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フキ(蕗:Petasites japonicus)

先日、我が家に母が遊びに来た際に夕食で蕗の煮て(関西、特に京都では”フキの炊いたん”と呼ばれています)卵で絡めた、小さい頃によく食べていた料理を作ってくれ、懐かしい気持ちとなりました。

 

本日は、その料理のレシピではなく、「フキ(蕗:Petasites japonicus)」をご紹介します。

 

フキ(蕗:Petasites japonicus)…雌か雄、どちらでしょうか。

 

被子植物 双子葉類
学名:Petasites japonicus
英名:Giant Butterbur、Japanese Butterbur、Fuki
科名:キク科(Asteraceae)
属名:フキ属(Petasites)

 

上の写真は、昨年5月に長野県・鬼無里の奥裾花自然園を訪れた際に観察したものです。

 

フキ(蕗)は、キク科フキ属、日本原産の多年草で日本全体に分布し、海外では北海道より北の樺太や朝鮮半島、中国にも分布します。
丘陵地や山野の土手など、少し湿った場所で自生し、川岸や林の際などにも自生します。

 

草丈は、花期・花後によって異なります。茎は地上には伸ばさず、地下茎を地中で横に長く這って伸ばして増殖させます。

 

①地面に這うような草丈
花期は3~5月(早春)。この頃は葉は地表に姿を現さず花茎(花穂)が伸び始め、これが春の風物詩の1つ「フキノトウ(蕗の薹)」と呼ばれる段階です。
フキ(フキノトウ)は雌雄異花で、苞葉に包まれ、筒状花が密集して頭状花を成しています。花径は5~10mmほどで花弁のようなものはなく、それぞれの筒の中から毛状の突起が出ているような形状です。

 

花の色は白~黄白色と紹介されています。これは雌雄異株に関連しています。
鬼無里の奥裾花自然園のガイドさんが「雄株と雌株を見分ける際、白色=雌、黄色=雄」と解説してくれ、基本の花は白色ですが、雄株は花粉をつけるため若干黄色味が入った色合いに見えるとのことでした。
その際、ガイドさんは花を包む葉が広がった頃、「雄株は花(総苞)が隙間なく並びキレイな球体、雌株は葉の間に隙間がある」という別の見分け方も教えてくれました。
上の写真を再度ご覧いただくと、筒状花の先端が白く、花の間に隙間があるのが確認できるため、これは「雌株」ということです。

 

②花後は50㎝前後に草丈を伸ばします(雌株)
雌株は雄しべがないため花粉を出しません。昆虫を招く蜜を出すそうです。
雄株は花が終わると枯れてしまいますが、受粉が終わると雌株は花茎を草丈50㎝前後まで伸ばし、タンポポのように白い綿毛をつけた種(果実)を風にのせて飛ばします。

 

③花後に葉柄が伸びはじめる
花後、花茎とは別に地下茎から地表に葉を出し、葉柄が高さ30~80cmほどになります。
葉は円形に1ヶ所深い切れ込みのあるハート形(腎臓型と紹介する資料も)で、幅が20~30㎝と大きく、光沢はありませんが白色の綿毛が密生しています。
色々と調べていると、葉の中央が少し窪んでいるので皿状になっており、それは葉の切れ込み部分から茎を伝って根に水を送るためにそういった形状になっているとのことでした。

 

フキ(蕗)は日本原産の野菜(山菜)として古くは8世紀ごろから栽培が始められていたそうです。
独特の香りや苦味のあるフキ(蕗)は、山菜の一種としてフキノトウは天ぷらやフキ味噌として、葉柄は煮物や佃煮(きゃらぶき)などとして、現在でも食されており、私も大好物の1つです。

 

山菜として有名なフキ(蕗)ですが、薬用植物としても知られ、フキは気管支粘膜の炎症を鎮める作用があり、蕗の薹には食欲増進効果がある苦味質や精油成分が含まれているため消化を助ける働きなどがあるそうです。

 

私を含め、「蕗は美味しいもの」と思っている方も多いかと思います。
初春のころ、丘陵地や山野の土手を歩いてフキを見つけたら、花の形状をゆっくり観察してもらい、雌雄を見比べてみてください。

 

<春~夏の花の観察ツアー>
まもなく催行!
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間

※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月1日出発 満席! 5月5日出発 まもなく催行!
このツアーで、フキの花を観察しました。

花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

 

6月26日出発 まもなく催行!(尾瀬の花の最盛期)
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
https://www.saiyu.co.jp/itinerary/new/GJGU12/
※高山植物の最盛期を迎える尾瀬で楽しむフラワートレッキング

 

先日、ツアーを発表!
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
https://www.saiyu.co.jp/itinerary/new/GJNA31/
※2つの高山植物の宝庫と奥上高地の徳沢にも訪れる自然観察の旅

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乗鞍・畳平 ~花・絶景・雷鳥の観察を楽しめる楽園

2022年となり、最初のブログ更新です。今年も様々の高山植物をご紹介していきたいと思いますので、本年もよろしくお願いいたします。
本日も私がおすすめの場所をご紹介します。第5弾は「乗鞍・畳平(岐阜県・長野県)」です。

 

■関連ツアー ※1月21日 更新
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
乗鞍・畳平や白馬山麓でのフラワーハイキングを楽しむツアーを発表しました。
歩くのは平坦なルートが大半で、時間を十分に確保したフラワーハイキングをメインとしたツアーですので、是非ご検討ください。

 

<高山植物の宝庫 乗鞍・畳平>
北アルプス南端に位置し、岐阜県高山市と長野県松本市に跨る乗鞍岳。
標高3,026mの剣ヶ峰を主峰とする23の峰と7つの湖、8の平原からなり、壮大な山岳風景を形成しています。登山口となる標高2,072mに位置する畳平へは長野県側より『乗鞍スカイライン』、岐阜県側より『乗鞍エコーライン』という観光道路で向かうことができ、乗鞍岳(標高3,026m)をはじめ、魔王岳や大黒岳などの登山拠点地です。
乗鞍・畳平は、登山の拠点地として、また秋の紅葉風景が有名(9月下旬~10月上旬、ハイマツの緑、ダケカンバの黄色にナナカマドの赤が映え、撮影にもってこいのシーズン)ですが、夏には乗鞍・畳平の周辺では色とりどりの高山植物が咲き誇ることはあまり知られていません。
登山することなく、木道が整備された高山植物の花畑で気軽にのハイキングを楽しめます。
2021年7月に訪れた際には、1時間弱のフラワーハイキングの中で15種ほどの高山植物の観察を楽しむことができ、ミヤマクロユリ(ユリ科)の群生する風景は、今でも目に焼き付いています。

 

<乗鞍・畳平に宿泊する理由>
乗鞍・畳平で宿泊する理由は「朝夕や星空の絶景」を楽しむためです。
夕方は畳平周辺がオレンジ色に染まり、周囲のガレ場などに咲くコマクサの花まで夕焼けに染まる幻想的な風景を楽しむことができます。
夜は山小屋から少し離れるだけで周辺が真っ暗となるため、空を見上げると「満天の星空風景」もご覧いただけます。
翌日は夜明け前より歩いて10分ほどのポイントに出掛けると「御来光の風景」を楽しむことができます。眼下に雲海が広がり、その向こうには甲斐駒ヶ岳~南アルプス方面の山々の風景がご覧いただけます。
また、そこから15分ほど坂道を登ると大黒岳に登ることができ、槍ヶ岳をはじめとする北アルプスの山々の風景も展望できます。
高山植物の観察だけではなく、時間を追うごとに広がる絶景を楽しむことができるのも畳平の魅力の1つです。

 

乗鞍・畳平では山小屋での宿泊のため個室は確保できず、大部屋で5~6名様利用でご宿泊いただきます。山小屋での宿泊を敬遠される方も多いかもしれませんが、お世話になる『乗鞍白雲荘』は数年前に改築したばかりのキレイな山小屋で、夕食も美味しく、スタッフの対応も素晴らしく、安心してご宿泊いただける山小屋です。山小屋の中に飾られた各所の解説が山小屋の方の手作りで、非常に見応えのあるものです。西遊旅行が自信をもっておすすめできる山小屋が、乗鞍白雲荘です。

 

<国の天然記念物・ライチョウに出会える乗鞍・畳平>
チェックアウト後、7時ごろからフラワーハイキングを1時間ほど楽しんだ後は自由行動とし、10時ごろまで滞在を予定しております。
のんびりと過ごされる方、気軽に登ることができる魔王岳や大黒岳の登頂にチャレンジされる方もいらっしゃいます。
乗鞍・畳平は、国の天然記念物に指定されるライチョウ(キジ科)の生息地として知られています。
フラワーハイキングを楽しんだ後には、一番簡単な魔王岳(往復30分ほど)へ登り、コマクサの花とライチョウの観察を楽しみます。北アルプスの展望も楽しみ、多くのコマクサの花を観察したい方は大黒岳(往復45分ほど)がおすすめです。
必ず観察できる訳ではありませんが、「ガー、ガー」とカエルのようなライチョウの鳴き声を頼りにライチョウを探します。
2021年7月には、母ライチョウと共に5羽の子ライチョウがチョコチョコと歩く姿を観察することができました。

 

高山植物と共に北アルプスや甲斐駒ヶ岳~南アルプス方面などの山々の風景、さらにはライチョウの観察も楽しむことができる乗鞍・畳平は、日帰りで訪れるのではなく、是非とも1泊する日程で訪れて欲しい場所であります。
ご興味ある方は、是非西遊旅行大阪支社へお問い合わせください。

 

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信州に咲くスプリング・エフェメラルの魅力 ~白馬・鬼無里・戸隠へ

2021年最後のブログ投稿も私がおすすめしたい場所をご紹介します。第4弾は「信州」です。

 

■関連ツアー
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる
桜咲く信州 雪の北アルプス大展望

 

■ブログ『世界の花だより』
スプリング・エフェメラル

 

春の咲く花には「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と呼ばれる花があります。
スプリング・エフェメラルとは、落葉樹林で木々が芽吹く前の春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成を行い、木々に葉が生い茂り、林床が暗くなる夏には地上部を枯らして地中で過ごす草花の総称のことを言います。代表的な花はカタクリをはじめ、イチリンソウやニリンソウ、フクジュソウなどがあります。

 

 

日本全国でスプリング・エフェメラルの花々の観察を楽しめる場所はいくつもありますが、そんな中、私自身が真っ先に思い浮かんだのが信州でした。信州と言っても広大なエリアです。その広大な信州の中から春の花の観察を楽しめる場所を選別し、白馬・鬼無里・戸隠を巡るツアーとして「花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる」を造成しました。
2021年5月に添乗をさせていただいた際も各所でスプリング・エフェメラルの花々を楽しむことができたため、2022年も引き続きツアーを発表させていただきました。

 

本日は、3つのエリアで訪れたスポットをご紹介します。

 

1.白馬村・姫川源流自然探勝園(姫川源流・親海湿原)
姫川源流自然探勝園は、白馬村の最南端の佐野地区にある姫川源流自然探勝園は、大きく流出入する河川のない隔絶された親海湿原(およみしつげん)姫川源流のエリアに分かれます。
低温・弱酸性・貧養という厳しい環境条件のため亜高山帯から高山にかけて生息する湿原植物が豊富で、学術的にも価値の高い類稀な場所の1つあり、一帯は、貴重な⾃然環境を形成しているとして昭和53年に長野県の自然保護条例に基づき、自然環境保全地域に指定されています。
親海湿原も姫川源流も観察用の木道が設置されているため、起伏もなく、気軽に植物観察を楽しむことができ、清らかな流れの中に咲くミズバショウやリュウキンカ、周囲の土手などにはニリンソウ(キンポウゲ科)、ヤマエンゴサク(ケシ科)、ミヤマキケマン(ケシ科)、エンレイソウ(シュロソウ科)、フクジュソウ(キンポウゲ科)など多種多様なスプリング・エフェメラルの花を観察することができました。

 

その他、白馬村では白馬三山の展望と桜やハナモモの観察が楽しめる大出公園やミズバショウの群落地としても有名な落倉自然園、カタクリの群生地として知られる五竜かたくり苑にもご案内します。

 

2.鬼無里・奥裾花自然園
奥裾花自然園(おくすそばなしぜんえん)は、長野県鬼無里(旧鬼無里村)の裾花川上流域にあるブナ林に囲まれた自然公園。長野県が明治百周年記念事業として、県の代表的な優れた大自然を末永く保護し、自然を探勝し学べるように昭和44 年11月に開園した自然公園です。
新潟県との境に位置し、自然景観地域として保護されている裾花川の源流、日本の温帯林を代表するブナの原生林や、本州有数のミズバショウの大群生地も有します。
奥裾花自然園では湿原の1つである今池湿原へ足を伸ばします。
奥裾花自然園の今池湿原ではミズバショウの観察だけですが、その数は圧巻です。
2021年5月に訪れた際には、残雪が残る遊歩道(ミズバショウの花は雪融けの頃に花開くので仕方ありません)を専門ガイドさんと共にゆっくりと一周しました。
一周数十分で回れるエリアでしたが、可愛らしい小ぶりのミズバショウ、雪に覆われたミズバショウ、清らかな水の流れの中に咲くミズバショウ、群生する見事なミズバショウなど、1つ1つのミズバショウの姿には魅了されっぱなしでした。
気が付くと、1時間以上も今池湿原で滞在していました。

 

この日は、戸隠に到着する前に長野県飯綱町に位置するむれ水芭蕉園にもご案内します。ここはその名のとおりミズバショウも素晴らしかったですが、リュウキンカやニリンソウも群生しており、木道遊歩道を散策しながら、ゆっくりと花々の観察を楽しめます。

 

3.戸隠・戸隠森林植物園
戸隠森林植物園は、昭和39年に長野県で開催された、第15回国土緑化大会及び全国植樹祭を記念し、県民のレクリエ-ションや自然探索、自然や森林に関する知識の普及を図る場として昭和43年8月に開園されました。園内には⽊道が整備されており、湿地帯には約50万株のミズバショウが自生します。
専門ガイドさんと共に森林内をのんびりと歩きながら、ミズバショウやリュウキンカの観察を楽しみました。前日には奥裾花自然園でミズバショウ、むれ水芭蕉園でリュウキンカの群生を楽しみましたが、不思議と「見飽きることのない風景」でした。その他、キクザキイチゲ(キンポウゲ科)やアズマイチゲ(キンポウゲ科)、カタクリ(ユリ科)などのスプリング・エフェメラルの花の観察を楽しむことができました。

 

戸隠森林植物園でもそれなりの数のカタクリの花が観察できたのですが、専門ガイドさんが教えてくれたカタクリの群生地にも訪れ、紫色の絨毯を敷き詰めたように咲くカタクリの群生地の風景は心癒される風景でした。
その場所とは・・・、是非とも西遊旅行のツアーへご参加いただければ幸いです。

 

 

厳選して選んだ3ヶ所の名所でゆっくりとスプリング・エフェメラル(春の妖精)の花の観察を楽しめる日程としておりますので、是非とも来春は信州へ、是非弊社ツアーにて訪れていただければ幸いです。

 

今年一年もブログ『世界の花だより』をご覧いただき、誠にありがとうございました。
弊社も海外ツアーの再開に向けて動いており、いくつかホームページ上で発表しておりますので、是非そちらもご覧ください。
一日でも早く世界各地で花の観察が楽しめる日が訪れることを願い、また、日本各地でも安心して花の観察が楽しめる日が訪れることを願い、2021年最後のブログを締めさせていただきます。

来年もよろしくお願いいたします。

 

 

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尾瀬フラワートレッキングの魅力 ~尾瀬で過ごす3日間

本日も私がおすすめしたい場所をご紹介します。第3弾は「尾瀬国立公園」です。

 

■関連ツアー
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く

 

■ブログ『世界の花だより』
尾瀬の花 尾瀬の花

 

■ツアーブログ
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く

 

尾瀬と言えば、思い出されるのは童謡・唱歌『夏の思い出』でしょうか。雄大な湿原の風景でしょうか。
私が真っ先に思い浮かべるのは、高山植物の花々です。高山植物への興味を抱くようになったきっかけを作ってくれた場所の1つが「尾瀬国立公園」なのです。

 

尾瀬国立公園は、2007(平成19)年に日光国立公園から分割、会津駒ケ岳、田代山などを新たに編入し、福島県、栃木県、群馬県、新潟県の4県に跨る、29番目の国立公園として誕生しました。それ以前には、1960(昭和35)年に国の特別天然記念物に指定され、自然生態系の価値が評価されて2005(平成17)年にラムサール条約湿地に登録されました。

 

尾瀬のツアーと言えば、日帰り(●時間滞在)で散策を楽しむスタイルが大半です。
西遊旅行「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」では、鳩待峠からスタートし、尾瀬ヶ原・見晴、尾瀬沼それぞれの山小屋で宿泊し、2泊3日でのんびりと縦走するプランとし、魅力ある尾瀬の花を楽しむための日程としております。

 

1.時間に追われず尾瀬の風景や花の観察を楽しむ
これまで屋久島、上高地をご紹介した際にもお伝えした通り、自然・花の観察では時間的に十分な余裕を確保したいという点が、ツアーのポイントとして最も重要な点でした。
特に尾瀬ヶ原では様々な高山植物が観察でき、先々の時間を気にしながら歩くと、ゆっくりと花の観察を楽しめず、また思いがけない花を見逃す結果になってしまうこともあります。
6月にツアーを実施した際には、群生するコバイケイソウ(シュロソウ科)の「両性花と雄性花の違い」をゆっくり観察したり、大小1800とも言われている池塘(ちとう)と呼ばれる池の水面に咲く1輪のオゼコウホネ(スイレン科)を見つけることができました。水面のオゼホオコケは黙々と歩いていると、確実に見逃していました。

 

尾瀬ヶ原~尾瀬沼を縦走するプランは1泊2日が通常プランとして紹介されています。尾瀬沼でも宿泊する2泊3日プランとした理由は、上記1のポイントも理由の1つですが、観光客の少ない朝夕の風景を楽しむためでもあり、山小屋周辺の花々をのんびりと観察するため、到着後に周辺を散策するためでもあります。
尾瀬は歩く先々で咲いている花に変化があります。歩いている道中で咲いていない花も、1時間ほど先に進むと観察できることもよくあることです。それは山小屋周辺をのんびりと散策していても同じです。山小屋に荷物を置き、のんびりと周辺を散策する中で目的の花を見つけた際の喜びは格別です。6月の際には、お客様と尾瀬ヶ原・見晴の山小屋周辺をのんびり散策していると、念願のトキソウ(ラン科)を見つけて、歓喜したのが思い出です。残念ながら、6月には夕焼けに染まる尾瀬の風景は楽しめませんでしたが、こういった点も山小屋に早く入り、のんびりと散策を楽しむことのメリットです。

 

3.1日の歩行時間・距離を短くし、体力的な不安を軽減する
尾瀬を2泊3日プランとすることで、1日の歩行距離を10km以内、歩行時間も4~5時間としています。
尾瀬ヶ原・見晴から白砂峠を越え、尾瀬沼に入った後、頑張ればゴールの大清水までは時間的には問題なく歩くことができますが、花の観察を楽しむにあたり、尾瀬沼で大江湿原の散策は絶対に外すことができません。
6月にも、大江湿原でレンゲツツジとコバイケイソウが同じ場所で群生しており、朱色と白色の色合いが相まって美しい風景を見学でき、さらにはミツガシワ(ミツガシワ科)アマドコロ(キジカクシ科)など、道中で観察できなかった花々も観察できました。

 

せっかく2泊3日プランなので「●●方面にも足を伸ばしたい」というお気持ちの方もいるかもしれません。
2022年も発表させていただいた「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」では、あえて多方面に足を伸ばさず、シンプルな縦走ルートとしています。目一杯歩くプランではなく、時間に追われることのないシンプルな日程であるプランだからこそ、また山小屋の周辺をのんびり散策できるプランだからこそ、初めて尾瀬に訪れる方には尾瀬の魅力を十分に感じることができ、尾瀬へ再訪される方にも尾瀬の新たな魅力を感じていただけるプランになっています。
ツアーは、尾瀬に咲く花が最盛期を迎える6月末尾瀬にニッコウキスゲが咲く7月中旬に設定しております。
2022年は是非一度尾瀬を訪れてみてください。

 

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奥上高地自然探勝ハイキングの魅力 ~上高地で過ごす3日間

本日も私がおすすめしたい場所をご紹介します。第2弾は「上高地」です。

 

■関連ツアー
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング

 

23歳より添乗員を始め、もう何年が経つでしょうか。国内添乗員だった頃から遡ると、添乗へ出向いた先で最も多く訪れている場所の1つが上高地です。それと合わせて、プライベートでも数えきれないくらい訪れている場所でもあり、穂高連峰の裾野に広がる日本屈指の景勝地・上高地は、何度訪れても飽きることなく、毎回魅了される風景が広がります。
その素晴らしい上高地を訪れるツアーを造成するにあたり、他とは違った方法で案内することができないか、過去に訪れたことがある方も満喫できる方法がないか、のんびりと歩き上高地を深く知る方法はないか・・・。
色々と考えた結果、思い切って上高地で2泊するプランを造成するに至りました。

 

上高地は、長野県の北アルプス南部の梓川上流部に位置し、長野県・岐阜県・富山県・新潟県の4県に跨る中部山岳国立公園の一部(上高地は全域が長野県松本市)であり、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されています。
季節を問わない景勝地として名高く、火山活動、氷河時代やその後の浸食作用など、途方もない時を経て形成された上高地は、今なお私たちを魅了し続けています。

 

1.大正池エリア
河童橋から約4km。梓川の下流部に位置する大正池は、上高地散策のスタート地点でもあります。梓川沿いに聳えるトロイデ型の活火山・焼岳の風景を楽しんだ後、河童橋を目指します。

 

2.田代池エリア
大正池と共に大正時代の焼岳大噴火の影響で梓川の支流である千丈沢を堰き止めてできた田代池は、正面に聳える霞沢岳などの砂礫層を経由した伏流水によって養われた池です。枯れた水草や周囲から流れ込む土砂などが堆積し、長い年月をかけて湿原化された田代湿原から望む穂高連峰の風景もオススメのポイントです。

 

3.河童橋エリア
言わずと知れた上高地のシンボル・河童橋。河童橋周辺から眺める穂高連峰は圧巻の風景です。上高地の夜は静けさと暗闇に包まれます。夜の凛とした空気の中に広がる煌めく星空の風景は上高地で滞在した方だけの贅沢なひとときを味わう事ができます。もちろん、夜明けを迎え、朝焼けに染まる穂高連峰の風景も見逃すことのできない風景です。

 

4.明神エリア
河童橋から約4km上流に位置する明神エリア。立つ稲穂のように鋭く「穂高明神の為の山」という意味を持つ明神岳の風景とともに、穂高見神(ほたかみのかみ)を祀る穂高神社奥宮、針葉樹林に囲まれた穂高神社奥宮の境内に梓川の古い流路に明神岳からの湧水が溜まってできた明神池をご覧いただけます。

 

5.徳沢エリア
河童橋から約7km、梓川の上流部に位置する徳沢エリア。かつては「徳沢牧場」と呼ばれていて、残雪の山々を背景にした放牧風景は古き良き時代の牧歌的な光景として登山者に親しまれていたそうです。上高地の中でも訪れる観光客が少ないため、静寂に包まれた奥上高地の雰囲気を堪能できます。5月はニリンソウが咲く季節です。

 

ツアーでは、3日間に渡り上高地を堪能するプランを設けております。

 

1日目:大正池~河童橋~バスターミナル(約4.5km)
のんびりと上高地の風景をお楽しみいただきます(自由散策)。
河童橋から徒歩2分の「西糸屋山荘」に宿泊。夕食後は、河童橋へ出向いて星空の風景を楽しみます。

 

2日目:奥上高地自然探勝ハイキング(河童橋~明神池~徳沢)
夜明けから朝焼けに染まる穂高連峰の風景を堪能した後、専門ガイドと共に「奥上高地自然探勝ハイキング」(約7km)を楽しみます。
上高地の奥座敷・徳沢では、井上靖の長編小説『氷壁』の舞台となった「徳澤園」に宿泊。
※午後は、横尾エリアを目指すこともでき、上高地を端(大正池)から端(横尾)まで完全踏破することも。

 

3日目:自由に河童橋へ自由散策
明神エリアからは梓川右岸を歩き、岳沢湿原もゆっくり見学(自由散策)。
河童橋周辺のカフェで優雅にコーヒーとレアチーズケーキと共にのんびりと過ごし、上高地を出発。

 

7月にご一緒した奥上高地自然探勝ハイキングは非常に興味深いものでした。
専門ガイドが各所で上高地の自然・植生・地勢など幅広く解説してくれ、何より上高地への愛情がこちらへも伝わってくる素晴らしいガイド案内でした。
初めて上高地を訪れる方はもちろん、何度も上高地を訪れたことがある方にもオススメのプランです。
弊社ツアー「花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング」は、残雪が残る穂高連峰の風景が楽しめるゴールデンウィークニリンソウが咲く季節の5月にそれぞれ設定しておりますので、是非ご検討ください。

 

<5月に観察できる花>

<7月に観察できる花>

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屋久島・黒味岳フラワートレッキングの魅力

昨年7月頃から日本各地で観察した花をご紹介してきましたが、本日からは少し趣向を変え、実際に私がツアーに同行させていただき、花の観察を楽しんだ場所、おすすめしたい場所をご紹介したいと思います。
本日は、2021年8月にツアーを実施した際の情報をもとに「黒味岳フラワートレッキングの魅力」をご紹介します。

 

■関連ツアー
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング

 

■ブログ『世界の花だより』
屋久島の花

 

私が植生観察ツアーを造成する際に注意することは「時間的に十分な余裕を確保する」ことです。
屋久島最高峰・宮之浦岳まで足を伸ばすと、投石平周辺などで高山植物を楽しむことはできますが、「距離&歩行時間が長くなってしまう?」と感じてしまい、日程と理想がなかなか合致することがありませんでした。
そこで、あえて欲張らずに「高地植物の宝庫」と紹介される黒味岳に着目してみると、ちょうど良い距離感、山頂からの好展望、さらには森林限界を越えて黒味岳山頂周辺で観察できる花々を見て、登る前から魅了され、ツアー造成に至りました。

 

1.屋久島の植生を堪能できる理想的な距離感と歩行時間
※参考資料:屋久島観光協会HPより(http://yakukan.jp/doc/pdf/tozancourse2.pdf)
淀川登山口より1泊2日で往復する平均的なプランの場合、日本最南端の高層湿原・花之江河を経て黒味分岐(黒味分かれ)までは、宮之浦岳も黒味岳も同ルートを歩きます。
黒味分岐(黒味分かれ)から黒味岳へは1.4kmの往復、宮之浦岳へは栗生岳を経て往復6.0km往復があります。時間にすると、黒味分岐から黒味岳への往復は80分、宮之浦岳への往復は4時間30分を要します。
屋久島最高峰を目指すという魅力はありますが、屋久島の植生観察を楽しむためには、この約3時間の時間は非常に大きいです。その点、黒味岳は理想的な距離感と共に時間的に余裕があるため、ゆっくりと専門ガイドの解説を聞きながら屋久島の自然や植生を堪能できる点が魅力です。因みに、開花状況によって、黒味分岐から投石平(投石小屋)まで足を伸ばしても往復で1時間です。

 

※黒味岳の場合:合計13.4km(標高差:471m)
①日目 約5.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→石塚小屋)
②日目 約7.9km(石塚小屋→花之江河→黒味分岐→黒味岳→黒味分岐→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)

 

※宮之浦岳の場合:約18km(標高差:576m)
①日目:約12.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→黒味分岐→宮之浦岳→黒味分岐→花之江河→石塚小屋)
②日目:約5.5km(石塚小屋→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)
※白谷雲水峡へ縦走する1泊2日プランの歩行距離は約24kmです。

 

2.ゆっくりと歩き、植生の垂直分布を実感
スタート地点である淀川登山口の標高は1,365m。スタート直後から屋久杉やモミ・ツガなどの針葉樹の巨樹が分布し、それぞれの巨樹に苔がつき、苔の水分を得て樹木に着生する着生植物などを観察しながらのんびりと歩きます。因みに、8月は平均タイムが50分と表記される登山口~淀川小屋までの区間を1時間30分かけて観察を楽しみながら歩きました。

 

到着した淀川小屋ではリュックを降ろし、清らかな淀川の流れを見学し、淀川の森に自生する苔類などの観察を楽しみます。

 

淀川小屋以降は、針葉樹に着生する着生植物、火砕流の跡を示す地層、木々の合間から覗く展望を楽しみながら、のんびりと標高を上げていくと、森の中でも屋久島の花も徐々に姿を現し始めます。8月は屋久島の固有種など、様々な花を観察することができました。
時間の余裕ができるプランだからこそ、標高1,500m付近から森林限界、さらには標高1,700m以上に分布する高山植物など、植生分布を実感しながら植生を楽しむことができる点が黒味岳フラワートレッキングの魅力です。
平均タイムが登り110分とされる淀川小屋~花之江河の間でも2時間30分(昼食タイムを差し引いた時間)をかけて植生をのんびり楽しみながら歩きました。徐々に姿・形を変えていく高盤岳のトーフ岩の展望も楽しめます。

 

3.黒味岳山頂からは屋久島随一の絶景を望む
やはり最高峰登頂という言葉の魅力は絶大です。そういった点で言えば、屋久島第6の高峰である黒味岳は宮之浦岳に比べて見劣りしてしまいます。
ただ、黒味岳の山頂に立つと見劣りする部分は一掃されます。屋久島三岳と称される宮之浦岳、永田岳、栗生岳、さらには宮之浦岳へ続く主稜線も一望でき、眼下には日本最南端の高層湿原である花之江河もご覧いただけます。また、南側には遠く太平洋を望みます。
黒味岳は屋久島で最も美しい山岳風景が楽しめる場所と言っても過言ではありません。
黒味分岐から黒味岳山頂の平均タイムは往路45分、復路35分と表記されますが、高山植物の花々を楽しみながら、ゆっくりと歩き、8月の際は山頂でのんびり絶景と高山植物を楽しみながら30分ほど過ごしました。

 

現在、弊社では屋久島を周遊し亜熱帯植物や照葉樹林の植生を観察、苔類や屋久杉の巨樹を楽しむ白谷雲水峡、森林限界を目指す「黒味岳フラワートレッキング」へご案内する「花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング」を発表しており、4月は白谷雲水峡の太鼓岩からヤクシマオナガカエデの新緑とヤマザクラが咲く絶景をご覧いただける季節、5月は黒味岳周辺にヤクシマシャクナゲが花咲く季節に設定しております。
屋久島に興味がある方、植生に興味がある方、このブログを見て屋久島の植生に興味を持たれた方、一度屋久島に訪れた方がある方も、是非一度黒味岳フラワートレッキングを体感してみてください。

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ニュージーランドに白色と黄色の花が多い理由

先日まで、いくつかニュージーランドの花をご紹介しました。
本日は「ニュージーランドの花~番外編」として現地ガイドさんから伺った「ニュージーランドに白色と黄色の花が多い理由」についてご紹介します。

 

マウントクックリリー(Mount cool lily)

ニュージーランドで観察できる花の種類は、ゴンドワナ大陸の時代から進化したもの、もしくは風や鳥によって運ばれてきて新環境に順応したもののどちらかであると言えます。

ニュージーランドの花の色は、大半が白色か黄色です。他の国で観察できるような色鮮やかな色の種類はありません。

ラージ・マウンテン・デイジー(Large Mountain Daisy)

※現地ガイドさん曰く、色鮮やかな花の大半は外来種とのことです。

 

白色と黄色の花が多い理由については、諸説様々あるようです。
一番有力な説としては「昆虫」に関係があると言われています。
現地ガイドさんの話によると、ニュージーランドには、30種ほどしか蝶(ちょう)が生息しておらず(北米には700種を超える蝶が生息)、受粉を手助けする長い舌を持つ蜂(ハチ)がいないそうです。

 

 

 

では、誰が花の受粉の手助けをするのでしょうか・・・
その正体は、約1,700種生息すると言われている「蛾(ガ)」です。

 

 

サウスアイランド・エーデルワイス(South Island Edelweiss)

風が穏やかになり始める夕暮れから夜明けまでの間に飛び回り、多くの花に受粉をするそうです。

薄暗い状況下では、白色や黄色の花が最も目立つためにより多く受粉され、数を増やしてきたと言われています。

もう1つ興味深い話として、ニュージーランドの花の多くは形状が浅いと言われており、ニュージーランドに多く生息するハエやカブトムシなどによる受粉を容易にしているという報告もあるそうです。

 

ニュージーランドの森には約2,200種もの花が生息しているそうです。
2,200種すべてをご紹介するのは難しいですが、またいつかニュージーランドの花のご紹介の続きをさせていただきます。

 

さて、次はどの国の花の紹介をしましょうかね。