています。

 

この「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」は、その葉なの大きさだけではく、その色合いや異形ぶりから非常に目立った花の1つです。ただ、その1つ1つをじっくり観察すると、非常に魅力ある姿をしています。

「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」
008

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

海外出張のため、しばらくお休みさせていただいておりました「世界の花だより」を本日より再開させていただきます。

皆様は「リンドウの花」と言えば、何色の花を想像されるでしょうか。

通常は、世界の花だよりのブログでもご紹介した「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」のような濃い青色~青紫の色合いをイメージされる方が大半かと思います。
日本では、北海道や尾瀬(以前、私がこの2ヶ所で観察した思い出があります)で見られるようなトウヤクリンドウは他のリンドウ科の花とは違った黄白色の色合いの花を楽しめるリンドウですが、その色合いに負けない驚きを見せてくれるのが、本日ご紹介する「プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)」です。

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

被子植物 双子葉類   時期:7~8月
学名:Gentiana Purrurea  英名:Purple Gentian
和名:英名からムラサキリンドウと紹介されていることも
科名:リンドウ科(Gentianaceae) 属名:リンドウ属(Gentiana)

 

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)は、ヨーロッパ・アルプスの草原や牧草地に生息し、草丈は20~60cm、茎頂には2~5つほどの花をつけ、花の長さは3~4cmとなります。
このプルプレア・リンドウを現場で紹介すると、最初はリンドウと信じてもらえない時もあります。それは葉の形状が明らかに他のリンドウと異なるからかもしれません。5~6cmほどの長さの葉が四方に伸びる形状は、確かに他のリンドウとは大きく異なります。

 

この花は、マルハナバチ(丸花蜂)が好むバラのような香りを放ち、マルハナバチ(丸花蜂)は花から花へ飛び回り、受粉を引き受けてくれます。

 

ヨーロッパのレストランなどにあるお酒の1つに「シュナップス(蒸留酒)」というものがあります。本来は、アプリコットや洋ナシなどのフルーツで作られるのですが、リンドウの根を使用して作られるものもあり、最高級のリンドウ・シュナップスは、このプルプレア・リンドウの根を使用して作られています。
リンドウ・シュナップスはお酒として美味しいだけでなく、地方によっては病気(特に胃の病気)に効くと言われています。
虫もこの花を好み、雅の毛虫が堅い根を好んで食べると言われています。

 

「花はほとんど開かない」「雪解けの時期に咲くリンドウのため、自身の保護のため花は開かない」と紹介されることもありますが、もちろん花は開きます。
チャボリンドウや、日本のトウヤクリンドウのように黒い斑点が特徴的で、花の内部がほのかに黄色く、とても印象的な色合いです。
なかなか開花したプルプレア・リンドウに出会うのは難しいかもしれませんが、是非観察できたときには全体の姿と合わせて、ほのかに黄色い内部にも注目をしてみてください。

開花したプルプレア・リンドウ

 

<プルプレア・リンドウに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

007

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

本日は、ラン科の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」をご紹介します。

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

被子植物 単子葉類   時期:7~8月
学名:Nigritella nigra ニグリテラ・ニグラ
和名:バニララン 英名:BLACK Vanilla Orchid
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:ニグテリア属(Nigritella)

 

一見すると地味ですが、ラン科の花の中では私がもっとも好きな花が今回の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」です。
初めてこのニグラ・バニラランに出会ったのは、イタリア・アオスタ山麓でした。その時のイタリアのガイドさんから「このランは香りが特徴的なんだ」と紹介され、ガイドさんの奥様もこのニグラ・バニラランが大好きだったそうです。
その時の出会い以来、私もヨーロッパ・アルプスにフラワーハイキングへ出かける際、お客様へ紹介したい花の1つとなりました。

 

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)は、ヨーロッパの中部から南部にかけて、ヨーロッパ・アルプスでは標高1,000~2,000mの草地に生息するラン科の花で、草丈は5~20cm程度で、葉は非常に細く茎頂に向けて垂直についています。
茎頂に花弁が深紅色の小さな花がたくさんつき、見た目にはたまご型に花が密集しております。

 

注目すべきは「花の向き」です。
普通のラン科は、花の唇弁が下向きであるのに対し、このニグラ・バニラランは唇弁が最上位にあり、上向きになっているのが特徴です。

 

もう1つの注目すべき点は、冒頭でもお伝えした「花の香り」です。
たまご型に密集している花からは、バニラの香りが漂っており、少し離れた位置からもその強い芳香を感じることができます。
ただ、誰もがこのバニラの香りを好むわけではありません。
ヨーロッパ・アルプスに放牧された牛は、このニグラ・バニラランを避けて食べません。間違って牛がこのニグラ・バニラランを食べてしまうと・・・何と、ミルクがブルー色に染まってしまい、この牛乳でつくるチーズやバターなどもバニラの匂いがしてしまうそうです。
また、スイスでは乾燥させたニグラ・バニラランを虫よけとしてタンスの中に置いていたそうで、「衣蛾草(Schabenkrant)」とも呼んでいる地方もあるそうです。

 

一見すると日本ではワレモコウ(バラ科:ワレモコウ属)にも似ていますが、日本にはニグラ・バニラランの近縁種はないそうです。

ニグラ・バニラランは草地一面に群生するといったことはないようですが、花の色合いからヨーロッパ・アルプスを歩いているとすぐに見つかります。
花の観察の際、花の前で腹ばいになり、是非花の香りを感じてみてください。
あまりの香りの良さから、間違えて食べないようにご注意ください。

雨露のついたニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

 

<ニグラ・バニラランに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

006

タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

先日、キキョウ科の「バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)」をご紹介しましたが、本日は同じキキョウ科でも日本には自生していないタマシャジン属の「タマシャジン(Phyteuma orbiculare)」をご紹介します。

タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

被子植物 双子葉類   時期:68
学名:Phyteuma orbiculare
和名:タマシャジン 英名:Round-Headed Rampion

科名:キキョウ科(Campanulacees) 属名:タマシャジン属(Phyteuma)

 

タマシャジンはヨーロッパ・アルプスでは名花として紹介されていることが多く、花の美しさ、花の形状のユニークさもあり、一度観察したら思わず夢中になってしまう花の1つです。私もこのタマシャジンを初めて観察したときは、驚きとともに撮影に夢中になってしまいました。

 

ヨーロッパ・アルプスをはじめ、ピレネー山脈、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)、バルカン半島など、広く分布する多年草で、標高2,0002,500mの主に石灰岩質の草地や岩場などに生息します。
草丈は2050㎝で、根元の葉も、茎から出る葉も幅広い剣状をしており、茎頂にいくつもの小花が集まり球状となって咲き、中には長く伸びるものもあります。

 

このタマシャジンと出会えた際、注目すべきはその小花の部分です。

小花は、暗紫色のカーブした管状花が1520個集まっており、開花しても完全に開くことはなく、管状花が先端で裂開し、そこから雄しべ、雌しべの順で飛び出しています。そして管の根元だけが開き、雌しべの基部だけが外から観察できるという、非常に変わった咲き方をしています。
日本では、近縁種のシデシャジン(キキョウ科シデシャジン属)がありますが(北アルプスで観察した記憶があります)、花びらの先端は合着しないそうです。

 

花全体が、細かい糸状の花びらが複雑なカーブを描き、繊細で美しい花のように見えるため、とても印象に残る花となります。ヨーロッパ・アルプスでタマシャジンに出会った際には、花の全体像だけでなく、その繊細な形状にも是非注目してみてください。

 

■オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)
同じタマシャジン属の花の中では、草丈40~100㎝と比較的大型の種です。
集まった小花が偏平に広がるタマシャジン(Phyteuma orbiculare)とは異なり、高く伸びた茎頂に咲く黒くて大きな花の形状は少し衝撃的な印象です。
掲載した写真は下から徐々に管状花が広がり始めている状態のものです。
オバトゥム・タマシャジンと似たような形状をしたもので、スピカトゥム・タマシャジン(Phyteuma spicatum)という種もあり、これはオバトゥム・タマシャジンと似たような形状ですが、黄白色~緑白色をしており、他のタマシャジン属とは違った魅力がある花です。
※写真がなく、また観察できたときに掲載します。

オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)

 

<タマシャジン属の花々に出会えるツアー>
※ヨーロッパ・アルプス

アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

※ピレネー山脈
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

 

005

バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)

本日は「バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)」をご紹介します。

バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)

被子植物 双子葉類   時期:6~8月
学名:Campanula barbata
和名:ホタルブクロ  英名:Bearded Bellflower
科名:キキョウ科(Campanulacees) 属名:ホタルブクロ属(Phyteuma)

 

キキョウ科の植物は世界で約2000種(約90属)あると言われており、日本でも約30種が自生しています。日本では、ホタルブクロやツリガネニンジンという名で認識されている方も多いかと思いますが、チシマギキョウ(ホタルブクロ属)、ミヤマシャジン(ツリガネニンジン属)、ハクサンシャジン(ツリガネニンジン属)もキキョウ科の花となります。

 

本日紹介する「バルバタ・ホタルブクロ」は、ヨーロッパ・アルプスや中央アジアでも観察でき、標高1,100~3,000mあたりの草原地帯(礫質の草原)などに生息します。

 

草丈は10~40㎝、葉はほとんどが地表に平らに並べた形状(ロゼット状)となり、茎は分岐せず一方向に偏り、花は長さ20~30㎜の釣鐘型、うつむき加減に咲きます。薄青色の釣鐘上の花びらの縁に5㎜弱の細い毛が生えているのが特徴で、英語名「Bearded Bellflower」(ヒゲのある釣鐘状の花)もバルバタ・ホタルブクロの特徴から由来します。

 

この繊毛は、花の蜜を盗もうと登ってくる昆虫やアリの侵入を防ぎます。昆虫が花の中に入っていくと、繊毛がまとわりついて、昆虫は密に辿り着く前に地面に落ちてしまうのです。
変温動物である昆虫は、外部からのぬくもりが必要なため、バルバタ・ホタルブクロの繊毛の間に入ることができる極小の昆虫たちは、この花を宿代わりに使うと言われています。

 

その他、チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)、ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)、イトシャジン(Campanula rotundifolia)、エキシサ・ホタルブクロ(Campanula excisa)など、様々なキキョウ科・ホタルブクロ属の花が観察できますが、これらを見分けるのは、非常に難しいです。
エキシサ・ホタルブクロは花びらの切れ込みが深く、円形に切れ込んでいるので、見分けは付きやすいですが、その他のホタルブクロ属の花は花の形状も、茎から出る葉がすべて糸状なところも、本当にそっくりです。見分けるポイントは根元の葉と言われますが・・・私も正直すべてを見分ける自信はありません。

 

■チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)
岩場やガレ場などにも生息。葉は楕円形で葉の縁には粗い切れ込みがある。
草丈は10~18㎝と短く、花は12~20㎜の釣鐘状。
ひとつの花茎に花が1つ、または2~3つの花を咲かせる。

チャボギキョウ(Campanula cochlearifolia)

 

■ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)
標高の低い場所を好み生息。草丈は20~70㎝。
葉は先が尖った卵型の広い葉で、葉の縁には粗い切れ込みがある。
ひとつの茎から7~10個の花が咲き、花の長さは15~20㎜の釣鐘状。

ロンボイダリス・ホタルブクロ(Campanula rhomboidalis)

 

キキョウ科・ホタルブクロ属の花は、ヨーロッパ・アルプスや中央アジアでの花の観察の際、比較的よく見られるため、よく観察していただき、1つ1つの違いを観察していただくのも、フラワーウォッチングの楽しみの1つです。

 

<ホタルブクロ属の花々に出会えるツアー>
※ヨーロッパ・アルプス

アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

※中央アジア
キルギス・カザフスタン 天山自然紀行(キルギス、カザフスタン)
天山とパミールの懐へ  夏のキルギスアドベンチャー(キルギス)

003

チャボリンドウ(Gentiana acaulis)

本日は、アルプス三大名花の1つ「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」をご紹介します。

先日よりご紹介しておりますアルペンローゼ、エーデルワイス、そして今回のリンドウが「アルプス三大名花」と言われている花です。

被子植物 双子葉類  時期:58
学名:チャボリンドウ(Gentiana acaulis)
科名 : リンドウ科(Gentianaceae) 属名 : リンドウ属(Gentiana)

 

ヨーロッパ・アルプスを訪れると、地面からトランペット状の大きな花がご覧いただけます。今回ご紹介するチャボリンドウは茎がほとんど無いうえ、花の長さが45㎝と非常に大きいことから、比較的簡単に見つけていただくことのできる花です。
同じようにトランペット状に花を咲かせるリンドウは、ヨーロッパ・アルプスには今回ご紹介するチャボリンドウ(Gentiana acaulis)、英名でトランペット・リンドウと称されるクルシイ・リンドウ(Gentiana clusii)、花の長さが他より3㎝程度と少し小さいアルピナ・リンドウ(Gentiana alpina)の3種類あり、3種とも非常似た姿をしており、見分けるのは非常に難しいです。

 

見分けるポイントの1つが「葉」の違いです。違いは以下のとおりです。
1.チャボリンドウの葉は長楕円形、葉が柔らかく、葉の長さはそれほど変化はありません。
2.クルシイ・リンドウの葉は長楕円形、葉は硬く、地面に近い方の葉が長く伸びます。
3.アルピナ・リンドウの葉は花茎のすぐ下に短い楕円形の葉を持ちます。

 

また、「花の内側」にも見分けるポイントがあります。
1.チャボリンドウは花の内側にオリーブ色の筋があり、盛り上がった黒っぽい斑点があります。
2.クルシイ・リンドウにも黒っぽい斑点がありますが、小さくあまり目立ちません。

チャボリンドウとクルシイ・リンドウは、正直2つ並べられても見分けるのは難しいかもしれません・・・。

 

上記の3種以外にも、群青色や紫色の様々なリンドウが咲きそろっており、大半のリンドウが58月と長い期間で観察ができるため、1回のハイキングで様々なリンドウが観察できますので、皆様のお好みのリンドウを探していただくのも、ヨーロッパ・アルプスでのフラワーハイキングの楽しみの1つです。

 

<アルペンローゼに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)

002

エーデルワイス(Leontopodium alpinum)

本日は、アルプス三大名花の1つである「エーデルワイス(Edelweiss)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Leontopodium alpinum
和名:セイヨウウスユキソウ
科名 : キク科(Asteraceae) 属名 : ウスユキソウ属(Leontopodium)

 

エーデルワイスの名はドイツ語の「edel」(高貴な、気高い)と 「weiß」(白)に由来し、ドイツ語圏以外でも花の白い外観は「純潔、純愛の象徴」とされ、ルーマニアでは「floarea reginei」(女王の花)とも呼ばれています。

 

ヨーロッパ・アルプスが生息地として有名ですが、初めからヨーロッパ・アルプスに分布していた訳ではなく、氷河時代(今から2万年前)も前にシベリアから渡ってきた花と言われています。実際、Leontopodium alpinumとは別種のエーデルワイスが、西はピレネー山脈から東はトルコの山岳地帯までに生育しており、中央アジアの高山帯、シベリア、パミール高原、西ヒマラヤに産するものまで確認されております。
日本でもミヤマウスユキソウ(Leontopodium fauriei)やエゾウスユキソウ(またはレブンウスユキソウLeontopodium discolor)はご存知かと思いますが、こちらも今回ご紹介したエーデルワイスの別種となります。

 

エーデルワイスは、先端に白い綿毛に包まれた星形の花を咲かせます。観察していると星型の全体が花のように感じてしまいますが、花びらに見えるのは葉っぱが変化したもので苞葉(ほうよう)といい、花本体は苞葉の中心にあるポツポツとした丸い粒(径5-6mm)のような部分なのです。
間近で観察すると、苞葉や茎にも白い綿毛が生え、乾燥や強い日射しから植物を守っています。
ヨーロッパ・アルプスでは、昔から純愛の象徴として摘み草にされてしまい、一時はほとんど観察できなくなってしまいました。現在では保護意識が進み、少しずつ増えてきているそうです。

 

<エーデルワイスの探し方>
エーデルワイスは高山帯の石灰岩地や砂礫地を好みます。
実はエーデルワイスを探す際には、アルペンアスター(Aster alpinus ミヤマノギク)を手掛かりにします。アルペンアスターが咲かない場所にエーデルワイスが咲くことは滅多にありません。アルペンアスターが咲いているポイントに遭遇した際、辺りをゆっくり観察してみてください。

 

<エーデルワイスに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)