181

レブンアツモリソウ(礼文敦盛草:Cypripedium marcanthum var. rebunense)

2024年も早いもので1ヶ月が過ぎ、2月となりました。
年が明けてからも弊社では夏~秋のツアー造成に社員一同で励んでおりますので、乞うご期待。

 

本日は「花の浮島」と紹介される北海島・礼文島に咲く「レブンアツモリソウ」(礼文敦盛草)をご紹介します。

 

レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium marcanthum var. rebunense
和名:レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

みなさん、「アツモリソウ」と言えば何色をイメージされるでしょうか。
北海道・礼文島にてレブンアツモリソウを観察された方、一度は観察してみたいと思いながら写真をご覧になった方、大半の方が「アツモリソウと言えば、白色(またはクリーム色)」と言われます。
私も「アツモリソウ」というものを最初に観察したのが礼文島に咲くレブンアツモリソウだったので、そのイメージを長らく抱いていました。

 

実は、日本国内には数種のアツモリソウ属(Cypripedium)の花が自生します。
紅色(紫色)の色合いが印象的で私もロシアのサハリン南部で観察した「ホテイアツモリソウ」(布袋敦盛草)、茶色の萼片と黄色い袋状の唇弁の色合いの「カラフトアツモリソウ」(樺太敦盛草)、さらには私も観察したことはありませんがウツボカズラのような形状の「キバナノアツモリソウ」(黄花敦盛草)があります。

 

今回ご紹介する「レブンアツモリソウ」(礼文敦盛草)は、盗掘によって個体数が激減し(北海道のバスガイドさんから夜中に小舟で入島して盗掘した人がいたと聞いた記憶も)、1994年に「特定国内希少野生動植物種」(種の保存法)に指定されており、礼文島の固有変種で礼文でしか見ることができない貴重な花です。
現在では、礼文島北部の北鉄府地区にある「レブンアツモリソウ群生地」(保護区)でしか観察できません。
ここまで説明すると、お分かりかと思いますが、白いアツモリソウの方が珍しいのです。

 

草丈は15~30cmの多年草で、茎には縮毛が確認できます。
葉は先が尖った長楕円形をしており、長さは10cm前後です。単子葉類らしく真っすぐと伸びた葉脈がクッキリとしている点も特徴です。

 

花期は早春の5月下旬~6月中旬。茎頂に袋状の花を1つ咲かせます。
花の形状はユニークで、上萼片が帽子の庇(ひさし)のように突き出ており、側萼片が左右に垂れ下がっているのが特徴的です。
何より、アツモリソウ最大の特徴であるのが袋状の「唇弁」です。長さが3.5~5cmの袋状をしており、ぷっくりとして非常に可愛らしい形状です。

レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)

 

レブンアツモリソウのことを色々と調べていると、「騙しによる受粉」という言葉がありました。
レブンアツモリソウは蜜を分泌せず、他のラン科の花と同じように花粉も大量に作る訳ではありません。
レブンアツモリソウの送粉者はニセハイイロマルハナバチ、巣を作り始めたばかりの越冬女王蜂がその役目を担うそうですが、蜜や花粉が得られる花だと思って花に潜り込むと、まるで食虫植物ウツボカズラの捕虫嚢に捕まってしまったかのように、袋状の唇弁に足を滑らせて落ち込んでしまいます。
袋状の唇弁から脱出できる経路は限られ、脱出する際には体中に花粉塊が粘着しており、ニセハイイロマルハナバチが再び別のレブンアツモリソウに騙されて落ち込んでしまい、同じように脱出するときに雌しべの柱頭に花粉塊が付着し、受粉が成立するそうです。
次回、レブンアツモリソウを観察する際、近くにハチが飛んでいたら・・・「騙されないで」と声を掛けるのか、迷いどころです。

 

みなさん、カナディアンロッキーにもアツモリソウが咲くのはご存じですか?
カラフトアツモリソウと同系種で、現地では「Yellow’s Lady’s Slipper」(女性のスリッパ)と呼ばれます。


形状はレブンアツモリソウと同じように袋状の唇弁をもち、黄色の袋状の唇弁の内部に赤い小さな斑点があるのが印象的です。
私は長年カナディアンロッキーに咲く黄色いアツモリソウ「グレーシャー・リリー」を観察したいと思い続けており、ようやく2024年に「花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて」というツアーを造成することができました。

 

礼文島でレブンアツモリソウを観察された方、まだ観察されていない方も、黄色いアツモリソウ「グレーシャー・リリー」をもとめて、カナディアンロッキーへご一緒しませんか?

 

<レブンアツモリソウが観察できるツアー>
花の利尻島・礼文島とサロベツ原生花園
※レブンアツモリソウの観察できる5月出発は催行決定しています!

花の利尻島・礼文島から世界遺産 知床半島へ
※レブンアツモリソウの観察できる6月出発は、まもなく催行です

 

<黄色いアツモリソウ「Yellow’s Lady’s Slipper」が観察できるツアー>
花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて
※黄色いカタクリ、黄色いアツモリソウが観察できるシーズン限定
※催行間近!! 大阪支社・高橋が同行予定です。

 

140

トキソウ(朱鷺草:Pogonia japonica)

コロナウイルス感染症拡大が心配な日々が続く中、弊社も冬のツアー造成に励みながら、秋シーズンのツアー実施に向けての最終調整を進めております。
皆様、9~11月の紅葉シーズンの旅行はお決まりでしょうか。
最後に紅葉シーズンにオススメのツアーを紹介しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日は「トキソウ(朱鷺草:Pogonia japonica)」をご紹介します。
6月の尾瀬で、可憐に咲くトキソウ(朱鷺草)の観察・撮影を楽しむことができました。

 

トキソウ(朱鷺草:Pogonia japonica)

 

被子植物 単子葉類
学名:Pogonia japonica
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:トキソウ属(Pogonia)

 

トキソウ(朱鷺草)は、北海道から九州(資料によっては、四国、九州では稀にみられるとあります)に、海外では千島列島や朝鮮半島などに分布します。
日当たりの良い湿地(酸性の湿地)などに自生するラン科の多年草です。日本では乱獲されてしまった時期もあり、準絶滅危惧(環境省)に指定されています。

 

草丈は10~30cmで直立し、茎の中ほどに長さ5~10cmで広針形の葉を1枚、茎を抱くように付きます。

 

花期は5~7月。茎頂に淡いピンク色~紅紫色の花を1つ咲かせます。
トキソウ(朱鷺草)は、この花の色が「トキ色」(朱鷺の翼の色)に似ていることが名の由来です。個人的には「尾瀬でトキソウを観察したい」という想いもあったことが影響してか、トキソウは淡いピンク色という印象です。ある資料(ブログ)では「標高が高くなるにつれて淡い色合いになる印象」と記されているものがあり、とても興味深い視点でした。

 

トキソウも非常に複雑な形状をしています。
花弁のように三方に広がっている長楕円状披針形の部分は「萼片」。
上向きの1枚が「背萼片」、横向きの2枚が「側萼片」です。
花の中央に帽子のひさし(兜状に重なると表現する資料も)のように前へ突き出して伸びる2枚が「花弁(側花弁)」です。

 

非常に印象的な形状が、下向きに伸びる長さ1.5cmほどの「唇弁」。
写真では1枚の唇弁のように見えますが、実は3裂しています。
写真では判りませんが、帽子のひさし(兜)の内側で非常に細い「唇弁の側裂片」が伸びており、下に伸びているのは「唇弁の中裂片」です。
この唇弁(中裂片)の内側は、まるでイソギンチャクのような肉質の突起物が密生してついているのが印象的です。
また、側花弁や唇弁の外側などに花全体の色合いより少し濃いピンク色の縞状の斑が付いており、この縞状の斑がより花の印象を美しいものにしています。

 

今回は、尾瀬の木道沿いで観察したため、木道から手が届きそうで届かない場所に咲いており、花の細部を観察することはできませんでしたが、木道からはみ出ず、腹這いで必死になって撮影することができました。
次回、トキソウ(朱鷺草)を観察する機会に恵まれた際には、上記の花の形状など細部にわたって観察をしてみたいと思います。

 

<おすすめ!! 紅葉シーズンに自然を楽しむツアー>
※10月18日出発:まもなく催行!

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

※10月18日出発:まもなく催行!
北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

※9月19日出発:催行決定!/9月22日出発:満席!
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草
黒岳、旭岳、十勝岳、三国峠など大雪山山系の原生林と紅葉の名所を巡る5日間。
エゾオヤマリンドウに出会えるかもしれません。

 

※10月5日出発:催行決定!/10月10日出発:まもなく催行!
秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る
傑出した山岳景観を誇る中央アルプスから中部山岳国立公園を巡る4日間。撮影目的でなくても、自然、風景を満喫できます。

 

※9月29日出発、10月9日出発とも、まもなく催行!
秋色に染まる尾瀬・奥日光・谷川連峰を撮る
美しい紅葉や山岳風景の撮影をご堪能いただく日程。尾瀬は2泊3日でゆっくりと巡り、秋色に染まる尾瀬を堪能いただけます。

135

コケイラン(小蕙蘭:Oreorchis patens)

いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開幕しました。連日猛暑日が続く中、日本選手団、世界中から来日された選手団の方々には、猛暑に負けず、それ以上に熱い戦いをみせて欲しいと思います。

 

本日も尾瀬で観察したコケイラン(小蕙蘭:Oreorchis patens )をご紹介します。

 

コケイラン(小蕙蘭:Oreorchis patens)

 

被子植物 単子葉類
学名:Oreorchis patens
別名:ササエビネ(笹海老根)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:コケイラン属(Oreorchis)

 

コケイラン(小蕙蘭)は、北海道から九州に広く分布し、海外では千島列島、カムチャッカ半島、サハリン、朝鮮半島、中国大陸にも分布します。
山地やブナ帯などの林内のやや湿った場所に自生します。

 

草丈は20~30cmで直立し、黄緑色の花柄に比べて色鮮やかな緑色をしており、花の大きさや草丈のわりに茎が少し太い印象です。
葉は通常2枚つけ、長さ20~30cmで線状披針形をしていますが、他の植物に埋もれて咲いていることが多いため、なかなか確認することができません。

 

花期は5~6月。直立した茎から短く黄緑色の花柄を伸ばし、黄褐色の小さな花を多数(10~40個という資料もあります)つけ、茎の下部から上部へ向けて順に花を咲かせます。

 

コケイラン(小蕙蘭:Oreorchis patens)②

 

少し粗い写真で申し訳ありませんが、花の部分をアップにした上の写真をご覧いただくと花の形状が確認いただけるかと思います。

 

よく見ると花の中心から5枚の花弁上のものが伸びているのが判ります。
左右に伸びる下部の披針形の2枚が『側萼片』、中央から真上に伸びる披針形の1枚が『背萼片』となります。その間に挟まれるように斜め上に伸びて赤紫色の細い条が入っているのが『側花弁』となります。
コケイランの花で最も印象的な部分は、花の中央から真下に伸びる真っ白で赤紫色の斑点が付いている倒卵形の『唇弁』です。
少し太めの唇弁が1枚と見えなくもないですが、実は基部で3裂しており、中央の唇弁『中裂片』が大きく目立っているのです。よく見ると、唇弁の基部から白く細い『側裂片』が2枚伸びているのが確認できます。
個体によっては、唇弁に赤紫色の斑点が全くつかないものもあるそうです。
唇弁の上部にやや太めで長く伸びて先端が黄色くなっているものが確認できますが、これは『蕊柱(ずいちゅう)』と呼ばれる部分で雄しべと雌しべが融合(合着)したもので、花粉がたまっているために先端が黄色くなっています。

萼片と側花弁は披針形で長さが10mm弱、一番目立つ唇弁の中裂片は5mmほどと1つ1つの花は非常に小さなものですが、非常に複雑な構造をしている花です。
上の写真で判っていただけましたでしょうか。

 

今回は尾瀬で観察しましたが上記にも記載したとおり、他の植物に埋もれて咲いており、また唇弁は非常に印象的な色合いをしていますが、全体像としては周りと同化してしまうような色合いをしているため、危うく見逃してしまうほどでした。
林間でフラワーハイキングを楽しむ際には、コケイランの花を見逃さないようにご注意ください。

 

コケイラン(小蕙蘭:Oreorchis patens)③

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!!
屋久島の植生観察、高山植物の観察に重点をおいた季節限定企画!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。
※私(大阪支社 高橋)が同行させていただきます。

 

<おすすめ!! 自然探勝を楽しむツアー>
支笏湖カヌーとネイチャーウォーク 北海道自然満喫の旅
支笏湖カヌー体験、美瑛の丘やニセコ山麓で専門ガイドと共にネイチャーウォークを楽しむ5日間。

 

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

134

ノビネチドリ(延根千鳥:Neolindleya camtschatica)

先日「花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く」に同行させていただき、各所で高山植物の観察を楽しませていただきました。
各所では高山植物だけでなく、千畳敷カールでは氷河地形と合わせて宝剣岳も見学でき、乗鞍畳平では雷鳥も観察することができました。また、上高地では2泊3日で大正池から河童橋、明神池、徳沢を巡るという贅沢な時間を過ごすことができ、充実した5日間でした。

 

本日は、尾瀬で観察した「ノビネチドリ(延根千鳥:Neolindleya camtschatica)」をご紹介します。

 

ノビネチドリ(延根千鳥:Neolindleya camtschatica)

 

被子植物 単子葉類
学名:Neolindleya camtschatica
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ノビネチドリ属(Neolindleya)

 

ノビネチドリ(延根千鳥)は、北海道、中部以北の本州、さらには四国に分布し、海外では朝鮮半島やサハリン、カムチャッカ半島などにも分布します。
北海道では海岸地帯などでも自生するようですが、低山帯~亜高山帯の草地や明るい林などに自生するラン科ノビネチドリ属の多年草です。
ノビネチドリという名の由来は、根茎の形が掌状(手形)であるテガタチドリに対して、ノビネチドリの根は掌状にならず、根は横に伸びるため「延根」となったそうです。

 

<見分け方のポイント①:葉の縁の形状>
草丈は30~60cmで直立し、茎が若干太い印象です。
葉の長さ7~15cmでやや細長い楕円形、6~10枚の葉を茎に互生し、葉の先が尖り、葉の縁が波打つようになっているのが特徴で、葉柄はなく葉が茎を抱くように付いているのも特徴です。ノビネチドリと似ているテガタチドリやハクサンチドリの葉の縁は波打っていないため、見分ける際のポイントとなります。

 

ノビネチドリ(延根千鳥)の花を拡大しました

草丈が大きく、茎も太く、花を密集して咲かせるため、比較的大型なラン科の花のように見えますが、1cm以下の花を多数付けるので、そう感じるのかもしれません。
1つ1つの小さな花を観察すると、チドリ系のランらしい特徴が確認することができます。
花の中心から2枚の萼が横に広がっており(この部分は”側萼片”)、さらに中央から1枚の萼片が真上に伸び(この部分は”背萼片”)、さらに背萼片のすぐ下には側花弁と言われる部分も確認ができます。

 

<見分け方のポイント②:唇弁の形状>
チドリ系のランの花を印象的にするのが花の中央から下に伸びる”唇弁”の部分です。唇弁の中央部分に白い筋が真っすぐに入っており、先端が3裂しています。
テガタチドリ、ハクサンチドリ、ノビネチドリは非常に似ていると言われていますが、この唇弁の3裂した部分が見分けるポイントです。

 

◇ノビネチドリ
唇弁の中央に白色の縦筋が入り、3裂した部分の中央だけがやや短い
◇テガタチドリ
唇弁中央は縦筋などは確認できず、3裂した部分の先端が丸く、長さも同じ
ハクサンチドリ
唇弁に濃紅紫色の斑紋ができ、3裂した唇弁の中央部分の先端が尖る

 

私が撮影した花の写真にはテガタチドリはなかったですが、ハクサンチドリは以前ご紹介しておりますので、比較してみてください。
ラン科の花は、トレッキング中などに見つけると、気持ちが一気に高揚する不思議な魅力を持つ花です。単純に観察観察するのも楽しい花ですが、上記のような違いを確認しながら観察するのも楽しいものです。
是非、機会があれば花の細かい部分も観察してみてください。

 

ノビネチドリ(延根千鳥:Neolindleya camtschatica)②

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!!
屋久島の植生観察、高山植物の観察に重点をおいた季節限定企画!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。
※私(大阪支社 高橋)が同行させていただきます。

 

<おすすめ!! 自然探勝を楽しむツアー>
支笏湖カヌーとネイチャーウォーク 北海道自然満喫の旅
※支笏湖カヌー体験、美瑛の丘やニセコ山麓で専門ガイドと共にネイチャーウォークを楽しむ5日間。

 

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
※“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
※専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

069

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)

私は7月22日より「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島5日間」のツアーへ同行させていただき、現在上甑島から下甑島へ向かっているところです。

 

本日も日本の花の1つ、白山を冠した18種の植物のうちの1つである「ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)」をご紹介します。

 

ハクサンチドリ:白山千鳥:ラン科)

被子植物 単子葉類
学名:Dactylorhiza aristata
和名:ハクサンチドリ(白山千鳥) 別名:シラネチドリ
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ハクサンチドリ属(Dactylorhiza)

 

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata:白山千鳥)は、本州の中部以北から北海道にかけて、亜高山帯から高山帯の草地に自生し、本州では高山植物として知られているが、北海道内では山岳地帯から海岸近くまで幅広く分布しています。海外でも北太平洋地域、アラスカまで分布します。
私も白馬岳の登山の際に観察し、北海道・礼文島で群生を観察したのを覚えています。上の写真はサハリンにて観察したものです。

 

草丈は10~40㎝ほどで直立し、葉は細長の楕円形(広線形)から披針形をし、長さ10~15㎝ほどの葉が数枚互生(ごせい:茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)します。

 

花は直立した茎の真ん中から頂部にかけて、2㎝ほどの小さな花を密集して総状につけます。
色合いは鮮やかな紫色や暗赤紫色など変異が多く、中には白い花のものも見られます。
唇弁(しんべん:下側にある花弁が他面のより大きく、花を下から受けるように広がる形になる花弁のこと)はくさび形で先端が3裂し、中裂片の先端は鋭く尖った形状が特徴です。
萼片や花弁も先端が鋭くとがっており、萼片(側萼片)が左右に広がり、まるで鳥が翼を広げているように見えることから「チドリ」の名がついたとも言われています。
花弁と萼片が左右から蕊柱(ずいちゅう:雄蕊と雌蕊が合体したもの)を包み込むような形状をしていますが、蕊柱は小さすぎて目立たないので、虫眼鏡などで観察する必要があります。

 

ハクサンチドリは形状と色には変異が多く、有名なものは下記の2種です。
1.ウズラバハクサンチドリ(鶉葉白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. punctata)
・葉に暗紫色の斑点、ウズラの卵に似た模様の葉を持つ。

2.シロバナハクサンチドリ(白花白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. albiflora)
・その名の通り、白い花を咲かせる(下写真)。

 

日本ではラン科の高山植物の中で一番よく見かけると言われるハクサンチドリ。特に北海道では驚く量の群生が見られることもあります(資料によっては「雑草のごとく生えている」と)。
色合いや特徴ある形状の観察とともに、周囲を見渡してシロバナハクサンチドリやウズラバハクサンチドリも探してみてはいかがでしょうか。

 

シロバナハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata f. albiflora)

 

 

<レブンシオガマが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
上鶴篤史氏同行シリーズ
礼文島「愛とロマンの8時間コース」と利尻島、サロベツ、宗谷丘陵ネイチャーハイキング
上鶴篤史氏同行シリーズ
夏の北海道を撮る 大雪山と富良野・美瑛&道東の湖めぐり
北海道大自然をぐるっとめぐる旅

040

クロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)

遅くなりましたが、2020年最初の投稿となります。

2020年最初の花は、1月に観察したパタゴニアのランの花の1つ「クロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)」をご紹介します。

クロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)

被子植物 単子葉類
学名:クロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:クロラエア属(Chloraea)

 

昨年に引き続き「パタゴニアを撮る」へ同行させていただきました。
ある日のパイネ国立公園での朝焼けの撮影では天候に恵まれず、道中で虹が架かり始めたので写真タイムを取っていた時でした。
パイネ国立公園の草原に数輪咲くクロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)を発見しました。

 

花弁は白地に緑色の網目模様が特徴的で、さらに花の中央に黄色く垂れ下がる花弁も特徴的な姿をしています。
草丈は30~40cm程度、花の直径は5~7㎝です。厚めの葉は触ると少し硬さを感じます。
アルゼンチン南西部、チリ中南部に自生し、パタゴニア地方でも乾いた草地やナンキョクブナの森に花を咲かせます。花期は11~1月ごろです。

 

パタゴニアにはたくさんのラン科の花が自生していますが、一見するとグロテスクな色合い・姿をしているクロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)は「世界で最も南に分布するラン科の一種」という点が注目するポイントです。

 

私も毎年パタゴニアへ訪れていますが、なかなかこのクロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)に出会う事ができず、何気なく立ち寄った写真ポイントで発見した時には思わず興奮してしまい、撮影に夢中になってしまいました。

 

今シーズンも世界各地でたくさんの花の観察を楽しみたいと思っておりますが、念願だったパタゴニアでのクロラエア・マゲラニカ(Chloraea magellanica)を観察・撮影ができ、2020年も幸先の良いスタートが切ることができました。

 

皆さんもパタゴニア・パイネ山群の素晴らしい風景と共に、パタゴニア特有のランの花をもとめて、是非パタゴニアへ訪れてみてください。

パイネ山群の朝焼け

 

035

グリーンフード・オーキッド(Greenhood orchid)

本日もニュージーランドの花を1つ、変わった形をしたランの一種である「グリーンフード・オーキッド(Greenhood orchid)」をご紹介します。

グリーンフード・オーキッド(Greenhood orchid)

被子植物 双子葉類
学名:Pterostylis banksii
英名:グリーンフード・オーキッド(Greenhood orchid)
マオリ名:TUTUKIWI
科名:ラン科(Orchidaceae)  属名:プテロスティリス属(Pterostylis)

 

グリーンフード・オーキッド(Greenhood orchid)は、マオリ語で「TUTUKIWI(トゥトゥキウィ)」と呼ばれ、和名ではその形状から「頭巾ラン」などと呼ばれているランの一種です。

 

プテロスティリス属は、ニュージーランドをはじめ、オーストラリア、パプアニューギニア、ニューカレドニアなどに分布し、100種近くが確認されています。ニュージーランドでは20種ほどが確認されており、樹林帯から亜高山帯まで生育しています。
掲載した写真は、ニュージーランド南島のルートバーン・トラックのキーサミットへ向かう樹林帯の中で観察したものです。

 

グリーンフード・オーキッドは、その形状もユニークなものですが、受粉方法もユニークなのが特徴です。何と、動く唇弁によって虫を柱頭に寄せ付けるのです。

 

主にコバエなどの小さな虫は、グリーンフード・オーキッドの香りに引き寄せられるように風下からは花に近づき、花の入口にある舌のような部分に虫が停まり、舌のような部分がバネのように虫を奥の柱頭に向けて弾き飛ばします。

その後、花弁を閉じ(現地ガイドから10~15分近く閉じると解説がありました)、その間にその虫が持ってきた花粉で受粉します。
その後、花が開き虫が逃げ出す際にはグリーンフード・オーキッドの花粉を付け、出ていくという仕組みです。

 

開花時期は11~2月、主に樹林帯の湿った草地やコケが覆う場所などに生育するため、花の色合いからすぐに目に飛び込んでくる花ではありませんが、草丈10~15㎝のグリーンフード・オーキッドは、ユニークな形状であるため、すぐに気付かれる方もいらっしゃるかもしれません。
ニュージーランドの樹林帯で観察の機会がありましたら、是非そのユニークな形状もゆっくりと観察していただきたいラン科の花の1つです。

022

デンドロビウム・アフィルム(Dendrobium aphyllum)

ゴールデンウィークも終わり、いよいよ本格的な高山植物のシーズンが近づいてきました。皆さんはどちらの国へ花の観察にお出かけされる予定でしょうか。
近所に咲く「のだふじ」の見頃も終え、次はどのような花が観察できるのか注視しながら出勤する毎日が続いています。

 

本日紹介する花は、ブータンで観察した着生ランの1つ「デンドロビウム・アフィルム(Dendrobium aphyllum)」です。

デンドロビウム・アフィルム(Dendrobium aphyllum)

被子植物 双子葉類
学名:デンドロビウム・アフィルム(Dendrobium aphyllum)
科名:ラン科(Primulaceae) 属名:セッコク属(Dendrobium )

 

中国南部、インド、マレーシアなど広く分布する着生ランですが、私がこの着生ランを観察したのは、春のブータンの峠道で花の観察を楽しんできる時でした。

 

茎が20㎝から60㎝もの長さとなり、斜上するか、垂れ下がるように伸びています。若い茎に長さ5~10㎝ほどの楕円状の葉を付け、落葉後、茎の節に1~2個の花を咲かせます。開花期は春です。
花は淡い紫色の色合いで、直径は3~5㎝ほど。唇弁(しんべん)は白く(クリーム色)ラッパ状に丸くなり、よく観察すると唇弁の先が細裂し、表面には軟毛があるのが判ります。萼片と側花弁は白から淡い桃色になり、紫の筋紋や斑紋が入ります。

 

1つ1つの花をじっくり観察しても印象的な着生ランですが、緑あふれる森林で花の観察を楽しんでいると、垂れ下がる茎に「しだれ桜」のようにたくさんの花を付けるデンドロビウム・アフィルムを観察することもできます。
開花期に葉がないことが(落葉後に花を咲かせます)、印象深い色合いを際立たせているのかもしれません。

 

ブータンなど、アジアの低山帯では、様々な着生ランを観察することができますが、種類を問わずラン科の花を見つけると心が踊ります。
「世界の各地へ着生ランを求める旅」、いつしか実現させたいものです。
またいつか、別の種類の着生ランも紹介させていただきます。

樹木に垂れ下がるデンドロビウム・アフィルム(Dendrobium aphyllum)
019

ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)

先日、大阪城公園にて花見へ行ってきました。見頃の時期、さらには週末だったこともあり、人の多さに圧倒されてしまいましたが、キレイな桜とともに桃園では数種類の桃の観察も楽しむことができました。

 

本日ご紹介するのは、花の姿、形状が非常に見栄えが良く、地域変異のバリエーションが多いアツモリソウの一種である「ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)」です。
日本では「レブンアツモリソウ(礼文敦盛草 C. marcanthos var. rebunense)」が圧倒的な知名度ですが、ホテイアツモリソウは、花全体の色合いがとても美しく、観察を続けて行く中で、どんどん心が奪われていくアツモリソウです。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium macranthos var. hotei-atsumorianum
和名:ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

アツモリソウは、漢字では「敦盛草」と書きます。この漢字名の由来は、袋状の唇弁(しんべん)の部分が、平敦盛が背負った母衣に見立てて名付けられました。

 

アツモリソウの中でも日本が世界に誇れるホテイアツモリソウは、本州中部(長野:釜無、大鹿、経ヶ岳、霧ヶ峰、戸隠、安房、山梨:櫛形、八ヶ岳、新潟、岩手)や北海道に分布しており、海外では中国やロシアに分布しています。
※上の写真は、ロシアのサハリン南部で観察したものです。
盗掘・乱獲のために、既に絶滅してしまっている地域も多く、日本では1997年にレブンアツモリソウに相次いで特定国内希少野生動植物指定を受けました。

 

草丈は20~50cm、花は袋状で、茎の頂上に通常1つ、まれに2つの花つけこともあるそうです。径は6~10cm、幅の広い楕円形(時に円形に近いものがある)の葉を4~5枚互生(1つの節には1枚の葉しかつかない)し、アツモリソウに比べて全体に大きい印象を受けます。
色合いも、アツモリソウより濃く、桃色から紅色、黒ずんだ暗濃紅色の花と非常に多くの地域・個体バリエーションがあります。

 

サハリン南部で見つけたホテイアツモリソウの群生地。お客様とともに夢中になって観察したことを今でも覚えています。
日本でも観察できるアツモリソウですが、サハリンの地で観察するホテイアツモリソウも、また格別の美しさでした。
是非、ホテイアツモリソウを求めてサハリンの地へ。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

<ホテイアツモリソウが観察できるツアー>
花のサハリン紀行

007

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

本日は、ラン科の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」をご紹介します。

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

被子植物 単子葉類   時期:7~8月
学名:Nigritella nigra ニグリテラ・ニグラ
和名:バニララン 英名:BLACK Vanilla Orchid
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:ニグテリア属(Nigritella)

 

一見すると地味ですが、ラン科の花の中では私がもっとも好きな花が今回の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」です。
初めてこのニグラ・バニラランに出会ったのは、イタリア・アオスタ山麓でした。その時のイタリアのガイドさんから「このランは香りが特徴的なんだ」と紹介され、ガイドさんの奥様もこのニグラ・バニラランが大好きだったそうです。
その時の出会い以来、私もヨーロッパ・アルプスにフラワーハイキングへ出かける際、お客様へ紹介したい花の1つとなりました。

 

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)は、ヨーロッパの中部から南部にかけて、ヨーロッパ・アルプスでは標高1,000~2,000mの草地に生息するラン科の花で、草丈は5~20cm程度で、葉は非常に細く茎頂に向けて垂直についています。
茎頂に花弁が深紅色の小さな花がたくさんつき、見た目にはたまご型に花が密集しております。

 

注目すべきは「花の向き」です。
普通のラン科は、花の唇弁が下向きであるのに対し、このニグラ・バニラランは唇弁が最上位にあり、上向きになっているのが特徴です。

 

もう1つの注目すべき点は、冒頭でもお伝えした「花の香り」です。
たまご型に密集している花からは、バニラの香りが漂っており、少し離れた位置からもその強い芳香を感じることができます。
ただ、誰もがこのバニラの香りを好むわけではありません。
ヨーロッパ・アルプスに放牧された牛は、このニグラ・バニラランを避けて食べません。間違って牛がこのニグラ・バニラランを食べてしまうと・・・何と、ミルクがブルー色に染まってしまい、この牛乳でつくるチーズやバターなどもバニラの匂いがしてしまうそうです。
また、スイスでは乾燥させたニグラ・バニラランを虫よけとしてタンスの中に置いていたそうで、「衣蛾草(Schabenkrant)」とも呼んでいる地方もあるそうです。

 

一見すると日本ではワレモコウ(バラ科:ワレモコウ属)にも似ていますが、日本にはニグラ・バニラランの近縁種はないそうです。

ニグラ・バニラランは草地一面に群生するといったことはないようですが、花の色合いからヨーロッパ・アルプスを歩いているとすぐに見つかります。
花の観察の際、花の前で腹ばいになり、是非花の香りを感じてみてください。
あまりの香りの良さから、間違えて食べないようにご注意ください。

雨露のついたニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

 

<ニグラ・バニラランに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング