179

トロリウス・リラキヌス(Trollius lilacinus)

しばらく更新できず、申し訳ありませんでした。
2023年もまもなく終わりが近づく中、「もうやらないの?待ってるのに!」とお客様からもご意見をいただき、久々に更新させていただきます。

 

この1年、私の中でより一層強い想いが生まれた花が1つ、長年の念願が叶い出会うことができた花が1つありました。
本日は、より一層強い想いが生まれた花『トロリウス・リラキヌス』(Trollius lilacinus)をご紹介します。

 

トロリウス・リラキヌス(Trollius lilacinus)

被子植物 双子葉類
学名:Trollius lilacinus
旧学名:ヘゲモネ・リラキナ(Hegemone lilacina)
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:キンバイソウ属(Trollius)

 

いつだったか、とある雑誌で今回ご紹介する『トロリウス・リラキヌス』(Trollius lilacinus)が群生している写真を見た瞬間、心を奪われたことを覚えています。その後、添乗員としてキルギスへ訪れた際に現地フラワーガイドに伺ったところ「6月にキルギスでも観察できるよ」と教えてくれ、「真っ白なトロリウス・リラキヌスを観察するツアーを作りたい」という想いが芽生えました。
それから数年が経ち、コロナウィルスによる悪夢の3年を経て、2023年に弊社ツアー『初夏のキルギスへ 純白のトロリウス・リラキヌスをもとめて』を発表させていただきました。

 

トロリウス・リラキヌス(Trollius lilacinus)は、キンポウゲ科キンバイソウ属に属します。
キンポウゲは漢字で書くと「金鳳花」、キンバイソウは漢字で書くと「金梅草」。読んで字の如く、花の色は『金=黄色』をイメージされる方が圧倒的多数かと思いますが、トロリウス・リラキヌスは純白の花を咲かせます。

 

シベリア西部~キルギス、カザフスタンなど、北方寒冷域に分布し、日本では観察できない花の1つです。
草丈は低いもので10cm未満、高いもので30cmほどになり、葉は基部まで裂け、ロゼット状に小さな葉を広げます。
花弁のような純白の部分は花弁を包み込む萼片で15~20枚ほどの萼片を付け、花全体の大きさは直径5cmほどです。純白の萼片の中央部分に確認できる黄色い部分が花弁となります。
弊社ツアーでは「純白のトロリウス・リラキヌス」と紹介しているとおり、純白の花弁が印象的ですが、同種には薄紫色やバラ色の種もあります。

 

この花をさらに印象深いものとする要因が『光の加減による色合いの変化』です。
萼片の根元がほんの少し青白いことで、観察した日の天気や光の加減で若干青白い花に見えることが特徴です。
『Trollius lilacinus』で画像検索すると、時折青白い印象の写真が検索できますので、是非ご覧になってください。

 

ここまでご紹介した『トロリウス・リラキヌス』ですが、実は私自身観察したことがありません。
2023年にツアーを発表し、最初のツアーへ添乗するために意気揚々と準備を進めていたのですが、急遽別ツアーの添乗に行くこととなり観察することができていません。
2024年は是非とも『純白のトロリウス・リラキヌス』に出会いたいものです。

 

<トロリウス・リラキヌスに出会えるツアー>
初夏のキルギスへ 純白のトロリウス・リラキヌスをもとめて
※今シーズンも多くのお問い合わせをいただいております。お問い合わせはお早めに!

 

キルギスに咲くトロリウス・リラキヌス(Trollius lilacinus)
146

シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)

現在、10月に発行予定の西遊通信で発表予定のツアー造成に励んでいます。冬さらには春に向けて新たなツアーを発表しますので、お楽しみに。一足先に確認されたい方は、是非弊社ホームページへアクセスを。

 

本日は「シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)」をご紹介します。

 

シナノキンバイ(信濃金梅:Trollius japonicus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Trollius japonicus
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:キンバイソウ属(Trollius)

 

シナノキンバイ(信濃金梅)は、以前紹介したハクサンイチゲと並ぶ高山植物の代表種として紹介されるキンボウゲ科の多年草です。
北海道から中部地方以北に分布し、高山帯などの湿った草地に自生する日本固有の花です。
花の名は、信濃地方で多く観られ、他のキンバイソウ属の花と同様に黄金色で梅に似た花を咲かせることから「信濃金梅」と呼ばれています。

 

草丈は20~80cmで直立します。背丈に差がありますが、南・北アルプスなどでは背が低い傾向にあると記載する資料もあります。
葉は、円心形で直径が5~10cmで3全裂、側裂片が2深裂し、縁には不揃いな鋸歯があります。手のひら状に5裂するギザギザな葉とも紹介されています。
下部の葉には長柄がありますが、茎の上部の葉は葉柄が短く(または無し)、茎を抱くように付けています。
根生葉と株の葉の表面には光沢が確認できるという資料もありますが、上部の葉は個人的にはあまり光沢を感じることはありません。

 

花期は7~9月。茎頂に1~2つ、直径3~4cmほどの黄橙色の花を咲かせます。
黄橙色の花弁が5~7枚・・・と言いたいところですが、花弁に見える黄橙色の部分は「萼片」です。萼片が変化したもののため、花が開く前は縁が緑を帯びています(一番下の写真をご覧ください)。

ただ、シナノキンバイには花弁がない訳ではありません。シナノキンバイの花弁は、雄しべや雌しべが密集している花の中央にあります。雄しべより短く、濃いオレンジ色の線形の花弁が確認できます。真ん中の写真で上のアップ写真で確認できるでしょうか。

 

シナノキンバイの花弁は確認できますか?(雄しべより短く、濃いオレンジ色の線形)

 

以前、ミヤマキンバイ(深山金梅)をご紹介した際にも記載しましたが、「ミヤマ~」と名のついた花、「~キンバイ」と名のついた黄色い花など、黄色い花は似ているものが多く、見分けが本当に困難です。
今回も、シナノキンバイのことを調べていると、尾瀬ではシナノキンバイによく似たリュウキンカと共に咲いているとあり、春の訪れを告げる花の1つして紹介されていました。見分け方は丸い葉がリュウキンカ、ギザギザの葉がシナノキンバイだそうです。

 

その他、黄色い花の見分け方のポイントは「葉の違い」です。
・シナノキンバイ(信濃金梅:キンポウゲ科):葉は掌状で切れ込みが深い
・キンバイソウ(金梅草:キンポウゲ科):葉の切れ込みは信濃金梅より浅い
※キンバイソウは、信濃金梅より標高の低い山地に自生
・ミヤマキンバイ(深山金梅:バラ科):小葉は3個で切れ込みが浅い
・ミヤマダイコンソウ(深山大根草:バラ科):葉は丸い心形
・ミヤマキンポウゲ(深山金鳳花:キンポウゲ科):葉は深く3裂、信濃金梅に比べ裂片が細かい

 

黄色い花の見分け方は非常に困難ですが、1つ1つ観察して覚えていくしかありません。
来年こそは、しっかり見分ける方法を身に付けたい・・・毎年言っている気もします。

花弁状の萼片は、花が開く前は縁が緑を帯びています
004

タマキンバイ(Trollius europaeus)

本日は「タマキンバイ(Trollius europaeus)」をご紹介します。

タマキンバイ(Trollius europaeus)

被子植物 双子葉類
学名:タマキンバイ(Trollius europaeus) 和名:タマキンバイ
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae) 属名:キンバイソウ属(Ranunculus)

 

ヨーロッパ・アルプスでハイキングを楽しんでいると、色鮮やかな黄色い色合いが印象的なキンポウゲやリュウキンカなど様々なキンポウゲ科の花々に出会うことができます。その中で、容姿がとても印象深いのが「タマキンバイ(Trollius europaeus)」です。

 

タマキンバイは、ヨーロッパの広い範囲と西アジアに分布し、初夏の草原や牧草地で多く観察できますますが、盛夏にはあまり見られません。

 

タマキンバイは、その名の通り、直径約3cmの「玉のような丸み」を帯びており、まるで蕾のような形状をしています。
蕾のような形状をしていますが、花はほとんど開かず、上写真が満開の状態なのです。
色鮮やかな黄色い花びらが10~15枚が重なっており、頭頂部は少し開いていますが、花の内部はほとんど見えません。
以前、山小屋の方に了承を得て、一輪だけ花びらを一枚ずつ取り除いてみると、内部には多数の雄しべが隠れていて、小型の昆虫(ハエ?)がたくさん入っていました。山小屋の曰く、頭頂部の少し開いている部分から小さな虫が出入りしているそうです。
草丈は45~60cmで、直立する茎は上部で分岐し、枝先に通常1個の花を上向きにつけます(稀に2、3個の花をつけるものもあります)。

 

日本国内ではシナノキンバイや、チシマノキンバイソウ、ヨーロッパを含めた海外でも観察できるキンバイソウの近縁種です。

 

群生するとかなりの広がりを見せるため、に鮮黄色のタマキンバイの群生地に出会うと足を止めずにはいられません。ゆっくり足をとめ、その形状にも注目していただきたい花の1つです。

 

<タマキンバイに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)